やっと尿管が見つかった。
「じゃあ、尿管が見つかったし、そのまま追っていこか。」
「は、はい・・・」
スクラブに嫌な汗が滲んでいた。
「見つけた尿管をトレースしていく」たった一つのコツ。
尿管壁を直接把持せず、尿管周囲の血流を温存しながら、必要十分なカウンタートラクションで剥離層を見える状態にする。
そんなこと可能??
実際に、私が大切にしているポイントをごっそりお伝えします。
【大原則】手術で最も大切なのはテンション
テンションがあると視野が変わる。fasciaは自然と広がり、剥離すべき層が浮かび上がり、「切るだけ」の状態になる。
テンションをかけないままの操作は基本やってはいけない動作。いわゆるカウンタートラクションがかかっていない状態。うまく切れず、凝固時に組織がだんご状に縮こまり、熱損傷のリスクが高まる。
ピンッと張るのだ。折り紙を切る時に、ピンッと張っていると切りやすい。これを手術中もやる。
切りたい場所にテンションがかかっている状態が「上手な展開」だ。では尿管にテンションをかけるには??
コツは「〇〇を引っ張る」だけ
尿管にテンションを作る方法。非常にシンプル。
「”被膜”を引っ張る」
これだけ。
「尿管は絶対に守れ。」はどの施設でも不可侵の経典のように教えられる。
EAUガイドラインは、尿管損傷の原因として鉗子による圧挫、熱損傷、血流遮断による虚血などを挙げ、予防の中心を尿管の視認と近傍での慎重な剥離としている。EAU Urological Trauma Guidelines
そして慣れるまでは尿管の扱いに慎重になる。いや、なりすぎる。まるで赤ん坊を初めて抱っこする時のよう。
尿管近くで少しでも電メを使おうものなら、「尿管が傷つく」と恐れてしまう。
テンションをかけたい。でも、どこ持っていいかわからない。尿管は実質を把持してはいけない。遅発性損傷が生じると術後に腹腔内に瘻孔ができることがある。尿管は持てないが、引っ張らないといけない。
このパラドックスを解消するのが「尿管の被膜」の牽引。実質を持っていないので引っ張ることができる。
エキスパートの先生の綺麗なトレースを見ていても、常に被膜を引っ張っりテンションをキープしていることがわかる。


尿管被膜を引っ張ると尿管瘻孔を防げる
ちなみに、「尿管被膜を引っ張る」ことを意識すると、尿管瘻孔を防ぐことにつながる。
なぜなら、尿管被膜を引っ張るには、被膜を守る必要があるからだ。傘の取っ手を持つには、「取っ手がある」ことが必要となる。被膜を引っ張るためには「被膜がある」ことが必要なのだ。
被膜は尿管を守っている。ラップのように構造的に守っているだけではない。毛細な血管が含まれており、傷付いた尿管を修復に傾ける。
尿管損傷も防ぎ、テンションも保ってくれる。尿管被膜を意識すれば尿管周りは怖くない。もう被膜を引っ張らない理由はない。
被膜の持ち方
被膜とは脂肪や、その周りの繊維を指す。尿管本体を薄いティッシュと綿で包んだような層。これらは尿管下腹神経筋膜(尿管と、腰椎からの下腹神経を含む脂肪と繊維の層)に含まれている。
持つイメージは水風船をつまむ。

指先(鉗子の先)でつまむように把持。この時、腹膜ごと引っ張れば、ラツコーの直腸側腔が自然と開いていく。
引っ張る方向は尿管に対して直角方向に引っ張ると良い。

まとめ
安全な尿管剥離で最も大切なのは、まずテンション。これはどの手術手技でも同じ。
被膜(尿管実質ではなく)を把持することで、強いカウンタートラクションを作ることができる。
「どう尿管を剥離しよう」=「どこの被膜を引っ張ろう」
と考えるだけで、尿管剥離はぐっと楽になる。
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問題
問題
尿管を安全に追っていくために、最も重要な最初の操作はどれでしょうか。
A. 尿管を直接しっかり把持する
B. 鈍的にガサガサと剥離を進める
C. 被膜を把持してカウンタートラクションを作る
D. 電気メスで先に周囲を広く切開する
解答
C
解説
尿管剥離で最も重要なのは、十分なテンションを作ることです。被膜を把持して反対方向への張力を作ることで、疎な結合組織が細く伸び、剥離すべき層が明瞭になります。その結果、安全かつ効率的に尿管を追うことができます。
論文で読みたい方はこちら
Variations in Procedures for Ureterolysis
尿管周囲の鞘・外膜・筋層を傷つけず、「moderate tissue traction」で操作することが記載されています
