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  • 幻のザクロ、仙骨子宮靭帯の”本当の姿”とその処理

    幻のザクロ、仙骨子宮靭帯の”本当の姿”とその処理

    「ザクロが最後まで残ったなぁ」

    婦人科でザクロと言えば、フルーツではなく仙骨子宮靭帯。

    術中ザクロはどれだけ処理しても残りやすい靱帯ですよね。

    このザクロの本当の姿を知っていますか?

    ザクロの本当の姿を知ることで処理が楽になります。

    今回は”幻のザクロ”の正体と、その処理について説明していきます。

    仙骨子宮靭帯の臨床的解剖と幻のザクロ”

    仙骨子宮靭帯の略語、”ザクロ”は、ラテン語で仙骨を表す ‘sacrale’ から来ています。

    産婦人科医であれば、この略語ザクロに多少なじみがあると思います。

    しかし、”ザクロ”の具体的な解剖は、実はそれほど一般的には認識されていません。

    意外なことに、仙骨子宮靭帯の存在については否定する意見も存在します。

    例えば、消化器外科の専門医とダグラス窩の処理について話すとき、仙骨子宮靭帯の取り扱いについて話題が合わないことがあります。

    「仙骨子宮靭帯の処理はどうしていますか?」

    「何もしていませんよ。そもそも仙骨子宮靭帯ってあります?」

    ・・・

    驚きですよね?

    実は、消化器外科領域から見ると、臨床的には仙骨子宮靭帯は存在しない。つまり”幻”なのです。

    その理由は、このザクロ(仙骨子宮靭帯)の本質が「ほぼ腹膜の集合」であるからです。

    具体的には、仙骨子宮靭帯は腹膜が肥厚した繊維組織が子宮頸管に付着している部分を指します。

    このため、直腸領域に至ると、仙骨子宮靭帯は広がっていきただの腹膜になり、存在しない、すなわち「幻」となるのです。

    言い換えれば、仙骨子宮靭帯の本当の姿は「腹膜のたわみ」と言っても良いでしょう。

    臨床的な仙骨神経子宮靱帯は裏打ちする幅広い硬いコラーゲン組織が収束したところといえます。

    参考文献:Quantitative Analysis of Uterosacral Ligament Origin and Insertion Points by Magnetic Resonance Imaging

    仙骨子宮靭帯の具体的な処理について

    仙骨子宮靭帯=腹膜の集合体ということがわかれば、処理は簡単です。

    基本的には腹膜を切っているぐらいの気持ちで切っても出血はしません

    ザクロの位置ですが、子宮を前屈させ、左右にやや傾けることでかなりわかりやすくなります。(詳しくは前回参照

    電気メスの凝固で切っても問題ないですが、奥(外側に行くと子宮静脈上行枝があるため注意してください。

    血管から逃がすため、切開しやすくするため、マニュピレーターは前屈にして押し込みながら切開していきます。

    私自身の手順としては、目印のため、切開時の出血を抑えるためバイポーラで凝固したのち切開をしています。

    画像の部位は人によっては高めと思われるかもしれませんが、これは膣縫合の時に縫いやすいようにあえて高めで切開しています。

    内膜症の場合は、直腸が吊り上がっていることもあるため注意して切開しましょう。直腸損傷のリスクが高い症例では、やや子宮体部より切開を入れて腹膜ごと仙骨子宮靭帯をずりおろせると安全に切開を行うことが出来ます。

    まとめ問題と解説

    問題1:仙骨子宮靭帯は何の集合体でしょうか?


    A. 筋組織
    B. 神経組織
    C. 腹膜
    D. 骨組織

    答え:C. 腹膜

    解説:仙骨子宮靭帯は腹膜が肥厚して子宮頸管に付着している部分と説明されています。したがって、これは腹膜の集合体として認識されています。

    問題2:仙骨子宮靭帯の取り扱い時、出血を防ぐために著者が採用している手順は何ですか?


    A. レーザーを用いて切開する
    B. バイポーラで凝固させた後、切開する
    C. 切開せずに靭帯をそのままにする
    D. 切開前に麻酔を使用する

    答え:B. バイポーラで凝固させた後、切開する

    解説:著者は、仙骨子宮靭帯の切開時に出血を抑えるため、まずバイポーラで凝固させ、その後で切開を行っています。

  • 広間膜後葉処理の”詳しすぎる”手順とコツ

    広間膜後葉処理の”詳しすぎる”手順とコツ

    腟管の切開のときになかなか切りきれなくて困ったことはありませんか

    実はそれ、広間膜後葉の処理が原因かもしれないんです。

    腟管がなかなかうまいこと切れないと悩んでいる方だけではなく、子宮動静脈上行枝の処理がうまいこと処理が出来ないなど、子宮全摘を行うすべての人に当てはまる内容ですのでお見逃しなく。

    円靭帯、広間膜前葉、子宮動脈、附属器の処理が終わりました。

    これから、子宮の背側の処理に移っていきます。

    広間膜後葉処理の手順とコツ

    広間膜後葉の処理は大きく分けて、切開ラインの決定と切開の二つになります。

    切開ラインの決定

    切開ラインは、仙骨子宮靭帯を基準に決めます。

    切開

    電気メスや、エネルギーデバイスを用いて、頸管と腹膜の間の組織を剥離しながら切開ラインに沿って切開していきます。

    切開ラインの詳しい解説

    では詳しい解説に移っていきます。

    実は、切開ラインの共通したルールが存在します。

    それは、”切開ラインによって上昇するリスクのが変わってくる”ということです。

    対象臓器に近いと出血のリスクになり、遠すぎると組織が臓器に残りその後の処理がうまくいかなかったり、他臓器損傷のリスクとなります。

    具体的には、広間膜後葉の切開ラインにおいては、以下のリスクが上昇します。

    • 奥に行き過ぎると基靭帯損傷
    • 切り込まなさすぎると傍子宮組織の処理が出来ない
    • 子宮から離れると尿管損傷
    • 子宮に近すぎると血管損傷

    つまり、よい切開ラインはこういえますね、離れすぎず近すぎず、

    ”ちょうどいいところ”

    安心してくださいちゃんと説明します。

    ではどうする?

    前葉の切開の時はどこが切開ラインの基準となったか覚えていますか?

    そう、膀胱の位置が基準となりましたよね。(詳しくはこちら

    同様に後葉の切開の時でも基準となる部位があります。それは、仙骨子宮靭帯となります。

    前葉では膀胱、後葉では仙骨子宮靭帯というわけですね。

    子宮をレトロ(寝かせた)状態の見え方

    ちなみに、なぜ仙骨子宮靭帯が切開ラインの目印となるのでしょう?

    それは

    円蓋部(ポルチオ)と腟のラインもわかりやすい

    という部分が最も重要な理由となります。出血がしにくく触りやすいのもいいですね。

    仙骨子宮靭帯の超具体的な同定方法

    でも仙骨子宮靭帯を同定できなければ基準点にできませんよね?

    安心してください、仙骨子宮靭帯の具体的な同定方法を説明していきます。

    まず、子宮を前屈にします。

    なぜなら、仙骨子宮靭帯は子宮を前屈させることで認識がしやすくなります。そして左右にねじるようにしてみてください。そうすると認識を容易に行うことが出来ます。

    ただ、腟パイプやマニュピレーターの種類により見え方が若干変わります。各病院で使われている機器の種類の特徴によって変わってくるわけです。

    腟パイプや円蓋部を同定するカップのあるマニュピレーターでは円蓋部を基準に同定します。

    ややパイプやカップが大きいほうが仙骨子宮靭帯が屈曲し同定しやすくなります。

    アトムのマニュピレーターのように円蓋部を同定できないものでは少しひねることで屈曲部の角で仙骨子宮靭帯を容易に同定することが出来ます。

    共通することは仙骨子宮靭帯を屈曲させるようにするというところです。

    やや不潔ですが、位置がわかりにくい時は、自分でマニュピレーターや腟パイプを動かすことで位置を同定してください。

    仙骨子宮靭帯を同定できた場合は、凝固や切開で基準点に印をつけ、そこに向かって切開ラインを決めます。

    切開ラインが決まりました。あとは切開方法がわかれば、後葉の処理は終了します

    広間膜後葉切開方法の詳しい解説

    広間膜後葉を実際に切るまでに、二つの処理があります。一つが、上行枝周辺組織の処理、もう一つが尿管下腹神経筋膜の切開になります。

    子宮動静脈上行枝周囲の組織を”だいこん掘り”のように処理する。

    イメージとしては、子宮頸管、特に子宮動静脈の上行枝の組織を剥離していくイメージを持っていください。

    子宮頸管が円柱として、それをつるつるにしていくようなイメージです。

    子宮全摘のことを”大根掘り”と例えることがありますが、この上行枝の組織の剥離は大根掘りでのは大根の周りについた泥をそぎ落としていくようなイメージです。

    つまり、大根(子宮)が地面(骨盤底)に刺さっており、それを周りの土(周りの組織)を落としながら引っこ抜いてくるイメージになります。

    今回で言いうと、子宮動静脈の腹側は前葉切開で切れているため、子宮動静脈上行枝の背側側の組織を処理できれば良いわけです。

    そのためには、広間膜後葉のテンションどうすればよいでしょう?

    正解は外側やや背側です。

    鉗子で広間膜後葉を外側やや背側に引っ張ることで上行枝と後葉間の組織を視認でできます。つまり頸管と腹膜の間の組織が見えるため処理がしやすくなります。

    ここを処理できれば後葉(腹膜)のみになり、この後の処理もきれいにすることが出来ます。

    膜を意識した後葉の処理

    上記の処理を終わった後の処理に移っていきましょう。

    広間膜後葉には、腹膜の他、尿管につながる層がついています

    いわゆる、尿管下腹神経筋膜と言われるものです。

    腹膜と尿管下腹神経筋膜の間を剥離して子宮側で、尿管下腹神経筋膜を落とせると尿管を外側に逃がすことが出来るためより安全に頸管の処理をすることが出来ます。

    具体的には、先ほどの展開と同じ状態で、後葉をピンっと張ります。

    ここにあわあわの組織が見えます。

    そして、腹膜かつかつで層と層の間に入るように鉗子操作を行うと、二つに分けることが出来ます。

    そして、上の層のみカットします。

    これらの作業によって、尿管を外側に逃がすことができます。そのため、より頸管の処理のときにより安全に行うことが出来ます。

    子宮傍組織の処理の時にはこのように見えます。

    これを仙骨子宮靭帯の深さまで行い後葉の処理は終了となります。なかなか、ここまで意識して処理することは少ないのではないでしょうか。

    できそうにないしょうか?

    いや大丈夫。

    意識をすることで見えるようになってきます。

    そして、逆に意識しないと全く見えてきません。

    いままで意識できていなかったところを意識できれば、より安全な手術が行え、高難度の症例でも合併症なく完投することが出来ることでしょう。

    リスクの少ない症例ほど丁寧に。高難度の症例ほどいつも通りに。

    こう意識していきましょう。

    練習問題と解説

    問題1:腟管切開の際に、切開ラインの基準となる部位は何でしょうか?

    A. 広間膜前葉
    B. 子宮動脈
    C. 附属器
    D. 仙骨子宮靭帯

    答え: D. 仙骨子宮靭帯

    解説: 腟管切開の際に、切開ラインを決定するための基準は仙骨子宮靭帯であり、適切な切開位置が決定され、子宮全摘の安全な実施が可能となります。

    問題2:広間膜後葉切開の適切なテンションはどの方向でしょうか?

    A. 内側やや背側
    B. 外側やや背側
    C. 外側やや腹側
    D. 内側やや腹側

    答え: B. 外側やや背側

    解説: 子宮動静脈上行枝の背側側の組織を処理するためには、広間膜後葉のテンションは外側やや背側となります。これにより、上行枝と後葉間の組織を視認し、処理が容易になります。

    問題3:仙骨子宮靭帯の同定を容易にする方法として最も適切なのはどれでしょうか?

    A. 子宮を前屈させる
    B. 子宮を後屈させる
    C. 子宮を左側に傾ける
    D. 子宮を右側に傾ける

    答え: A. 子宮を前屈させる

    解説: テキストによると、仙骨子宮靭帯を同定するためには、子宮を前屈させることで認識がしやすくなります。前屈したうえで左右に振るとより認識しやすくなります。

    次回は仙骨子宮靭帯の処理について説明します。お楽しみに。

  • 附属器② 卵巣温存時の附属器の処理の手順と展開の唯一のコツ

    附属器② 卵巣温存時の附属器の処理の手順と展開の唯一のコツ

    卵巣温存は患者さんにとってかなり大きな選択になります。

    自分の臓器がなくなるかどうか、ホルモンのバランスが変わるかどうかのかなり大きな選択なってくるでしょう。

    もちろん残すことで腫瘍が発生するリスクはあります。そのリスクを負ってでも卵巣を残したいという患者さんの思いを丁寧に形にしていく必要があります。

    附属器の処理は”簡単”と思われがちですが、間違えて、骨盤漏斗靭帯を傷つけてしまえば、卵巣機能は低下してしまうでしょう。特に癒着症例ではそのリスクが高まります。

    そのため、ただまとめて卵管を切る、卵管を切離するではなく、間膜の膜を切開し、血管構造をあらわにしてから処理するのが望ましいと考えます。

    どうすればきれいに処理することが出来るのでしょう。

    では早速結論から。

    卵巣を保持しながら附属器(円靭帯、卵管、卵巣)の間膜を処理する際の基本的なコツは、

    「切りたい部分とその腹側の組織を同時に持つ」

    これについて詳しく説明していきます。

    ちなみに前回は附属器の解剖のメタファーを提示しました。基本的には3ページの冊子として考えるとよいという話でした。このイメージがあると理解が進みます。こちら

    卵巣温存時の附属器の処理、共通するコツ

    附属器(円靭帯、卵管、卵巣)の処理にあたって共通するコツがあります。それは、

    “間膜を切開する時は、対象部位とその腹側の組織を持つ”

    になります

    具体的には、

    卵管間膜を処理するときは、卵管を把持したのち、一つ奥の円靭帯を持ちあげ、展開します。

    卵巣と子宮の間の卵巣固有策を処理するときは、卵巣を把持し、卵管の断端を持ち展開します。

    わかりにくいですよね。ここで冊子のメタファーが生きてきます。

    一般的に、

    冊子のあるページにハサミを入れるときに、上のページが閉じていると重なって切りにくいですよね。

    それと同じく

    卵管(2ページ目)を切りたいのに円靭帯(1ページ目)の組織が下りてきていると切りにくいのです。

    言われてみれば当然ですが、手術になると見えなくなるのは不思議ですよね。わかればかなり理解しやすいと思います。では手順についてみていきましょう。

    ちなみに、卵管間膜(2ページ目)を処理するときに卵巣(3ページ目)は持たなくていいのかと疑問に思われるかもしれませんが、基本的には重力で展開されているので持たなくていいです。ただし、卵管が卵巣に癒着している症例では先に、この間の癒着を剥離しておく必要があります。

    Step1.円靭帯の処理(1ページ目)

    前方アプローチの場合は初めに円靭帯の処理を行っていますので割愛(詳しくはこちら参照)

    Step2.卵管と卵管間膜の処理(2ページ目)

    まず、卵管にテンションをかけて切断します。切開位置は円靭帯の切開の長さと同じ位置がその後の処理がしやすくてよいです。

    次に卵管間膜の切開になります。

    卵管(2ページ目)を把持して外側に展開し、そして円靭帯(1ページ目)を持ち上げ腹側に展開します。

    この時に円靭帯を持ち上げていないと以下のようにわかりにくい展開になります。

    円靭帯を持ち上げることの大切さがわかりますね。

    次に卵管間膜の後葉側の切開の展開になります。卵巣(3ページ目)は重力で下に落ちるので癒着していない限り展開は必要ありません。

    最後に、もう一度展開を戻して、卵管間膜に入っている血管を凝固切開すれば卵管の処理は終了です。

    これくらい丁寧に処理が出来ると困難症例でも出血のリスクを軽減することが出来ます。

    Step3.卵巣の処理(3ページ目)

    基本的にはStep2の繰り返しになります。卵巣(3ページ目)を把持して外側に展開して、そして卵管(2ページ目)を持ち上げて腹側に展開します。

    そして、凝固して切開。

    その後の組織の処理も、同様に卵巣(3ページ目)を外側にテンションかけ、卵管(2ページ目)を腹側に持ち上げることで周りの処理が丁寧に行え、安全に血管の処理が出来ます。

    ちなみに卵巣の背側の広間膜後葉を先に切開しておくと血管をつかみやすいです。ここは発生学的に血管が奥目に存在しているので、先に切開しても出血しませんので怖いかもしれませんが安心して切開してください。

    Step4.骨盤漏斗靭帯~子宮動静脈の吻合部の処理

    最後に、残った骨盤漏斗靭帯~子宮動静脈の吻合部を凝固切開して終了となります。この時もなるべく切りやすいように邪魔な組織をどかすような展開を行います。具体的には、1ページ目の円靭帯を腹側に、2.3ページ目の卵管と卵巣を外側にテンションをかけます。

    かなり太い血管になるため、血管に対して直角に凝固止血できるように附属器を展開してください。

    ここで奥の状態を確認することも大切です。

    上行枝を傷つけないぎりぎりで、しっかりと切りきるために必要な操作になります。

    これで卵巣温存の手順は終了です。結構ボリューミーでしたが、これぐらい丁寧に処理することで安全な手術を行うことが可能になります。少しめんどくさいですが、技術向上のため、患者さんの機能温存のためにコツコツやっていきましょう。

    まとめ問題と解説

    問題: 附属器の処理手順に関する以下の選択肢から、正しいものを選んでください

    A. 卵管を処理する場合、卵管を把持し、円靭帯を持ちながら処理する。
    B. 卵管を処理する場合、卵巣を把持し、展開してから処理する。
    C. 卵巣を処理する場合、卵管を把持し、展開してから処理する。
    D. 卵巣を処理する場合、卵巣を把持し、展開してから処理する。

    解説:

    正解は、A. 卵管を処理する場合、卵管を把持し、円靭帯を持ちながら処理する です。
    附属器の処理において、共通するコツは「切りたいものとその腹側の組織を持つ」ということです。具体的には、卵管を処理する際には卵管を把持し、一つ奥の円靭帯を持ちながら処理します。一方、卵巣を処理する際には卵巣を把持し、展開してから処理します。

    次回は広間膜後葉の処理になります。お楽しみに。

  • 附属器① 附属器は”クローバ”であり”冊子”である

    附属器① 附属器は”クローバ”であり”冊子”である

    今回から、卵巣を温存するときの附属器の処理について説明していきます。

    何となく、構造がややこしく、出血を案外しやすいですよね。

    ここで出血をすると、骨盤傍組織の処理の時に血液が垂れ込む原因になります。

    失敗する原因は実はイメージにあるかもしれません。

    まずは解剖からわかりやすくメタファーを用いて理解していきましょう。

    構造は”クローバー”であり”冊子”である

    よく書籍では附属器はクローバーであるとたとえて説明されます

    断面を見るとトランプのクローバに見えるからです♧

    それぞれ、葉っぱが腹側から、円靭帯、卵管、卵巣固有策となり、ど真ん中に骨盤漏斗靭帯~子宮動静脈の吻合部があります。

    しかし、個人的にはこのクローバのメタファーは最近の流れを考えると芯を食っていないと感じています。

    クローバの例の場合は血管をメインとして考えているため展開を行うときに芯を食ったメタファーとは若干遠いと考えています。葉っぱの部分が丸く血管をイメージしているというわけです。

    ではどのようなメタファーがいいのか?

    個人的には”3ページの冊子”のイメージを持ったほうが近年の手術に対してはわかりやすいと思っています。

    なぜなら、最近の手術手技の傾向として、層や間膜という概念が外科から取り入れられることが増えてきたため、より層を意識できる”冊子”のメタファーほうがよいと考えています。

    ちょっとわかりにくいため詳しく画像を使って説明していきます。

    背表紙が骨盤漏斗靭帯~子宮動静脈の吻合部になり、1ページ目が円靭帯とその腹膜、2ページ目が卵管と卵管間膜、3ページ目が固有策と卵巣になります。

    1ページの様な層構造ととらえることでより立体的なイメージがつくのではないでしょうか。

    1ページ目の円靭帯とその腹膜

    2ページ目の卵管と卵管間膜 と 3ページ目の固有策と卵巣

    3ページすべてを処理した後の、背表紙の骨盤漏斗靭帯~子宮動静脈の吻合部

    次回は、具体的な処理の手順について説明していきます。お楽しみに。

    まとめ問題と解説

    問題 この文章で述べられた附属器の処理のメタファーに関して以下の選択肢から正しいものを選びなさい。

    A. 附属器の構造はクローバーとよく例えられ、それぞれの葉っぱは腹側から円靭帯、卵管、卵巣固有策を表している。
    B. “3ページの冊子”のメタファーでは、1ページ目が円靭帯とその腹膜、2ページ目が卵管と卵管間膜、3ページ目が固有策と卵巣、背表紙が子宮動静脈の吻合部になる。
    C. クローバーのメタファーは近年の手術の傾向を考慮しており、血管をメインに考えている。
    D. 3ページの冊子のメタファーは適切ではない。なぜなら、層や間膜という概念が外科から取り入れられることは少ないからだ。

    解答: B. “3ページの冊子”のメタファーでは、1ページ目が円靭帯とその腹膜、2ページ目が卵管と卵管間膜、3ページ目が固有策と卵巣、背表紙が子宮動静脈の吻合部になる。

    解説:
    Aは半分正しいです。附属器の構造がクローバーにたとえられている点は正確ですが、それぞれの葉っぱが腹側から円靭帯、卵管、卵巣固有策を表しているという部分は誤りです。実際には、これらの葉っぱはそれぞれが層の概念を持ち、それぞれが特定の部分を表すわけではありません。

    Bは文章の情報を正確に反映しています。文章では、附属器の構造を理解するための新しいメタファーとして”3ページの冊子”を提案しています。その比喩では、1ページ目が円靭帯とその腹膜、2ページ目が卵管と卵管間膜、3ページ目が固有策と卵巣を表し、背表紙が骨盤漏斗靭帯~子宮動静脈の吻合部となります。

    Cは誤りです。クローバーのメタファーは実際には近年の手術手技の傾向を反映しておらず、文章中でも述べられている通り、血管をメインに考えるという特性があるため、現代の手術手技の傾向とは合致しないとされています。

    Dは誤りです。文章中では、層や間膜という概念が近年の手術手技で取り入れられていると述べており、その傾向を反映するために”3ページの冊子”というメタファーが提案されています。このメタファーは附属器の構造を立体的に理解するのに役立つとされています。

  • 骨盤漏斗靭帯の処理② 手技のコツ4選✙白色凝固って?

    骨盤漏斗靭帯の処理② 手技のコツ4選✙白色凝固って?

    骨盤漏斗靭帯の処理は手術の基本テクニックが詰まっています

    ここがわかれば、手術全体がうまくなる!というコツも同時にお伝えします。
    今回は、前回説明した骨盤漏斗靭帯の処理の手順に沿って説明していきます。

    Step1.腹膜切開時のコツ

    骨盤漏斗靭帯周囲の腹膜切開の手順としてはまずは卵管を引っ張り上げて、腹膜のテンションを高め、骨盤漏斗靭帯の同定と突っ張り部分の同定を行います。そして、腹膜を骨盤漏斗靭帯を単離するように切開していきます。

    この時のコツとしては

    卵管牽引を子宮側にする

    になります。目的としては腹膜に切開ラインとなるツッパリを作るためです。

    腹側に牽引することで骨盤漏斗靭帯は牽引されますが、切開ラインが見づらいため、腹膜を切開するときはむしろ水平方向に子宮側に卵管を引っ張るほうがよいです。

    ”手術は展開がすべて”

    と学会でも聞くことがあります。うまい助手が前立の時は何も意識しなくても切開するものが見えてきませんか?これを地震でできるようにするのです。

    切開するものを浮き上がらせるような牽引が出来るようになると手術の安全性と進行スピードがかなりよくなります。

    Step2.附属器周囲の組織の処理時のコツ

    次に、附属器の周囲の組織を剥離することによって骨盤漏斗靭帯をなるべく単離していきます。こうすることで血管の凝固止血の効率が高まるためかなり大切な手技になります。

    この時のコツは

    骨盤壁から卵巣に向かって細い脈管を丁寧に処理すること

    以前文献でみたのは、腸腰筋より走っている脈管との記載がありました。

    このように、大血管以外の細い脈管の走行を知っておくということもかなり大切です。

    これは座学ももちろん大切ですが、何より数を繰り返すことが何よりも大切と感じます。

    例えば、京都旅行に行ったとして、初めは金閣寺、祇園などの大まかな部分しか見えませんが、そこに住んだり何回も旅行に行くことで細部の通りの名前、富小路通や綾小路通などの細かい通りの名前がわかってきます。これと同じですね。地道に手術を経験する、見に行くことが大切ですね。

    細い脈管を処理すると、その後のメインの血管の処理のクオリティがかなり変わってきますので大切にしていきましょう。

    Step3.骨盤漏斗靭帯の凝固と切離

    最後に、骨盤漏斗靭帯を凝固して切開して官僚になります。

    コツの一つ目としては

    附属器側で切開する。

    もはや基礎の基礎ですが、残す側にしっかりとのりしろを作ることが再出血予防に欠かせません。附属器は左右対称の形をしているためどちらを残すのかしっかりと意識して切開するようにしましょう。そのため今回は骨盤側にしっかりのりしろを作るため卵巣側で切開します。

    コツの二つ目としては

    血管を白色凝固させることとなります。

    白色凝固はかなり大切なのでもう少し詳しく説明していきます。

    白色凝固とは

    60-90度程度で起こるタンパクの変性であり、見た目が白色になっており、もっとも止血作用があるといわれています。

    と言われてもよくわからないと思いますのでステーキで例えましょう。

    おいしそうなステーキですね。

    この図で言うと、白色凝固はここになります。

    ちなみにいわゆる焼き過ぎた状態は炭化と言って、、電気を通さない状態になっていて、止血作用もかなり弱いです。

    いわゆる「焼きすぎると逆に止まらない。」という奴ですね。

    この理論が血管でも使うことが出来ます。同様に血管を白色になるように焼きます。

    血管を凝固止血するときは必ず、中までしっかりと焼けていることを確認してください。

    焼きが甘いと、表面だけが焼けていてぱっと見は凝固できていても切開すると出血することがあります。

    上のステーキのようなミディアムレアの焼き方では出血します。外がこんがり焼けて、中はウェルダンで行きましょう。

    目安としては、感覚的なりますが、バイポーラで凝固時は水泡が出てきてやや落ち着いたぐらいがちょうどいい焼き加減になります。

    このように、簡単に見える附属器の処理ですが手術の手技の基本が詰まっているため一例一例大切にしていきましょう。

    コツのまとめ

    卵管のテンションをなるべく子宮側にする → 切開するものを浮き上がらせるような牽引

    骨盤壁から卵巣に向かって細い脈管を丁寧に処理する → 大血管以外の細い脈管の走行を知っておく

    附属器側で切開する → 残す側にしっかりとのりしろを作る

    血管を白色凝固させる → 焼きすぎず中までしっかりと凝固する

    まとめ問題と解説

    問題:
    骨盤漏斗靭帯の処理について述べた文章から、次の選択肢の中で最も正しいのはどれでしょうか?

    1. 腹膜切開時のコツとして、卵管のテンションをなるべく骨盤側にすることが望ましい。
    2. 附属器周囲の組織を処理する際は、大血管を最初に処理することが重要である。
    3. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離では、血管を黒色凝固させることが基本である。
    4. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離時には、骨盤側で切開し、卵巣側にしっかりとのりしろを作ることが重要である。

    正解:4. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離時には、骨盤側で切開し、卵巣側にしっかりとのりしろを作ることが重要である。

    解説:
    文章によれば、骨盤漏斗靭帯の処理においては以下の点が重要であることがわかります。

    1. 腹膜切開時のコツとしては、卵管のテンションをなるべく子宮側にすることが望ましいため、選択肢1は誤りです。
    2. 附属器周囲の組織を処理する際は、細い脈管を丁寧に処理し、大血管以外の細い脈管の走行を知っておくことが重要です。したがって、選択肢2は誤りです。
    3. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離では、血管を白色凝固させることが基本であり、焼きすぎると逆に止まらないため、選択肢3は誤りです。
    4. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離時には、骨盤側にしっかりとのりしろを作り、卵巣側で切開することが重要であり、選択肢4が正解です。
  • 骨盤漏斗靭帯の処理① 手順 3ステップ

    骨盤漏斗靭帯の処理① 手順 3ステップ

    骨盤漏斗靭帯の処理のテクニックについて説明していきます。

    なぜか毎回出血する

    なぜか骨盤漏斗靭帯と外腸骨動脈間の開きが悪い

    こう感じることはありませんか?

    実は些細なことで変わってきます。次回を含めて骨盤漏斗靭帯の処理に説明していきます。

    骨盤漏斗靭帯周辺は、何気に合併症が多く、術中の出血はもちろん、術後の再出血の多い部分になります。簡単そうに見えて気をつけないといけない部位、骨盤漏斗靭帯。

    ゴルフで言うパターのように、地味だがとても大切な部分ですね。

    今回は、骨盤漏斗靭帯の処理の手順について説明していきます。

    骨盤漏斗靭帯の処理手順

    Step1.腹膜切開

    まずは卵管を引っ張り上げて、腹膜のテンションを高め、骨盤漏斗靭帯の同定と突っ張り部分の同定を行います。

    腹膜を骨盤漏斗靭帯を単離するように切開していきます。

    距離としてはバイポーラの幅3倍程度まで腹膜を切開していきます。

    Step2.附属器周囲の組織の処理

    附属器の周囲の組織を剥離することによって骨盤漏斗靭帯をなるべく単離していきます。

    図の助手鉗子で持ち上げているような組織もできるだけ切開していきます。

    広間膜腔の展開の段階である程度処理されていることが多いためこのStep2は省けることも多いです。

    Step3.骨盤漏斗靭帯の凝固と切離

    骨盤漏斗靭帯を卵管をけん引し、骨盤漏斗靭帯を凝固していきます。

    幅をもって凝固し、卵巣側で切開。

    これを繰り返して骨盤漏斗靭帯の処理は終了です。

    Step2の附属器周囲の組織の処理、広間膜腔の処理がきれいにできていると図のような処理像になります。

    ステップとしてはかなり簡単で①腹膜を切開して、②動静脈を単離して、③切離するだけですが、手術の基本がかなり詰まっています。次回はコツについて説明していきます。

    まとめ問題と解説

    問題:
    骨盤漏斗靭帯の処理手順について説明するとき、次のうち正しい手順はどれでしょうか?

    A. Step1. 附属器周囲の組織の処理 → Step2. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離 → Step3. 腹膜切開
    B. Step1. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離 → Step2. 附属器周囲の組織の処理 → Step3. 腹膜切開
    C. Step1. 腹膜切開 → Step2. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離 → Step3. 附属器周囲の組織の処理
    D. Step1. 腹膜切開 → Step2. 附属器周囲の組織の処理 → Step3. 骨盤漏斗靭帯の凝固と切離

    正解: D

    解説:
    本文で述べられた骨盤漏斗靭帯の処理手順は以下の通りです。
    Step1では、まず腹膜を切開して、骨盤漏斗靭帯を同定します。次に、Step2では附属器の周囲の組織を処理し、骨盤漏斗靭帯をより単離します。そして最後に、Step3で骨盤漏斗靭帯を凝固し、切離します。したがって、選択肢の中で正しい手順はDです。

  • 膀胱剥離⑤ サイドからの剥離 手順

    膀胱剥離⑤ サイドからの剥離 手順

    手術で使える、サイドからの膀胱剥離の手順についてお伝えします。

    帝王切開後の方などで頸管の癒着が強い時に使うテクニックです。

    大雑把には横から頸管と膀胱の間に入っていく必要があります。吊り上がった膀胱を損傷しない為ですね。詳しく見ていきましょう。

    サイドからの剥離の意味とそのタイミング

    まずはサイドから剥離する必要が出てくるタイミングについて説明していきます。

    このサイドからの剥離方法は上達してきた人こそ大切な剥離方法になります。なぜなら帝王切開後の頸管に強い癒着がある状態での膀胱剥離で特に必要になってくるためです。

    帝王切開後の子宮頸管創部を下手に正面から突破しようとすると強固に固まっているため容易に膀胱を損傷します。

    そもそも膀胱が体部側にひきつれていて腹膜切開の時に損傷することもありますし、剥離の層ががずれてしまい膀胱を損傷することもあります。

    横からの剥離の場合は、膀胱の吊り上がりを考える必要がなく、頸管創部瘢痕部より奥(骨盤底側)で膀胱剥離できるため、安全に膀胱剥離を行えるため安全なのです。

    血管周囲を触るため、慣れないとかなり危ない感じがするのですが、身に着けてしまえばCS後のTLHも難なく完投できるため身に着ける価値は大いにあります。

    今回は手順をお伝えし、次回にそのコツをお伝えします。では手順を見ていきましょう。

    1.子宮動静脈を剥離する

    まずは子宮動静脈を大まかでいいので頸管や骨盤で同定します。

    そして子宮動静脈が直線的になるように血管周囲を剥離していきます。

    2.頸管を同定する

    次に子宮動静脈を基準に、その腹側で頸管を同定していきます。

    血管と、脂肪を基準にくぼんでいるところ(頸管)を探して鈍的に広げていきます。

    3.子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る

    膀胱を上につけるように、頸管に鉗子を押し当てて剥離をしていきます。

    12時方向を超え始めると、頸管に沿って剥離していくのことが難しくなるため、同様に反対側から剥離していき、繋げて終了です。

    4.子宮頸管の瘢痕部を切離する。

    最後に瘢痕部が残るように体部側に剥離を広げていきます。

    残った瘢痕部をなるべし薄くしてから根元で切除します。

    まとめ問題と解説

    問題:
    次のうち、サイドからの膀胱剥離の手順について正しい説明をしているのはどれでしょうか?

    A. 最初に子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作り、次に子宮動静脈を剥離する。

    B. 子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る前に、子宮動静脈を剥離し、次に頸管を同定する。

    C. 子宮頸管の瘢痕部を切離す前に、頸管に沿って12時方向を超えて剥離する。

    D. 子宮動静脈を剥離した後、すぐに子宮頸管の瘢痕部を切離す。

    解答:
    B. 子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る前に、子宮動静脈を剥離し、次に頸管を同定する。

    解説:
    サイドからの膀胱剥離の手順は次の通りです:

    1. 最初に子宮動静脈を剥離します。これは血管の位置を確定し、血管周囲を剥離して直線的にするためです。
    2. 次に、この子宮動静脈を基準に、その腹側で頸管を同定します。
    3. その後、子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作ります。ここでの重要なポイントは、12時方向を超え始めると、頸管に沿って剥離するのが難しくなるため、同様に反対側から剥離し、繋げていくことです。
    4. 最後に、瘢痕部を残すように体部側に剥離を広げていき、最終的に残った瘢痕部を薄くしてから根元で切除します。

    したがって、選択肢Bがこの手順に最も一致するため、正しい回答となります。

  • 膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

    膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

    膀胱剥離をしようにもなぜかうまいこと剥がれない。

    無理に力を加えてしまい出血をしてしまった・・・

    こんな経験ありませんか。

    それってあるポイントを見落としているだけかもしれません。

    今回は、膀胱剥離がうまくいかない理由3選とその理由と改善テクニックについて解説します。

    その1:テンションがかかっていない

    剥離部位にテンションがかかっていないと剥離は全くうまいこと行きません。

    お菓子の袋を開けるには、必ず2か所で引っ張る必要がありますよね。

    同様に、手術においても、反対向きのテンションつまり”カウンタートラクション”が取れていないと鈍的な剥離も切開もすることはできません。暖簾に腕押し状態です。

    こんなことはわかっていても、手術、特に腹腔鏡の限られた視野の中の場合見逃していることが多々あります。

    子宮の押し込みが甘いことでテンションが緩んでしまっていることがあります。

    特に、いつもと異なる状況やチームで手術を行っている場合は注意してください。

    前立が経験豊富な医師の場合は勝手にテンションをかけてくれるので意識せずとも良いテンションがかかっていることが多いですが、研修医や習練中の意思の場合は知らぬ間に力が緩んでいたりすることも多々あります。

    マニュピレーターは下の先生や看護師さんが持っていることが多いですし、女性医師が増えている現代では肉体的にも力が緩むことが多い印象です。

    そのため、改善方法としては、

    膀胱剥離の時は、自分でマニュピレーターや腟パイプの位置を確認し力を込めて押し込んでもらう、必要なら位置調整する。

    その2.子宮体部がねじれている

    次に、膀胱剥離時の”子宮体部がねじれ”について考えていきましょう。

    子宮のねじれはかなり危ないのにもかかわらず。わかりにくく、気づかずに進めていくと、大量出血、尿管膀胱損傷につながるかなり危ないピットフォールになります。

    なぜなら

    1. 頚部の子宮動静脈の位置がずれる
    2. ねじれがあることで、組織が巻き込まれていく

    この二つが生じるためです。

    この危険な”子宮のねじれ”の原因として多いのは、子宮筋腫で、重さや圧迫により大きくねじることによるものが多いです。

    特に子宮体部側方の筋腫の時に見落としがちになります。

    頚部筋腫ではなく、体部筋腫です。

    なぜなら、子宮の頚部筋腫の場合は、意識することが可能なので気づくことが多いですが、拡大視の視野の狭い状況で子宮体部がねじれていることには気が付きにくいためです。

    改善方法としては、

    子宮が直線化されているかどうか毎回確認する。特に円靭帯や子宮上行枝に着目し子宮がねじれていないかを確認する。

    その3.膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている

    最後は頸部で膀胱自体がはがれにくい場合をお伝えします。

    これはこれまでと違い、患者因子になります。特に炎症を起こしていたり、閉経後で組織が固い人に良く見られるもので、正しい層に入ってもはがれにくい時があります。

    この時に有効な方法としては、”層を乗り換える”という手法があります。

    以前、膀胱剥離をするなら安全性を取るならば腟膀胱筋膜の子宮側で剥離を行うべきだという話を行いました。

    実は、剥離しやすいのは腟膀胱筋膜の膀胱側になります。えいやと1膜破ることで膀胱剥離が容易になることがあります。

    そのため、改善方法としては

    頸管が萎縮や炎症を起こすような要因があるか確認し、層を意識して手術を行う。

    膀胱剥離が出来ない時に確認すること

    1. 子宮の押し込みが出来ているか確認する
    2. 子宮がねじれていないか確認する
    3. どの層に入っているか意識し、やりにくければ層を乗り換える

    まとめ問題と解説

    問題: 膀胱剥離がうまくいかない理由として最も適切でないものを次の選択肢から選びなさい。

    選択肢:

    • A. テンションがかかっていない
    • B. 子宮体部がねじれている
    • C. 膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている
    • D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

    正解:D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

    解説: 膀胱剥離がうまくいかない三つの主な理由として、「テンションがかかっていない」、「子宮体部がねじれている」、「膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている」。これらは、それぞれ剥離部位に必要なテンションがない場合、子宮がねじれている場合、そして膀胱と子宮間の剥がれる層が密接している場合に問題が生じます。それに対して選択肢Dの「腹腔鏡の視野が広すぎる」はむしろ、視野が限られていることが手術を難しくしています。

  • 膀胱剥離③ 正面突破 4ステップ

    膀胱剥離③ 正面突破 4ステップ

    前回は、膀胱は発生学的に、子宮と近く血管や膜を共有しているため、強いテンションや、腟膀胱筋膜の理解の必要性をお伝えしました。

    今回は、複雑怪奇な膀胱周囲の正面突破法についてお伝えします。

    膀胱剥離の正面突破の手順

    膀胱剥離の正面突破はオーソドックスな手技になります。

    特に、尿管や膀胱の安全を確保したいときや頸管の構造を明らかにしたいときに必要な手技になります。

    なぜなら膀胱が骨盤底側に降りることで、子宮と尿路系が離れるからです。

    具体的な手順は以下のようになります。

    step1.膀胱と子宮の位置の確認

    step2.膀胱子宮窩腹膜の切開

    step3.腟膀胱筋膜に沿って剥離

    step4.腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    ではそれぞれのステップを画像と共に見ていきましょう。

    step1.膀胱と子宮の位置の確認

    まずは膀胱と子宮の位置関係の確認です。慣れたチームでやっている場合は無意識に確認が終わっていることもありますが毎回確認するようにしましょう。

    初めに、マニュピレーターや腟パイプを左右に振ることで子宮頸管の位置を確認し、カップ付きの場合はエッジを円蓋部に押し当て持ち上げることで腟や子宮頸管の位置を把握します。

    次に、膀胱の確認に移ります。見た目でふくらみを見ることもできますし、鉗子で押してみたり、持ち上げることで膀胱の位置を確認します。膀胱カテーテルも一助になりますね。

    とりあえず困ったら動かしたりして、2次元の情報を3次元にとらえるようにしましょう。

    step2.膀胱子宮窩腹膜の切開

    膀胱と子宮の位置を把握できれば、ステップ2に移行します。膀胱子宮窩腹膜の切開になります。

    ここではテンションをしっかりとかけて”膜”を切りきることを意識します。腹膜と筋膜ですね。(詳しくはこちら

    手順としては、まず子宮を器具で強く押し込みます。さらに補助鉗子で子宮体下部を押し上げてテンションを増します。これらにより子宮頸管を頭側に押し上げて膀胱と距離を離します。

    膀胱実質損傷しないように、薄くそして軽く腹膜と膀胱を持ちあげ、画面上腹側に引き上げます。最も薄くなった部分を切開し膀胱子宮窩腹膜を切開します。膀胱近くでも腹膜切開は可能ですが、安全を取って子宮よりで切開するほうがよいです。

    この時は子宮頸管にハーモニックや電気メスが当たるまでしっかりと腹膜を切開します。脂肪のある層をしっかりと切りきってください。

    step3.腟膀胱筋膜を同定する

    次が一番難しい工程の腟膀胱筋膜の同定の説明になります。ここを間違えると膀胱損傷にもつながるのでとても大切です。

    まず、腹膜を持ち直してください。腹膜と膀胱組織を一緒に持ち上げ、頸管よりしっかりと離します。

    腹膜を左右に切り広げて腔を広げて、子宮頸管を押し上げ腟膀胱筋膜を同定して行きます。

    この時に脂肪と毛細血管を意識してください。

    脂肪で考えると、腟膀胱筋膜は脂肪のある層を一層抜けてから見つかります。

    血管を見ると、膀胱側の細かい静脈は子宮頸管に対して横向きに走り、子宮側の細かい静脈は縦向きに走ります。

    これらを意識して腟膀胱筋膜を見つけてください。

    ちなみに腟膀胱筋膜は子宮側でも膀胱側でも剥がれていきます。おすすめは子宮側を進んでいくことです。理由としては、以下が挙げられます。

    • 膀胱の表面には細かい静脈が走っている
    • 膣切開の時に薄く切ることが出来る

    安全性を考えるなら子宮側がよいのです。(はがれやすいのは膀胱側にないります)

    step4.腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    頸管における膀胱剥離は12時方向から膀胱剥離を開始することが大切です。なぜなら、2時10時方向には子宮動静脈から膀胱に対して分枝が存在するためです。

    そのため正中で筋膜を同定し、切開ラインまで奥に剥離したのち左右に広げてください。

    剥離方法は鈍的にも鋭的にも可能です。子宮頸管に鉗子を押しあて鈍的にも可能ですし、拡大視を駆使し、膀胱や頸管を動かしながら癒合筋膜をとらえて鋭的に切開することも可能です。よい層であればコールドナイフで切開しても出血はしません。

    残るは膀胱脚になりますが、こちらは子宮傍組織の部分で説明しますので、いったんは正面突破の膀胱剥離はここで完了とします。

    今日からできること

    膀胱剥離の手順と理由を理解しておく

    まとめ問題と解説

    以下の手順の中で、膀胱剥離の正面突破法において最も重要なステップはどれですか?

    • A) 子宮と膀胱の位置の確認
    • B) 膀胱子宮窩腹膜の切開
    • C) 腟膀胱筋膜の同定
    • D) 腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    回答: C) 腟膀胱筋膜の同定

    解説: この問題では、膀胱剥離の正面突破法における最も重要なステップを尋ねています。腟膀胱筋膜の同定(選択肢C)が最も重要です。これは、膀胱周囲の正確な解剖構造を理解し、適切な剥離を行うための基本であり、後のステップに影響を与えます。膀胱と子宮の位置の確認、膀胱子宮窩腹膜の切開、そして腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる手順も重要ですが、腟膀胱筋膜の同定が最も重要なステップとなります。

  • 膀胱剥離② 発生から見るコツ2選 力こそパワーだけじゃない。

    膀胱剥離② 発生から見るコツ2選 力こそパワーだけじゃない。

    今回は発生から見る膀胱剥離のコツは大きく2選になります。

    発生的な視点は知っているか知らないかで、上達度が全く違うためかなり大切な概念になります。わかりやすく解説していきますので着実に自分のものにしていきましょう。

    膀胱と子宮と腟の発生学的な関係

    まずは膀胱、腟、子宮の発生について説明します。

    執刀時において発生の理解というのは欠かせないものです。困難な症例ほど大切になってきます。

    なぜなら、より安全に剥離できる層が見つけやすくなるためです。

    発生が異なるものは、柔らかい組織によってつながっているため、剥がれていく層を見つけることで、カワハギの皮のようにつるつると剥けていきます。発生を知ることで安全な、剥がれやすい場所がわかってくるのです。

    早速ですが、次の問題に答えてください。

    Q1:膣は機能的にはどちらの臓器ですか?泌尿器系?それとも生殖系?

    これは簡単すぎましたか。機能的にはもちろん生殖系ですよね。では、次の問題です。

    Q2:膣は発生学的にはどちらの臓器ですか?泌尿器系?それとも生殖系?

    答えは、発生学的には、腟は泌尿器系でもあり生殖系でもある。

    解説に移りましょう。発生学的に考えると

    • 膀胱→尿生殖洞
    • 腟 →尿生殖洞、ミュラー管
    • 子宮→ミュラー管

    となりますよね。そのため、腟は発生学的には泌尿器系であり同時に生殖系なのです。

    腟の一部は膀胱と同じ発生であり、もう一部は子宮と同じ発生

    この異なる発生の臓器が交わっている事実が膀胱剥離を難しくしている原因のすべてと言っても過言ではありません。

    なぜなら、発生が違うのにも関わらず、血管や膜を共有してしまうからです。

    では膜についてもう少し深堀していきましょう。

    腟膀胱筋膜

    腟子宮と膀胱の間には膜があり、それは腟膀胱筋膜と言います。

    実は、この腟膀胱筋膜にはほかの筋膜とは少し違う意味合いがあります。

    筋膜はどのような意味がありますか?

    ”包む膜”という意味がありますね(詳しくはこちら

    では腟膀胱筋膜は何を包んでいますか?腟と膀胱を包む膜ですか?

    じつは腟膀胱筋膜は包むという意味ではなく、”癒合筋膜”の意味があります。膜は近くなると癒合する性質があり、筋膜同士が癒合したものを”癒合筋膜”と言います。

    他に例を挙げると、尿管と基靭帯が交わる部分も膜同士が癒合しています。

    つまり、筋膜の概念から話をしていくと、膀胱と腟子宮はそれぞれの管構造に包む膜である筋膜が存在していて、骨盤底に行くにつれて癒合して腟膀胱筋膜に変わっていきます。

    発生から見る剥離のコツ

    これまで二つのことを説明しました。

    1. 腟は発生で膀胱と子宮の両方と発生が一緒
    2. 膀胱と腟子宮の間には癒合筋膜が存在する

    この二つを理解したうえで膀胱剥離を開始することが必要になってきます。

    強いテンションをかける

    まずは組織が異なるものを剥離するときは必ず、テンションをかける必要があります。

    膀胱と子宮は発生学的に膣という発生の集合場所があります。そのためかなり強いテンションをかけないと、膀胱と子宮の位置関係がはっきりしないのです。

    マニュピレーターや膣パイプを強く押し込み、そのうえで膀胱を持ちあげることで子宮と膀胱の位置関係がはっきりさせる必要があります。

    癒合筋膜の把握

    鏡視下手術では癒合筋膜を特に意識して剥離を行う必要があります。

    なぜなら開腹の時代は腹腔内で操作しないといけないという縛りがなく、腹腔外まで引っ張り上げることでかなり強いテンションをかけることが可能でした。

    そのため、鈍的に”剥がれる層”でクーパーやガーゼを用いた鈍的剥離が簡単に行うことが出来ました。

    しかし、腹腔内で操作をしないといけない鏡視下手術では開腹手術ほどのテンションをかけることはできないため、拡大視野を取れるという強みを持って癒合筋膜を把握しながら剥離を行う必要が出てくるのです。

    ちなみに、癒合筋膜の上は膀胱側の腔となり、下は子宮側の腔となります。剥離自体はどちらでも行うこと可能です。

    次回以降は実際の手順を、正面突破とサイド突破に分けて説明していきます。お楽しみに。

    今日からできること

    癒合筋膜を意識する。

    まとめ問題

    以下の選択肢のうち、膀胱剥離に関して最も正確な説明をしているものはどれでしょうか?

    • A. 腟と膀胱は完全に異なる発生学的起源を持っており、癒合筋膜は存在しない。
    • B. 膀胱剥離では、強いテンションをかけずに膀胱と子宮の位置関係をはっきりさせることが可能である。
    • C. 癒合筋膜は、膀胱側の腔と子宮側の腔の間に存在し、膀胱剥離において重要な役割を果たす。
    • D. 鏡視下手術では、腹腔外まで引っ張り上げることが可能であるため、癒合筋膜を把握する必要はない。

    解答:C. 癒合筋膜は、膀胱側の腔と子宮側の腔の間に存在し、膀胱剥離において重要な役割を果たす。

    解説: 選択肢Cが正しい理由は、腟は膀胱側と子宮側に分かれる発生学的起源を持っており、膀胱と腟子宮の間には癒合筋膜が存在するからです。膀胱剥離を行う際には、強いテンションをかけて膀胱と子宮の位置関係をはっきりさせる必要があります。また、開腹では腹腔外まで空間を利用することが出来ますが、それが出来ない鏡視下手術では拡大視野を用いて、癒合筋膜を把握しながら剥離を行うことが重要です。