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  • 縫合の原則② 創部の減張

    縫合の原則② 創部の減張

    前回の続きです。前回は層を意識して、同じ層を合わせようという話を具体的なアクションプランと共に紹介しました。

    今回は原則②、創部を減張するに移っていきましょう。

    原則②:創部を減張させる

    二つ目の原則は・・・”創部を減張させる”になります。まずは原則①の創部があっていることが前提になっています。

    ”減張”ってイメージしにくいですよね。イメージは、傷口がぎゅっとくっついている状態にするでよいと思います。

    基本的に縫合した創部が開くようなテンションはダメです。

    傷がずっと開くような状態だとなかなかくっつきませんし、くっついたとしても破綻しやすい状態になってしまいます。


    縦切りの腹部の切開で、下端(足側)が一番分厚くなっている患者さんを見たことがあると思います。

    あれは、重力でたわんだ創部が開く力がかかり下端が分厚く治っているわけです。

    減張はかなり大切な要素になってきます。では次に、どうすれば減張できるのか、具体的なアクションプランに移りましょう。

    例えば、皮膚であれば、表面にテープを貼ることで動きによる開きを和らげる、ことが出来ますよね。


    他の組織でテープが張れないところや、薄くてどうしようもない場合はどうすればいいのでしょうか。一般化してみましょう

    創部を減張する具体的なやり方

    ①層をたくさん縫合する

    一点に力が加わると、当然かかる力も強くなりますよね。

    何層にも縫合すると力が分散され減張することが出来ます。

    わかりやすい例を挙げるならば、家の柱を思い浮かべてください。

    家の柱を増やせばより強固になりますよね。これと同じです。

    先ほどの表面にテープを張ることも同じ原理ですね。

    例えば皮下脂肪は2cm以下であれば浅筋膜の縫合は必要ないという報告がありますが、縫合したほうがより減張にはなります。

    減張を狙うなら、層を多くとるようにしてください。

    ②縫合する層を選別する

    層をたくさん合わせるにも、合わせてよい層と合わせるとよくない層があります。

    例えば、皮膚であれば真皮は固い組織なので(前後の脂肪と表皮と比べて)真皮を縫合するときに強く合わせることで表皮や脂肪層の減張になります。

    逆に、脂肪層をかけると圧迫で脂肪が溶けてしまい炎症が生じて逆に創部の直りが悪くなります。

    一方で、硬いところは強く引っ張っても避けることがないので強く合わせることが出来ます

    腹膜を取るときも、腹膜裏の筋膜を取ることで強く縛ることが出来ます。

    つまり、脂肪や、穿刺してはいけない臓器を避け、なるべく丈夫な組織を多く縫合することが大切なになります。

    ③より多くの組織を取る

    取ってはいけない層をさけて、より多くの層を取るよい縫合層の選択が出来れば、最後はその層自体の取り方になります。

    層の組織を取るときは、より多くの組織を一塊になるように運針するとよいです。

    当然ですがちょっと取るよりも幅広くとったほうが、

    より幅広い範囲で力が分散されるため創部の減張になります。

    二つの原則

    以上となります。二つの原則、

    ①同じ層を合わせる
    まず層を知る、層が見やすいように展開する、層同士を縫う
    ②創部の減張する
    層をたくさん縫合する、運針で硬いところを強く合わせる、より多くの組織を取る

    をイメージして縫合に挑んでみてください。次は腟断端の具体的な縫合について第二原則に基づいて説明していきます。お楽しみに。更新はXで告知していますのでよければフォローをお願いします。

    まとめ問題と答え

    問題:
    テキスト「創部を減張させる」に関する次の記述のうち、最も正しいものを選びなさい。

    A. 減張は、創部のテンションを最小限に抑え、早期の治癒を促進する技術である。
    B. 縫合する際には、創部の全ての層を均等に縫合するのが最適である。
    C. 縫合においては、特に脂肪層の縫合が重要であり、これが減張の鍵である。
    D. 層を多く縫合することで力が分散され、創部の減張を達成できる。

    答え:
    D. 層を多く縫合することで力が分散され、創部の減張を達成できる。

    解説:
    提供されたテキストによると、創部の減張は創部が開かないようにすることが目的であり、これには複数の層を縫合することが効果的です。これにより、縫合された部分にかかる力が分散され、創部の開きを防ぐことができます。選択肢Aは正しいが、減張の技術の一般的な説明に過ぎず、選択肢BとCはテキストに基づいていないため、不正確です。したがって、最も正確な答えは選択肢Dです。

  • 2大原則に基づく腟断端縫合①層を合わせる

    2大原則に基づく腟断端縫合①層を合わせる

    腟断端シリーズ第一弾、2大原則に基づく腟断端縫合です。

    縫合時における2大原則は何でしたか?(詳しくはこちら

    ①層を合わせる
    ②創部を減張する

    この二点でしたね。これらの原則を腟断端縫合に適応するとどうなるのか見ていきましょう。

    今回は原則その1”層を合わせる”にフォーカスを当ててみます。

    腟の層を合わせる

    一つ目の原則は次①同じ層を合わせるでしたね。具体的には次の三つになります。


    1.まず層を知る
    2.層が見やすいように展開する、
    3.層同士を縫う

    ではそれぞれ順番に見ていきましょう

    まず層を知る

    腟の層は3つになります。

    内側から粘膜、筋層、筋膜(包む膜)になります。これは知っておくしかないですね。

    粘膜があり、支持組織があり、それを包む膜があるようなものですね。

    層が見やすいように展開する

    展開に関しては、何を見たいかによって変わります。

    見たい組織のごく近くをなるべく薄く把持しテンションをかけて層が見えるようにします。


    図は、腟断端の端っこを縫うときの展開になります。筋層の一部と粘膜を縫合したいので、筋層と粘膜の間を薄く持って展開しています。

    断端の途中の縫合場面ですが、助手に腟断端を引っ張ってもらいテンションをかけてもらい、近くを持つことで見やすいように展開しています。

    コツとしては何度も左手で展開しなおすことが大切です。

    何度も、展開を変えて、一番見やすく運針しやすい”術野”を作っていく意識が大切となります。

    層同士を縫う

    層が認識できればあとは運針になります。

    運針で大切なのは左手の動きになります。

    ポートの配置により動きが制限されているため、右手は基本的に回すとひっかけることしかできません。左手で微調整して層を縫合します。

    下の図では、白い矢印から、筋層→粘膜ととり、赤い矢印に粘膜→筋層ととることで同じ層で縫うことが出来ています。

    先ほどの腟断端を途中で縫い終わった時の画像でも、左手で組織をコントロールして狙った層に運針を行っています。

    層を知り、その層を取れるように展開し、層同士を縫う。

    これらを意識して、層を合わせてみてください。

    次回は原則②創部を減張するを腟断端縫合に適応するとどうなるか見ていきますね。お楽しみに。告知はXで行っています。

    まとめ問題と解説

    問題: 腟断端縫合における「層を合わせる」という原則に関して、以下のうち正しいのはどれか?

    1. 腟の層は内側から粘膜、筋層、脂肪層で構成されている。
    2. 層を展開する際は、筋層の一部と粘膜の間を薄く持ち、適切なテンションをかけて層を見えるようにする。
    3. 運針時、左手の微調整は不要であり、主に右手を用いて縫合を行う。
    4. 縫合の順序は、まず筋膜から始め、次に粘膜、最後に筋層を縫合する。

    答え: 2. 層を展開する際は、筋層の一部と粘膜の間を薄く持ち、適切なテンションをかけて層を見えるようにする。

    解説:

    • 選択肢1は間違いで、腟の層は内側から粘膜、筋層、筋膜で構成されています。
    • 選択肢2は正しいです。腟断端縫合では、層を正確に認識し、適切に展開することが重要です。筋層と粘膜の間を薄く持って展開し、テンションをかけることで層を見やすくします。
    • 選択肢3は誤りで、運針時には左手の微調整が重要です。右手は主に回転と引っ掛ける動作に限定されます。
    • 選択肢4も間違っています。縫合の順序は、まず同じ層を合わせることが重要であり、特定の層から始める必要はありません。
  • 縫合の原則① 「まず、縫合するときに気を付けることってなんですか。」

    縫合の原則① 「まず、縫合するときに気を付けることってなんですか。」

    今回は、縫合の原則についてです。医師になったら誰しもがやりますよね。縫合。

    持針器で針もって、セッシで皮膚もって、張りを通して結紮。

    たったこれだけ。

    院内研修が終われば救急で結構早めに到達する手技ですよね。

    ただ、奥が深い!バイカル湖ぐらい深い。こだわりだすと本一冊かけます。

    今回、その深い深い縫合をたった2つ原則にギュッとまとめました。


    どの様に縫うのか気になるよって方以外にも、縫合をする可能性のあるすべての医師に読む価値のある内容になっていますのでお見逃しなく。

    原則①:同じ組織(層)を合わせる

    早速、原則の一つ目に行きましょう。一つ目は・・・

    ”同じ組織を合わせること”

    例えば、腕の切り傷を縫うときに、腕の皮膚と指を縫い付けることはしませんよね。

    そんなのあたりまえじゃないか!!!

    と思いますよね。

    例えば、切り傷ではなく、裂けたような傷の場合、ギザギザな創部となりもともとの形がわかりにくい時があります。

    これにより、もともとの位置とは違う組織同士を合わせてしまうミスが起こることがあるんですね。

    さらに、解像度を高めると、この”違うもの同士を縫い合わせる”を知らずにしている場面があります

    ”組織を合わせる”の解像度を上げると”同じ層を合わせること”といえます。

    出来ていない状況を考えると、例えば、皮膚を縫うときに真皮同士を合わせずに、真皮と表皮を合わせてしまうようなものです。

    表皮同士が付かないと、傷はくっつきませんよね。

    そのため、組織はもちろん、もっと解像度を高めて、同じ層を合わせることが大切になります。

    同じ組織(層)の具体的な合わせ方

    では同じ層の具体的な合わせ方についてみていきましょう。

    ①まず層を知る

    層に何があるか知ることがファーストステップになります。

    何が存在するかどうか知らないと何もできないです。

    知る方法としては、

    ”調べること”と”実際見ること”

    の二つがあります。実際、見てみて同じそうな色や質感のものを探してください。そうすると認識しやすくなります。

    ②層が見やすいように展開する

    層を見えるようにすることが二つ目のステップになります。

    もっと具体的に言うと、薄くしっかりとセッシで持ち上げること組織を離します

    本を開くと、ページが見えてきますよね。しかし、握りしめて開くと内容が見えませんよね。

    また、少ししか開かなくても内容は読めませんよね。

    なのでしっかりと本を読むときは開く必要があるわけです。

    本で言うと当たり前ですが、創部を分厚く、少ししか持ち上げず層が見えていない場面に遭遇することが時々あります。

    しっかりと左手で近くを把持して、展開して層を見えるようにしましょう

    層同士を縫う

    ②の手順でしっかりと展開が出来れば、

    あとは層同士を取るように運針できれば層のあった縫合は完了となります

    この時に大切なのは、左手で組織を動かすことです。

    組織を動かすことで運針が思った通りに行うことが出来ます。

    逆に言うと左手が使えないと、自由に運針をすることはできません。


    ちなみに脂肪は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので基本かけないほうがいいですね。

    皮膚での模式図で言うと以下のようになります。

    長くなってきたので、原則②は次回紹介になります。お楽しみに。更新はXで告知しています。

    まとめ問題と解説

    問題: 縫合における「同じ組織(層)を合わせる」という原則に基づいて、以下のうち正しいのはどれか?

    1. 縫合時には皮膚の表皮層だけを合わせることが重要である。
    2. 脂肪層は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので、縫合しない方が良い。
    3. 創部を展開する際には、創部を分厚く持ち上げて層を見ることが重要である。
    4. 縫合時には層を認識しやすくするために、左手を使用せずに進めるべきである。

    答え: 2. 脂肪層は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので、縫合しない方が良い。

    解説:

    • 選択肢1は誤りです。縫合では、皮膚の表皮だけでなく、真皮層も含めて同じ層を合わせることが重要です。
    • 選択肢2は正しいです。脂肪層を縫合すると溶けて炎症を引き起こす可能性があり、通常は縫合されません。
    • 選択肢3は間違っています。創部を展開する際には、層が見やすいように薄くしっかりと持ち上げることが重要です。
    • 選択肢4も誤りです。縫合時には、左手を使って組織を動かし、適切に層を合わせることが重要です。左手の使用が縫合技術において非常に重要です。
  • 腟管切開② 超具体的な腟管の切開方法

    腟管切開② 超具体的な腟管の切開方法

    膣切っている間に出血してしまった。見えなくなってきた・・・どうしよう。

    このような焦った経験はTLHをする上で誰しも味わう、嫌な汗が出る経験ですね。

    前回は切開ラインはすべて腟の輪のイメージがあるかで決まるという話を行いました。(こちら
    今回はより具体的な、超具体的な腟管切開を説明していきます。

    画像多めですので、イメージ膨らませながら説明していきます。ゆっくりみていってください。

    ①傍組織と腟リングの確認

    まずは切開ラインの確認を行います。

    前壁で膀胱がしっかり剥離できているか、リングの位置を見ながら確認します。

    横は子宮動静脈上行枝がリングのラインまでおりている確認します。画像では鉗子が握っているラインまで組織を処理しないといけません。

    後ろはザクロ(仙骨子宮靭帯)や腸が離れていることを確認します。

    ②腟パイプをはめ込む

    腟壁切開のコツは、円蓋部にしっかりと腟パイプをはめ込むことです。腟と子宮頸管腟部との間をリング状に把握することで頸管をかじることなく切開することが出来ます。

    図のように円蓋部にしっかりと腟パイプのリングが入り込むようにしましょう。

    押し込みが甘かったり、端が内子宮口にかかっていることがあるので注意してください。

    ここでのコツは次のようになります。

    ①まずはしっかり奥まで腟パイプを押し込む
    ②そこから腟パイプを左右上下に動かす
    ③動かしてみてリングが見えてなければ、入れなおす

    ここで腟パイプのラインが、夜の海の灯台のようなものになります。ここをしっかりクリアしておかないと見当違いのところを切開することになります。

    ③前壁切開

    腟の輪のイメージが取れたところで、切開に移っていきましょう。まずは前壁からになります。

    ここで注意すべき点としては2時と10時方向には膣からの血管が走っている事です。腟の静脈で凝固せずに切開すると出血します。切って出血してから凝固するのもいいのですが、上から出血すると横や下の視野が確保しにくいので注意しましょう。

    切開の時はリングの数ミリ奥を切開するとよいです。

    ③横切開

    次に左右に行きます。やりやすいほうからしていきます。どちらでもよいです。

    横切開時には結構出血します。特に3時9時には動脈があり、またそこを超えてくると腟静脈が発達しているので容易に出血します。

    円蓋部と腟のリングに沿って、凝固も併用しながら切開していきます。

    できれば細かく円蓋部をめくり返して頸管をかじっていないか確認できればなおよいです。

    ④後ろ切開

    最後は後ろの切開になります。実は後ろの切開が一番難しいです。

    子宮を持ち上げ、腟パイプで後壁を出そうとしても、かなり難しいです。腟パイプを持っている人の技量に寄りますし、何よりカメラが入りにくく視野が取りにくいです。

    そのため、円蓋部をめくりあげ、腟の粘膜を先に切開しラインを確保→その後筋層を切開という形がやりやすいです。

    マニュピレーターで先に後ろを切開するパターン

    実は、上記の画像はすべてRASH(ロボット支援下子宮全摘術)になります。パラレルTLHの時はどのようにするか見ていきましょう。

    TLHではロボットのようには鉗子の向きを自由に変えれない為、展開が最も重要になります。マニュピレーターがある状態で先に難しい後壁から行うようにしています。

    基本は上記と同じです。

    ①切開ラインの確認

    まず子宮を動かし腟まで組織が下りていることを確認にします。

    しかし、カップ付きではないマニュピレーターの場合どこまで処理が終わっているかわかりにくいですよね。この時にとても役に立つ基準があります。それは

    仙骨子宮靭帯

    これを目安に確認します。基本的に仙骨子宮靭帯は円蓋部のラインで付着しているので、仙骨子宮靭帯を切開したラインを見れば腟のラインがわかります

    そして、ラインが確認できれば切開を行います。まず後壁の切開から行います。

    ②後腟壁切開

    子宮を完全に前屈させて行います。

    この時に目安となるのが、マニュピレーターの動く部位の曲げた角になります。角を意識しながらマニュピレーターの形や円蓋部の大きさをイメージし、また、細かく動かすことでオリエンテーションを確認し切開します。

    そして、切ったラインを左右に広げていきます。基準としてはここでも仙骨子宮靭帯になります。

    仙骨子宮靭帯まで左右を切り広げて後壁は終了です。

    ③腟パイプに変更

    余り後壁切開をやりすぎると腹腔内のCO2が膣より排出され気腹圧が下がり危険になります。左右仙骨子宮靭帯あたりまで切れたら、マニュピレーターを腟パイプに変更します

    ④前壁切開

    ここからは上記と同じです。しっかりと腟パイプをはめ込み、少し奥を切開します。

    ⑤横切開

    最後に横切開して終了です。後ろの切開したラインと上の切開したラインをつなげるだけでよいです。

    一番最初に難しい後腟壁の切開が終わっているので、後ろの切開さえクリアできればこちらのやり方のほうが簡単ですね。

    以上になります。パラレル配置なのかダイヤモンド配置なのかでも変わりますし、マニュピレーターを入れているか入れていないかによってもやり方が変わってきます。

    いろいろ試してみてやりやすい方法で切開してみてください。

    次は腟断端部の縫合になります。やっと手術が終わる~
    更新はXで告知していますので、フォローお願いします!

    まとめ問題

    問題:
    子宮全摘出術(TLH)における腟壁切開の正しい手順は何ですか?

    選択肢:
    A. 切開ラインを確認せずに直接切開する。
    B. マニュピレーターを使用せずに後壁切開を最初に行う。
    C. 腟パイプを使用して、円蓋部にしっかりと腟パイプのリングをはめ込んだ後、切開ラインを確認して切開する。
    D. 切開ラインを無視して、子宮動静脈上行枝を最初に切除する。

    答え:
    C. 腟パイプを使用して、円蓋部にしっかりと腟パイプのリングをはめ込んだ後、切開ラインを確認して切開する。

    解説:
    この問題の答えはCです。子宮全摘出術(TLH)において、腟壁の切開は非常に重要な手順です。適切な切開を行うためには、まず腟パイプを使用して円蓋部にしっかりと腟パイプのリングをはめ込む必要があります。これにより、腟と子宮頸管腟部の間を適切に分離し、切開ラインを正確に確認できます。その後、慎重に切開を行い、適切な手術を進めることができます。選択肢A、B、Dは不適切な手順を示しているため、これらは誤りです。

  • 側方アプローチと前方アプローチの患者負担の圧倒的な違い

    側方アプローチと前方アプローチの患者負担の圧倒的な違い

    TLH(腹腔鏡下腟式子宮全摘)において、側方アプローチと前方アプローチ、どちらが患者さんの負担が少ないか考えたことありますか?

    個人的には前方アプローチのほうが患者負担が少ないと考えて手術しています。

    側方アプローチが主流の中、なぜ前方アプローチを選択しているのか?

    その理由について説明していきます。

    側方アプローチと前方アプローチの違い 手技と剥離範囲

    側方アプローチと前方アプローチの違いは交差部同定の違いと、剥離範囲としての違いが大きくあります。

    交差部(尿管と子宮動脈)の見つけ方の違い

    側方アプローチでは
    骨盤漏斗の高さで尿管を同定します。
    ②その尿管を交差部までおっていき、子宮動脈を同定し処理します。

    前方アプローチでは 
    子宮頸管の高さで尿管や子宮動脈を同定します(詳しくはこちら
    ②見つけた尿管や子宮動脈を追っていき交差部を同定し処理します。

    側方アプローチでは、前方アプローチと比べてかなり頭側で尿管をまず見つけに行きます。これが個人的に患者さんにとってデメリットが大きい点と考えています。

    剥離範囲の違い

    もう少し詳しい話を行います。

    側方アプローチでは骨盤漏斗靭帯と外腸骨動脈の間を大きく開けて尿管を同定します。そのため、剥離範囲としては外腸骨~内腸骨~基靭帯の範囲になります。

    一方、前方アプローチでは子宮に沿って腹膜を切開していくため(詳しくはこちら)、切開は少なく、うまくいくと円靭帯~子宮~基靭帯の範囲になります。

    剥離範囲の広さが側方アプローチと前方アプローチの大きな違いになってくるわけです。

    実際どれほど違うか見ていきましょう。次の写真は帝王切開三回の方のTLH+BSO(腹腔鏡下に子宮と両側卵巣卵管切除)の術中写真になります。

    いつも前方アプローチで交差部を同定したのち、膀胱剥離は子宮頸管のサイドからの処理を行っている(詳しくはこちら)のですが、帝王切開による癒着が強く円靭帯の癒着が強く後葉がうまく剥がれなかったため、危険と判断し、側方アプローチ(骨盤漏斗靭帯の高さで尿管を同定)に切り替えました。

    珍しい写真になりますが、左が側方アプローチ後、右が前方アプローチ後のTLH終了時の写真になります。

    一目瞭然、右の前方アプローチのほうが組織がより患者さんに残せている状態になっていますね。

    実際に起こりえる合併症

    しっかり剥離できることは良いことですが、必要以上の剥離を行ってしまうと固定組織がなくなり、多くのデメリットが生じます。

    ・遺残卵巣の捻転
    ・術後臓器損傷のリスクの増加
    ・次回手術時のリスクの増加

    臓器に対して、周辺組織が残らないということは他臓器損傷や捻転などのリスクが高まります。そして、次回手術時のリスクも高まります。。

    外腸骨動脈と腸が直接くっついている状態と、間に組織があり外腸骨、組織、腸とくっついている状態どちらがいいかは述べるまでもないです。下の図で言うと左にS状結腸が癒着したのち、左半結腸切除が必要となった場合の困難さは想像もしたくないですよね。

    どこまで剥離して、逆にどこは剥離せずに済むのか。これをしっかり考えられると次なるステップに行けると信じています。

    特に卵巣温存の時は卵巣腫瘍による再手術の可能性や遺残卵巣茎捻転を考慮してなるべく少ない腹膜切開で行えるとよいですよね。

    以上、なぜ私が前方アプローチでTLHをしているかの雑記的な記事でした。Xやってます。ためになったよって方はフォローお願いします。

    アクションプラン

    ・必要な剥離範囲を考える。
    ・必要のない剥離がないか考える。

    まとめ問題と解説

    質問: 腹腔鏡下腟式子宮全摘(TLH)における側方アプローチと前方アプローチの違いとそれぞれの患者負担について、次のうち正しいものはどれでしょう?

    選択肢:

    1. 側方アプローチは前方アプローチよりも患者の負担が少ない。
    2. 側方アプローチでは尿管を骨盤漏斗の高さで同定し、前方アプローチでは子宮頸管の高さで同定する。
    3. 前方アプローチでは剥離範囲が広いため、患者への負担が大きい。
    4. 前方アプローチでは次回の手術時のリスクが高まる。

    答え: 2. 側方アプローチでは尿管を骨盤漏斗の高さで同定し、前方アプローチでは子宮頸管の高さで同定する。

    解説:
    このテキストには、TLH(腹腔鏡下腟式子宮全摘)の手術方法としての側方アプローチと前方アプローチの違いが説明されています。側方アプローチでは尿管を骨盤漏斗の高さで同定し、子宮動脈を同定して処理します。一方で、前方アプローチでは子宮頸管の高さで尿管や子宮動脈を同定し、処理します。前方アプローチは剥離範囲が狭く、患者にとっての負担が少ないとされています。そのため、選択肢2が正しいとされます。選択肢1、3、4はテキストの内容と矛盾しています。

  • 腟管切開① もうミスらない腟管切開「たった一つのうまくいく基準は”とあるイメージ”」

    腟管切開① もうミスらない腟管切開「たった一つのうまくいく基準は”とあるイメージ”」

    なんだか今日膣をうまいこと切れなかったなぁ、前と何が違ったのかなぁ

    TLH中にこんな風にモヤモヤした経験はありませんか?腟管切開はとあるポイントを押さえておくとすごくスムーズに進めることが出来ますが、一方でイメージが出来ていないとドツボにはまります。

    もやもやが少しでもある方に必見の内容になっています。お見逃しなく。
    ついにこのシリーズで子宮が”取れます”(笑)

    腟管切開、たった一つのうまくいく基準

    さっそく腟管切開におけるたった一つのうまくいく基準をお伝えします。それは

    腟管の輪のイメージがある事

    ちょっと抽象的でわかりにくいですよね。わかりやすく具体的に説明していきますね。

    腟管の輪のイメージとセンス

    腟管は筒になっていますよね。特に腟パイプやカップが入っていると円形の筒になっています。

    TLHにおいて、立体的に円状に切開するのは実は腟管切開だけです。あとの血管や靭帯は集簇結紮や凝固して直線的に切開していきますよね。

    そのため、腟管切開は他の手順よりも”センス”が必要な部分になります。

    ”センス”とはなかなか抽象的ですよね。深堀していきましょう。

    ”いいセンス”とは何でしょう。私が思う”いいセンス”とは認識などの入力後の”いい感じの出力”と考えています。

    わかりやすく例えて言うなら、会話のうまい人って、相手からの言葉(入力)を受けて、適切な言葉や態度(出力)を伝えることが出来ますよね。これを会話での”いいセンス”と呼ぶと思っています。

    例:仕事が向いているか悩んでて → 
    ×(食い気味にぶっきらぼうに)やるしかないやろ、俺ん時は・・・(自分語り)
    〇(目を見て、ゆっくりと)悩んでいるんだね(共感)、何かあったの?(他人への興味)

    例のように、同じ入力があったのにもかかわらず、二人の対応は全く違いますよね。出力の違いを”センス”ということが出来そうですよね。

    では腟管切開における、入力と”いいセンス(出力)”は何でしょう。

    入力は画面の頚部、腟、膀胱の視覚的情報ですよね。
    そしてセンスのいい出力とは腟管の輪のイメージ通りに切開できることになります。

    そのため、腟管を立体的に輪のイメージとしてとらえられる状態にしてから切開に移ることが、たった一つのうまくいく基準となるわけです。挟んで切るだけならだれでもできますからね。

    経験が高くなると、腟管のイメージは剥離せずともわかってきます。膨らみ具合や模様で何となくわかってくるわけです。逆に経験が詰めていない状態ではなかなかイメージは見えてきません。
    そのため、しっかりと剥離を行い腟管周りの処理をきれいに終えている必要があります。

    腟管のイメージのとらえ方

    腟管のイメージの大切さがわかったところで、そのとらえ方を見ていきましょう。
    といっても、実はかなり簡単です。

    カップや腟パイプの淵を見えるようにする。

    これだけです。

    前膣壁

    後腟壁

    そして横

    この輪のイメージをつかむことさえできれば、子宮を切りたい方向と逆側にテンションかけて切るだけできれいな腟管切開が出来ます。

    ギザギザになったり、切り込みすぎたり、逆に頚部が残ったりといった失敗がおこりにくくなります。

    そのためしっかりと子宮傍組織を処理した後で輪のイメージを確認し、それから腟管切開を行ってみてください。きっとうまくいきます。

    失敗パターン

    これらにより、腟の場所や輪のイメージをとらえ間違って失敗しやすいので注意してください。

    腟の輪のイメージ見誤りパターン

    ①頸管が伸びていて膣が思ったより奥にある 
     → 膣まで組織を処理できておらず、切開の時に組織が残って分厚くなる
     ☆よくあるのは閉経や巨大腫瘍で引っ張られているとき 

    ②子宮円蓋部と腟パイプやカップの大きさがあっていない時。
     → 頸部筋腫やナボット嚢胞で子宮円蓋部が大きくなっているとき
     or 個人特性や閉経で子宮円蓋部が小さくなっているとき

    結局は、思ったより奥にある場合や円蓋部が小さい時にイメージとのずれにより起こるわけですね。

    剥離できていないパターン

    膀胱脚やザクロ(仙骨子宮靭帯周り)といった後ろ側がしっかりと処理できていないことが多いです。上記の①と同じくそうすると、前壁切開後に分厚く組織が残り、困難を極めます。

    良いイメージと、失敗パターンを自分のものにして、”もう腟管切開に失敗しない”と自信もって言えるようにしてい行きましょう。

    では次回はいま行っている具体的な切開方法について解説していきます。お楽しみに。

    更新はXにてアナウンスしていますので少しでも気にいてくださった方はフォローをお願いします。

    まとめ問題

    問題:

    腟管切開において、以下の選択肢から、最も重要なポイントを選んでください。

    A. 腟管の輪のイメージを持つこと
    B. 腟管切開の手順を正確に覚えること
    C. 腟管切開の前に膀胱脚とザクロを処理すること
    D. 腟管切開のためのセンスを鍛えること

    解答と解説:

    正解は A. 腟管の輪のイメージを持つこと です。

    この文章では、腟管切開における成功のために最も重要な要素は、「腟管の輪のイメージを持つこと」であると述べられています。腟管切開は他の手順よりもセンスと正確なイメージが必要であり、このイメージを持つことが切開を成功させる鍵とされています。

    他の選択肢について:

    B. 腟管切開の手順を正確に覚えること:手順の正確さは重要ですが、それだけでは腟管切開の成功には不十分です。イメージがないと手順の正確さも生かしきれません。

    C. 腟管切開の前に膀胱脚とザクロを処理すること:これは後ろ側の組織処理に関する内容ですが、最も重要なポイントではありません。成功の鍵は腟管のイメージにあります。

    D. 腟管切開のためのセンスを鍛えること:センスを鍛えることも重要ですが、それだけでは成功には足りません。センスを発揮するためにも腟管のイメージが必要です。

    したがって、最も重要なポイントは「腟管の輪のイメージを持つこと」であるため、選択肢 A が正解です。

  • 子宮傍組織② もう出血しない、子宮傍組織入門。「結局どの”高さ”で切ればいいの?」

    子宮傍組織② もう出血しない、子宮傍組織入門。「結局どの”高さ”で切ればいいの?」

    子宮動静脈をどの高さで切る?

    子宮動脈上行枝の処理を行うときに聞かれ、誰しもを返答に困ったことがあるはずです。

    この記事を見れば明確な返答を行うことが出来るようになります。具体的にどこで子宮動静脈の上行枝を処理すればいいのか説明していきたいと思います。

    知っているだけで、危ない状況から逃げれる場面が増えてきます。全産婦人科医が知っておくべき内容となっていますのでお見逃しなく!

    子宮動静脈切開の危険性

    手術中にピリつく瞬間はいつですか?というアンケートがあった時皆さんなら何と答えますか?

    私は、”子宮動静脈の処理の時”と答えます。

    なぜならここの処理を失敗すると大量出血につながり、一気に視野がなくなり、そして他臓器損傷という意思にとっても患者さんにとっても最悪の状況につながります。

    皆さんも経験ありますよね。

    子宮近くで出血、止めるには外を触るしかない、でも尿管見えてない・・・どうしよう・・・

    よくある話で、出血で焦る状態で対処しないといけないのでかなり焦ります。

    初歩の解剖知識となりますが、子宮は左右2束に血管が収束しています。子宮本体から木の根のように広がっていきますよね。

    出血をすると、より外側で処理をしないといけない(上流は外側の内腸骨系)ため。

    骨盤より、つまり危ない組織が広がっている場所を触る必要があり危険です。

    子宮動静脈での出血は絶対に避けるべきイベントになります。

    結局どの”高さ”で切ればいいの?

    では本題の単純子宮全摘で”子宮動静脈上行枝は結局どこで切ればいいの?”に移っていきます。

    子宮頸部のどこで切るかという話になります。

    大きく2パターンに分かれます。

    高め:子宮体部より(内子宮口当たり)
    低め:膣より(外子宮口あたり)

    つまり、①高めの体部に寄ったところでの切開と、②低めの膣に寄ったところでの切開になりますね。

    それぞれの処理位置とその後の展開について具体的にみていきましょう。

    子宮体部より(内子宮口当たり)での処理

    いわゆる”高い位置での処理”、”筋膜内での処理”、”アルドリッチ”などと言われる処理になります。

    具体的な場所としては、子宮体部が広がってくるこの部分になります。

    かなり体部よりですよね。頸管に子宮動静脈上行枝をつけながらの処理になります。

    この”高い”ラインでの処理の最大のメリットは出血時のリカバリーがしやすいことになります。
    なぜなら、骨盤からより離れる、つまり尿管や膀胱、大腸から離れることが出来るため他臓器損傷のリスクが低いため安心して凝固止血できるわけです。
    そのため、仮にに子宮から離れた部分の剥離が甘くても処理が出来ます。

    具体的な手順を見ていきましょう。

    ①まず子宮をしっかりと頭側に牽引します。子宮体部と頸部の間を確認します。

    ②内子宮口付近でバイポーラで凝固止血します。左右十分凝固止血したのち、子宮側で切開します。

    血管は分けて一本一本処理していってください。欲張ると出血します。

    「欲張って切開しない」これを意識して処理していきます。

    ③そして徐々に腟側に降りていきます。この時も凝固止血しながら進めるようにしてください。

    コツとしては

    まず、子宮頸管に沿って切開していくこと
    つぎに、子宮動静脈を切った後は上下の組織を別々に処理していくこと
    になります。

    降りていくにつれて骨盤底に近づくため、組織は広がっていきます。
    そのため、子宮動静脈を切った後は上下の組織を別々に処理していく必要があります。

    これを繰り返すことで子宮頸管から安全に血管を離すことが出来ました。

    デメリットとしては、

    ①処理の工数が多いこと
    ②子宮を一部削ってしまう可能性があること

    が挙げられます。

    膣切開より(外子宮口当たり)での処理

    次はより膣切開部位に近いところでの処理について説明していきます。

    いわゆる”低い位置”とか”外側”とか”筋膜内”と言われるような位置です。具体的な位置は子宮円蓋部あたりになります。

    これの大きなメリットは、腟の切開ラインに近いので処理する組織が少ないこと、膣切開の時に組織が薄くなること、子宮を削ってしまうリスクがひくことになります。

    具体的な手順を見ていきましょう。

    ①まず膣と子宮の境目を確認します。そして、十分に尿管および膀胱、大腸が剥離できていることを確認します。

    ②そして、膣切開ラインよりやや体部より(高め)から凝固止血します。

    ③そして切開を行い、これを数回繰り返して処理は終了となります。

    先ほどと比べて外側のみに切開創が広がっているのがわかるでしょうか。デメリットとしては

    ①子宮から離れた組織を触る必要がある。特に尿管をしっかりと剥離する必要がある。
    ②出血させたときのリカバリー時のリスクが高い

    が挙げられます。

    結局どちらがおすすめなの?

    ラインがわかったところで、高めと低めどのように使い分けたらいいのかという疑問がありますよね。場合に寄るのですが、はっきりと言えることは。これですね。

    高めが無難

    これには明確な理由があります。①の高めの切開が安全だからです。

    ここで1つ問題です。

    子宮周囲に関して、動静脈の中枢側ってどちらになりますか?

    中枢と聞くと子宮側!と答えたくなりますが、内腸骨が外側にあるので骨盤底側になります。

    そのため、より子宮に近い側が末梢側となるため、より末梢側の①の体部よりの切開のほうが安全と言えます。

    では外側の処理の存在価値は何でしょう。それは組織をかじるリスクが低いことになります。

    なので、解像度を高く答えると、

    ①他臓器損傷がおこりえる場合は、逃げるために高めで処理
    ②CIN3などで子宮の組織をかじりたくない時は、剥離をしっかりと行い低めで処理

    という形になります。

    基本はやはり、高め。出血させたときにリカバリーがしやすいので”高め”から始めるほうが良いと思います。

    以上になります。次回は膣切開になります。長々とやってきましたが、いよいよ子宮が取れます。お楽しみに。

    X(旧Twitter)にて更新のお知らせをしていますのでよければフォローのほどよろしくお願いいたします。(こちら

    まとめ問題

    問題:

    子宮動静脈上行枝の処理に関する次の記述のうち、正しいものを選択してください。

    1. 子宮動静脈上行枝の切開は、外子宮口付近で行うのが最も安全である。
    2. 子宮動静脈上行枝の切開は、内子宮口付近で行うのが出血時のリカバリーがしやすく、他臓器損傷のリスクが低い。
    3. 子宮周囲に関して、動静脈の中枢側は子宮側である。
    4. 高めの切開位置は子宮の組織を削ってしまうリスクが低い。
    5. 膣切開に近い位置での動静脈上行枝の処理は、他臓器損傷のリスクが低い。

    正解:

    1. 子宮動静脈上行枝の切開は、内子宮口付近で行うのが出血時のリカバリーがしやすく、他臓器損傷のリスクが低い。

    解説:

    内子宮口付近での切開は、骨盤から離れることができるため、尿管や膀胱、大腸から離れることができるため、他臓器損傷のリスクが低くなります。また、出血時のリカバリーがしやすいというメリットがあります。逆に、膣切開に近い位置での切開は、子宮から離れた組織を触る必要があり、特に尿管のリスクが高まります。

  • 子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

    子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

    子宮傍組織ってどんなイメージですか?

    何となく、走行がよくわからなくなったり、何の血管を処理しているのかわからなくなることってありませんか?

    他にも、いつもなら出血しなかったのに、なぜか今回だけるだけで出血することはありませんか?

    これらはすべて”あなたのイメージ”が悪いのかもしれません。

    出血と戦う産婦人科。そんな産婦人科にとって、子宮の血流を止めることはどの産婦人科にとっても必要な技術です。あとから怖い思いをしないようにぜひイメージをつかんでいきましょう。

    子宮傍組織は”シャンパンタワーとグラス”

    今回は、子宮傍組織を”シャンパンタワーとグラス”をメタファーにして考えてみましょう。

    え?っと思いますか?ちゃんと理由があります。

    皆さんは、最近記憶力落ちたなぁと思いませんか。私は絶賛実感中です。

    基本的に人間の記憶力は低下していきます。嫌ですよね。

    しかし、年を重ねるにつれ記憶力が低下していっても理解力が深まっていく人がいます。

    それは、

    これまでの知識やイメージに当てはめることが出来る人です。

    いろんな知識や考えをコネクティングしていく。そうすることで新たな視点や深みが出てくるわけです。

    なので、子宮傍組織をシャンパンタワーとグラス”で考えると、理解が深まり、今処理しているものを考えやすくなり全体感も把握することが可能になります。では本題に行きましょう。

    シャンパンタワーのメタファー

    シャンパンタワーのイメージはどのようなものですか?

    グラスが積み重なり、上から下に広がっていくイメージですよね。結婚式などでみられるものですね。

    これを子宮傍組織とつなげてみてください。

    どうすればいいですか?

    答えは、まず横にします。
    そして子宮から骨盤に向けて行っていってください。

    百聞は一見に如かず。今回イメージすべきシャンパンタワーはこちらになります。

    はい、わけわからんですよね。雑コラですね。

    これにわかるように名前を付けていくとこうなります。

    見えてきましたか?つまり

    子宮傍組織は子宮側の子宮動静脈から始まり、骨盤に向かってどんどん広がっていきます。

    シャンパンメタファーのとらえ方

    この画像を見て質問です。どこが危険ですか?

    そうですね。

    骨盤側(シャンパンタワーの下のほう)のほうが危険なものが多くないですか?

    尿管、子宮動脈本管など傷つけてはいけない臓器がたくさんあります。

    尿管にしろ、膀胱にしろ、動静脈にしろ骨盤側に行くにつれ危険なものが広がっていきます。

    つまり、子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっているというイメージが出来ますね。

    なるほど、子宮の近くで処理をしろ!と子宮全摘の初心者ほど言われるのはこういうわけがあるわけです。

    シャンパンタワーでいうと、なるべく上のほう、つまり子宮側を触ると安全ということが丸わかりですね。

    癒着の怖さとシャンパンタワー

    癒着って怖いですよね。癒着により血管や尿管や膀胱、腸などの位置が変わり思いがけない出血や他臓器損傷のリスクが高くなり、手が震え、動悸がしてきます。

    その怖い癒着をシャンパンタワーというふざけたメタファーでとらえてみましょう。

    癒着によりシャンパンタワーには何が起こりますか?

    たとえば、内膜症や腺筋症で後葉が引き連れている場合は、尿管が子宮によって来たりしますよね。
    帝王切開後の場合は膀胱が吊り上がっていたり血管が引き連れていることがあります。

    これを先ほどのシャンパンタワーで考えるとどうなりますか?

    実は、癒着によりグラスの位置が変わるんです。

    より具体的に言うと、グラス(尿管や血管)が上(子宮側)に変化します。

    上で示した傍組織の画像は,じつはCS3回のTLHの画像になります。膀胱剥離後です。

    そして、膀胱を処理する前の膀胱が吊り上がっている状態の画像はこちらになります。

    膀胱の位置がかなり吊り上がっています。そのため、膀胱及び尿管が子宮に寄ってきていますよね。

    つまり、シャンパンタワーで言うところの一つ子宮側に移動しているわけです。
    これはかなり危ないですよね。せっかく安全と思っていた、シャンパンタワーの頂点近くで切除したのに、そこには尿管がいて損傷した。こんな悲劇的なことが起きてしまうわけです。

    内膜症症例でも、仙骨子宮靭帯と思ったら尿管だったなんてこともよくある話ですね。

    癒着があると組織の場所がかかわる。これをシャンパンタワーで考えるとグラスの位置が変わる!という風にとらえることが出来ますね。

    グラスの位置を変えたい。

    グラスの位置変えたくないですか?グラスの位置を変えれたらすごいですよね。

    危ないグラス(臓器)はすべてシャンパンタワーの下のほう(骨盤側)に移動させれるわけです。

    ここでグラスを安全な位置に変えれるのが”剥離”となるわけです。

    ↑膀胱をずらした後の図。

    剥離をすることで組織(グラス)同士が離れ、シャンパンタワーのグラスの位置を変えることが出来ます。つまり子宮や切開ラインから離すことが可能になります。

    具体的には
    腹膜切除を行えば、前葉の場合は膀胱が離れ、後葉の場合は尿管が離れます。
    広間膜腔を広げる、つまり腹膜や血管周囲の組織を剥離すると尿管や大血管が離れます。

    このように、剥離を行うと、損傷してはいけない臓器や血管が離れる、シャンパンタワーでいうとグラスの下の段に行くわけです。

    どうでしょうか、子宮傍組織と”シャンパンタワーとグラス”というイメージはつかめましたでしょうか。

    わかりにくい場合は、扇のように広がっていくイメージを持ってもらえれば良いと思います。川が平地に向かうにつれて広がっていくイメージなどもよいと思います。

    ぜひ、ものが広がっていき、そして癒着があると傷つけてはいけないものの位置がより子宮に近づくというイメージを持ってみてください。

    皆様がより安全な手術が行えるますように。

    次回は、傍組織の切開方法を2パターンで説明していきます。お楽しみに。

    (X(Twitter)で更新のアナウンスをするのでぜひフォローしてみてください。)

    まとめ問題と解説


    問題1:

    「シャンパンタワー」というイメージを使って説明された「子宮傍組織」はどのような特性を持つとされていますか?

    1. 上部ほど危険な部分が多い
    2. 下部ほど危険な部分が多い
    3. 全体的に危険な部分が広がっている
    4. 危険な部分は特定できない

    答え: 2. 下部ほど危険な部分が多い

    解説: 「シャンパンタワー」のイメージを用いて、「子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっている」と説明されています。


    問題2:

    癒着が発生した場合、どのような変化が「シャンパンタワー」に影響を与えるとされていますか?

    1. 危険な部分が子宮側に移動する
    2. 危険な部分が更に広がる
    3. 危険な部分が縮小する
    4. 危険な部分が固定される

    答え: 1. 危険な部分が子宮側に移動する

    解説: 癒着が発生すると、通常は安全とされる子宮側の部分にも危険な部分(尿管や膀胱など)が移動してくるため、予期せぬ損傷のリスクが増えると説明されています。


    問題3:

    剥離を行うと、どのような効果が得られると説明されていますか?

    1. 危険な部分が子宮側に移動する
    2. 危険な部分を「シャンパンタワー」の下に向かわせることができる
    3. 危険な部分が縮小する
    4. 危険な部分が固定される

    答え: 2. 危険な部分をシャンパンタワーの下に向かわせることができる

    解説: 剥離を行うことで、損傷してはいけない臓器や血管を安全な位置、すなわちシャンパンタワーの下へ移動させることができると説明されています。これにより、危険な部分を避けながら処理を行うことが可能になります。

  • 鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

    鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

    前回のコラムで剥離について解説を行いました。

    そもそも剥離とはから始め、鈍的剝離と鋭的剥離の違い、どちらが良いかという話をしました。

    結論としては、

    リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

    このような結論となりました。今回は理由を実際の剥離を含めて深堀していきたいと思います。

    鋭的剥離より引きちぎる鈍的剥離が優れている点

    切っていく鋭的剝離は正確に行えれば確かに安全です。なぜなら過剰なテンションがかからない為避けて出血や他臓器損傷がおこらないからです。

    しかし、前回説明した通り、切るという手順が増えるため時間がかかりますし、切開部位を間違えれば出血や他臓器損傷を引き起こしてしまいます。

    そのため、よほど困難症例ばかりの施設でない限り、集中力の限界と時間の制約がある現実世界では引きちぎる鈍的剝離を行うほうがトータルよい場面が多いと考えます。

    例えば、超緊急帝王切開で用いられる Joel-Cohen 法が最たるもので、赤ちゃんを素早く出すという最大のメリットを得るため、組織を引きちぎることで展開と剥離を同時に進め、血管や他臓器損傷のリスクを冒しながら、素早く手術をすすめるわけです。

    そのため、”鋭的剥離こそ最強、鈍的剝離は下手のすることだ”という考えには否定的で場合によりますし、むしろ、力加減や出血しそうな場所を把握できた人の上手な鈍的剥離こそ技術が必要であると考えています。

    ここでより深堀するため、現在、鋭的剥離が勧められるようになっている理由と流れを考えていきましょう。

    鋭的剥離が重宝されるようになったストーリー

    切る鋭的剝離が隆盛を極めている理由としては、出血リスクの低下によるドライな術野と合併症の低さが挙げられます。

    ここに至るまでのストーリーとしてこのように考えています。

    ①もともと、電気メスもなかった時代は、引きちぎる鈍的剝離がメインであった。なぜなら止血は圧迫しかなくどれだけ早く手術を終わらせることこそが出血量を減らす手段であった。つまり手術の剥離の源流は引きちぎる鈍的剝離であった。

    ②徐々に科学が発展し、電気メスやエネルギーデバイスが現れ、鏡視下手術も始まった。

    ③開腹に比べ、視野確保が難しい鏡視下手術では細かい出血が大敵となった。

    ④細かい出血の原因を見てみると、組織間の細かい静脈が原因であった。(カメラにより、正確にわかるようになった)

    ⑤そのため、細かい出血を減らし視野を確保するには、凝固や切開を細かくできる鋭的剥離が推奨されるようになった。そして鈍的剝離は悪となった。

    このようなストーリーがあったと考えられます。

    ではこのストーリー通り古い引きちぎる鈍的剝離は完全悪なのでしょうか?

    そんなことはもちろんなく、安全に引きちぎることが出来るならば鈍的剥離は悪にはなりません

    引きちぎる鈍的剝離が悪になるときを考えその対策をしていきましょう。

    鈍的剝離が悪となる場面は3つ考えられます。

    ①出血を引き起こすとき

    ②層がわからなくなるとき

    ③他臓器損傷を引き起こすとき

    この”3悪”さえクリアできればより早く、時間や集中力といったリソースを削減できる引きちぎる鈍的剝離のほうが優れていると言えますよね。

    次の段落ではどのようにすれば”安全に”引きちぎることが出来る考えていきましょう。

    安全に引きちぎる鈍的剝離のやり方

    一つ一つ見ていきましょう。

    ①の出血がおこる理由は何でしょうか。

    それは接着剤となる組織が剥がれる以上に張力をかけることで細い血管が破綻するためです。

    これを避けるためには、組織は剥がれるが、細い血管が破綻しないぐらいのテンションのベクトルをかけることが出来ればこの問題は解決できます。

    細い血管があるところを避けながら、組織間の剥離面が剥がれる必要十分なテンションをかけるわけです。

    ②と③の層がわからなくなる、他臓器損傷がおこる理由は共通しています。

    力の入れる方向や場所を間違えると層の破綻や他臓器損傷が起こります。

    これに関しては、力の入れる場所と方向でカバーすることが出来ます。

    先ほどの、ガムテープをはがすスキーマで考えていきましょう。

    ②の層を追っていく場面において、段ボール側に沿って行きたいときどうしますか?

    段ボール側に接着剤が残らないように、指で段ボール側をこする様に剥離していきますよね。

    たとえば広間膜後葉に沿って広間膜腔を広げていくなら、広間膜後葉に近いところでやや後葉をこする様に力を入れていくようにするほうがよいと思います。

    つまり追いたい層に近いところでこする様にテンションのベクトルをかけることが出来ればよいわけです。

    では③の他臓器損傷に関してどうでしょうか?

    答えは②とは逆の考え方になります。

    損傷したくない臓器に力がかからないベクトル方向を向けて力を入れることが必要になります。

    子宮と腸の癒着を考えると、腸管損傷を起こさないように、子宮に力がより加わるように力のベクトル方向を子宮に向けて力入れていきます。

    尿管を腹膜からはがして岡林腔に入るときは、尿管損傷を起こさないように、腹膜側に力がより加わるように力のベクトル方向を腹膜に向けて力を入れていきます。

    つまり、剥離したい層に沿って、細い血管を認識して、その血管を破綻させないような力と方向にテンションをかけることが出来れば、安全に鈍的剥離を行うことが可能になります。

    むしろ切る鋭的剥離ではないほうがよい場面

    切る鋭的剥離のほうが、リスクが高くなる状況があります。

    それは、癒着症例です。

    え?リスクの高い時は鋭的剥離のほうがよいと言ってたよね?

    もちろんそうですが、ある条件の時は鈍的剥離のほうがよいです。

    それは、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

    この時はむやみに切らないほうが安全に進めることが出来ます。

    なぜなら、鋭的剥離の場合は切開を行うので、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があります。子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来ます。

    また同様のに切り込む可能性があるため、腹腔鏡やり始めは切開する鋭的剥離は勧められません

    特にやり始めの時は、見誤ったり手がぶれたりするため、保たないといけない層に切り込んだりしたりして危険ですね。

    その為、初心者は鈍的剥離、慣れてきたら鋭的剥離と言われるわけです。

    ただし、癒着症例では鋭的剥離を行わないといけない場面が出てくるためどこかで鋭的剥離を習得する必要があります。

    著者が行っている実際の剥離

    長々と剥離について話をすすめていきましたが、最後に私がメインに行っている剥離について説明していきます。

    細かく言うと、鈍的~鋭的を様々な場面で細かく使い分けてはいます。

    それは、食事と同じで、魚を食べるとき、平べったいお肉を食べるとき、トマトをつまむとき、ひじきを食べるとき、豆腐を食べるときでお箸の使い方が異なるように多くの経験の上に徐々に身に着けたものですよね。

    結局は経験かい!となりそうですが、ここで鈍的と鋭的のおいしいところを取り入れた剥離法を、メインで使っているので紹介します。

    鈍的剥離と鋭的剥離の合わせ技

    鈍的剥離の一番のデメリットは何ですか?

    それは、細かい血管を出血させることでしたよね。

    この弱点を鋭的剥離で処理できれば素早く展開を行うことが出来ます。

    広間膜腔展開で考えてみましょう。

    次の場面はCS3後のTLHの症例で、左の円靭帯を切断した後の場面です。膀胱が吊り上がっていたため外側で広間膜腔展開しようとしている場面です。

    ここを広げるときに大切なのは、細い血管を見つけることです。この場面で言うと出血しそうな血管が赤丸にあります。ここをガサガサ鈍的に引きちぎると出血します。

    そのため、この血管を避けるように周囲を広げます。この時に鈍的に広げて剥離をすすめます。

    そして次に、鋭的剥離に移っていきます。

    まずは凝固

    そのあとに切開

    そのあとまた鈍的に腔を出血しないように広げる。もちろんハーモニックの下の細い血管も認識しながら出血しない程度に圧排しています。

    これを繰り返して剥離を繰り返していきます。最終ドライな視野で子宮動脈を同定できました。

    このように、細かい血管を把握し、これを避けて鈍的剥離を行うことで、鈍的剥離を行っても出血をすることなく素早く安全に剥離を行うことが出来ます。

    以上となります。

    結局は伝えたいことは、鈍的剝離、鋭的剥離のどちらが優れているわけでもなく、使いどころによってメリットデメリットがあり、鋭的剝離こそが最強ってわけでもないことでした。

    次回は、傍組織の処理に移っていきます。更新は週一程度で不定期なので、良ければX(Twitter)のフォローをお願い致します。

    まとめ問題と解説

    選択肢問題:
    以下の選択肢の中から、引きちぎる鈍的剥離が安全に行える場面を選んでください。


    A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時
    B) 細い血管の破綻がリスクとなる状況
    C) 初めての腹腔鏡手術を行う場面
    D) 層がわからなくなり他臓器損傷のリスクが高い場面

    正解: A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

    解説:
    文章から、鋭的剥離では、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があるため、子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来るとされている。そのため、癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時は鈍的剥離がより安全と考えられます。

  • 結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?

    結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?

    今回はコラム的に普段、質問を受けるものに答えていきたいと思います。

    質問はこちら

    ”鋭的剥離と鈍的剥離はどっちがいいの?”

    剥離って大切ですよね。どんな手術でも必要な剥離技術。剥離こそが手術という意見もあるぐらい大切なスキルですよね。

    手術ばかりをやっている婦人科医だけでなく、帝王切開ばかり行っている産科医にとって大切な内容になります。もちろんその両方を行っている産婦人科医にも、つまり全産婦人科医にとって必見の内容になっています。

    一昔前は、手クーパ、チギレクトミー(手で組織引きちぎる様)という用語が出来るほど鈍的剥離がメインの産婦人科手術でした。

    最近は鋭的剥離が隆盛を極めていますが、本当に鋭的剥離がいいのか考察していきたいと思います。

    そもそも剥離とは?

    そもそも剥離とは、物と物の間をはがしていくことを言います。

    いうならば、段ボールに張られたガムテープをはがすようなものです。

    剥離を細かく順序で述べるとこうなります。

    ①物と物の間の接着剤となるものを伸ばす

    ②その伸びた接着剤となるものを処理する。

    段ボールで考えると、少し引っ張るとまさに接着剤が線状に見えますよね。これを処理すると剥離が完成するわけです。

    術中うまく剥離が出来ると、組織同士が離れるため他臓器損傷や出血を抑えることが出来ます

    逆に、下手に剥離を行うとかなり危険な状態になります。

    ガムテープをテキトーにはがすとびりびりにガムテープが裂けたり、逆に段ボールが一部ガムテープに付いてきますよね。

    例えば腸管が子宮に癒着している間をはがすときを考えると、下手に剥離を行うと腸が損傷したり、子宮が裂けて出血したりするわけです。

    手術は合併症なく終わらせることが何よりも大切です。そのため”剥離こそが手術だ”という言葉の重みが増すと思います。

    鈍的剥離と鋭的剥離ってなに?

    剥離の手順と重要度がわかったところで”鋭的剥離”と”鈍的剥離”について考えていきましょう。

    わかりやすく、先ほどの段ボール、ガムテープスキームを用いましょう。

    鈍的剥離とは、指でガムテープを引っ張るなどをして、間の粘着剤を”引きちぎる動作”になります。

    鈍的剝離の手順としては

    ①テンションをかけて接着剤となる部分を線状に出す

    そのままテープに力を加えて接着剤を引きちぎる

    となります。

    一方、鋭的剥離とは、ガムテープにテンションをかけて、先のとがったもの(レターオープナー)などを用いて間の粘着剤を”切る動作”になります。

    鋭的剥離の手順としては

    ①テンションをかけて接着剤となる部分を線状に出す

    テンションを追加せず、接着剤の部分を器具で処理する

    となります。

    ①のテンションをかけて展開するは同じですが、②の間の組織の処理が異なるわけですね。

    ガムテープスキーマの用語をを手術の用語に反映していくと、

    段ボールとガムテープ = 組織や筋膜や膜などテンションをかける対象となる部分

    粘着剤 =あわあわの層やFascia、フィブリンやコラーゲンなどのテンションのかかる部分

    鈍的剝離の指 = 指や鉗子や吸引管など力を加える装置

    鋭的剝離のレターオープナー = 電気メスやハサミやエネルギーデバイスなどの切開装置

    になります。

    先ほどの段ボールスキームを言い換えると

    鈍的剥離は”もの”と”もの”の間にテンションをかけ展開し、Fasciaなどの間の組織を張力を強めることで引きちぎり処理すること。

    鋭的剥離は”もの”と”もの”の間にテンションをかけ展開し、Fasciaなどの組織を切開し処理すること。

    こう言い換えることができます。

    結局間の接着剤の部分を、そのまま組織に力を入れて引きちぎるのか、器具で処理するかの違いになります。

    ”引きちぎる鈍的剝離””切開する鋭的剥離”ということが出来ますね

    結局、鈍的剥離と鋭的剥離どっちがいいの?

    長々と剥離について説明しましたが、本題に移りましょう。

    結局、鈍的剝離と鋭的剝離どっちがいいの?

    結論・・・

    リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

    と考えています。

    リスクの高い場面とは、出血や他臓器損傷があり得るような、腹部腫瘍既往、内膜症、CS後などの症例における癒着部位を指します。

    え?あらゆる場面で安全な鋭的剝離こそ最強じゃないの?

    と思いますよね。

    そんなことはありません。この世の中にはある制限があります。

    それは、時間と集中力です。

    つまり、鈍的剥離が勧められる理由としては、手順を省略できることが大きな理由になります。

    なぜ省略できるのか。

    引きちぎる鈍的剥離の場合、テンションをかける(展開)と間を処理する(引きちぎる)をテンションを強めるという同一動作で行うことが可能だからです。

    まだ、納得できてませんよね。大丈夫です。さらに深堀していきます。

    次回は産婦人科手術のこれまでの流れを含めた詳しい理由と、どうすればうまく鈍的剥離を行えるのか、つまり”安全に引きちぎる鈍的剝離方法”に関して解説していきます。お楽しみに!

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    まとめ問題と解答


    問題: 以下の選択肢の中から、文章の内容に最も適したものを選びなさい。

    A. 鋭的剥離は時間がかかるが、リスクが低いので、どのような場面でも推奨される。

    B. 鈍的剥離は、リスクが高い場面でも、時間と集中力の節約のため推奨される。

    C. 鋭的剥離は、リスクが高い場面で細かく処理ができるため推奨されるが、リスクが低い場面では鈍的剥離が推奨される。

    D. 鈍的剥離と鋭的剥離は、どのような場面でも同じ効果が得られるので、どちらを選んでも良い。

    答え: C. 鋭的剥離は、リスクが高い場面で細かく処理ができるため推奨されるが、リスクが低い場面では鈍的剥離が推奨される。

    解説:剥離は、物と物の間をはがすことで、術中うまく行うことで他臓器損傷や出血を抑えることができます。特に「鈍的剥離」と「鋭的剥離」という二つの剥離の方法に焦点を当てています。鈍的剥離は、物と物の間にテンションをかけ、間の組織を引きちぎることで処理する方法で、鋭的剥離は、物と物の間にテンションをかけ、間の組織を切開することで処理する方法です。リスクが高い場面では細かく処理できる鋭的剥離がよいが、時間や集中力の節約、リスクが低い場面では鈍的剥離が良いと考えています。 結論として、「リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。」ため、選択肢の中では、Cが最も適している。