タグ: 癒着

  • 子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

    子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

    子宮傍組織ってどんなイメージですか?

    何となく、走行がよくわからなくなったり、何の血管を処理しているのかわからなくなることってありませんか?

    他にも、いつもなら出血しなかったのに、なぜか今回だけるだけで出血することはありませんか?

    これらはすべて”あなたのイメージ”が悪いのかもしれません。

    出血と戦う産婦人科。そんな産婦人科にとって、子宮の血流を止めることはどの産婦人科にとっても必要な技術です。あとから怖い思いをしないようにぜひイメージをつかんでいきましょう。

    子宮傍組織は”シャンパンタワーとグラス”

    今回は、子宮傍組織を”シャンパンタワーとグラス”をメタファーにして考えてみましょう。

    え?っと思いますか?ちゃんと理由があります。

    皆さんは、最近記憶力落ちたなぁと思いませんか。私は絶賛実感中です。

    基本的に人間の記憶力は低下していきます。嫌ですよね。

    しかし、年を重ねるにつれ記憶力が低下していっても理解力が深まっていく人がいます。

    それは、

    これまでの知識やイメージに当てはめることが出来る人です。

    いろんな知識や考えをコネクティングしていく。そうすることで新たな視点や深みが出てくるわけです。

    なので、子宮傍組織をシャンパンタワーとグラス”で考えると、理解が深まり、今処理しているものを考えやすくなり全体感も把握することが可能になります。では本題に行きましょう。

    シャンパンタワーのメタファー

    シャンパンタワーのイメージはどのようなものですか?

    グラスが積み重なり、上から下に広がっていくイメージですよね。結婚式などでみられるものですね。

    これを子宮傍組織とつなげてみてください。

    どうすればいいですか?

    答えは、まず横にします。
    そして子宮から骨盤に向けて行っていってください。

    百聞は一見に如かず。今回イメージすべきシャンパンタワーはこちらになります。

    はい、わけわからんですよね。雑コラですね。

    これにわかるように名前を付けていくとこうなります。

    見えてきましたか?つまり

    子宮傍組織は子宮側の子宮動静脈から始まり、骨盤に向かってどんどん広がっていきます。

    シャンパンメタファーのとらえ方

    この画像を見て質問です。どこが危険ですか?

    そうですね。

    骨盤側(シャンパンタワーの下のほう)のほうが危険なものが多くないですか?

    尿管、子宮動脈本管など傷つけてはいけない臓器がたくさんあります。

    尿管にしろ、膀胱にしろ、動静脈にしろ骨盤側に行くにつれ危険なものが広がっていきます。

    つまり、子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっているというイメージが出来ますね。

    なるほど、子宮の近くで処理をしろ!と子宮全摘の初心者ほど言われるのはこういうわけがあるわけです。

    シャンパンタワーでいうと、なるべく上のほう、つまり子宮側を触ると安全ということが丸わかりですね。

    癒着の怖さとシャンパンタワー

    癒着って怖いですよね。癒着により血管や尿管や膀胱、腸などの位置が変わり思いがけない出血や他臓器損傷のリスクが高くなり、手が震え、動悸がしてきます。

    その怖い癒着をシャンパンタワーというふざけたメタファーでとらえてみましょう。

    癒着によりシャンパンタワーには何が起こりますか?

    たとえば、内膜症や腺筋症で後葉が引き連れている場合は、尿管が子宮によって来たりしますよね。
    帝王切開後の場合は膀胱が吊り上がっていたり血管が引き連れていることがあります。

    これを先ほどのシャンパンタワーで考えるとどうなりますか?

    実は、癒着によりグラスの位置が変わるんです。

    より具体的に言うと、グラス(尿管や血管)が上(子宮側)に変化します。

    上で示した傍組織の画像は,じつはCS3回のTLHの画像になります。膀胱剥離後です。

    そして、膀胱を処理する前の膀胱が吊り上がっている状態の画像はこちらになります。

    膀胱の位置がかなり吊り上がっています。そのため、膀胱及び尿管が子宮に寄ってきていますよね。

    つまり、シャンパンタワーで言うところの一つ子宮側に移動しているわけです。
    これはかなり危ないですよね。せっかく安全と思っていた、シャンパンタワーの頂点近くで切除したのに、そこには尿管がいて損傷した。こんな悲劇的なことが起きてしまうわけです。

    内膜症症例でも、仙骨子宮靭帯と思ったら尿管だったなんてこともよくある話ですね。

    癒着があると組織の場所がかかわる。これをシャンパンタワーで考えるとグラスの位置が変わる!という風にとらえることが出来ますね。

    グラスの位置を変えたい。

    グラスの位置変えたくないですか?グラスの位置を変えれたらすごいですよね。

    危ないグラス(臓器)はすべてシャンパンタワーの下のほう(骨盤側)に移動させれるわけです。

    ここでグラスを安全な位置に変えれるのが”剥離”となるわけです。

    ↑膀胱をずらした後の図。

    剥離をすることで組織(グラス)同士が離れ、シャンパンタワーのグラスの位置を変えることが出来ます。つまり子宮や切開ラインから離すことが可能になります。

    具体的には
    腹膜切除を行えば、前葉の場合は膀胱が離れ、後葉の場合は尿管が離れます。
    広間膜腔を広げる、つまり腹膜や血管周囲の組織を剥離すると尿管や大血管が離れます。

    このように、剥離を行うと、損傷してはいけない臓器や血管が離れる、シャンパンタワーでいうとグラスの下の段に行くわけです。

    どうでしょうか、子宮傍組織と”シャンパンタワーとグラス”というイメージはつかめましたでしょうか。

    わかりにくい場合は、扇のように広がっていくイメージを持ってもらえれば良いと思います。川が平地に向かうにつれて広がっていくイメージなどもよいと思います。

    ぜひ、ものが広がっていき、そして癒着があると傷つけてはいけないものの位置がより子宮に近づくというイメージを持ってみてください。

    皆様がより安全な手術が行えるますように。

    次回は、傍組織の切開方法を2パターンで説明していきます。お楽しみに。

    (X(Twitter)で更新のアナウンスをするのでぜひフォローしてみてください。)

    まとめ問題と解説


    問題1:

    「シャンパンタワー」というイメージを使って説明された「子宮傍組織」はどのような特性を持つとされていますか?

    1. 上部ほど危険な部分が多い
    2. 下部ほど危険な部分が多い
    3. 全体的に危険な部分が広がっている
    4. 危険な部分は特定できない

    答え: 2. 下部ほど危険な部分が多い

    解説: 「シャンパンタワー」のイメージを用いて、「子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっている」と説明されています。


    問題2:

    癒着が発生した場合、どのような変化が「シャンパンタワー」に影響を与えるとされていますか?

    1. 危険な部分が子宮側に移動する
    2. 危険な部分が更に広がる
    3. 危険な部分が縮小する
    4. 危険な部分が固定される

    答え: 1. 危険な部分が子宮側に移動する

    解説: 癒着が発生すると、通常は安全とされる子宮側の部分にも危険な部分(尿管や膀胱など)が移動してくるため、予期せぬ損傷のリスクが増えると説明されています。


    問題3:

    剥離を行うと、どのような効果が得られると説明されていますか?

    1. 危険な部分が子宮側に移動する
    2. 危険な部分を「シャンパンタワー」の下に向かわせることができる
    3. 危険な部分が縮小する
    4. 危険な部分が固定される

    答え: 2. 危険な部分をシャンパンタワーの下に向かわせることができる

    解説: 剥離を行うことで、損傷してはいけない臓器や血管を安全な位置、すなわちシャンパンタワーの下へ移動させることができると説明されています。これにより、危険な部分を避けながら処理を行うことが可能になります。

  • 円靭帯処理③ 円靭帯と”あるもの”の距離を見れば広間膜の癒着がわかる。

    円靭帯処理③ 円靭帯と”あるもの”の距離を見れば広間膜の癒着がわかる。

    実は意識して円靭帯を見れるようになってくると、円靭帯を見るだけでそのあとの広間膜の展開のがわかるようになります。

    ポイントはただ一つ

    骨盤漏斗靭帯との距離

    円靭帯と骨盤漏斗靭帯が近い場合は広間膜腔の展開が難しいことが予想できます。

    今回は、その理由をわかりやすく言語化してお伝えします。

    そもそも広間膜腔とは

    広間膜腔は人間には存在しない腔です。

    え?って感じますか?

    では、次の写真はお腹に入った時の写真です。広間膜腔を示してください。

    ここですか?

    正解と言いたいところですが、厳密には違います。

    それはまだ広間膜です。

    屁理屈を言っているようですがかなり重要なことなので正確にお願いします。

    正解は、まだ広間膜腔は見えていない。です。

    実は、広間膜腔とは広間膜(腹膜)の前葉と後葉を広げたときにできる腔です。

    広間膜のいずれかに切開を入れ適切なテンションをかけると、陰圧をかけた旅行用バックが広がるように腔が出来るのです。

    なので広間膜腔は

    人工的に作った広間膜前葉と後葉の間の空間

    となります。

    円靭帯を見れば広間膜の癒着がわかる理由。

    結論から言うと円靭帯を見れば広間膜の癒着がわかる理由は

    円靭帯から骨盤に向かっていく腹膜は広間膜前葉、骨盤漏斗靭帯から骨盤に向かっていく腹膜が広間膜後葉だからです。

    ・・・

    意味わかりませんよね。

    大丈夫です。1つずつわかりやすく説明していきます。

    前葉と後葉の境は卵管です。

    卵管より前側、円靭帯、膀胱側を前葉と言い、

    卵管より後ろ側骨盤漏斗靭帯、仙骨子宮靭帯を後葉と言います。

    ここで簡単に論理の展開を行っていくと

    卵管より前側、円靭帯、膀胱側を前葉

    卵管より後ろ側骨盤漏斗靭帯、仙骨子宮靭帯を後葉

    円靭帯は前葉

    骨盤漏斗靭帯は後葉

    勘のいい人ならわかりますよね。

    円靭帯が骨盤漏斗靭帯に近い場合はこのように言い換えられます。

    前葉がついている円靭帯後葉がついている骨盤漏斗靭帯、に近い。

    つまり、円靭帯と骨盤漏斗靭帯距離 ≒ 前葉と後葉の距離

    と予想できるのです。

    円靭帯による広間膜の癒着の予想が大切な理由。

    ここまではわかったと。”それで・・?”ってなりましたか

    この円靭帯による癒着予想はめちゃくちゃ大切です。その理由は

    内膜症

    でました内膜症。内膜症の手術での怖さから説明します。

    内膜症が怖い理由

    手術で怖いのは事前に把握できなかった落とし穴のほうです。

    巨大子宮筋腫であれば自己血なり、血管内バルーンなり対策を打てますし、チョコ症例であれば時間を多くしたり、直腸プローべなどを用いて対策を打てます。

    何より時間を多めに設定しているので焦ってやらずに済みます。

    ところで内膜症って術前わかりますか?

    チョコがあるとか子宮後屈などの所見があればもちろんわかります。

    しかし、全体の1割の方にみられる内膜症には腹膜の病巣のみの症例も含みます。

    つまり・・・

    術前評価しきれなかった広間膜同士の癒着が1割程度にみられるのです。

    簡単な症例と術前認識していたのに急に内膜症により難しくなったのに、手術時間は簡単な症例として設定してる。そうすると限られた手術時間で手術を終わらせる必要が出てくるのです。これは焦りますよね。

    円靭帯による癒着予想の大切さ

    ここまでくればもうわかりますよね。術前に評価できなかったリスクを瞬時に把握できるということが最大のメリットになります。

    内膜症によらず、脂肪の炎症による癒着、子宮の圧迫による癒着様々な癒着が予想できます。

    腹腔内を見た瞬間に把握できる円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離が安全に手術を行うため大切なのです。

    特に、前方アプローチにおいて大切になってきます。

    前方アプローチの広間膜腔の展開の記事で詳しく説明していきたいと思います。

    今日からできること

    円靭帯と骨盤漏斗靭帯が近い時は子宮の観察を念入り行う。

    まとめ問題

    1.以下の選択肢から、広間膜腔に関する正しい記述を選んでください。

    • A. 広間膜腔は、人間の体内に自然に存在する腔である。
    • B. 広間膜腔は、広間膜(腹膜)の前葉と後葉を広げたときにできる腔である。
    • C. 広間膜腔の境界は、卵管によって区切られている。
    • D. 内膜症の手術では、広間膜腔の評価は不要である。

    正解: B. 広間膜腔は、広間膜(腹膜)の前葉と後葉を広げたときにできる腔である。

    解説:

    広間膜腔は、人間の体内には自然に存在しない腔であり、広間膜(腹膜)の前葉と後葉を広げたときにできる腔です。広間膜の前葉と後葉の境界は卵管です。広間膜腔の評価は、内膜症の手術で重要な役割を果たし、事前に評価できなかったリスクを瞬時に把握できることが最大のメリットです。円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離を見ることで、広間膜の癒着を予測することができ、手術の安全性を向上させることができます。

    次の選択肢のうち、広間膜の癒着を評価する際に円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離が重要である理由はどれでしょう。

    • A. 円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離は、術前の内膜症の診断に役立つ。
    • B. 円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離が近いほど、広間膜腔の展開が容易である。
    • C. 円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離は、術前に評価できなかった癒着のリスクを瞬時に把握するために重要である。
    • D. 円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離は、手術時間の短縮に直接的に関係している。

    解答と解説: 正解は C です。

    円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離が、広間膜の癒着を評価する際に重要である理由は、術前に評価できなかった癒着のリスクを瞬時に把握できるためです。手術中に予期せぬ癒着が発見された場合、手術の難易度が上がり、手術時間が限られている状況では焦りが生じることがあります。円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離を把握することで、手術中に安全に対処することができるのです。

    次回は”とりあえず真ん中”ではいけない時に移ります。お楽しみに。