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  • 子宮傍組織② もう出血しない、子宮傍組織入門。「結局どの”高さ”で切ればいいの?」

    子宮傍組織② もう出血しない、子宮傍組織入門。「結局どの”高さ”で切ればいいの?」

    子宮動静脈をどの高さで切る?

    子宮動脈上行枝の処理を行うときに聞かれ、誰しもを返答に困ったことがあるはずです。

    この記事を見れば明確な返答を行うことが出来るようになります。具体的にどこで子宮動静脈の上行枝を処理すればいいのか説明していきたいと思います。

    知っているだけで、危ない状況から逃げれる場面が増えてきます。全産婦人科医が知っておくべき内容となっていますのでお見逃しなく!

    子宮動静脈切開の危険性

    手術中にピリつく瞬間はいつですか?というアンケートがあった時皆さんなら何と答えますか?

    私は、”子宮動静脈の処理の時”と答えます。

    なぜならここの処理を失敗すると大量出血につながり、一気に視野がなくなり、そして他臓器損傷という意思にとっても患者さんにとっても最悪の状況につながります。

    皆さんも経験ありますよね。

    子宮近くで出血、止めるには外を触るしかない、でも尿管見えてない・・・どうしよう・・・

    よくある話で、出血で焦る状態で対処しないといけないのでかなり焦ります。

    初歩の解剖知識となりますが、子宮は左右2束に血管が収束しています。子宮本体から木の根のように広がっていきますよね。

    出血をすると、より外側で処理をしないといけない(上流は外側の内腸骨系)ため。

    骨盤より、つまり危ない組織が広がっている場所を触る必要があり危険です。

    子宮動静脈での出血は絶対に避けるべきイベントになります。

    結局どの”高さ”で切ればいいの?

    では本題の単純子宮全摘で”子宮動静脈上行枝は結局どこで切ればいいの?”に移っていきます。

    子宮頸部のどこで切るかという話になります。

    大きく2パターンに分かれます。

    高め:子宮体部より(内子宮口当たり)
    低め:膣より(外子宮口あたり)

    つまり、①高めの体部に寄ったところでの切開と、②低めの膣に寄ったところでの切開になりますね。

    それぞれの処理位置とその後の展開について具体的にみていきましょう。

    子宮体部より(内子宮口当たり)での処理

    いわゆる”高い位置での処理”、”筋膜内での処理”、”アルドリッチ”などと言われる処理になります。

    具体的な場所としては、子宮体部が広がってくるこの部分になります。

    かなり体部よりですよね。頸管に子宮動静脈上行枝をつけながらの処理になります。

    この”高い”ラインでの処理の最大のメリットは出血時のリカバリーがしやすいことになります。
    なぜなら、骨盤からより離れる、つまり尿管や膀胱、大腸から離れることが出来るため他臓器損傷のリスクが低いため安心して凝固止血できるわけです。
    そのため、仮にに子宮から離れた部分の剥離が甘くても処理が出来ます。

    具体的な手順を見ていきましょう。

    ①まず子宮をしっかりと頭側に牽引します。子宮体部と頸部の間を確認します。

    ②内子宮口付近でバイポーラで凝固止血します。左右十分凝固止血したのち、子宮側で切開します。

    血管は分けて一本一本処理していってください。欲張ると出血します。

    「欲張って切開しない」これを意識して処理していきます。

    ③そして徐々に腟側に降りていきます。この時も凝固止血しながら進めるようにしてください。

    コツとしては

    まず、子宮頸管に沿って切開していくこと
    つぎに、子宮動静脈を切った後は上下の組織を別々に処理していくこと
    になります。

    降りていくにつれて骨盤底に近づくため、組織は広がっていきます。
    そのため、子宮動静脈を切った後は上下の組織を別々に処理していく必要があります。

    これを繰り返すことで子宮頸管から安全に血管を離すことが出来ました。

    デメリットとしては、

    ①処理の工数が多いこと
    ②子宮を一部削ってしまう可能性があること

    が挙げられます。

    膣切開より(外子宮口当たり)での処理

    次はより膣切開部位に近いところでの処理について説明していきます。

    いわゆる”低い位置”とか”外側”とか”筋膜内”と言われるような位置です。具体的な位置は子宮円蓋部あたりになります。

    これの大きなメリットは、腟の切開ラインに近いので処理する組織が少ないこと、膣切開の時に組織が薄くなること、子宮を削ってしまうリスクがひくことになります。

    具体的な手順を見ていきましょう。

    ①まず膣と子宮の境目を確認します。そして、十分に尿管および膀胱、大腸が剥離できていることを確認します。

    ②そして、膣切開ラインよりやや体部より(高め)から凝固止血します。

    ③そして切開を行い、これを数回繰り返して処理は終了となります。

    先ほどと比べて外側のみに切開創が広がっているのがわかるでしょうか。デメリットとしては

    ①子宮から離れた組織を触る必要がある。特に尿管をしっかりと剥離する必要がある。
    ②出血させたときのリカバリー時のリスクが高い

    が挙げられます。

    結局どちらがおすすめなの?

    ラインがわかったところで、高めと低めどのように使い分けたらいいのかという疑問がありますよね。場合に寄るのですが、はっきりと言えることは。これですね。

    高めが無難

    これには明確な理由があります。①の高めの切開が安全だからです。

    ここで1つ問題です。

    子宮周囲に関して、動静脈の中枢側ってどちらになりますか?

    中枢と聞くと子宮側!と答えたくなりますが、内腸骨が外側にあるので骨盤底側になります。

    そのため、より子宮に近い側が末梢側となるため、より末梢側の①の体部よりの切開のほうが安全と言えます。

    では外側の処理の存在価値は何でしょう。それは組織をかじるリスクが低いことになります。

    なので、解像度を高く答えると、

    ①他臓器損傷がおこりえる場合は、逃げるために高めで処理
    ②CIN3などで子宮の組織をかじりたくない時は、剥離をしっかりと行い低めで処理

    という形になります。

    基本はやはり、高め。出血させたときにリカバリーがしやすいので”高め”から始めるほうが良いと思います。

    以上になります。次回は膣切開になります。長々とやってきましたが、いよいよ子宮が取れます。お楽しみに。

    X(旧Twitter)にて更新のお知らせをしていますのでよければフォローのほどよろしくお願いいたします。(こちら

    まとめ問題

    問題:

    子宮動静脈上行枝の処理に関する次の記述のうち、正しいものを選択してください。

    1. 子宮動静脈上行枝の切開は、外子宮口付近で行うのが最も安全である。
    2. 子宮動静脈上行枝の切開は、内子宮口付近で行うのが出血時のリカバリーがしやすく、他臓器損傷のリスクが低い。
    3. 子宮周囲に関して、動静脈の中枢側は子宮側である。
    4. 高めの切開位置は子宮の組織を削ってしまうリスクが低い。
    5. 膣切開に近い位置での動静脈上行枝の処理は、他臓器損傷のリスクが低い。

    正解:

    1. 子宮動静脈上行枝の切開は、内子宮口付近で行うのが出血時のリカバリーがしやすく、他臓器損傷のリスクが低い。

    解説:

    内子宮口付近での切開は、骨盤から離れることができるため、尿管や膀胱、大腸から離れることができるため、他臓器損傷のリスクが低くなります。また、出血時のリカバリーがしやすいというメリットがあります。逆に、膣切開に近い位置での切開は、子宮から離れた組織を触る必要があり、特に尿管のリスクが高まります。

  • 子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

    子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

    子宮傍組織ってどんなイメージですか?

    何となく、走行がよくわからなくなったり、何の血管を処理しているのかわからなくなることってありませんか?

    他にも、いつもなら出血しなかったのに、なぜか今回だけるだけで出血することはありませんか?

    これらはすべて”あなたのイメージ”が悪いのかもしれません。

    出血と戦う産婦人科。そんな産婦人科にとって、子宮の血流を止めることはどの産婦人科にとっても必要な技術です。あとから怖い思いをしないようにぜひイメージをつかんでいきましょう。

    子宮傍組織は”シャンパンタワーとグラス”

    今回は、子宮傍組織を”シャンパンタワーとグラス”をメタファーにして考えてみましょう。

    え?っと思いますか?ちゃんと理由があります。

    皆さんは、最近記憶力落ちたなぁと思いませんか。私は絶賛実感中です。

    基本的に人間の記憶力は低下していきます。嫌ですよね。

    しかし、年を重ねるにつれ記憶力が低下していっても理解力が深まっていく人がいます。

    それは、

    これまでの知識やイメージに当てはめることが出来る人です。

    いろんな知識や考えをコネクティングしていく。そうすることで新たな視点や深みが出てくるわけです。

    なので、子宮傍組織をシャンパンタワーとグラス”で考えると、理解が深まり、今処理しているものを考えやすくなり全体感も把握することが可能になります。では本題に行きましょう。

    シャンパンタワーのメタファー

    シャンパンタワーのイメージはどのようなものですか?

    グラスが積み重なり、上から下に広がっていくイメージですよね。結婚式などでみられるものですね。

    これを子宮傍組織とつなげてみてください。

    どうすればいいですか?

    答えは、まず横にします。
    そして子宮から骨盤に向けて行っていってください。

    百聞は一見に如かず。今回イメージすべきシャンパンタワーはこちらになります。

    はい、わけわからんですよね。雑コラですね。

    これにわかるように名前を付けていくとこうなります。

    見えてきましたか?つまり

    子宮傍組織は子宮側の子宮動静脈から始まり、骨盤に向かってどんどん広がっていきます。

    シャンパンメタファーのとらえ方

    この画像を見て質問です。どこが危険ですか?

    そうですね。

    骨盤側(シャンパンタワーの下のほう)のほうが危険なものが多くないですか?

    尿管、子宮動脈本管など傷つけてはいけない臓器がたくさんあります。

    尿管にしろ、膀胱にしろ、動静脈にしろ骨盤側に行くにつれ危険なものが広がっていきます。

    つまり、子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっているというイメージが出来ますね。

    なるほど、子宮の近くで処理をしろ!と子宮全摘の初心者ほど言われるのはこういうわけがあるわけです。

    シャンパンタワーでいうと、なるべく上のほう、つまり子宮側を触ると安全ということが丸わかりですね。

    癒着の怖さとシャンパンタワー

    癒着って怖いですよね。癒着により血管や尿管や膀胱、腸などの位置が変わり思いがけない出血や他臓器損傷のリスクが高くなり、手が震え、動悸がしてきます。

    その怖い癒着をシャンパンタワーというふざけたメタファーでとらえてみましょう。

    癒着によりシャンパンタワーには何が起こりますか?

    たとえば、内膜症や腺筋症で後葉が引き連れている場合は、尿管が子宮によって来たりしますよね。
    帝王切開後の場合は膀胱が吊り上がっていたり血管が引き連れていることがあります。

    これを先ほどのシャンパンタワーで考えるとどうなりますか?

    実は、癒着によりグラスの位置が変わるんです。

    より具体的に言うと、グラス(尿管や血管)が上(子宮側)に変化します。

    上で示した傍組織の画像は,じつはCS3回のTLHの画像になります。膀胱剥離後です。

    そして、膀胱を処理する前の膀胱が吊り上がっている状態の画像はこちらになります。

    膀胱の位置がかなり吊り上がっています。そのため、膀胱及び尿管が子宮に寄ってきていますよね。

    つまり、シャンパンタワーで言うところの一つ子宮側に移動しているわけです。
    これはかなり危ないですよね。せっかく安全と思っていた、シャンパンタワーの頂点近くで切除したのに、そこには尿管がいて損傷した。こんな悲劇的なことが起きてしまうわけです。

    内膜症症例でも、仙骨子宮靭帯と思ったら尿管だったなんてこともよくある話ですね。

    癒着があると組織の場所がかかわる。これをシャンパンタワーで考えるとグラスの位置が変わる!という風にとらえることが出来ますね。

    グラスの位置を変えたい。

    グラスの位置変えたくないですか?グラスの位置を変えれたらすごいですよね。

    危ないグラス(臓器)はすべてシャンパンタワーの下のほう(骨盤側)に移動させれるわけです。

    ここでグラスを安全な位置に変えれるのが”剥離”となるわけです。

    ↑膀胱をずらした後の図。

    剥離をすることで組織(グラス)同士が離れ、シャンパンタワーのグラスの位置を変えることが出来ます。つまり子宮や切開ラインから離すことが可能になります。

    具体的には
    腹膜切除を行えば、前葉の場合は膀胱が離れ、後葉の場合は尿管が離れます。
    広間膜腔を広げる、つまり腹膜や血管周囲の組織を剥離すると尿管や大血管が離れます。

    このように、剥離を行うと、損傷してはいけない臓器や血管が離れる、シャンパンタワーでいうとグラスの下の段に行くわけです。

    どうでしょうか、子宮傍組織と”シャンパンタワーとグラス”というイメージはつかめましたでしょうか。

    わかりにくい場合は、扇のように広がっていくイメージを持ってもらえれば良いと思います。川が平地に向かうにつれて広がっていくイメージなどもよいと思います。

    ぜひ、ものが広がっていき、そして癒着があると傷つけてはいけないものの位置がより子宮に近づくというイメージを持ってみてください。

    皆様がより安全な手術が行えるますように。

    次回は、傍組織の切開方法を2パターンで説明していきます。お楽しみに。

    (X(Twitter)で更新のアナウンスをするのでぜひフォローしてみてください。)

    まとめ問題と解説


    問題1:

    「シャンパンタワー」というイメージを使って説明された「子宮傍組織」はどのような特性を持つとされていますか?

    1. 上部ほど危険な部分が多い
    2. 下部ほど危険な部分が多い
    3. 全体的に危険な部分が広がっている
    4. 危険な部分は特定できない

    答え: 2. 下部ほど危険な部分が多い

    解説: 「シャンパンタワー」のイメージを用いて、「子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっている」と説明されています。


    問題2:

    癒着が発生した場合、どのような変化が「シャンパンタワー」に影響を与えるとされていますか?

    1. 危険な部分が子宮側に移動する
    2. 危険な部分が更に広がる
    3. 危険な部分が縮小する
    4. 危険な部分が固定される

    答え: 1. 危険な部分が子宮側に移動する

    解説: 癒着が発生すると、通常は安全とされる子宮側の部分にも危険な部分(尿管や膀胱など)が移動してくるため、予期せぬ損傷のリスクが増えると説明されています。


    問題3:

    剥離を行うと、どのような効果が得られると説明されていますか?

    1. 危険な部分が子宮側に移動する
    2. 危険な部分を「シャンパンタワー」の下に向かわせることができる
    3. 危険な部分が縮小する
    4. 危険な部分が固定される

    答え: 2. 危険な部分をシャンパンタワーの下に向かわせることができる

    解説: 剥離を行うことで、損傷してはいけない臓器や血管を安全な位置、すなわちシャンパンタワーの下へ移動させることができると説明されています。これにより、危険な部分を避けながら処理を行うことが可能になります。

  • 幻のザクロ、仙骨子宮靭帯の”本当の姿”とその処理

    幻のザクロ、仙骨子宮靭帯の”本当の姿”とその処理

    「ザクロが最後まで残ったなぁ」

    婦人科でザクロと言えば、フルーツではなく仙骨子宮靭帯。

    術中ザクロはどれだけ処理しても残りやすい靱帯ですよね。

    このザクロの本当の姿を知っていますか?

    ザクロの本当の姿を知ることで処理が楽になります。

    今回は”幻のザクロ”の正体と、その処理について説明していきます。

    仙骨子宮靭帯の臨床的解剖と幻のザクロ”

    仙骨子宮靭帯の略語、”ザクロ”は、ラテン語で仙骨を表す ‘sacrale’ から来ています。

    産婦人科医であれば、この略語ザクロに多少なじみがあると思います。

    しかし、”ザクロ”の具体的な解剖は、実はそれほど一般的には認識されていません。

    意外なことに、仙骨子宮靭帯の存在については否定する意見も存在します。

    例えば、消化器外科の専門医とダグラス窩の処理について話すとき、仙骨子宮靭帯の取り扱いについて話題が合わないことがあります。

    「仙骨子宮靭帯の処理はどうしていますか?」

    「何もしていませんよ。そもそも仙骨子宮靭帯ってあります?」

    ・・・

    驚きですよね?

    実は、消化器外科領域から見ると、臨床的には仙骨子宮靭帯は存在しない。つまり”幻”なのです。

    その理由は、このザクロ(仙骨子宮靭帯)の本質が「ほぼ腹膜の集合」であるからです。

    具体的には、仙骨子宮靭帯は腹膜が肥厚した繊維組織が子宮頸管に付着している部分を指します。

    このため、直腸領域に至ると、仙骨子宮靭帯は広がっていきただの腹膜になり、存在しない、すなわち「幻」となるのです。

    言い換えれば、仙骨子宮靭帯の本当の姿は「腹膜のたわみ」と言っても良いでしょう。

    臨床的な仙骨神経子宮靱帯は裏打ちする幅広い硬いコラーゲン組織が収束したところといえます。

    参考文献:Quantitative Analysis of Uterosacral Ligament Origin and Insertion Points by Magnetic Resonance Imaging

    仙骨子宮靭帯の具体的な処理について

    仙骨子宮靭帯=腹膜の集合体ということがわかれば、処理は簡単です。

    基本的には腹膜を切っているぐらいの気持ちで切っても出血はしません

    ザクロの位置ですが、子宮を前屈させ、左右にやや傾けることでかなりわかりやすくなります。(詳しくは前回参照

    電気メスの凝固で切っても問題ないですが、奥(外側に行くと子宮静脈上行枝があるため注意してください。

    血管から逃がすため、切開しやすくするため、マニュピレーターは前屈にして押し込みながら切開していきます。

    私自身の手順としては、目印のため、切開時の出血を抑えるためバイポーラで凝固したのち切開をしています。

    画像の部位は人によっては高めと思われるかもしれませんが、これは膣縫合の時に縫いやすいようにあえて高めで切開しています。

    内膜症の場合は、直腸が吊り上がっていることもあるため注意して切開しましょう。直腸損傷のリスクが高い症例では、やや子宮体部より切開を入れて腹膜ごと仙骨子宮靭帯をずりおろせると安全に切開を行うことが出来ます。

    まとめ問題と解説

    問題1:仙骨子宮靭帯は何の集合体でしょうか?


    A. 筋組織
    B. 神経組織
    C. 腹膜
    D. 骨組織

    答え:C. 腹膜

    解説:仙骨子宮靭帯は腹膜が肥厚して子宮頸管に付着している部分と説明されています。したがって、これは腹膜の集合体として認識されています。

    問題2:仙骨子宮靭帯の取り扱い時、出血を防ぐために著者が採用している手順は何ですか?


    A. レーザーを用いて切開する
    B. バイポーラで凝固させた後、切開する
    C. 切開せずに靭帯をそのままにする
    D. 切開前に麻酔を使用する

    答え:B. バイポーラで凝固させた後、切開する

    解説:著者は、仙骨子宮靭帯の切開時に出血を抑えるため、まずバイポーラで凝固させ、その後で切開を行っています。

  • 膀胱剥離⑤ サイドからの剥離 手順

    膀胱剥離⑤ サイドからの剥離 手順

    手術で使える、サイドからの膀胱剥離の手順についてお伝えします。

    帝王切開後の方などで頸管の癒着が強い時に使うテクニックです。

    大雑把には横から頸管と膀胱の間に入っていく必要があります。吊り上がった膀胱を損傷しない為ですね。詳しく見ていきましょう。

    サイドからの剥離の意味とそのタイミング

    まずはサイドから剥離する必要が出てくるタイミングについて説明していきます。

    このサイドからの剥離方法は上達してきた人こそ大切な剥離方法になります。なぜなら帝王切開後の頸管に強い癒着がある状態での膀胱剥離で特に必要になってくるためです。

    帝王切開後の子宮頸管創部を下手に正面から突破しようとすると強固に固まっているため容易に膀胱を損傷します。

    そもそも膀胱が体部側にひきつれていて腹膜切開の時に損傷することもありますし、剥離の層ががずれてしまい膀胱を損傷することもあります。

    横からの剥離の場合は、膀胱の吊り上がりを考える必要がなく、頸管創部瘢痕部より奥(骨盤底側)で膀胱剥離できるため、安全に膀胱剥離を行えるため安全なのです。

    血管周囲を触るため、慣れないとかなり危ない感じがするのですが、身に着けてしまえばCS後のTLHも難なく完投できるため身に着ける価値は大いにあります。

    今回は手順をお伝えし、次回にそのコツをお伝えします。では手順を見ていきましょう。

    1.子宮動静脈を剥離する

    まずは子宮動静脈を大まかでいいので頸管や骨盤で同定します。

    そして子宮動静脈が直線的になるように血管周囲を剥離していきます。

    2.頸管を同定する

    次に子宮動静脈を基準に、その腹側で頸管を同定していきます。

    血管と、脂肪を基準にくぼんでいるところ(頸管)を探して鈍的に広げていきます。

    3.子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る

    膀胱を上につけるように、頸管に鉗子を押し当てて剥離をしていきます。

    12時方向を超え始めると、頸管に沿って剥離していくのことが難しくなるため、同様に反対側から剥離していき、繋げて終了です。

    4.子宮頸管の瘢痕部を切離する。

    最後に瘢痕部が残るように体部側に剥離を広げていきます。

    残った瘢痕部をなるべし薄くしてから根元で切除します。

    まとめ問題と解説

    問題:
    次のうち、サイドからの膀胱剥離の手順について正しい説明をしているのはどれでしょうか?

    A. 最初に子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作り、次に子宮動静脈を剥離する。

    B. 子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る前に、子宮動静脈を剥離し、次に頸管を同定する。

    C. 子宮頸管の瘢痕部を切離す前に、頸管に沿って12時方向を超えて剥離する。

    D. 子宮動静脈を剥離した後、すぐに子宮頸管の瘢痕部を切離す。

    解答:
    B. 子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作る前に、子宮動静脈を剥離し、次に頸管を同定する。

    解説:
    サイドからの膀胱剥離の手順は次の通りです:

    1. 最初に子宮動静脈を剥離します。これは血管の位置を確定し、血管周囲を剥離して直線的にするためです。
    2. 次に、この子宮動静脈を基準に、その腹側で頸管を同定します。
    3. その後、子宮頸管と膀胱の間でトンネルを作ります。ここでの重要なポイントは、12時方向を超え始めると、頸管に沿って剥離するのが難しくなるため、同様に反対側から剥離し、繋げていくことです。
    4. 最後に、瘢痕部を残すように体部側に剥離を広げていき、最終的に残った瘢痕部を薄くしてから根元で切除します。

    したがって、選択肢Bがこの手順に最も一致するため、正しい回答となります。

  • 膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

    膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

    膀胱剥離をしようにもなぜかうまいこと剥がれない。

    無理に力を加えてしまい出血をしてしまった・・・

    こんな経験ありませんか。

    それってあるポイントを見落としているだけかもしれません。

    今回は、膀胱剥離がうまくいかない理由3選とその理由と改善テクニックについて解説します。

    その1:テンションがかかっていない

    剥離部位にテンションがかかっていないと剥離は全くうまいこと行きません。

    お菓子の袋を開けるには、必ず2か所で引っ張る必要がありますよね。

    同様に、手術においても、反対向きのテンションつまり”カウンタートラクション”が取れていないと鈍的な剥離も切開もすることはできません。暖簾に腕押し状態です。

    こんなことはわかっていても、手術、特に腹腔鏡の限られた視野の中の場合見逃していることが多々あります。

    子宮の押し込みが甘いことでテンションが緩んでしまっていることがあります。

    特に、いつもと異なる状況やチームで手術を行っている場合は注意してください。

    前立が経験豊富な医師の場合は勝手にテンションをかけてくれるので意識せずとも良いテンションがかかっていることが多いですが、研修医や習練中の意思の場合は知らぬ間に力が緩んでいたりすることも多々あります。

    マニュピレーターは下の先生や看護師さんが持っていることが多いですし、女性医師が増えている現代では肉体的にも力が緩むことが多い印象です。

    そのため、改善方法としては、

    膀胱剥離の時は、自分でマニュピレーターや腟パイプの位置を確認し力を込めて押し込んでもらう、必要なら位置調整する。

    その2.子宮体部がねじれている

    次に、膀胱剥離時の”子宮体部がねじれ”について考えていきましょう。

    子宮のねじれはかなり危ないのにもかかわらず。わかりにくく、気づかずに進めていくと、大量出血、尿管膀胱損傷につながるかなり危ないピットフォールになります。

    なぜなら

    1. 頚部の子宮動静脈の位置がずれる
    2. ねじれがあることで、組織が巻き込まれていく

    この二つが生じるためです。

    この危険な”子宮のねじれ”の原因として多いのは、子宮筋腫で、重さや圧迫により大きくねじることによるものが多いです。

    特に子宮体部側方の筋腫の時に見落としがちになります。

    頚部筋腫ではなく、体部筋腫です。

    なぜなら、子宮の頚部筋腫の場合は、意識することが可能なので気づくことが多いですが、拡大視の視野の狭い状況で子宮体部がねじれていることには気が付きにくいためです。

    改善方法としては、

    子宮が直線化されているかどうか毎回確認する。特に円靭帯や子宮上行枝に着目し子宮がねじれていないかを確認する。

    その3.膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている

    最後は頸部で膀胱自体がはがれにくい場合をお伝えします。

    これはこれまでと違い、患者因子になります。特に炎症を起こしていたり、閉経後で組織が固い人に良く見られるもので、正しい層に入ってもはがれにくい時があります。

    この時に有効な方法としては、”層を乗り換える”という手法があります。

    以前、膀胱剥離をするなら安全性を取るならば腟膀胱筋膜の子宮側で剥離を行うべきだという話を行いました。

    実は、剥離しやすいのは腟膀胱筋膜の膀胱側になります。えいやと1膜破ることで膀胱剥離が容易になることがあります。

    そのため、改善方法としては

    頸管が萎縮や炎症を起こすような要因があるか確認し、層を意識して手術を行う。

    膀胱剥離が出来ない時に確認すること

    1. 子宮の押し込みが出来ているか確認する
    2. 子宮がねじれていないか確認する
    3. どの層に入っているか意識し、やりにくければ層を乗り換える

    まとめ問題と解説

    問題: 膀胱剥離がうまくいかない理由として最も適切でないものを次の選択肢から選びなさい。

    選択肢:

    • A. テンションがかかっていない
    • B. 子宮体部がねじれている
    • C. 膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている
    • D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

    正解:D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

    解説: 膀胱剥離がうまくいかない三つの主な理由として、「テンションがかかっていない」、「子宮体部がねじれている」、「膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている」。これらは、それぞれ剥離部位に必要なテンションがない場合、子宮がねじれている場合、そして膀胱と子宮間の剥がれる層が密接している場合に問題が生じます。それに対して選択肢Dの「腹腔鏡の視野が広すぎる」はむしろ、視野が限られていることが手術を難しくしています。

  • 膀胱剥離③ 正面突破 4ステップ

    膀胱剥離③ 正面突破 4ステップ

    前回は、膀胱は発生学的に、子宮と近く血管や膜を共有しているため、強いテンションや、腟膀胱筋膜の理解の必要性をお伝えしました。

    今回は、複雑怪奇な膀胱周囲の正面突破法についてお伝えします。

    膀胱剥離の正面突破の手順

    膀胱剥離の正面突破はオーソドックスな手技になります。

    特に、尿管や膀胱の安全を確保したいときや頸管の構造を明らかにしたいときに必要な手技になります。

    なぜなら膀胱が骨盤底側に降りることで、子宮と尿路系が離れるからです。

    具体的な手順は以下のようになります。

    step1.膀胱と子宮の位置の確認

    step2.膀胱子宮窩腹膜の切開

    step3.腟膀胱筋膜に沿って剥離

    step4.腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    ではそれぞれのステップを画像と共に見ていきましょう。

    step1.膀胱と子宮の位置の確認

    まずは膀胱と子宮の位置関係の確認です。慣れたチームでやっている場合は無意識に確認が終わっていることもありますが毎回確認するようにしましょう。

    初めに、マニュピレーターや腟パイプを左右に振ることで子宮頸管の位置を確認し、カップ付きの場合はエッジを円蓋部に押し当て持ち上げることで腟や子宮頸管の位置を把握します。

    次に、膀胱の確認に移ります。見た目でふくらみを見ることもできますし、鉗子で押してみたり、持ち上げることで膀胱の位置を確認します。膀胱カテーテルも一助になりますね。

    とりあえず困ったら動かしたりして、2次元の情報を3次元にとらえるようにしましょう。

    step2.膀胱子宮窩腹膜の切開

    膀胱と子宮の位置を把握できれば、ステップ2に移行します。膀胱子宮窩腹膜の切開になります。

    ここではテンションをしっかりとかけて”膜”を切りきることを意識します。腹膜と筋膜ですね。(詳しくはこちら

    手順としては、まず子宮を器具で強く押し込みます。さらに補助鉗子で子宮体下部を押し上げてテンションを増します。これらにより子宮頸管を頭側に押し上げて膀胱と距離を離します。

    膀胱実質損傷しないように、薄くそして軽く腹膜と膀胱を持ちあげ、画面上腹側に引き上げます。最も薄くなった部分を切開し膀胱子宮窩腹膜を切開します。膀胱近くでも腹膜切開は可能ですが、安全を取って子宮よりで切開するほうがよいです。

    この時は子宮頸管にハーモニックや電気メスが当たるまでしっかりと腹膜を切開します。脂肪のある層をしっかりと切りきってください。

    step3.腟膀胱筋膜を同定する

    次が一番難しい工程の腟膀胱筋膜の同定の説明になります。ここを間違えると膀胱損傷にもつながるのでとても大切です。

    まず、腹膜を持ち直してください。腹膜と膀胱組織を一緒に持ち上げ、頸管よりしっかりと離します。

    腹膜を左右に切り広げて腔を広げて、子宮頸管を押し上げ腟膀胱筋膜を同定して行きます。

    この時に脂肪と毛細血管を意識してください。

    脂肪で考えると、腟膀胱筋膜は脂肪のある層を一層抜けてから見つかります。

    血管を見ると、膀胱側の細かい静脈は子宮頸管に対して横向きに走り、子宮側の細かい静脈は縦向きに走ります。

    これらを意識して腟膀胱筋膜を見つけてください。

    ちなみに腟膀胱筋膜は子宮側でも膀胱側でも剥がれていきます。おすすめは子宮側を進んでいくことです。理由としては、以下が挙げられます。

    • 膀胱の表面には細かい静脈が走っている
    • 膣切開の時に薄く切ることが出来る

    安全性を考えるなら子宮側がよいのです。(はがれやすいのは膀胱側にないります)

    step4.腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    頸管における膀胱剥離は12時方向から膀胱剥離を開始することが大切です。なぜなら、2時10時方向には子宮動静脈から膀胱に対して分枝が存在するためです。

    そのため正中で筋膜を同定し、切開ラインまで奥に剥離したのち左右に広げてください。

    剥離方法は鈍的にも鋭的にも可能です。子宮頸管に鉗子を押しあて鈍的にも可能ですし、拡大視を駆使し、膀胱や頸管を動かしながら癒合筋膜をとらえて鋭的に切開することも可能です。よい層であればコールドナイフで切開しても出血はしません。

    残るは膀胱脚になりますが、こちらは子宮傍組織の部分で説明しますので、いったんは正面突破の膀胱剥離はここで完了とします。

    今日からできること

    膀胱剥離の手順と理由を理解しておく

    まとめ問題と解説

    以下の手順の中で、膀胱剥離の正面突破法において最も重要なステップはどれですか?

    • A) 子宮と膀胱の位置の確認
    • B) 膀胱子宮窩腹膜の切開
    • C) 腟膀胱筋膜の同定
    • D) 腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる

    回答: C) 腟膀胱筋膜の同定

    解説: この問題では、膀胱剥離の正面突破法における最も重要なステップを尋ねています。腟膀胱筋膜の同定(選択肢C)が最も重要です。これは、膀胱周囲の正確な解剖構造を理解し、適切な剥離を行うための基本であり、後のステップに影響を与えます。膀胱と子宮の位置の確認、膀胱子宮窩腹膜の切開、そして腟膀胱筋膜の前後の腔で頸管に沿って左右に広げる手順も重要ですが、腟膀胱筋膜の同定が最も重要なステップとなります。

  • 膀胱剥離② 発生から見るコツ2選 力こそパワーだけじゃない。

    膀胱剥離② 発生から見るコツ2選 力こそパワーだけじゃない。

    今回は発生から見る膀胱剥離のコツは大きく2選になります。

    発生的な視点は知っているか知らないかで、上達度が全く違うためかなり大切な概念になります。わかりやすく解説していきますので着実に自分のものにしていきましょう。

    膀胱と子宮と腟の発生学的な関係

    まずは膀胱、腟、子宮の発生について説明します。

    執刀時において発生の理解というのは欠かせないものです。困難な症例ほど大切になってきます。

    なぜなら、より安全に剥離できる層が見つけやすくなるためです。

    発生が異なるものは、柔らかい組織によってつながっているため、剥がれていく層を見つけることで、カワハギの皮のようにつるつると剥けていきます。発生を知ることで安全な、剥がれやすい場所がわかってくるのです。

    早速ですが、次の問題に答えてください。

    Q1:膣は機能的にはどちらの臓器ですか?泌尿器系?それとも生殖系?

    これは簡単すぎましたか。機能的にはもちろん生殖系ですよね。では、次の問題です。

    Q2:膣は発生学的にはどちらの臓器ですか?泌尿器系?それとも生殖系?

    答えは、発生学的には、腟は泌尿器系でもあり生殖系でもある。

    解説に移りましょう。発生学的に考えると

    • 膀胱→尿生殖洞
    • 腟 →尿生殖洞、ミュラー管
    • 子宮→ミュラー管

    となりますよね。そのため、腟は発生学的には泌尿器系であり同時に生殖系なのです。

    腟の一部は膀胱と同じ発生であり、もう一部は子宮と同じ発生

    この異なる発生の臓器が交わっている事実が膀胱剥離を難しくしている原因のすべてと言っても過言ではありません。

    なぜなら、発生が違うのにも関わらず、血管や膜を共有してしまうからです。

    では膜についてもう少し深堀していきましょう。

    腟膀胱筋膜

    腟子宮と膀胱の間には膜があり、それは腟膀胱筋膜と言います。

    実は、この腟膀胱筋膜にはほかの筋膜とは少し違う意味合いがあります。

    筋膜はどのような意味がありますか?

    ”包む膜”という意味がありますね(詳しくはこちら

    では腟膀胱筋膜は何を包んでいますか?腟と膀胱を包む膜ですか?

    じつは腟膀胱筋膜は包むという意味ではなく、”癒合筋膜”の意味があります。膜は近くなると癒合する性質があり、筋膜同士が癒合したものを”癒合筋膜”と言います。

    他に例を挙げると、尿管と基靭帯が交わる部分も膜同士が癒合しています。

    つまり、筋膜の概念から話をしていくと、膀胱と腟子宮はそれぞれの管構造に包む膜である筋膜が存在していて、骨盤底に行くにつれて癒合して腟膀胱筋膜に変わっていきます。

    発生から見る剥離のコツ

    これまで二つのことを説明しました。

    1. 腟は発生で膀胱と子宮の両方と発生が一緒
    2. 膀胱と腟子宮の間には癒合筋膜が存在する

    この二つを理解したうえで膀胱剥離を開始することが必要になってきます。

    強いテンションをかける

    まずは組織が異なるものを剥離するときは必ず、テンションをかける必要があります。

    膀胱と子宮は発生学的に膣という発生の集合場所があります。そのためかなり強いテンションをかけないと、膀胱と子宮の位置関係がはっきりしないのです。

    マニュピレーターや膣パイプを強く押し込み、そのうえで膀胱を持ちあげることで子宮と膀胱の位置関係がはっきりさせる必要があります。

    癒合筋膜の把握

    鏡視下手術では癒合筋膜を特に意識して剥離を行う必要があります。

    なぜなら開腹の時代は腹腔内で操作しないといけないという縛りがなく、腹腔外まで引っ張り上げることでかなり強いテンションをかけることが可能でした。

    そのため、鈍的に”剥がれる層”でクーパーやガーゼを用いた鈍的剥離が簡単に行うことが出来ました。

    しかし、腹腔内で操作をしないといけない鏡視下手術では開腹手術ほどのテンションをかけることはできないため、拡大視野を取れるという強みを持って癒合筋膜を把握しながら剥離を行う必要が出てくるのです。

    ちなみに、癒合筋膜の上は膀胱側の腔となり、下は子宮側の腔となります。剥離自体はどちらでも行うこと可能です。

    次回以降は実際の手順を、正面突破とサイド突破に分けて説明していきます。お楽しみに。

    今日からできること

    癒合筋膜を意識する。

    まとめ問題

    以下の選択肢のうち、膀胱剥離に関して最も正確な説明をしているものはどれでしょうか?

    • A. 腟と膀胱は完全に異なる発生学的起源を持っており、癒合筋膜は存在しない。
    • B. 膀胱剥離では、強いテンションをかけずに膀胱と子宮の位置関係をはっきりさせることが可能である。
    • C. 癒合筋膜は、膀胱側の腔と子宮側の腔の間に存在し、膀胱剥離において重要な役割を果たす。
    • D. 鏡視下手術では、腹腔外まで引っ張り上げることが可能であるため、癒合筋膜を把握する必要はない。

    解答:C. 癒合筋膜は、膀胱側の腔と子宮側の腔の間に存在し、膀胱剥離において重要な役割を果たす。

    解説: 選択肢Cが正しい理由は、腟は膀胱側と子宮側に分かれる発生学的起源を持っており、膀胱と腟子宮の間には癒合筋膜が存在するからです。膀胱剥離を行う際には、強いテンションをかけて膀胱と子宮の位置関係をはっきりさせる必要があります。また、開腹では腹腔外まで空間を利用することが出来ますが、それが出来ない鏡視下手術では拡大視野を用いて、癒合筋膜を把握しながら剥離を行うことが重要です。

  • 膀胱剥離① そもそも膀胱剥離って必要?

    膀胱剥離① そもそも膀胱剥離って必要?

    今回からは膀胱編になります。

    実は前方アプローチをきれいにできるからこそ安全にできる膀胱剥離があります。

    それはサイドからの膀胱剥離。

    正面およびサイドからの剥離まで丸っと解説していきます。

    理解が難しいとされる、膀胱周りの解剖についても徐々に説明していきます。

    そもそも膀胱って剥離する必要ない!?

    まずはこの問いから深堀していきましょう。

    膀胱剥離って必要なんですか?

    もう少しちゃんとした問いにするなら、

    そもそも子宮を取るだけの手術で膀胱剝離は必要ですか?

    え?そりゃ必要でしょう。

    って普通なりますよね。実は、私も長らく”膀胱剥離の必要性”について考えたこともありませんでした。

    しかし、とある内視鏡学会でこの問いに出会ってから、再度膀胱剥離について考えさせられました。そして、深堀していくことで、膀胱の解剖を含めての理解がかなり深まりました。

    皆様の膀胱剥離の技術向上にかなり役立ちますので、一緒にこの問いについて考えていきましょう。

    膀胱を剥離しなくても子宮が取れるワケ

    結論から言うと、膀胱を剥離しなくても子宮を取るだけであれば取れます。これは、膀胱と腟と子宮の発生がわかれば答えが出てきます。

    あまり詳しすぎると逆に理解が出来ないので、あえて、ざっくりとした話にするとこうなります。

    膀胱は尿生殖洞
    腟は尿生殖洞+ミュラー菅
    子宮はミュラー菅

    そして、発生が異なるものは基本的に触ることなく分離することが可能。そのため膣のミュラー菅由来腟のラインで切れば、膀胱を触れることなく切れるというわけです。

    つまり

    膀胱と腟では、発生由来が異なる部分がある→膀胱がないラインがありそこであれば膣切開が出来る→子宮が取れる

    本当に?ってなりますよね。実際私もなりました。実際に画像を見ていきましょう。

    次の画像はカップ付きのマニュピレーターで正中に押し込んだ時の膀胱子宮窩になります。わかりやすいように腹膜を釣り上げています。

    どこがカップの淵で、どこからが膀胱ラインになるでしょう。

    答えとしてはこのラインとなります。

    カップの上の淵のラインよりも奥に膀胱がありますよね。

    つまり、赤い枠のところで切開をすれば膀胱の剥離はせずに膣切開することが可能となるわけです。

    これで答えが出ました。

    A:子宮を取るときに膀胱を剥離する必要はあるか。

    Q:腟の最も手前のラインが膀胱よりも遠く存在するため、強いテンションをかけている場合は腟切開するために膀胱剥離は必要ない。

    じゃあ膀胱剥離はいらないの??

    膀胱剥離をするワケ

    かといって膀胱剝離をせずに子宮全摘を行っているところを見たことはありません。

    なぜ膀胱剥離をするのか、その理由はたった一つに集約されます。

    腟を安全に縫うため。

    これに尽きます。

    この安全にというのは膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐという意味です。

    膀胱を剥離しなければ、腟の前壁側が膀胱にくっついている状態ですし、尿管周囲の組織も近い状態となっています。

    膀胱を剥離すれば、膀胱の組織を巻き込んで運針する確率は下がります。また、膀胱脚(後日解説)を切開することで尿管の組織を巻き込んで運針する確率は下がります。

    そのため、膀胱剥離をするということはこう言い換えることが出来ます。

    1. 縫い代を確保している
    2. 尿管を離している

    今日からできること

    膀胱を剥離する理由を考えながら剥離を行う

    まとめと問題

    膀胱剥離は子宮を取るだけであれば、必ず必要なわけではなく、腟の最も手前のラインが膀胱よりも遠く存在するため子宮を取るだけであれば膀胱剥離は不要です。しかし、実際は膣の縫合をする必要があるため、膀胱剥離は腟を安全に縫うために必要となります。

    問題

    以下の選択肢の中から、子宮摘出手術の際に膀胱剥離を行う理由で最も正しいのはどれでしょうか?

    • A:膀胱の形状が不規則であるため
    • B:膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐため
    • C:腟と膀胱の境界が明確に分かれていないため
    • D:尿管に近い場所を縫うため

    正解はB:膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐためです。

    子宮摘出手術の際に膀胱剥離を行う理由は、腟を安全に縫うために膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐためです。腟壁を縫うときに、腟の前壁側が膀胱にくっついている状態であり、尿管周囲の組織も近い状態となっています。膀胱を剥離することで、膀胱の組織を巻き込んで運針する確率が下がり、尿管周囲の組織を巻き込んで運針する確率も下がります。そのため、膀胱剥離を行うことは、縫い代を確保し、尿管を離すために必要です。

    Aの「膀胱の形状が不規則であるため」については、膀胱剥離の理由にはなりません。

    Cの「腟と膀胱の境界が明確に分かれていないため」については、上記のように膣のミュラー菅由来のラインで切れば、膀胱を触れることなく切開できるため、膀胱剥離の必要性はなくなります。

    Dの「尿管に近い場所を縫うため」については、尿管の組織を巻き込んでしまうことを防ぐために、膀胱剥離が必要であると考えることもできますが、それを主な理由としているわけではありません。したがって、Dは誤りです。

  • 前方アプローチの尿管同定④ 尿管って子宮動脈と交差する?

    前方アプローチの尿管同定④ 尿管って子宮動脈と交差する?

    前方アプローチあるある

    子宮動脈は見つかったが尿管がどこにあるかわからない

    この問題を丸っと解決。ある点を知っているだけで大概解決します。

    今回は子宮動脈と尿管との位置関係がわからなかったときの対策について解説していきますね。

    今回のことを知っているか知らないかで手術の安全性が全く違いますよ。

    立体的な構造の理解の難しさ

    そもそも立体的な構造ってかなり把握が難しいです。見る場所によって全く見え方が違ってくるからです。

    例えば”円柱”は上から見ると〇ですが、横から見ると🔲になりますよね。

    何事もそうですが、視点が変われば見え方が変わる。見え方が変われば認識が変わるわけですね。

    尿管と子宮動脈の交差部においても同様のことが言えます。

    特に腹腔鏡は二次元の画面で見ているため見ている視野によって見え方が全然違ってきます。

    子宮動脈の下に尿管があり直角に交わるはずなのに、なぜかうまいこと行かない?

    それは開けた腔によって見え方が変わるからです。

    見え方が変わっているという認識をまず行い、その見え方を理解できればスッキリ解決できますよ。

    子宮動脈って尿管と直角に交わる?

    尿管を見つけるときに”子宮動脈の下に存在し直角に交わる”と考える大体うまくいきます。

    その一方で、子宮動脈の下で直角に交わると考えて失敗するときもあります。特に困難症例でよく起こります。これについて説明していきます。

    この2つの場合を尿管を見失いがちなパターンを題材に、考えていきましょう。

    子宮動脈の下に尿管が直角に交わると考えうまくいったパターン

    まずは尿管を見失いがちな場面から、子宮動脈の下に尿管があると考えうまくいったパターンを見ていきましょう。

    尿管を見失いがちな状況は、やや癒着が強く子宮動脈を頸管から外側に追っていったときにおこりやすいです。(子宮動脈アプローチ型

    気が付くポイントとしては、後葉側に組織が残っているときや、前葉側がきれいに剝けているときは要注意です。”膀胱側に入っている”と言われます。

    前葉側を開けてしまい、いわゆる”膀胱側腔の入り口”を開けているような状態になるわけですね。

    以下の画像ではある程度、頚部側から子宮動脈を単離していった像になります。

    これぐらい子宮動脈の走行がわかりやすい時は、子宮動脈のどこかの下を直角に通ると考えて、尿管の位置を推定します。この時も脂肪を意識するとわかりやすいです(詳しくは脂肪は敵?それとも

    この時は子宮動脈をかなり剥離できているので、構造把握が楽に行えています。管状に見える脂肪がありましたので、ここに尿管が存在すると推測し、中を探ります。

    そうするとこのように尿管が見えてきました。

    今回は子宮動脈がきれいに剥けていたので子宮動脈の下にあると認識してうまく尿管を見つけることが出来ました。ではここから思考実験に行きましょう。

    尿管が子宮動脈の下を直角に交わると考えてうまくいかないパターン

    思考実験として以下の状況を考えてみましょう。画像の赤丸の部分が先に剥離できて、尿管の上に脂肪がまだかかっている状態を考えてみましょう。

    この時に”尿管は子宮動脈に直角に走行している”と考えるとどのようになりますか?

    このように考えてしまいませんか?

    そうすると脂肪に包まれた尿管の走行が見えなくなってきます。なぜならそんな走行をする管及び脂肪は存在しないからです。

    後から見ると

    あたりまえやん!!

    となりますが、術中は案外この”尿管は子宮動脈の下を直角に交わる”という罠にはまってしまうため要注意です。

    人間には見えるように物事を見てしまうというバイアスがあります。

    錯視などは良い例ですね。3つ点があるだけで人の顔に見えたり、ないはずの図形が見えたり・・・

    ではどのような認識をしていればこの罠から逃れられるのでしょうか。

    交差部から見る尿管と子宮動脈

    結論から言うと、子宮動脈と尿管の走行をイメージするときなのは1点。

    交差部から離れているかどうか。

    これに尽きます。交差部の近くの位置なのか、交差部の遠くの位置なのかで子宮動脈と尿管の走行関係は大きく変化します。結論から言うと、

    • 交差部遠くでは平行に走る
    • 交差部近くではTの字に交差する。

    これだけです。詳しく見てみましょう。

    交差部の遠くでの走行

    交差部の外側、つまり交差前の子宮動脈は尿管と平行に走ります。

    交差前は緩やかなカーブを描きながら子宮に向かっていくので、カーブを曲がりきる前は尿管を並行に走ります。

    子宮動脈は内腸骨動脈から分岐しますが、内腸骨動脈も尿管と背側で平行に走行します。

    交差部の近くでの走行

    交差部の近くでは 尿管と子宮動脈は直角目に走行します。

    交叉するというイメージが強いとこちらの走行パターンのみを考えがちです。たちが悪いのは、容易な症例ではこのパターンがうまくいくことが多いため、困難症例の時に罠にはまることが多いわけですね。

    模式図でイメージを定着させよう

    最後に模式図でこのイメージを定着させてみましょう。子宮動脈と尿管の模式図は以下のようになります。子宮動脈は内腸骨動脈から分岐後緩やかなカーブをもって子宮に向かいます。尿管はその下をやや急なカーブを描きながら通り、子宮上の膀胱に向かいます。

    1.2.3の点で考えてみましょう。

    1. は内腸骨動脈からの分枝直後の交差部から離れたところ。縦に平行
    2. は交差部で直角に交わる
    3. はいわゆる尿管トンネルの場所でやや横向きに平行

    このようになっています。

    なので、子宮動脈を見つけたときは、図の①にいるのか、②にいるのか、③にいるのか、いったん遠景にして、全体像を把握してみましょう。

    今日からできること

    交差部の位置を予想して尿管や子宮動脈の同定を行う

    まとめ と練習問題

    腹腔鏡手術における子宮動脈と尿管の位置関係について、子宮動脈が尿管と直角に交わると考えていると誤認することがあるが、実際には交差部の近くで直角に交わり、遠くでは平行に走行することが多い。このような立体的な構造を把握するのは難しいが、交差部から離れているかどうかを意識することで対処できる。

    問題1: 子宮動脈と尿管の走行関係は、どの部分で大きく変化しますか?

    • a) 交差部の近く
    • b) 交差部の遠く
    • c) 子宮動脈の分岐部
    • d) 内腸骨動脈の分岐部

    答え: a) 交差部の近く

    解説: 子宮動脈と尿管の走行関係は、交差部の近くで大きく変化します。交差部の遠くでは、子宮動脈と尿管は平行に走りますが、交差部の近くでは、子宮動脈と尿管は直角目に走行します。この違いを理解することが、手術の安全性に大きく影響します。

    問題2: 交差部の遠くでの子宮動脈と尿管の走行パターンはどのようになっていますか?

    • a) 直角に交差して走る
    • b) 平行に走る
    • c) 子宮動脈が尿管の上を通る
    • d) 尿管が子宮動脈の上を通る

    答え: b) 平行に走る

    解説: 交差部の遠くでは、子宮動脈と尿管は平行に走ります。子宮動脈は内腸骨動脈から分岐し、尿管と背側で平行に走行します。このことを把握することが、尿管の位置を正確に推定するために重要です。

    次回からは膀胱剥離になります。お楽しみに。

  • 尿管同定③ ”魔法のような”尿管同定を行うコツ

    尿管同定③ ”魔法のような”尿管同定を行うコツ

    初めてこの前方アプローチ型の交差部同定を見た先生に

    ”魔法みたいにいつの間にか出ていた”

    と言われたことがあります。前方アプローチを極めれば、”魔法みたいに”局所的”に交差部を同定することが可能となります。

    今回はその”コツ”についてわかりやすく言語化して説明していきたいと思います。

    ここが山場となります。一つ一つ言語化していくので手ぶらで楽しんでいってください。

    前回の軽い復習

    前回は、前方アプローチでの尿管同定には三つの方法があるという話をしました

    ①交差部を同定する方法(前方アプローチ型)と、②子宮動脈から追っていく方法(子宮動脈アプローチ型)と、③尿管を側方から追っていく方法(側方アプローチ型)の三つがありましたね。

    では①前方アプローチ型の尿管同定について、深堀していきましょう!

    発生学からの説明とコツ

    直接、交差部が同定できるとい言われても不思議な感じがしますよね。

    これは以下をわかっていると腑に落ちるかもしれません。

    子宮はミュラー菅由来、泌尿器系は中胚葉由来。
    違う由来のもの同士は基本的に隙間が存在する。

    発生が違うものは、基本的にすき間が存在します。

    川と道路と考えてもいいかもしれません。つまり、違うタイミングでできたものは基本的に交わることはなく、間にすき間が存在し簡単に剥離することが出来ます。(本当に近いものは癒合筋膜など、つながるものもありますが基本は分かれると考えてください)

    一塊に考えよう

    子宮系の組織、尿管系の組織などと考えるときに、一つのパッキングされた組織と考えると把握しやすいです。

    突然ですが、東京都と大阪府の場所を外国人に説明するときはどうしますか?

    こう言うとわかりやすいと思いませんか?

    ”西日本”と”東日本”に分かれて、東の大きな都市が東京で、西の大きな都市が大阪。

    人間、まずは大きな解像度の粗い枠組みでとらえたほうが物事を把握しすいです。同様に附属器の組織、子宮の組織、尿管系の組織、外腸骨系の組織と荒い解像度で考えていくと解剖を理解しやすいわけです。

    尿管と子宮動脈で考えると、

    子宮系のパッキングされたブロックの一番頭側、腹側(上縁ともいう)に存在するのが子宮動脈

    尿管系のパッキングされたブロックのど真ん中に存在するのが尿管

    大きなブロックで考えるとメリットとしては、それぞれの間にはすき間や疎な結合織が存在するため、そのすき間を開けていくと出血なく組織を同定することが可能となり安全に素早く手術を行うことが出来る点です。

    実際の手順としては

    ①以下のような展開を目指し、脂肪を骨盤側、そして奥につけるように広間膜後葉に沿って剥離する

    子宮組織と骨盤の組織と、尿管の組織が大まかに把握する。

    子宮の組織尿管組織の間に入ればよいわけです。

    ブロックの具体的な把握方法 脂肪は・・・?

    ブロックという概念のの大切さは理解できたと思いますが、そのブロックはをどのように把握するのでしょうか?

    ここでも脂肪の話が出てきます。脂肪は脈管についているという話を以前しました(こちら参照)。

    そのため、子宮動静脈や尿管にも、組織に沿って脂肪がついています。よくよく脂肪を見ると、膨らみ方や血管走行を基準に、基靭帯の脂肪、尿管の脂肪、内腸骨の脂肪、外腸骨の脂肪と判別することが出来ます。

    その脂肪を基準にパッキングを見分けることですき間を把握することができ、その結果、出血もなく尿管子宮動脈の交差部を同定することが出来るというわけです。

    結局、どの方法がよいの?

    いま実際の手術で行っている順番はこのようになります。

    1. 前方アプローチ型で直接交差部を同定しに行く。
    2. 癒着等で難しければ子宮動脈アプローチ型で子宮頚部より血管をたどっていく。
    3. 癒着が強固で難しければ側方アプローチ型で外側を広げる。
    4. さらに難しければ、骨盤漏斗靭帯の横まで腹膜切開する。

    基本的にTLHは良性疾患に対する術式のため、広範囲の組織を取る必要はないという考えのもとこのような順番で考えています。

    そのため、腹膜の展開がより少なく尿管が同定できる方法から試していき尿管の同定を行っています。

    そのため直接見つける方法を優先とし、その次は子宮動脈を追っていき、最後は結局外側に広げていく形となります。

    側方アプローチは円靭帯下の腹膜を大きく開けて、骨盤漏斗靭帯近くで尿管を見つけますが、これはかなり大きな腹膜の切開とになり悪性腫瘍の手術であればよいかもしれませんが、良性腫瘍の手術で大きく展開することはデメリットしかないように感じています。

    側方アプローチの大きなメリット

    これだけは言っておきたいのですが、前方アプローチに対して、側方アプローチが悪いわけではないです。

    腹膜を大きく展開することでどれほど悪影響があるというエビデンスはありませんし、ここで前方アプローチの情報は前方アプローチTLHをやっている人のポジショントークと考えてもらったほうがバランスが取れると思います。

    個人的に現在、側方アプローチの施設のほうが多い理由として以下のメリットが大きのではないかと考察しています。

    ①ダイヤモンド型は執刀医の右手の位置の関係で前方よりも側方アプローチを行いやすい。
    ②若手の指導の時に、尿管を先に同定する手順はわかりやすく安全なためやらせやすい。

    またそれぞれのアプローチのメリットデメリットはまとめようとは思っているのでその時に説明していきますね。

    今日からできること

    剥離範囲をなるべく少なく手術を行う。

    まとめ と 練習問題

    前方アプローチの前方アプローチ型の尿管同定手術について解説しました。尿管と子宮の発生学的な位置関係や、組織のパッキングの概念を理解することが役立ちます。手術においては、脂肪を基準にパッキングを見分け、すき間を把握して尿管同定を行います。手順としては、前方アプローチ型で直接交差部を同定し、癒着等で難しい場合は子宮動脈アプローチ型や側方アプローチ型を行います。発生学や組織のパッキングの概念を理解し、脂肪を見分ける技術を身につけることが重要です。

    次回は前方アプローチの視野における尿管と子宮動脈の位置関係についてわかりやすく説明していきます。お楽しみに。

    練習問題

    前方アプローチ型の尿管同定手術において、以下のうち誤っているものはどれか。

    • a) 尿管と子宮動脈の交差部を同定することで、手術中に尿管を損傷するリスクを軽減することができる。
    • b) 尿管と子宮の発生学的な位置関係や組織のパッキングの概念を理解することは、手術をスムーズに進めるために重要である。
    • c) 脂肪を見分ける技術は、側方アプローチ型では行われない。
    • d) TLHは子宮全摘術の中でも広範囲の組織を取る必要があるため、腹膜の展開が重要である。

    回答:c.d

    解説:前方アプローチ型の尿管同定手術において、脂肪を見分ける技術は非常に重要であり、側方アプローチ型でも利用できます。脂肪を見分けることで、尿管の脂肪を同定できるため、尿管自体の同定も容易となり、手術中に出血を最小限に抑えることができます。

    尿管と子宮動脈の交差部を同定することで、手術中に尿管を損傷するリスクを軽減することができるというのは正しいです。また、尿管と子宮の発生学的な位置関係や組織のパッキングの概念を理解することは、手術をスムーズに進めるために重要です。

    TLHにおいては、基本的に広範囲の組織を取る必要がないため最小限の腹膜の展開を心がけることが大切です。