あなたは電気メスのジェネレータについて説明できますか? なぜダビンチにわざわざ外付けジェネレータを使って執刀している人がいるか説明できますか?
今回はこれらをドヤ顔で説明できる素敵な記事をご用意しました。
・・・ちなみにですが、
「説明できない人は本当にやばいです!手術する資格ありません!! 」
なんてこと言うつもりは、まったくありません
正直言うと全員がジェネレータについて説明できなくて良いと思っています 。 知らなくても手術はできるからです。
例えば、今お持ちのスマホやパソコンのスペックを解説できますか? ストレージやメモリといった項目がそれぞれ何を示しているか。そして、自分の目的に応じて最適化して選べていますか?
おそらくわからず、とりあえず真ん中あたりの値段のものにしとこうかなぁって感じじゃないですか?
でも普通にスマホ、使えてますよね?LINE、カメラ、ネットなどしたいことはできているわけです
よく考えてみると不思議じゃないですか?
これは、よくわかっている人が、”いい感じ”に調整 してくれているから できているわけです。
みんなYoutube見るぐらいだし、これぐらいのスペックでいいかって感じです。
手術のジェネレーターに関しても同様のことが言えます。
つまり、基本的に手術で誰が使っても”いい感じ”になるように設定されている わけです
電気メスを使って腹腔内全てが消し炭になるなんてことないですよね!?CUT押しても全く切れないなんてことないですよね?誰かがいい感じに設定してくれてます。
「使えてるなら、知らなくていいんじゃない?」と思いました?
このブログを読むようなマニアックな方は絶対に知っておくべ きです!!
ジェネレータ設定を知らないと、必ず、どこかで思い通りの手術ができず行き詰まります。
どんどん手術の解像度が上がってきた時、そして細かい血管走行やファシアを一本一本切りたい時に必ずジェネレータの知識が必要だからです 。
これは例えば、スマホやPCでこだわった動画編集をしたい時に似ています。どれぐらいのスペックが必要なのか理解してせず、低スペックのマシーンで動画編集を行うとフリーズします。これと同じですね
この記事を数分読むだけで、ずっと悩んでいた処理できなかった組織が綺麗に処理できるようになるかもしれません
最後にはジェネレーターの全体像が見えてきます。
ジェネレーターの説明ができるだけで、この人こだわってるなぁって思われること間違いなしです笑
なるべく噛み砕いて説明するので、楽しんで見ていってください。
erbe社のジェネレータを元に知識を深めて行きましょう
ダビンチのジェネレータ erbe VIO dV ってどんなの?
ダビンチが急速に広まる中、現在広く普及しているジェネレータは”erbe VIO dV”になります。
erbeという会社のVIOシリーズのdV(ダビンチ専用) というわけです。
Appleという会社のiPhoneシリーズの17Pro的な感じです!erbe社ではVIO3が比較的有名なジェネレータですね。
普通のジェネレータはモードとワットを設定すれば大丈夫です。ソフト凝固の80Wとかですね。
VIOシリーズは強さの設定が独自です。VIOシリーズのみモード/エフェクト/ワットの三つを設定する必要があります。
モード=CUTとCOAGの比率設定
モード設定は「どう切って焼くか」という挙動の選択になります。ざっくりCUTよりにするかCOAGよりにするかのグラデーションで理解して ください。以下は公式の発表 に基づく説明です。こちらは他のジェネレータとも同じ様なイメージですね。
大まかに、よく切れるようにするか、それとも広範囲に凝固できるようにするかのグラデーションです。 大体モードが3つぐらいあるのはそのためです。よく切れる、よく凝固できる、その間。
例えば、VIOdVの電気メスの凝固(COAG)であれば、 ・凝固いつつ切れ味もでるClassic ・凝固に特化したForced ・その間のSwif といった具合です。
「凝固の中で、純粋な凝固にするのか、すこしCUT寄りにするのか」を選ぶイメージです。 バイポーラーに関しても同様に考えて良いです。ここまでは結構わかりやすいですよね。
まずは『モード=CUTとCOAGの比率設定』と覚えてください。切りたいか、焼きながらちょっと切りたいか、焼きたいか。これはすべてのジェネレータに共通した考えです。
エフェクトとワットについて
つぎにエフェクトとワットの話をします。 結論から言うと
・エフェクト:強さ(狙う組織効果の強度) ・ワット:強さの上限(安全性のリミッター)
という整理がわかりやすいです。
重要なのはワットが強さを定義しているわけではないという点です !強さは主にエフェクト側で決まります。
普段であればWを調整すれば良いわけです。「つよさ40にして〜」「80まで上げて〜」と看護師さんにお願いしますよね。しかし、VIOでは、これが「エフェクトあげて〜」になるわけです。
ここが混乱ポイントとなります(ワット設定項目として残るため、なおさらわかりにくい)。
例えば、凝固の最も凝固寄りのFORCED COAGについて見てみましょう。こんなイメージ↓
Geminiを使用し作成
エフェクトが上がるほど(概念的には)強く/広く/深くなっていきます。
ワットは上限になります。安全機構のように捉えると理解しやすいです。 そのため、低いエフェクトで高いWを設定しても効果は限定的です。逆に高いエフェクトで低いWを設定するのも筋が悪いです。
個人的なイメージ VIOのジェネレータはシャワーと同じ
なかなかここまでの話でイメージがつかみにくい場合は「ベランダで水やりするシャワー」を思い浮かべてください。
Geminiで作成
実は、シャワーヘッドと元栓の構造はジェネレータと全く同じなんです 。
って言えばびっくりしますよね?実はこの例え、芯を食ってます。
・シャワーヘッドの形(ジェット / 霧など)=モード ・レバーの握り具合=エフェクト ・元栓がW(上限)
もし高圧洗浄のように組織に切り込みたいなら、シャワーの「ジェット」に相当するCUT寄りのモードにすればいいし、幅広く凝固したいならシャワーの「霧」の様に広がるCOAG寄りのモードに寄せればいいのです。
そして強く、深く、広くしたい場合は、シャワーレバーを握るように、エフェクトをあげてやる訳です。
最後のWは安全機構ですね。例えば、ジェットでベランダ洗浄をしていたらお隣さんまで水を飛ばしてしまう危険性があり元栓を少し締めておく様なものです。
なんとなくイメージできましたか?
ジェネレータ=シャワーというのは良いメタファーなのです。
erbe VIO dVが酷評される理由とその素晴らしさと限界
酷評される理由のひとつは”慣れ”
このerbe VIO dVですが”わかりにくい”と酷評 されています。
なぜでしょうか。勘のいい人なら、ここまで来たらわかりますよね。
理由は単純、変数が3つあるから。しかも他のすべてのジェネレータが採用している、Wでの強さ設定をしていないから。
調べてみると、erbe以外の代表的なジェネレータ(Medtronic(FT-10)、OLYMPUS(ESG-400)、ETHICON)などは基本的に「モードとW」の2変数で設定されています。
強さをワットではなくエフェクト、そしてワットは強さを表さず上限を示している。
これがわかりにくい原因ですね。ラパロでErbe以外を使っていた人からするとこんがらがります(私もそうでした)。
人は普段と違うものに拒否感を示すもの。酷評されているのも分かります。
しかし、実はerbe社VIOは他とは一線を画す思想を持っています!そしてその思想がさらなる酷評の引き金となります。
Erbe社の素晴らしい思想と最高のジェネレータ
Erbe社のジェネレータの設計思想は
「狙った組織効果を再現する」=reliable / reproducible tissue effects(参考 )
つまり
「どんな組織でもいつも同じ様な切れかた、焼け方をする。」
なので、”EFFECT”という言い方をします。組織に対して与える効果を設定しているのです。
これってすごくないですか?脂肪でも血管でも、ウェットな術野でも、乾いていても、接触が甘くても同じ様にきれたり焼けたりする訳です。
組織によって当て方を変えたりする必要がありません。
車で言うと自動運転の様なものです。周りの状況を常に監視しいい感じに車を操作してくれる様な素晴らしい技術です。
ちなみに、今一番よいと言われているジェネレータとモードはerbe ”VIO3”のPreciseSECTモードです。
このUPSTREAMの伊藤雄二先生 の説明が全てを表しています。この動画の13分の膀胱剥離を見るとかなり綺麗にきれています。ぜひ時間がある時に見てみてください。
こちらはスクショです
癌研有明の金尾先生もこのモードを使用していると、講演で述べられていました。
この最高ジェネレータのVIO3と酷評のジェネレータVIOdV、そこの違いを深掘りしてみましょう。
erbe VIO dVは力不足 VIO3の1/25,000の能力とは
医療機器を作るときは認可申請をする時に、「これを元に作りましたよ〜」っていうものがあった方が通りやすいのはご存知でしょうか。 この元となる機器をpredicate deviceと言います。
例としてhinotoriは認可を通りやすくするために、ダビンチを真似して作っています。同じ様な配置になっているのはそのせいです。
さて、ダビンチのジェネレータVIO dVのpredicate deviceはVIO 300Dという機種になります(こちらの4ページ目参照 )。
実は、このVIO300DはVIO3の1世代前のジェネレータになります。ということはVIOdVは現在のVIO3より1世代前のジェネレータを元に作られたということになります。
そんな変わらないんじゃないの?って思いますよね。大きな大きな差があります!
VIO3は標的組織を毎秒2,500万回以上 測定しています。めちゃくちゃ多いですよね。PreciseSECTモードは先ほど述べた、どんなものを切っても、切れ味良く出血が止まるという理想を叶えています。(参照リンク )
一方で、VIO300DつまりVIOdVは毎秒1000回です。(こちらの17分30秒ごろ参照 )
え、少なくないですか?2万5千倍違うんですか?
25000倍? 万桁違うの?? 1mlが25Lの様なもんだよ???
私もいまだにびっくりします。
ドラゴンボールの界王拳ですら20倍までやぞと。ジンバブエドルのハイパーインフレちゃうんやぞと。(ジンバブエドルは月8億倍らしいです笑)
いまだに疑っていますが調べた限りでは、おそらくあっていそうです。
VIO3はerbe社の思想を達成した素晴らしいジェネレータですが、その1世代前のジェネレータの性能しかないVIOdVはerbe社の素晴らしい思想を実現するには力不足という結論が導き出せます。
変数が3つあり分かりにくく、さらにジェネレータ自体のフィードバック回数が少ないことから性能としても不十分なジェネレータとなってしまったVIOdVは酷評されている訳ですね。
外付けでジェネレータをつけている執刀者の考えもこれで分かりましたよね。
なお、現在はダビンチ5がローンチされ、新しいジェネレータが出ています。実際に使用してみたので、今度レビューしますね!お楽しみに。気になる方は各種SNSのフォロー(X )をお願いします。
まとめ
ジェネレーターは「誰が使っても破綻しないように“いい感じ”に設計されている」一方で、手術の解像度を上げていくほど“設定の意味”が効いてくる。 モードは、切る(CUT)と焼く(COAG)の性格=挙動 を決めるつまみ。 VIOシリーズがわかりにくいのは、強さをWで決めるのではなく、EFFECTで“狙う効果”を決め、Wは上限(リミッター)という発想だから。 ただVIOシリーズの良さは、条件が揺れても狙った組織効果を再現しやすい 設計思想にあります。 ダビンチのジェネレータVIOdVではフィードバック制御が粗くなりやすく 、その分性能が低い。 ジェネレーターを理解することは、手術手技を増やすというより、「同じ手技の再現性を上げる」ための武器となる。
選択肢 問題
Q1. VIOシリーズにおける「EFFECT」と「W」の関係として、最も適切なのはどれ?
A. EFFECTが上限で、Wが強さそのもの B. Wが強さそのもので、EFFECTは飾り C. EFFECTが狙う組織効果(強さ)で、Wは上限(リミッター) D. EFFECTもWも同じ意味で、どちらを変えても同じ結果になる
正解:C
解説: この記事の核です。VIOでは“強さ=W”という感覚が通用しにくく、狙う組織効果(強さの中心)はEFFECT側で決まり、Wは安全側の上限として働く、という整理が一番スッキリします。
Q2. 「モード」を一言で表すなら、どれが近い?
A. 通電時間を決める B. CUTとCOAGの性格(比率・挙動)を決める C. 温度を直接指定する D. 組織抵抗を測定する回数を決める
正解:B
解説: モードは「どう切って、どう焼くか」の挙動選択です。CUT寄り/COAG寄り/その中間というグラデーションを作っているのがモード、という理解が一番迷いません。
Q3. シャワーのメタファーで、EFFECTに最も相当するものは?
A. シャワーヘッドの種類(ジェット/霧) B. レバーの握り具合(出る勢い) C. 水道の元栓(安全側の絞り) D. ホースの長さ
正解:B
解説: シャワーヘッドの形=モード、レバーの握り具合=EFFECT、元栓=W(上限)という対応でした。イメージが湧けば、VIOの3変数が直感的に整理できます。
Q4. 「低いEFFECTに高いW」を設定したときの説明として、この記事に沿うのはどれ?
A. 最高に強くなるので万能 B. 安全性が上がるだけで効果は上がらない C. 上限を上げても、EFFECTが低いので狙う効果は出にくい(意味が限定的) D. 逆に弱くなる
正解:C
解説: Wは上限です。上限を上げても、そもそもの“狙う効果”がEFFECT側で決まっているなら、期待した変化は得にくい、というロジックになります(※実機の挙動は機種・モードで差が出ますが、記事の理解としてはこれでOK)。
Q5. 外付けジェネレーターを併用する執刀者がいる理由として、この記事の流れに最も合うのはどれ?
A. 見た目がかっこいいから B. 設定が面倒なので機械を増やしているだけ C. 狙う組織効果の再現性を上げる/世代差や設計差を埋めたいから D. どのジェネレーターでも結果は同じなので、気分で付けている
正解:C
解説: 本文では、ERBEの思想(reliable / reproducible tissue effects)や、世代差(制御・フィードバック設計の違い)が示唆されました。外付け併用は「手技の問題」ではなく「狙った組織効果を安定して出す戦略」として説明すると筋が通ります。