カテゴリー: TLH

  • 円靭帯処理② 切開場所、言語化できてますか?

    円靭帯処理② 切開場所、言語化できてますか?

    「円靱帯の切るのってどこがいいんですか?」

    ちゃんと答えが返ってこない質問第一位!

    ”真ん中らへん”」と返ってきて絶望するまでがセット

    円靱帯の切開部位は、その後の展開を決めるかなり重要な工程。

    見る人が見れば、円靭帯の切開を見るだけで手術が上手いかどうかが判断できる。

    とりあえず真ん中らへんで切っておけばよい??

    今回はこの疑問にスッキリ言語化してお答えします。

    円靭帯切開位置

    では早速どこで円靱帯を切りますか?

    正解は・・・

    後ほど発表。理由をはっきり持って答えれますか?

    切開位置のポイント3つ

    Point1 子宮動静脈上行枝から離れている。

    Point2 骨盤漏斗靱帯から離れている

    Point3 子宮から遠すぎない。

    この3つになります。では、それぞれ見ていきましょう。

    Point1 子宮の血管から離れている

    子宮動静脈はまだ止血していないのでヒットするとだらだらと出血し、広間膜腔に流れ込んでしまいます。図の番号で言うと⑤で切ると、子宮にも骨盤漏斗にも近すぎますね。

    Point2 骨盤漏斗から離れている

    骨盤漏斗靭帯から出血した場合、卵巣温存の場合、卵巣へのダメージが高まります。

    この2つはわかりやすいのではないでしょうか。それなら外側に切開位置を決めればよさそう?

    実は、外側すぎてもダメなんです。

    Point3 子宮から遠すぎない

    円靭帯を外側で切りすぎてはいけない理由は、その後の展開が影響してきます。

    円靭帯の切開後、腹膜を子宮の内側に向かって切開していきますよね。

    この時、外側で切開すぎると子宮側に向かって腹膜を切開する必要が出てきます。

    勘のいい人はわかりますよね

    そう、切れば切るほどリスクも高くなりますし、方向的に子宮側の血管を傷つける可能性が出てきます。

    なので、子宮から遠ければ大丈夫ってわけでもないのです。

    円靭帯切開位置まとめ

    外側だと腹膜切開時に子宮に寄っていく動作が増えるが、内側だと血管をヒットする確率が増える

    これらを考えて症例ごとに変えていく必要があるのです。

    答え

    これでわかりましたね。

    答えは何ですか?

    正解は・・・

    ②③④の3か所でした。

    複数回答かい!!!

    いやいや、幅を取った答えにした理由はちゃんとあります。ちゃんと解説していきますのでご安心ください。

    卵巣温存の有無による位置の微調整

    今回はTLHで考えているためなるべく血管をヒットしないなるべく内側がよいと考えます。

    しかし、卵巣を残すかどうかで切開位置が若干変わります。

    卵巣を切除するときは、骨盤漏斗靭帯を単離する作業が出てくるので外側めにしたほうが後々スムーズですし、尿管も見つけやすいので外側でよくなります。

    BS  → 内側より (③④)

    BSO → 外側より (④⑤)

    個人の熟達度による位置の微調整

    初めは外側から始めたほうが無難です。

    動作が増えるだけで外側のほうが安全性は高いです。なぜなら、血管を傷つける可能性が低く尿管も見つけやすいです。

    血管をヒットしてしまうと第一刀で上級医とバトンタッチという悲しい結果に終わることがありますし、何より卵巣温存であった場合骨盤漏斗靭帯を傷つけると卵巣機能が落とすという結果につながってしまいます。

    そのため、子宮に近い場合は骨盤漏斗靭帯を避けるために、腹膜の切開ラインは骨盤漏斗靭帯に沿った狭い間を真横に切る必要が出てきます。少しでも奥に切り込むと子宮動静脈上行枝を傷つける可能性があります。こわいですね。

    そのため、血管かつかつに切れる自信がつくまでは、気持ち外側めで切開位置を決めましょう。

    症例の困難度による位置

    困難症例の場合はいかに出血しないか、他臓器損傷を起こさないかが問題となってきます。

    そのため、外側めで円靭帯の切開をしたほうが無難です。理由は上記と同じです。

    円靭帯切開を極めれば、かつかつで切ることでその後の展開をスムーズに行い手術時間もりすくも軽減することが出来ますが、そこは自分の技量との相談になってきますので、慢心せずに円靭帯切開部位を設定していきましょう。

    上達するためには

    リスクを取れると、それだけ早く上達することが出来ます。できないことをやることでしか人は効率よく成長することが出来ませんよね。わかりやすく言うならスライムを倒し続けても成長はできますが、効率が悪すぎますよね。全滅のリスクがあったとしてもドラゴンを倒したほうが経験値は高いです。

    ただ、相手は人間であまりリスクを取る行動は手術中はとれません。

    おすすめは、

    普通のTLHで附属器切除症例。片方の子宮動脈を止めた後、反対側でいつもより内側でトライする。

    というかなり方法が安牌となります。ぜひトライしてみてください。

    今日からできること

    円靭帯を切開する時に、なぜそこを切るのか説明してから切開する。

    まとめ問題

    問題:円靱帯の切開位置として正しい位置のはどれでしょうか?

    選択肢:

    • ① 子宮動静脈上行枝の近く位置
    • ② 子宮動静脈上行枝から遠く、骨盤漏斗靭帯からも遠い位置
    • ③ 骨盤漏斗靭帯から遠く、子宮から遠すぎない位置
    • ④ 子宮にかなり近い位置

    解答と解説:

    正解はすべてです。円靱帯の切開位置は、手術の上手さや症例によって変わるためです。適切な切開位置を選ぶためには以下の3つのポイントが重要です。

    1. 子宮動静脈上行枝から離れている
    2. 骨盤漏斗靭帯から離れている
    3. 子宮から遠すぎない

    切開位置は手術の状況や個人の技量によって調整されるべきです。卵巣温存の有無によっても切開位置が変わり、卵巣を切除する場合は外側に、卵巣を温存する場合は内側に切開位置を調整します。また、初心者は血管を傷つけるリスクが低い外側で切ることが無難です。困難な症例の場合も、出血や他臓器損傷を避けるために外側で切ることが望ましいです。

    上達するためには、普通のTLH(子宮摘出術)で附属器切除症例を扱い、片方の子宮動脈を止めた後、反対側でいつもより内側で切ることを試みることがおすすめです。これにより、技量を向上させることができます。

    次回は円靭帯と”あるもの”の距離を見れば広間膜の癒着がわかる。です。お楽しみに。

  • 【円靱帯①】円靱帯にまずいビールを飲まされた話(円靱帯処理の意義と方法)

    【円靱帯①】円靱帯にまずいビールを飲まされた話(円靱帯処理の意義と方法)

    「円靱帯なんてどうでもいいでしょ。」そう笑いながら友人はビールジョッキを口に運んだ。私は「どうでも良くない!」と心の中で叫んだ。机に置かれたままのビールジョッキを見つめたまま言語化できない自分を悔いた。

    初めてのTLHは円靱帯からはじまった。円靱帯切開ラインが少しでもずれると怒られる日々。確かに上司のいう通りに切開できるかによって手術のできは左右した。「円靱帯こそ手術のできを測る試金石だ。」そう信じていた。

    年が変わり、施設が変わった。円靱帯はテキトーに処理された。とりあえず真ん中で切られた。私の中で何かが崩れた。常識は非常識となった。

    円靱帯の処理と聞いてどうだろうか?

    地味。

    正直、コンビニのレシートぐらい地味。

    そう思う人が9割。

    ただ、円靱帯は子宮全摘において初めに処理することが多い。何事も始まりの場所というのは大切だ。旅行ならどうだろう。例えば、京都に旅行するにも、滋賀からなのか、兵庫からなのか、佐賀からなのかで、かかる時間も行き方も違う。”出発点”は大切であり全てを決める。それは手術でも同様。円靱帯も大切な始まりの場所。円靱帯切開がすべてを決めると言っても過言ではない(過言かもしれない)

    今回のテーマは、円靱帯処理。普段は見過ごされがちな地味な処理。10年間考え続け、見えきた世界がある。熟成させた切開ラインの選び方や処理についてごっそりお伝えする。

    今回は円靱帯がすべてを決める理由と、円靱帯の具体的な処理方法について。どうぞお見逃しなく。

    なぜ円靭帯がすべてを決めるのか

    円靱帯の処理が大切な理由は

    「広間膜腔における層の選択、交差部の同定に直結するから」

    少し難しいと思う人もいるかもしれない。ここでピンとくれば、正直技術認定医レベル。広間膜腔とは何か、層とは何かを話し出すとそれだけで1記事がかけるので割愛するが、今の時点では、

    場所ややり方が違えばしやすさが変わる
    →尿管や子宮動脈の見つけやすさがかわる

    ぐらいに思ってもらって良い。

    噛み砕くならポテトチップスの袋の開け方。手でガバッと開けるのか、はさみで開けるのか、はたまたうしろからパーティー開けするのか。

    後の展開が大きく変わってくるはずだ。一人でソファーで寝っ転がりながら食べやすいのか、手を汚さず綺麗に食べやすいのか、テーブルに広げみんなで食べやすいのか。(個人的には鈍的剥離、鋭的剥離、後方アプローチの理解とつながると考えている。きっと読み続ければ同じ考えになる。)

    切開場所や方法によりその後のやりやすさが大きく異なってくるのだ。具体的な処理はどのようにすればいいだろうか。

    展開をスムーズにする円靱帯の処理方法

    円靭帯の処理が甘いとその後の展開が難しくなる。周りの組織も含めてしっかり切りきらないと突っ張りとなり、広間膜腔の展開がかなりやりにくくなる。例えば次の画像を見てほしい。なかなか尿管が見つからなかった時の展開の様子だ。

    円靱帯が切りきれていないのがわかるだろうか。切りきれていないと固い繊維が突っ張って展開がうまくできず、奥の腔が開きにくくなる。そうすると尿管や子宮動脈が見つかりにくい。

    処理は大雑把にきっちり焼いて切るだけ

    円靭帯の切り方は、一言でいうなら「凝固した後にきっちり切開しようとなる。」
    言葉にすると実にアホらしいが、できていない時が多々ある。

    円靱帯周囲の具体的な解剖

    きっちり焼いて切るためには、解剖を知る必要がある。ステーキ肉なのかホルモンなのかで大きく焼き方や切り方は異なる。種類を知らなければ良い処理はできない。

    解剖円靭帯の本体は硬い繊維。ここから大きな出血はしない。せいぜい毛細血管からにじむぐらい。

    円靭帯の裏には血管がある(回旋枝や円靱帯下などと呼ばれている血管)。ここが出血すると絨毯にこぼしたワインぐらい悲惨な状況となる。

    つまり、解剖としては、硬い円靱帯そのものと、その下を通る出血しうる血管、それを包む腹膜(漿膜?)が存在する。円靱帯、下血管、腹膜の3つだ。

    円靭帯の本体は硬い繊維で出血しないが、中の毛細血管からにじむので軽く凝固が必要。

    そばを走る下血管の処理が1番の山場。これは子宮動脈本幹ぐらいの気持ちで処理することをお勧めする。位置を把握した上での凝固が必要。

    腹膜は先に切っておくと円靱帯や下血管を単離できて便利。意識して処理できると安全に手術をすることができるし、単離の技術を磨くことができる。

    円靭帯処理 3パターン

    パターン①:まとめて処理(腹膜ごと円靱帯と下血管をまとめて凝固切開)

    パターン②:血管のみ単離して処理(円靭帯を半分切開して、腹膜を展開し下血管を単離し凝固切開)

    パターン③:すべて単離して処理(腹膜を切開し、円靱帯と下血管をそれぞれ単離し凝固して切開)

    の3つになる。もう少し詳しく言うと

    パターン①:まとめて処理

    円靭帯を伸ばすテンションかけて腹膜ごと円靭帯を凝固し切開。切りきれないことも多いので2.3回繰り返さないといけないこともしばしば。斜めにずれるリスクが高く、まっすぐ処理できるように円靱帯の向きの細かい調整が必要。

    パターン②:血管のみ単離して処理

    ①同じテンション。円靭帯を腹膜ごと一部切開。腹膜と円靭帯の間に鉗子を入れ剥離し腹膜を展開。下血管を単離し凝固切開。

    ③:まず円靭帯と骨盤漏斗靭帯の間の腹膜を切開(下血管を視認しながら)。その後円靭帯奥の腹膜も切開し、円靭帯を単離し凝固切開。手間はかかるが必ず切り切れるため一番安全。

    結局どれがいいの?

    一番安全で安定するのは③(腹膜をあけてから凝固切開)。

    円靭帯とその裏の血管を単離できるので一番確実に処理ができる。特に子宮動脈の上行枝や附属器系の血管を傷つけるリスクが減るためその後の展開としても安心感がある。

    剥離せずに行うことに慣れていると、癒着の時や大きな子宮の時に血管が近くなって出血や多臓器損傷に繋がりやすい。

    癒着も全くなく、急ぐなら①(腹膜ごと強くけん引して凝固)でよいが腹膜は開けたほうがよりしっかりと切開でき、その後の広間膜腔の展開が楽になる。腹膜ごと凝固し切ると境が分かりにくくなり、切り残しのリスク。何より腹膜を切って単離するようにすると、腹膜切開や単離の手技が取得できる。傷つけてもリカバーしやすい場所で取得できる。

    ちなみに②と③の違いは円靭帯の切開場所の選択を腹膜展開前にするかどうか。今わからなくて大丈夫。次の記事が役に立つこと間違いなし。

    次回はいよいよ円靱帯の切開場所。

    今日からやれること

    円靭帯を切開時は、血管の処理をどのタイミングでするか考える。

    まとめ問題

    円靭帯切開の方法に関して、以下の選択肢から最も汎用的なものを選んでください。

    • A. 腹膜ごと凝固して切開
    • B. 円靭帯を半切開して、腹膜を展開し単離し凝固して切開
    • C. 腹膜を切開し、単離し凝固して切開
    • D. 凝固せずに切開

    正解:C. 腹膜を切開し、単離し凝固して切開

    解説:

    円靭帯切開の方法は、以下の3つのパターンがあります。

    1. 腹膜ごと凝固して切開
    2. 円靭帯を半切開して、腹膜を展開し単離し凝固して切開
    3. 腹膜を切開し、単離し凝固して切開

    この中で最も安全で安定する方法は、「腹膜を切開し、単離し凝固して切開」です。円靭帯とその裏の血管を単離できるため、子宮動脈の上行枝や附属器系の血管を傷つけるリスクが減ります。

    剥離せずに行うと、癒着の時や大きな子宮の時に血管が近くなって出血することがあります。癒着も全くなく、急ぐ場合には腹膜ごと強くけん引して凝固する方法でよいかもしれませんが、腹膜は開けたほうがよりしっかりと切開でき、その後の広間膜腔の展開が楽になると思います。腹膜ごと切ると切り残しが多い印象があります。

    次回、円靱帯の切るのってどこがいいんですか  です。お楽しみに。