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  • 子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

    子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

    子宮傍組織ってどんなイメージですか?

    何となく、走行がよくわからなくなったり、何の血管を処理しているのかわからなくなることってありませんか?

    他にも、いつもなら出血しなかったのに、なぜか今回だけるだけで出血することはありませんか?

    これらはすべて”あなたのイメージ”が悪いのかもしれません。

    出血と戦う産婦人科。そんな産婦人科にとって、子宮の血流を止めることはどの産婦人科にとっても必要な技術です。あとから怖い思いをしないようにぜひイメージをつかんでいきましょう。

    子宮傍組織は”シャンパンタワーとグラス”

    今回は、子宮傍組織を”シャンパンタワーとグラス”をメタファーにして考えてみましょう。

    え?っと思いますか?ちゃんと理由があります。

    皆さんは、最近記憶力落ちたなぁと思いませんか。私は絶賛実感中です。

    基本的に人間の記憶力は低下していきます。嫌ですよね。

    しかし、年を重ねるにつれ記憶力が低下していっても理解力が深まっていく人がいます。

    それは、

    これまでの知識やイメージに当てはめることが出来る人です。

    いろんな知識や考えをコネクティングしていく。そうすることで新たな視点や深みが出てくるわけです。

    なので、子宮傍組織をシャンパンタワーとグラス”で考えると、理解が深まり、今処理しているものを考えやすくなり全体感も把握することが可能になります。では本題に行きましょう。

    シャンパンタワーのメタファー

    シャンパンタワーのイメージはどのようなものですか?

    グラスが積み重なり、上から下に広がっていくイメージですよね。結婚式などでみられるものですね。

    これを子宮傍組織とつなげてみてください。

    どうすればいいですか?

    答えは、まず横にします。
    そして子宮から骨盤に向けて行っていってください。

    百聞は一見に如かず。今回イメージすべきシャンパンタワーはこちらになります。

    はい、わけわからんですよね。雑コラですね。

    これにわかるように名前を付けていくとこうなります。

    見えてきましたか?つまり

    子宮傍組織は子宮側の子宮動静脈から始まり、骨盤に向かってどんどん広がっていきます。

    シャンパンメタファーのとらえ方

    この画像を見て質問です。どこが危険ですか?

    そうですね。

    骨盤側(シャンパンタワーの下のほう)のほうが危険なものが多くないですか?

    尿管、子宮動脈本管など傷つけてはいけない臓器がたくさんあります。

    尿管にしろ、膀胱にしろ、動静脈にしろ骨盤側に行くにつれ危険なものが広がっていきます。

    つまり、子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっているというイメージが出来ますね。

    なるほど、子宮の近くで処理をしろ!と子宮全摘の初心者ほど言われるのはこういうわけがあるわけです。

    シャンパンタワーでいうと、なるべく上のほう、つまり子宮側を触ると安全ということが丸わかりですね。

    癒着の怖さとシャンパンタワー

    癒着って怖いですよね。癒着により血管や尿管や膀胱、腸などの位置が変わり思いがけない出血や他臓器損傷のリスクが高くなり、手が震え、動悸がしてきます。

    その怖い癒着をシャンパンタワーというふざけたメタファーでとらえてみましょう。

    癒着によりシャンパンタワーには何が起こりますか?

    たとえば、内膜症や腺筋症で後葉が引き連れている場合は、尿管が子宮によって来たりしますよね。
    帝王切開後の場合は膀胱が吊り上がっていたり血管が引き連れていることがあります。

    これを先ほどのシャンパンタワーで考えるとどうなりますか?

    実は、癒着によりグラスの位置が変わるんです。

    より具体的に言うと、グラス(尿管や血管)が上(子宮側)に変化します。

    上で示した傍組織の画像は,じつはCS3回のTLHの画像になります。膀胱剥離後です。

    そして、膀胱を処理する前の膀胱が吊り上がっている状態の画像はこちらになります。

    膀胱の位置がかなり吊り上がっています。そのため、膀胱及び尿管が子宮に寄ってきていますよね。

    つまり、シャンパンタワーで言うところの一つ子宮側に移動しているわけです。
    これはかなり危ないですよね。せっかく安全と思っていた、シャンパンタワーの頂点近くで切除したのに、そこには尿管がいて損傷した。こんな悲劇的なことが起きてしまうわけです。

    内膜症症例でも、仙骨子宮靭帯と思ったら尿管だったなんてこともよくある話ですね。

    癒着があると組織の場所がかかわる。これをシャンパンタワーで考えるとグラスの位置が変わる!という風にとらえることが出来ますね。

    グラスの位置を変えたい。

    グラスの位置変えたくないですか?グラスの位置を変えれたらすごいですよね。

    危ないグラス(臓器)はすべてシャンパンタワーの下のほう(骨盤側)に移動させれるわけです。

    ここでグラスを安全な位置に変えれるのが”剥離”となるわけです。

    ↑膀胱をずらした後の図。

    剥離をすることで組織(グラス)同士が離れ、シャンパンタワーのグラスの位置を変えることが出来ます。つまり子宮や切開ラインから離すことが可能になります。

    具体的には
    腹膜切除を行えば、前葉の場合は膀胱が離れ、後葉の場合は尿管が離れます。
    広間膜腔を広げる、つまり腹膜や血管周囲の組織を剥離すると尿管や大血管が離れます。

    このように、剥離を行うと、損傷してはいけない臓器や血管が離れる、シャンパンタワーでいうとグラスの下の段に行くわけです。

    どうでしょうか、子宮傍組織と”シャンパンタワーとグラス”というイメージはつかめましたでしょうか。

    わかりにくい場合は、扇のように広がっていくイメージを持ってもらえれば良いと思います。川が平地に向かうにつれて広がっていくイメージなどもよいと思います。

    ぜひ、ものが広がっていき、そして癒着があると傷つけてはいけないものの位置がより子宮に近づくというイメージを持ってみてください。

    皆様がより安全な手術が行えるますように。

    次回は、傍組織の切開方法を2パターンで説明していきます。お楽しみに。

    (X(Twitter)で更新のアナウンスをするのでぜひフォローしてみてください。)

    まとめ問題と解説


    問題1:

    「シャンパンタワー」というイメージを使って説明された「子宮傍組織」はどのような特性を持つとされていますか?

    1. 上部ほど危険な部分が多い
    2. 下部ほど危険な部分が多い
    3. 全体的に危険な部分が広がっている
    4. 危険な部分は特定できない

    答え: 2. 下部ほど危険な部分が多い

    解説: 「シャンパンタワー」のイメージを用いて、「子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっている」と説明されています。


    問題2:

    癒着が発生した場合、どのような変化が「シャンパンタワー」に影響を与えるとされていますか?

    1. 危険な部分が子宮側に移動する
    2. 危険な部分が更に広がる
    3. 危険な部分が縮小する
    4. 危険な部分が固定される

    答え: 1. 危険な部分が子宮側に移動する

    解説: 癒着が発生すると、通常は安全とされる子宮側の部分にも危険な部分(尿管や膀胱など)が移動してくるため、予期せぬ損傷のリスクが増えると説明されています。


    問題3:

    剥離を行うと、どのような効果が得られると説明されていますか?

    1. 危険な部分が子宮側に移動する
    2. 危険な部分を「シャンパンタワー」の下に向かわせることができる
    3. 危険な部分が縮小する
    4. 危険な部分が固定される

    答え: 2. 危険な部分をシャンパンタワーの下に向かわせることができる

    解説: 剥離を行うことで、損傷してはいけない臓器や血管を安全な位置、すなわちシャンパンタワーの下へ移動させることができると説明されています。これにより、危険な部分を避けながら処理を行うことが可能になります。

  • 鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

    鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

    前回のコラムで剥離について解説を行いました。

    そもそも剥離とはから始め、鈍的剝離と鋭的剥離の違い、どちらが良いかという話をしました。

    結論としては、

    リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

    このような結論となりました。今回は理由を実際の剥離を含めて深堀していきたいと思います。

    鋭的剥離より引きちぎる鈍的剥離が優れている点

    切っていく鋭的剝離は正確に行えれば確かに安全です。なぜなら過剰なテンションがかからない為避けて出血や他臓器損傷がおこらないからです。

    しかし、前回説明した通り、切るという手順が増えるため時間がかかりますし、切開部位を間違えれば出血や他臓器損傷を引き起こしてしまいます。

    そのため、よほど困難症例ばかりの施設でない限り、集中力の限界と時間の制約がある現実世界では引きちぎる鈍的剝離を行うほうがトータルよい場面が多いと考えます。

    例えば、超緊急帝王切開で用いられる Joel-Cohen 法が最たるもので、赤ちゃんを素早く出すという最大のメリットを得るため、組織を引きちぎることで展開と剥離を同時に進め、血管や他臓器損傷のリスクを冒しながら、素早く手術をすすめるわけです。

    そのため、”鋭的剥離こそ最強、鈍的剝離は下手のすることだ”という考えには否定的で場合によりますし、むしろ、力加減や出血しそうな場所を把握できた人の上手な鈍的剥離こそ技術が必要であると考えています。

    ここでより深堀するため、現在、鋭的剥離が勧められるようになっている理由と流れを考えていきましょう。

    鋭的剥離が重宝されるようになったストーリー

    切る鋭的剝離が隆盛を極めている理由としては、出血リスクの低下によるドライな術野と合併症の低さが挙げられます。

    ここに至るまでのストーリーとしてこのように考えています。

    ①もともと、電気メスもなかった時代は、引きちぎる鈍的剝離がメインであった。なぜなら止血は圧迫しかなくどれだけ早く手術を終わらせることこそが出血量を減らす手段であった。つまり手術の剥離の源流は引きちぎる鈍的剝離であった。

    ②徐々に科学が発展し、電気メスやエネルギーデバイスが現れ、鏡視下手術も始まった。

    ③開腹に比べ、視野確保が難しい鏡視下手術では細かい出血が大敵となった。

    ④細かい出血の原因を見てみると、組織間の細かい静脈が原因であった。(カメラにより、正確にわかるようになった)

    ⑤そのため、細かい出血を減らし視野を確保するには、凝固や切開を細かくできる鋭的剥離が推奨されるようになった。そして鈍的剝離は悪となった。

    このようなストーリーがあったと考えられます。

    ではこのストーリー通り古い引きちぎる鈍的剝離は完全悪なのでしょうか?

    そんなことはもちろんなく、安全に引きちぎることが出来るならば鈍的剥離は悪にはなりません

    引きちぎる鈍的剝離が悪になるときを考えその対策をしていきましょう。

    鈍的剝離が悪となる場面は3つ考えられます。

    ①出血を引き起こすとき

    ②層がわからなくなるとき

    ③他臓器損傷を引き起こすとき

    この”3悪”さえクリアできればより早く、時間や集中力といったリソースを削減できる引きちぎる鈍的剝離のほうが優れていると言えますよね。

    次の段落ではどのようにすれば”安全に”引きちぎることが出来る考えていきましょう。

    安全に引きちぎる鈍的剝離のやり方

    一つ一つ見ていきましょう。

    ①の出血がおこる理由は何でしょうか。

    それは接着剤となる組織が剥がれる以上に張力をかけることで細い血管が破綻するためです。

    これを避けるためには、組織は剥がれるが、細い血管が破綻しないぐらいのテンションのベクトルをかけることが出来ればこの問題は解決できます。

    細い血管があるところを避けながら、組織間の剥離面が剥がれる必要十分なテンションをかけるわけです。

    ②と③の層がわからなくなる、他臓器損傷がおこる理由は共通しています。

    力の入れる方向や場所を間違えると層の破綻や他臓器損傷が起こります。

    これに関しては、力の入れる場所と方向でカバーすることが出来ます。

    先ほどの、ガムテープをはがすスキーマで考えていきましょう。

    ②の層を追っていく場面において、段ボール側に沿って行きたいときどうしますか?

    段ボール側に接着剤が残らないように、指で段ボール側をこする様に剥離していきますよね。

    たとえば広間膜後葉に沿って広間膜腔を広げていくなら、広間膜後葉に近いところでやや後葉をこする様に力を入れていくようにするほうがよいと思います。

    つまり追いたい層に近いところでこする様にテンションのベクトルをかけることが出来ればよいわけです。

    では③の他臓器損傷に関してどうでしょうか?

    答えは②とは逆の考え方になります。

    損傷したくない臓器に力がかからないベクトル方向を向けて力を入れることが必要になります。

    子宮と腸の癒着を考えると、腸管損傷を起こさないように、子宮に力がより加わるように力のベクトル方向を子宮に向けて力入れていきます。

    尿管を腹膜からはがして岡林腔に入るときは、尿管損傷を起こさないように、腹膜側に力がより加わるように力のベクトル方向を腹膜に向けて力を入れていきます。

    つまり、剥離したい層に沿って、細い血管を認識して、その血管を破綻させないような力と方向にテンションをかけることが出来れば、安全に鈍的剥離を行うことが可能になります。

    むしろ切る鋭的剥離ではないほうがよい場面

    切る鋭的剥離のほうが、リスクが高くなる状況があります。

    それは、癒着症例です。

    え?リスクの高い時は鋭的剥離のほうがよいと言ってたよね?

    もちろんそうですが、ある条件の時は鈍的剥離のほうがよいです。

    それは、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

    この時はむやみに切らないほうが安全に進めることが出来ます。

    なぜなら、鋭的剥離の場合は切開を行うので、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があります。子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来ます。

    また同様のに切り込む可能性があるため、腹腔鏡やり始めは切開する鋭的剥離は勧められません

    特にやり始めの時は、見誤ったり手がぶれたりするため、保たないといけない層に切り込んだりしたりして危険ですね。

    その為、初心者は鈍的剥離、慣れてきたら鋭的剥離と言われるわけです。

    ただし、癒着症例では鋭的剥離を行わないといけない場面が出てくるためどこかで鋭的剥離を習得する必要があります。

    著者が行っている実際の剥離

    長々と剥離について話をすすめていきましたが、最後に私がメインに行っている剥離について説明していきます。

    細かく言うと、鈍的~鋭的を様々な場面で細かく使い分けてはいます。

    それは、食事と同じで、魚を食べるとき、平べったいお肉を食べるとき、トマトをつまむとき、ひじきを食べるとき、豆腐を食べるときでお箸の使い方が異なるように多くの経験の上に徐々に身に着けたものですよね。

    結局は経験かい!となりそうですが、ここで鈍的と鋭的のおいしいところを取り入れた剥離法を、メインで使っているので紹介します。

    鈍的剥離と鋭的剥離の合わせ技

    鈍的剥離の一番のデメリットは何ですか?

    それは、細かい血管を出血させることでしたよね。

    この弱点を鋭的剥離で処理できれば素早く展開を行うことが出来ます。

    広間膜腔展開で考えてみましょう。

    次の場面はCS3後のTLHの症例で、左の円靭帯を切断した後の場面です。膀胱が吊り上がっていたため外側で広間膜腔展開しようとしている場面です。

    ここを広げるときに大切なのは、細い血管を見つけることです。この場面で言うと出血しそうな血管が赤丸にあります。ここをガサガサ鈍的に引きちぎると出血します。

    そのため、この血管を避けるように周囲を広げます。この時に鈍的に広げて剥離をすすめます。

    そして次に、鋭的剥離に移っていきます。

    まずは凝固

    そのあとに切開

    そのあとまた鈍的に腔を出血しないように広げる。もちろんハーモニックの下の細い血管も認識しながら出血しない程度に圧排しています。

    これを繰り返して剥離を繰り返していきます。最終ドライな視野で子宮動脈を同定できました。

    このように、細かい血管を把握し、これを避けて鈍的剥離を行うことで、鈍的剥離を行っても出血をすることなく素早く安全に剥離を行うことが出来ます。

    以上となります。

    結局は伝えたいことは、鈍的剝離、鋭的剥離のどちらが優れているわけでもなく、使いどころによってメリットデメリットがあり、鋭的剝離こそが最強ってわけでもないことでした。

    次回は、傍組織の処理に移っていきます。更新は週一程度で不定期なので、良ければX(Twitter)のフォローをお願い致します。

    まとめ問題と解説

    選択肢問題:
    以下の選択肢の中から、引きちぎる鈍的剥離が安全に行える場面を選んでください。


    A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時
    B) 細い血管の破綻がリスクとなる状況
    C) 初めての腹腔鏡手術を行う場面
    D) 層がわからなくなり他臓器損傷のリスクが高い場面

    正解: A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

    解説:
    文章から、鋭的剥離では、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があるため、子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来るとされている。そのため、癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時は鈍的剥離がより安全と考えられます。

  • 結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?

    結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?

    今回はコラム的に普段、質問を受けるものに答えていきたいと思います。

    質問はこちら

    ”鋭的剥離と鈍的剥離はどっちがいいの?”

    剥離って大切ですよね。どんな手術でも必要な剥離技術。剥離こそが手術という意見もあるぐらい大切なスキルですよね。

    手術ばかりをやっている婦人科医だけでなく、帝王切開ばかり行っている産科医にとって大切な内容になります。もちろんその両方を行っている産婦人科医にも、つまり全産婦人科医にとって必見の内容になっています。

    一昔前は、手クーパ、チギレクトミー(手で組織引きちぎる様)という用語が出来るほど鈍的剥離がメインの産婦人科手術でした。

    最近は鋭的剥離が隆盛を極めていますが、本当に鋭的剥離がいいのか考察していきたいと思います。

    そもそも剥離とは?

    そもそも剥離とは、物と物の間をはがしていくことを言います。

    いうならば、段ボールに張られたガムテープをはがすようなものです。

    剥離を細かく順序で述べるとこうなります。

    ①物と物の間の接着剤となるものを伸ばす

    ②その伸びた接着剤となるものを処理する。

    段ボールで考えると、少し引っ張るとまさに接着剤が線状に見えますよね。これを処理すると剥離が完成するわけです。

    術中うまく剥離が出来ると、組織同士が離れるため他臓器損傷や出血を抑えることが出来ます

    逆に、下手に剥離を行うとかなり危険な状態になります。

    ガムテープをテキトーにはがすとびりびりにガムテープが裂けたり、逆に段ボールが一部ガムテープに付いてきますよね。

    例えば腸管が子宮に癒着している間をはがすときを考えると、下手に剥離を行うと腸が損傷したり、子宮が裂けて出血したりするわけです。

    手術は合併症なく終わらせることが何よりも大切です。そのため”剥離こそが手術だ”という言葉の重みが増すと思います。

    鈍的剥離と鋭的剥離ってなに?

    剥離の手順と重要度がわかったところで”鋭的剥離”と”鈍的剥離”について考えていきましょう。

    わかりやすく、先ほどの段ボール、ガムテープスキームを用いましょう。

    鈍的剥離とは、指でガムテープを引っ張るなどをして、間の粘着剤を”引きちぎる動作”になります。

    鈍的剝離の手順としては

    ①テンションをかけて接着剤となる部分を線状に出す

    そのままテープに力を加えて接着剤を引きちぎる

    となります。

    一方、鋭的剥離とは、ガムテープにテンションをかけて、先のとがったもの(レターオープナー)などを用いて間の粘着剤を”切る動作”になります。

    鋭的剥離の手順としては

    ①テンションをかけて接着剤となる部分を線状に出す

    テンションを追加せず、接着剤の部分を器具で処理する

    となります。

    ①のテンションをかけて展開するは同じですが、②の間の組織の処理が異なるわけですね。

    ガムテープスキーマの用語をを手術の用語に反映していくと、

    段ボールとガムテープ = 組織や筋膜や膜などテンションをかける対象となる部分

    粘着剤 =あわあわの層やFascia、フィブリンやコラーゲンなどのテンションのかかる部分

    鈍的剝離の指 = 指や鉗子や吸引管など力を加える装置

    鋭的剝離のレターオープナー = 電気メスやハサミやエネルギーデバイスなどの切開装置

    になります。

    先ほどの段ボールスキームを言い換えると

    鈍的剥離は”もの”と”もの”の間にテンションをかけ展開し、Fasciaなどの間の組織を張力を強めることで引きちぎり処理すること。

    鋭的剥離は”もの”と”もの”の間にテンションをかけ展開し、Fasciaなどの組織を切開し処理すること。

    こう言い換えることができます。

    結局間の接着剤の部分を、そのまま組織に力を入れて引きちぎるのか、器具で処理するかの違いになります。

    ”引きちぎる鈍的剝離””切開する鋭的剥離”ということが出来ますね

    結局、鈍的剥離と鋭的剥離どっちがいいの?

    長々と剥離について説明しましたが、本題に移りましょう。

    結局、鈍的剝離と鋭的剝離どっちがいいの?

    結論・・・

    リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

    と考えています。

    リスクの高い場面とは、出血や他臓器損傷があり得るような、腹部腫瘍既往、内膜症、CS後などの症例における癒着部位を指します。

    え?あらゆる場面で安全な鋭的剝離こそ最強じゃないの?

    と思いますよね。

    そんなことはありません。この世の中にはある制限があります。

    それは、時間と集中力です。

    つまり、鈍的剥離が勧められる理由としては、手順を省略できることが大きな理由になります。

    なぜ省略できるのか。

    引きちぎる鈍的剥離の場合、テンションをかける(展開)と間を処理する(引きちぎる)をテンションを強めるという同一動作で行うことが可能だからです。

    まだ、納得できてませんよね。大丈夫です。さらに深堀していきます。

    次回は産婦人科手術のこれまでの流れを含めた詳しい理由と、どうすればうまく鈍的剥離を行えるのか、つまり”安全に引きちぎる鈍的剝離方法”に関して解説していきます。お楽しみに!

    PS:X(Twitter)にて更新報告しますのでよければフォローをお願いします。(こちら

    まとめ問題と解答


    問題: 以下の選択肢の中から、文章の内容に最も適したものを選びなさい。

    A. 鋭的剥離は時間がかかるが、リスクが低いので、どのような場面でも推奨される。

    B. 鈍的剥離は、リスクが高い場面でも、時間と集中力の節約のため推奨される。

    C. 鋭的剥離は、リスクが高い場面で細かく処理ができるため推奨されるが、リスクが低い場面では鈍的剥離が推奨される。

    D. 鈍的剥離と鋭的剥離は、どのような場面でも同じ効果が得られるので、どちらを選んでも良い。

    答え: C. 鋭的剥離は、リスクが高い場面で細かく処理ができるため推奨されるが、リスクが低い場面では鈍的剥離が推奨される。

    解説:剥離は、物と物の間をはがすことで、術中うまく行うことで他臓器損傷や出血を抑えることができます。特に「鈍的剥離」と「鋭的剥離」という二つの剥離の方法に焦点を当てています。鈍的剥離は、物と物の間にテンションをかけ、間の組織を引きちぎることで処理する方法で、鋭的剥離は、物と物の間にテンションをかけ、間の組織を切開することで処理する方法です。リスクが高い場面では細かく処理できる鋭的剥離がよいが、時間や集中力の節約、リスクが低い場面では鈍的剥離が良いと考えています。 結論として、「リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。」ため、選択肢の中では、Cが最も適している。

  • 膀胱剥離⑤ サイドからの剥離 手順

    膀胱剥離⑤ サイドからの剥離 手順

    手術で使える、サイドからの膀胱剥離の手順についてお伝えします。

    帝王切開後の方などで頸管の癒着が強い時に使うテクニックです。

    大雑把には横から頸管と膀胱の間に入っていく必要があります。吊り上がった膀胱を損傷しない為ですね。詳しく見ていきましょう。

    サイドからの剥離の意味とそのタイミング

    まずはサイドから剥離する必要が出てくるタイミングについて説明していきます。

    このサイドからの剥離方法は上達してきた人こそ大切な剥離方法になります。なぜなら帝王切開後の頸管に強い癒着がある状態での膀胱剥離で特に必要になってくるためです。

    帝王切開後の子宮頸管創部を下手に正面から突破しようとすると強固に固まっているため容易に膀胱を損傷します。

    そもそも膀胱が体部側にひきつれていて腹膜切開の時に損傷することもありますし、剥離の層ががずれてしまい膀胱を損傷することもあります。

    横からの剥離の場合は、膀胱の吊り上がりを考える必要がなく、頸管創部瘢痕部より奥(骨盤底側)で膀胱剥離できるため、安全に膀胱剥離を行えるため安全なのです。

    血管周囲を触るため、慣れないとかなり危ない感じがするのですが、身に着けてしまえばCS後のTLHも難なく完投できるため身に着ける価値は大いにあります。

    今回は手順をお伝えし、次回にそのコツをお伝えします。では手順を見ていきましょう。

    1.子宮動静脈を剥離する

    まずは子宮動静脈を大まかでいいので頸管や骨盤で同定します。

    そして子宮動静脈が直線的になるように血管周囲を剥離していきます。

    2.頸管を同定する

    次に子宮動静脈を基準に、その腹側で頸管を同定していきます。

    血管と、脂肪を基準にくぼんでいるところ(頸管)を探して鈍的に広げていきます。

    3.子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る

    膀胱を上につけるように、頸管に鉗子を押し当てて剥離をしていきます。

    12時方向を超え始めると、頸管に沿って剥離していくのことが難しくなるため、同様に反対側から剥離していき、繋げて終了です。

    4.子宮頸管の瘢痕部を切離する。

    最後に瘢痕部が残るように体部側に剥離を広げていきます。

    残った瘢痕部をなるべし薄くしてから根元で切除します。

    まとめ問題と解説

    問題:
    次のうち、サイドからの膀胱剥離の手順について正しい説明をしているのはどれでしょうか?

    A. 最初に子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作り、次に子宮動静脈を剥離する。

    B. 子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る前に、子宮動静脈を剥離し、次に頸管を同定する。

    C. 子宮頸管の瘢痕部を切離す前に、頸管に沿って12時方向を超えて剥離する。

    D. 子宮動静脈を剥離した後、すぐに子宮頸管の瘢痕部を切離す。

    解答:
    B. 子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る前に、子宮動静脈を剥離し、次に頸管を同定する。

    解説:
    サイドからの膀胱剥離の手順は次の通りです:

    1. 最初に子宮動静脈を剥離します。これは血管の位置を確定し、血管周囲を剥離して直線的にするためです。
    2. 次に、この子宮動静脈を基準に、その腹側で頸管を同定します。
    3. その後、子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作ります。ここでの重要なポイントは、12時方向を超え始めると、頸管に沿って剥離するのが難しくなるため、同様に反対側から剥離し、繋げていくことです。
    4. 最後に、瘢痕部を残すように体部側に剥離を広げていき、最終的に残った瘢痕部を薄くしてから根元で切除します。

    したがって、選択肢Bがこの手順に最も一致するため、正しい回答となります。

  • 膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

    膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

    膀胱剥離をしようにもなぜかうまいこと剥がれない。

    無理に力を加えてしまい出血をしてしまった・・・

    こんな経験ありませんか。

    それってあるポイントを見落としているだけかもしれません。

    今回は、膀胱剥離がうまくいかない理由3選とその理由と改善テクニックについて解説します。

    その1:テンションがかかっていない

    剥離部位にテンションがかかっていないと剥離は全くうまいこと行きません。

    お菓子の袋を開けるには、必ず2か所で引っ張る必要がありますよね。

    同様に、手術においても、反対向きのテンションつまり”カウンタートラクション”が取れていないと鈍的な剥離も切開もすることはできません。暖簾に腕押し状態です。

    こんなことはわかっていても、手術、特に腹腔鏡の限られた視野の中の場合見逃していることが多々あります。

    子宮の押し込みが甘いことでテンションが緩んでしまっていることがあります。

    特に、いつもと異なる状況やチームで手術を行っている場合は注意してください。

    前立が経験豊富な医師の場合は勝手にテンションをかけてくれるので意識せずとも良いテンションがかかっていることが多いですが、研修医や習練中の意思の場合は知らぬ間に力が緩んでいたりすることも多々あります。

    マニュピレーターは下の先生や看護師さんが持っていることが多いですし、女性医師が増えている現代では肉体的にも力が緩むことが多い印象です。

    そのため、改善方法としては、

    膀胱剥離の時は、自分でマニュピレーターや腟パイプの位置を確認し力を込めて押し込んでもらう、必要なら位置調整する。

    その2.子宮体部がねじれている

    次に、膀胱剥離時の”子宮体部がねじれ”について考えていきましょう。

    子宮のねじれはかなり危ないのにもかかわらず。わかりにくく、気づかずに進めていくと、大量出血、尿管膀胱損傷につながるかなり危ないピットフォールになります。

    なぜなら

    1. 頚部の子宮動静脈の位置がずれる
    2. ねじれがあることで、組織が巻き込まれていく

    この二つが生じるためです。

    この危険な”子宮のねじれ”の原因として多いのは、子宮筋腫で、重さや圧迫により大きくねじることによるものが多いです。

    特に子宮体部側方の筋腫の時に見落としがちになります。

    頚部筋腫ではなく、体部筋腫です。

    なぜなら、子宮の頚部筋腫の場合は、意識することが可能なので気づくことが多いですが、拡大視の視野の狭い状況で子宮体部がねじれていることには気が付きにくいためです。

    改善方法としては、

    子宮が直線化されているかどうか毎回確認する。特に円靭帯や子宮上行枝に着目し子宮がねじれていないかを確認する。

    その3.膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている

    最後は頸部で膀胱自体がはがれにくい場合をお伝えします。

    これはこれまでと違い、患者因子になります。特に炎症を起こしていたり、閉経後で組織が固い人に良く見られるもので、正しい層に入ってもはがれにくい時があります。

    この時に有効な方法としては、”層を乗り換える”という手法があります。

    以前、膀胱剥離をするなら安全性を取るならば腟膀胱筋膜の子宮側で剥離を行うべきだという話を行いました。

    実は、剥離しやすいのは腟膀胱筋膜の膀胱側になります。えいやと1膜破ることで膀胱剥離が容易になることがあります。

    そのため、改善方法としては

    頸管が萎縮や炎症を起こすような要因があるか確認し、層を意識して手術を行う。

    膀胱剥離が出来ない時に確認すること

    1. 子宮の押し込みが出来ているか確認する
    2. 子宮がねじれていないか確認する
    3. どの層に入っているか意識し、やりにくければ層を乗り換える

    まとめ問題と解説

    問題: 膀胱剥離がうまくいかない理由として最も適切でないものを次の選択肢から選びなさい。

    選択肢:

    • A. テンションがかかっていない
    • B. 子宮体部がねじれている
    • C. 膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている
    • D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

    正解:D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

    解説: 膀胱剥離がうまくいかない三つの主な理由として、「テンションがかかっていない」、「子宮体部がねじれている」、「膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている」。これらは、それぞれ剥離部位に必要なテンションがない場合、子宮がねじれている場合、そして膀胱と子宮間の剥がれる層が密接している場合に問題が生じます。それに対して選択肢Dの「腹腔鏡の視野が広すぎる」はむしろ、視野が限られていることが手術を難しくしています。

  • 膀胱剥離③ 正面突破 4ステップ

    膀胱剥離③ 正面突破 4ステップ

    前回は、膀胱は発生学的に、子宮と近く血管や膜を共有しているため、強いテンションや、腟膀胱筋膜の理解の必要性をお伝えしました。

    今回は、複雑怪奇な膀胱周囲の正面突破法についてお伝えします。

    膀胱剥離の正面突破の手順

    膀胱剥離の正面突破はオーソドックスな手技になります。

    特に、尿管や膀胱の安全を確保したいときや頸管の構造を明らかにしたいときに必要な手技になります。

    なぜなら膀胱が骨盤底側に降りることで、子宮と尿路系が離れるからです。

    具体的な手順は以下のようになります。

    step1.膀胱と子宮の位置の確認

    step2.膀胱子宮窩腹膜の切開

    step3.腟膀胱筋膜に沿って剥離

    step4.腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    ではそれぞれのステップを画像と共に見ていきましょう。

    step1.膀胱と子宮の位置の確認

    まずは膀胱と子宮の位置関係の確認です。慣れたチームでやっている場合は無意識に確認が終わっていることもありますが毎回確認するようにしましょう。

    初めに、マニュピレーターや腟パイプを左右に振ることで子宮頸管の位置を確認し、カップ付きの場合はエッジを円蓋部に押し当て持ち上げることで腟や子宮頸管の位置を把握します。

    次に、膀胱の確認に移ります。見た目でふくらみを見ることもできますし、鉗子で押してみたり、持ち上げることで膀胱の位置を確認します。膀胱カテーテルも一助になりますね。

    とりあえず困ったら動かしたりして、2次元の情報を3次元にとらえるようにしましょう。

    step2.膀胱子宮窩腹膜の切開

    膀胱と子宮の位置を把握できれば、ステップ2に移行します。膀胱子宮窩腹膜の切開になります。

    ここではテンションをしっかりとかけて”膜”を切りきることを意識します。腹膜と筋膜ですね。(詳しくはこちら

    手順としては、まず子宮を器具で強く押し込みます。さらに補助鉗子で子宮体下部を押し上げてテンションを増します。これらにより子宮頸管を頭側に押し上げて膀胱と距離を離します。

    膀胱実質損傷しないように、薄くそして軽く腹膜と膀胱を持ちあげ、画面上腹側に引き上げます。最も薄くなった部分を切開し膀胱子宮窩腹膜を切開します。膀胱近くでも腹膜切開は可能ですが、安全を取って子宮よりで切開するほうがよいです。

    この時は子宮頸管にハーモニックや電気メスが当たるまでしっかりと腹膜を切開します。脂肪のある層をしっかりと切りきってください。

    step3.腟膀胱筋膜を同定する

    次が一番難しい工程の腟膀胱筋膜の同定の説明になります。ここを間違えると膀胱損傷にもつながるのでとても大切です。

    まず、腹膜を持ち直してください。腹膜と膀胱組織を一緒に持ち上げ、頸管よりしっかりと離します。

    腹膜を左右に切り広げて腔を広げて、子宮頸管を押し上げ腟膀胱筋膜を同定して行きます。

    この時に脂肪と毛細血管を意識してください。

    脂肪で考えると、腟膀胱筋膜は脂肪のある層を一層抜けてから見つかります。

    血管を見ると、膀胱側の細かい静脈は子宮頸管に対して横向きに走り、子宮側の細かい静脈は縦向きに走ります。

    これらを意識して腟膀胱筋膜を見つけてください。

    ちなみに腟膀胱筋膜は子宮側でも膀胱側でも剥がれていきます。おすすめは子宮側を進んでいくことです。理由としては、以下が挙げられます。

    • 膀胱の表面には細かい静脈が走っている
    • 膣切開の時に薄く切ることが出来る

    安全性を考えるなら子宮側がよいのです。(はがれやすいのは膀胱側にないります)

    step4.腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    頸管における膀胱剥離は12時方向から膀胱剥離を開始することが大切です。なぜなら、2時10時方向には子宮動静脈から膀胱に対して分枝が存在するためです。

    そのため正中で筋膜を同定し、切開ラインまで奥に剥離したのち左右に広げてください。

    剥離方法は鈍的にも鋭的にも可能です。子宮頸管に鉗子を押しあて鈍的にも可能ですし、拡大視を駆使し、膀胱や頸管を動かしながら癒合筋膜をとらえて鋭的に切開することも可能です。よい層であればコールドナイフで切開しても出血はしません。

    残るは膀胱脚になりますが、こちらは子宮傍組織の部分で説明しますので、いったんは正面突破の膀胱剥離はここで完了とします。

    今日からできること

    膀胱剥離の手順と理由を理解しておく

    まとめ問題と解説

    以下の手順の中で、膀胱剥離の正面突破法において最も重要なステップはどれですか?

    • A) 子宮と膀胱の位置の確認
    • B) 膀胱子宮窩腹膜の切開
    • C) 腟膀胱筋膜の同定
    • D) 腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    回答: C) 腟膀胱筋膜の同定

    解説: この問題では、膀胱剥離の正面突破法における最も重要なステップを尋ねています。腟膀胱筋膜の同定(選択肢C)が最も重要です。これは、膀胱周囲の正確な解剖構造を理解し、適切な剥離を行うための基本であり、後のステップに影響を与えます。膀胱と子宮の位置の確認、膀胱子宮窩腹膜の切開、そして腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる手順も重要ですが、腟膀胱筋膜の同定が最も重要なステップとなります。

  • 膀胱剥離② 発生から見るコツ2選 力こそパワーだけじゃない。

    膀胱剥離② 発生から見るコツ2選 力こそパワーだけじゃない。

    今回は発生から見る膀胱剥離のコツは大きく2選になります。

    発生的な視点は知っているか知らないかで、上達度が全く違うためかなり大切な概念になります。わかりやすく解説していきますので着実に自分のものにしていきましょう。

    膀胱と子宮と腟の発生学的な関係

    まずは膀胱、腟、子宮の発生について説明します。

    執刀時において発生の理解というのは欠かせないものです。困難な症例ほど大切になってきます。

    なぜなら、より安全に剥離できる層が見つけやすくなるためです。

    発生が異なるものは、柔らかい組織によってつながっているため、剥がれていく層を見つけることで、カワハギの皮のようにつるつると剥けていきます。発生を知ることで安全な、剥がれやすい場所がわかってくるのです。

    早速ですが、次の問題に答えてください。

    Q1:膣は機能的にはどちらの臓器ですか?泌尿器系?それとも生殖系?

    これは簡単すぎましたか。機能的にはもちろん生殖系ですよね。では、次の問題です。

    Q2:膣は発生学的にはどちらの臓器ですか?泌尿器系?それとも生殖系?

    答えは、発生学的には、腟は泌尿器系でもあり生殖系でもある。

    解説に移りましょう。発生学的に考えると

    • 膀胱→尿生殖洞
    • 腟 →尿生殖洞、ミュラー管
    • 子宮→ミュラー管

    となりますよね。そのため、腟は発生学的には泌尿器系であり同時に生殖系なのです。

    腟の一部は膀胱と同じ発生であり、もう一部は子宮と同じ発生

    この異なる発生の臓器が交わっている事実が膀胱剥離を難しくしている原因のすべてと言っても過言ではありません。

    なぜなら、発生が違うのにも関わらず、血管や膜を共有してしまうからです。

    では膜についてもう少し深堀していきましょう。

    腟膀胱筋膜

    腟子宮と膀胱の間には膜があり、それは腟膀胱筋膜と言います。

    実は、この腟膀胱筋膜にはほかの筋膜とは少し違う意味合いがあります。

    筋膜はどのような意味がありますか?

    ”包む膜”という意味がありますね(詳しくはこちら

    では腟膀胱筋膜は何を包んでいますか?腟と膀胱を包む膜ですか?

    じつは腟膀胱筋膜は包むという意味ではなく、”癒合筋膜”の意味があります。膜は近くなると癒合する性質があり、筋膜同士が癒合したものを”癒合筋膜”と言います。

    他に例を挙げると、尿管と基靭帯が交わる部分も膜同士が癒合しています。

    つまり、筋膜の概念から話をしていくと、膀胱と腟子宮はそれぞれの管構造に包む膜である筋膜が存在していて、骨盤底に行くにつれて癒合して腟膀胱筋膜に変わっていきます。

    発生から見る剥離のコツ

    これまで二つのことを説明しました。

    1. 腟は発生で膀胱と子宮の両方と発生が一緒
    2. 膀胱と腟子宮の間には癒合筋膜が存在する

    この二つを理解したうえで膀胱剥離を開始することが必要になってきます。

    強いテンションをかける

    まずは組織が異なるものを剥離するときは必ず、テンションをかける必要があります。

    膀胱と子宮は発生学的に膣という発生の集合場所があります。そのためかなり強いテンションをかけないと、膀胱と子宮の位置関係がはっきりしないのです。

    マニュピレーターや膣パイプを強く押し込み、そのうえで膀胱を持ちあげることで子宮と膀胱の位置関係がはっきりさせる必要があります。

    癒合筋膜の把握

    鏡視下手術では癒合筋膜を特に意識して剥離を行う必要があります。

    なぜなら開腹の時代は腹腔内で操作しないといけないという縛りがなく、腹腔外まで引っ張り上げることでかなり強いテンションをかけることが可能でした。

    そのため、鈍的に”剥がれる層”でクーパーやガーゼを用いた鈍的剥離が簡単に行うことが出来ました。

    しかし、腹腔内で操作をしないといけない鏡視下手術では開腹手術ほどのテンションをかけることはできないため、拡大視野を取れるという強みを持って癒合筋膜を把握しながら剥離を行う必要が出てくるのです。

    ちなみに、癒合筋膜の上は膀胱側の腔となり、下は子宮側の腔となります。剥離自体はどちらでも行うこと可能です。

    次回以降は実際の手順を、正面突破とサイド突破に分けて説明していきます。お楽しみに。

    今日からできること

    癒合筋膜を意識する。

    まとめ問題

    以下の選択肢のうち、膀胱剥離に関して最も正確な説明をしているものはどれでしょうか?

    • A. 腟と膀胱は完全に異なる発生学的起源を持っており、癒合筋膜は存在しない。
    • B. 膀胱剥離では、強いテンションをかけずに膀胱と子宮の位置関係をはっきりさせることが可能である。
    • C. 癒合筋膜は、膀胱側の腔と子宮側の腔の間に存在し、膀胱剥離において重要な役割を果たす。
    • D. 鏡視下手術では、腹腔外まで引っ張り上げることが可能であるため、癒合筋膜を把握する必要はない。

    解答:C. 癒合筋膜は、膀胱側の腔と子宮側の腔の間に存在し、膀胱剥離において重要な役割を果たす。

    解説: 選択肢Cが正しい理由は、腟は膀胱側と子宮側に分かれる発生学的起源を持っており、膀胱と腟子宮の間には癒合筋膜が存在するからです。膀胱剥離を行う際には、強いテンションをかけて膀胱と子宮の位置関係をはっきりさせる必要があります。また、開腹では腹腔外まで空間を利用することが出来ますが、それが出来ない鏡視下手術では拡大視野を用いて、癒合筋膜を把握しながら剥離を行うことが重要です。

  • 膀胱剥離① そもそも膀胱剥離って必要?

    膀胱剥離① そもそも膀胱剥離って必要?

    今回からは膀胱編になります。

    実は前方アプローチをきれいにできるからこそ安全にできる膀胱剥離があります。

    それはサイドからの膀胱剥離。

    正面およびサイドからの剥離まで丸っと解説していきます。

    理解が難しいとされる、膀胱周りの解剖についても徐々に説明していきます。

    そもそも膀胱って剥離する必要ない!?

    まずはこの問いから深堀していきましょう。

    膀胱剥離って必要なんですか?

    もう少しちゃんとした問いにするなら、

    そもそも子宮を取るだけの手術で膀胱剝離は必要ですか?

    え?そりゃ必要でしょう。

    って普通なりますよね。実は、私も長らく”膀胱剥離の必要性”について考えたこともありませんでした。

    しかし、とある内視鏡学会でこの問いに出会ってから、再度膀胱剥離について考えさせられました。そして、深堀していくことで、膀胱の解剖を含めての理解がかなり深まりました。

    皆様の膀胱剥離の技術向上にかなり役立ちますので、一緒にこの問いについて考えていきましょう。

    膀胱を剥離しなくても子宮が取れるワケ

    結論から言うと、膀胱を剥離しなくても子宮を取るだけであれば取れます。これは、膀胱と腟と子宮の発生がわかれば答えが出てきます。

    あまり詳しすぎると逆に理解が出来ないので、あえて、ざっくりとした話にするとこうなります。

    膀胱は尿生殖洞
    腟は尿生殖洞+ミュラー菅
    子宮はミュラー菅

    そして、発生が異なるものは基本的に触ることなく分離することが可能。そのため膣のミュラー菅由来腟のラインで切れば、膀胱を触れることなく切れるというわけです。

    つまり

    膀胱と腟では、発生由来が異なる部分がある→膀胱がないラインがありそこであれば膣切開が出来る→子宮が取れる

    本当に?ってなりますよね。実際私もなりました。実際に画像を見ていきましょう。

    次の画像はカップ付きのマニュピレーターで正中に押し込んだ時の膀胱子宮窩になります。わかりやすいように腹膜を釣り上げています。

    どこがカップの淵で、どこからが膀胱ラインになるでしょう。

    答えとしてはこのラインとなります。

    カップの上の淵のラインよりも奥に膀胱がありますよね。

    つまり、赤い枠のところで切開をすれば膀胱の剥離はせずに膣切開することが可能となるわけです。

    これで答えが出ました。

    A:子宮を取るときに膀胱を剥離する必要はあるか。

    Q:腟の最も手前のラインが膀胱よりも遠く存在するため、強いテンションをかけている場合は腟切開するために膀胱剥離は必要ない。

    じゃあ膀胱剥離はいらないの??

    膀胱剥離をするワケ

    かといって膀胱剝離をせずに子宮全摘を行っているところを見たことはありません。

    なぜ膀胱剥離をするのか、その理由はたった一つに集約されます。

    腟を安全に縫うため。

    これに尽きます。

    この安全にというのは膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐという意味です。

    膀胱を剥離しなければ、腟の前壁側が膀胱にくっついている状態ですし、尿管周囲の組織も近い状態となっています。

    膀胱を剥離すれば、膀胱の組織を巻き込んで運針する確率は下がります。また、膀胱脚(後日解説)を切開することで尿管の組織を巻き込んで運針する確率は下がります。

    そのため、膀胱剥離をするということはこう言い換えることが出来ます。

    1. 縫い代を確保している
    2. 尿管を離している

    今日からできること

    膀胱を剥離する理由を考えながら剥離を行う

    まとめと問題

    膀胱剥離は子宮を取るだけであれば、必ず必要なわけではなく、腟の最も手前のラインが膀胱よりも遠く存在するため子宮を取るだけであれば膀胱剥離は不要です。しかし、実際は膣の縫合をする必要があるため、膀胱剥離は腟を安全に縫うために必要となります。

    問題

    以下の選択肢の中から、子宮摘出手術の際に膀胱剥離を行う理由で最も正しいのはどれでしょうか?

    • A:膀胱の形状が不規則であるため
    • B:膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐため
    • C:腟と膀胱の境界が明確に分かれていないため
    • D:尿管に近い場所を縫うため

    正解はB:膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐためです。

    子宮摘出手術の際に膀胱剥離を行う理由は、腟を安全に縫うために膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐためです。腟壁を縫うときに、腟の前壁側が膀胱にくっついている状態であり、尿管周囲の組織も近い状態となっています。膀胱を剥離することで、膀胱の組織を巻き込んで運針する確率が下がり、尿管周囲の組織を巻き込んで運針する確率も下がります。そのため、膀胱剥離を行うことは、縫い代を確保し、尿管を離すために必要です。

    Aの「膀胱の形状が不規則であるため」については、膀胱剥離の理由にはなりません。

    Cの「腟と膀胱の境界が明確に分かれていないため」については、上記のように膣のミュラー菅由来のラインで切れば、膀胱を触れることなく切開できるため、膀胱剥離の必要性はなくなります。

    Dの「尿管に近い場所を縫うため」については、尿管の組織を巻き込んでしまうことを防ぐために、膀胱剥離が必要であると考えることもできますが、それを主な理由としているわけではありません。したがって、Dは誤りです。