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  • 広間膜後葉処理の”詳しすぎる”手順とコツ

    広間膜後葉処理の”詳しすぎる”手順とコツ

    腟管の切開のときになかなか切りきれなくて困ったことはありませんか

    実はそれ、広間膜後葉の処理が原因かもしれないんです。

    腟管がなかなかうまいこと切れないと悩んでいる方だけではなく、子宮動静脈上行枝の処理がうまいこと処理が出来ないなど、子宮全摘を行うすべての人に当てはまる内容ですのでお見逃しなく。

    円靭帯、広間膜前葉、子宮動脈、附属器の処理が終わりました。

    これから、子宮の背側の処理に移っていきます。

    広間膜後葉処理の手順とコツ

    広間膜後葉の処理は大きく分けて、切開ラインの決定と切開の二つになります。

    切開ラインの決定

    切開ラインは、仙骨子宮靭帯を基準に決めます。

    切開

    電気メスや、エネルギーデバイスを用いて、頸管と腹膜の間の組織を剥離しながら切開ラインに沿って切開していきます。

    切開ラインの詳しい解説

    では詳しい解説に移っていきます。

    実は、切開ラインの共通したルールが存在します。

    それは、”切開ラインによって上昇するリスクのが変わってくる”ということです。

    対象臓器に近いと出血のリスクになり、遠すぎると組織が臓器に残りその後の処理がうまくいかなかったり、他臓器損傷のリスクとなります。

    具体的には、広間膜後葉の切開ラインにおいては、以下のリスクが上昇します。

    • 奥に行き過ぎると基靭帯損傷
    • 切り込まなさすぎると傍子宮組織の処理が出来ない
    • 子宮から離れると尿管損傷
    • 子宮に近すぎると血管損傷

    つまり、よい切開ラインはこういえますね、離れすぎず近すぎず、

    ”ちょうどいいところ”

    安心してくださいちゃんと説明します。

    ではどうする?

    前葉の切開の時はどこが切開ラインの基準となったか覚えていますか?

    そう、膀胱の位置が基準となりましたよね。(詳しくはこちら

    同様に後葉の切開の時でも基準となる部位があります。それは、仙骨子宮靭帯となります。

    前葉では膀胱、後葉では仙骨子宮靭帯というわけですね。

    子宮をレトロ(寝かせた)状態の見え方

    ちなみに、なぜ仙骨子宮靭帯が切開ラインの目印となるのでしょう?

    それは

    円蓋部(ポルチオ)と腟のラインもわかりやすい

    という部分が最も重要な理由となります。出血がしにくく触りやすいのもいいですね。

    仙骨子宮靭帯の超具体的な同定方法

    でも仙骨子宮靭帯を同定できなければ基準点にできませんよね?

    安心してください、仙骨子宮靭帯の具体的な同定方法を説明していきます。

    まず、子宮を前屈にします。

    なぜなら、仙骨子宮靭帯は子宮を前屈させることで認識がしやすくなります。そして左右にねじるようにしてみてください。そうすると認識を容易に行うことが出来ます。

    ただ、腟パイプやマニュピレーターの種類により見え方が若干変わります。各病院で使われている機器の種類の特徴によって変わってくるわけです。

    腟パイプや円蓋部を同定するカップのあるマニュピレーターでは円蓋部を基準に同定します。

    ややパイプやカップが大きいほうが仙骨子宮靭帯が屈曲し同定しやすくなります。

    アトムのマニュピレーターのように円蓋部を同定できないものでは少しひねることで屈曲部の角で仙骨子宮靭帯を容易に同定することが出来ます。

    共通することは仙骨子宮靭帯を屈曲させるようにするというところです。

    やや不潔ですが、位置がわかりにくい時は、自分でマニュピレーターや腟パイプを動かすことで位置を同定してください。

    仙骨子宮靭帯を同定できた場合は、凝固や切開で基準点に印をつけ、そこに向かって切開ラインを決めます。

    切開ラインが決まりました。あとは切開方法がわかれば、後葉の処理は終了します

    広間膜後葉切開方法の詳しい解説

    広間膜後葉を実際に切るまでに、二つの処理があります。一つが、上行枝周辺組織の処理、もう一つが尿管下腹神経筋膜の切開になります。

    子宮動静脈上行枝周囲の組織を”だいこん掘り”のように処理する。

    イメージとしては、子宮頸管、特に子宮動静脈の上行枝の組織を剥離していくイメージを持っていください。

    子宮頸管が円柱として、それをつるつるにしていくようなイメージです。

    子宮全摘のことを”大根掘り”と例えることがありますが、この上行枝の組織の剥離は大根掘りでのは大根の周りについた泥をそぎ落としていくようなイメージです。

    つまり、大根(子宮)が地面(骨盤底)に刺さっており、それを周りの土(周りの組織)を落としながら引っこ抜いてくるイメージになります。

    今回で言いうと、子宮動静脈の腹側は前葉切開で切れているため、子宮動静脈上行枝の背側側の組織を処理できれば良いわけです。

    そのためには、広間膜後葉のテンションどうすればよいでしょう?

    正解は外側やや背側です。

    鉗子で広間膜後葉を外側やや背側に引っ張ることで上行枝と後葉間の組織を視認でできます。つまり頸管と腹膜の間の組織が見えるため処理がしやすくなります。

    ここを処理できれば後葉(腹膜)のみになり、この後の処理もきれいにすることが出来ます。

    膜を意識した後葉の処理

    上記の処理を終わった後の処理に移っていきましょう。

    広間膜後葉には、腹膜の他、尿管につながる層がついています

    いわゆる、尿管下腹神経筋膜と言われるものです。

    腹膜と尿管下腹神経筋膜の間を剥離して子宮側で、尿管下腹神経筋膜を落とせると尿管を外側に逃がすことが出来るためより安全に頸管の処理をすることが出来ます。

    具体的には、先ほどの展開と同じ状態で、後葉をピンっと張ります。

    ここにあわあわの組織が見えます。

    そして、腹膜かつかつで層と層の間に入るように鉗子操作を行うと、二つに分けることが出来ます。

    そして、上の層のみカットします。

    これらの作業によって、尿管を外側に逃がすことができます。そのため、より頸管の処理のときにより安全に行うことが出来ます。

    子宮傍組織の処理の時にはこのように見えます。

    これを仙骨子宮靭帯の深さまで行い後葉の処理は終了となります。なかなか、ここまで意識して処理することは少ないのではないでしょうか。

    できそうにないしょうか?

    いや大丈夫。

    意識をすることで見えるようになってきます。

    そして、逆に意識しないと全く見えてきません。

    いままで意識できていなかったところを意識できれば、より安全な手術が行え、高難度の症例でも合併症なく完投することが出来ることでしょう。

    リスクの少ない症例ほど丁寧に。高難度の症例ほどいつも通りに。

    こう意識していきましょう。

    練習問題と解説

    問題1:腟管切開の際に、切開ラインの基準となる部位は何でしょうか?

    A. 広間膜前葉
    B. 子宮動脈
    C. 附属器
    D. 仙骨子宮靭帯

    答え: D. 仙骨子宮靭帯

    解説: 腟管切開の際に、切開ラインを決定するための基準は仙骨子宮靭帯であり、適切な切開位置が決定され、子宮全摘の安全な実施が可能となります。

    問題2:広間膜後葉切開の適切なテンションはどの方向でしょうか?

    A. 内側やや背側
    B. 外側やや背側
    C. 外側やや腹側
    D. 内側やや腹側

    答え: B. 外側やや背側

    解説: 子宮動静脈上行枝の背側側の組織を処理するためには、広間膜後葉のテンションは外側やや背側となります。これにより、上行枝と後葉間の組織を視認し、処理が容易になります。

    問題3:仙骨子宮靭帯の同定を容易にする方法として最も適切なのはどれでしょうか?

    A. 子宮を前屈させる
    B. 子宮を後屈させる
    C. 子宮を左側に傾ける
    D. 子宮を右側に傾ける

    答え: A. 子宮を前屈させる

    解説: テキストによると、仙骨子宮靭帯を同定するためには、子宮を前屈させることで認識がしやすくなります。前屈したうえで左右に振るとより認識しやすくなります。

    次回は仙骨子宮靭帯の処理について説明します。お楽しみに。

  • 広間膜腔の展開⑥ 脂肪は敵?それとも・・・

    広間膜腔の展開⑥ 脂肪は敵?それとも・・・

    術中の脂肪組織って邪魔ですよね。”脂肪には百害あって一利なし”なんて思いませんか。視野の邪魔になるし、出血するし・・・

    今回は、その視点をガラっと変える話をします。最後まで読むころにはきっと

    ”脂肪、ありがとう”

    となっています。

    ぜひ楽しんでいってください。

    脂肪のメリット

    実はあの邪魔な脂肪、見方によってはかなり”強大な仲間”になります。

    強敵とかいて、”とも”と呼ぶ的な感じです。

    特に、前方アプローチでは腹膜下筋膜に沿って剥離していくときにめちゃめちゃ役に立ちます。

    早速結論から言います。脂肪のメリットとは

    脂肪に切り込まないこと、そして脂肪の下に入ることで腹膜下筋膜の展開が出来る。

    これに尽きます。具体的にわかりやすく説明していきます。

    脂肪の役割

    脂肪は本来どのような役割がありますか?

    そんなの簡単ですよね。

    ”エネルギーを蓄え、与える。”

    これは医学を学んでいなくてもわかりますよね。

    では視点を変えて考えるとこうとも言えます。

    ”それぞれの脂肪にはエネルギーを与える対象が存在する”

    実は、それぞれの脂肪には所属場所が決まっており、脂肪は基本的に何かの付属物です。

    ということは、脂肪を見ることで、おなかの中でどこらへんを触っているのかがわかってくるのです。これはめちゃめちゃ大事なことです。

    地図で言うと、ローソンがある交差点を右に曲がるときの”ローソン”ぐらい大事な指標になります。

    血管などの脈管の周りに脂肪がいており、脂肪を意識することで触っている場所がわかるわけです。これはより繊細な視野を確保できる内視鏡による大きなメリットです。使わない理由はないですよね。

    脂肪の使い方 腹膜磨き

    脂肪が何かの所有物ということは理解できましたね。

    では広間膜後葉の近くにある脂肪はどの組織の所有物でしょうか?

    広間膜腔で見えてくる脈管を考えると答えが出てきます。

    一つ一つ展開図と共に確認していきましょう。

    まずは円靭帯を切断した後のこの脂肪はどの組織の脂肪ですか?

    これは骨盤漏斗靭帯近くにある脂肪なので、骨盤漏斗靭帯の脂肪となります。

    剥離するときは脂肪が本来ついている組織につけるように剥離して行ってください。

    骨盤漏斗靭帯につけるために、この場合は脂肪の上を通るように剥離していってください。

    広間膜後葉についている骨盤漏斗靭帯を通るときは脂肪が骨盤漏斗靭帯に付くように脂肪の上を通るように剥離を進めていけばいいわけですね。

    では次に行きましょう。

    この後に出てくる脂肪に関してはすべて同じです。

    脂肪を骨盤側(つまり外側)にいくように腹膜に沿って剥離して行ってください。

    なぜなら、この後の脂肪は、基靭帯や外腸骨、内腸骨、尿管系の脈管につく脂肪だからです。

    展開していくとこのようになります

    肉の余分な脂肪を落とすことを肉磨きと言いますが、肉磨きならぬ腹膜磨きです。腹膜から余分な脂肪をそぎ落とすように展開をしていってください。

    広間膜腔の展開”腹膜磨き”の注意点

    脂肪は脈管の所有物であり、その持ち主につけるように剥離していく。

    このポイントを意識すれば作りたかった腔が出てきますが、いくつか注意点があります。

    ・行き過ぎ注意

    腹膜に沿って脂肪を全て前葉側骨盤側にあげていくと、基靭帯の下に潜っていくことになります。

    そうするとかなり深いところに行って、直腸側腔まで到達してしまいます。

    TLHであれば直腸側腔を展開する必要はないので必要ない展開となり、誤認し、他臓器損傷や骨盤深くでの血管損傷といった合併症のリスクだけが高まってしまいます。

    尿管の深さまで行ければそこで終了です。

    腹膜に穴をあけない

    腹膜に穴をつけてしまうとテンションがかけにくくなります。

    なるべく腹膜に沿って行くことが大切ですが、腹膜に穴が開かないように気をつけましょう。内膜症や癒着症例ではどうしても腹膜に穴が開いてしまうことがあります。その時のリカバリーに関しては後日お伝えします。

    脂肪を広間膜後葉につけるとどうなる?

    どうしても癒着が強くて、思うように剥離が出来ず、とりあえず開きやすいところを剥離してくことがありますよね?

    前方アプローチでこれをやっていくと、脂肪を下につけた状態となり靭帯の逆に膀胱側腔に入ることがあります。

    つまり基靭帯の上に入ってしまうと言うことです。

    こうなるとなかなか子宮の血管と、基靭帯が同定できず、尿管もはるか深い脂肪の中に埋もれることになります。

    最悪、上膀胱動脈を子宮動脈と誤認して凝固や結紮してしまうことがあり、かなり侵襲の大きなリスクの高い手術となってしまいます。

    なるべく脂肪は後葉から離れるように後葉を磨いて行ってください。

    今日からできること

    脂肪がどの脈管の所有物なのかを意識する。

    まとめ問題

    次のうち、広間膜腔の展開において脂肪の扱いについて正しい記述はどれでしょうか?

    • A. 脂肪は常に邪魔であり、すべて除去すべきである。
    • B. 脂肪は脈管の所有物であり、その持ち主につけるように剥離していくことが重要である。
    • C. 脂肪を広間膜後葉につけることで、手術が容易になる。
    • D. 脂肪は全く意味がなく、その存在によって手術のリスクは増加する。

    正解:B 解説: 脂肪は脈管の所有物であり、その持ち主につけるように剥離していくことが重要です。脂肪を適切に扱うことで、手術中に触っている場所がわかり、より繊細な視野を確保できます。選択肢A、C、およびDは、脂肪の扱いに関する誤った考え方を示しています。適切に脂肪を扱うことで、手術のリスクを減らし、効果的な展開を行うことができます。

    次回からはいよいよ前方アプローチでの尿管に移っていきます!

  • 広間膜腔の展開⑤ 超具体的な展開方法

    広間膜腔の展開⑤ 超具体的な展開方法

    前回は作りたい腔の形があって、それに向かって展開していくという話をしました。

    こんな形でしたね。

    手前の円靱帯を切って、上蓋である広間膜前葉を子宮側で切開した、その後の話になります。

    上蓋と聞いてもよくわからない人はこちらを参照してください。

    今回は誰でもわかるような、前方アプローチにおける、広間膜腔の超具体的な展開方法について説明していきます。

    広間腔の展開

    ①広間膜前葉の切開が終われば、まずは円靭帯の断端を頭側に引っ張り子宮を直線化します。

    まずは円靭帯の断端を頭側に引っ張り子宮を直線化します。

    この時子宮がねじれないように気を付けてください。ねじれがあると組織の場所がずれて損傷のリスクが高まりますし、腹膜がたわむ原因となります。

    頭側にまっすぐに引っ張ることで広間膜後葉にテンションがかかります。この時は腹膜や円靭帯が裂けない程度に引っ張ってください。

    ②円靭帯近くの広間膜前葉を持ち上げ疎な結合組織をだす。

    次に円靭帯を持ち上げます。具体的な引っ張る強さが気になりますよね。

    ”ジェントルな”とか”適切な”と情報量0の言葉でよく言われるやつです。

    大丈夫です具体的に言語化していきます。具体的な引っ張るテンションは・・・

    細かい血管から出血が出ないぎりぎりの強めのテンションとなります。出血があればそれひっぱりすぎですがテンションがかからないと切るべき層も見えてきません。

    引っ張るテンションに関しては強めがいいです。

    なるべく”ジェントルに”強く優しく”適切な”力で引っ張ってください。

    そうすると、癒着がなければ疎な結合組織がガバッと出てきます。いわゆる”あわあわな層”ですね。見た目があわあわしていますね。

    ③リンパ管や毛細血管を切除していく。

    次にリンパ管や毛細血管を切開していきます。太い血管は凝固してから切開してください。

    ”適切な”テンションをかけることで、突っ張ったところが見えてきます。

    これはいわゆる”すじ”のようなもので。毛細血管やおそらくリンパ管であると思います。

    これらを切っていくことで広間膜腔が展開していきます。

    ④疎な結合組織を外側になるべく付くように子宮側かつ広間膜後葉側で切開。

    ゴールを覚えていますか?

    ゴールは子宮と広間膜後葉がつるつるに向けたこの像でしたね。

    この形にするためには、子宮側、そして広間膜後葉側で”すじ”を切開していきます。

    いいですか。大事なので繰り返します、子宮側、そして広間膜後葉側で剥離していってください。

    鈍的に押して行ってもいいですが、癒着している症例ではどんどん固まりを作ってしまい泥沼にはまってしまいます。

    鋭的剥離と鈍的剥離に関して後日記事にしますが、基本は腹膜をうごかしたり、組織自体に軽く鈍的にちょんちょん触って安全な場所を探し、できれば鋭的に切開していくのがおすすめです。

    より具体的な広間膜腔の展開の意味

    大体のイメージがつかめましたか?

    子宮と、広間膜後葉が出てくるように子宮側、後葉側で細い血管などの”すじ”を切っていけばいいという内容でしたね。

    では少しだけより具体的にしていきましょう。

    具体的に広間膜腔の展開を表現すると、”広間膜後葉に沿って展開していく”ということになります。

    そしてさらにさらに、専門的な用語を使うと、広間膜腔の展開とは

    広間膜後葉の腹膜下筋膜に沿って剥離していくこと

    を指しています。

    出ました、腹膜下筋膜!

    以前腹膜の裏には”筋膜”があるという話をしました。(読んでいない方はこちら”広間膜の切り方と腹膜の本当の姿”)

    当然、広間膜後葉にも筋膜があります。この筋膜の名前は腹膜下筋膜と言います。(この広間膜後葉の腹膜下筋膜についてはそれだけで一つの記事になるので後日記事にします。)

    今回長くなったので、具体的に腹膜下筋膜に沿って剥離する方法については次回お伝えします。

    まとめ

    今回は広間膜前葉を切開した後の広間膜腔の展開について手順書のように説明しました。

    さらに最後は、広間膜腔の展開とは広間膜後葉の腹膜下筋膜に沿って展開するという話をしました。

    次回は、腹膜下筋膜に沿って展開するときのメルクマールについて具体的にお伝えします。お楽しみに。

    今回は、前方アプローチにおける広間膜腔の超具体的な展開方法について説明しました。まず、広間膜前葉を切開した後、円靭帯の断端を頭側に引っ張り、子宮を直線化します。次に、広間膜前葉を持ち上げ、疎な結合組織を引き出します。適切なテンションとは出血がないぎりぎりの強いテンションです。リンパ管や毛細血管を切除しながら、疎な結合組織を外側につけるように子宮側かつ広間膜後葉側で切開します。ゴールは、子宮と広間膜後葉がつるつるになるような形状を作ることです。これを実現するために、子宮側、広間膜後葉側で「すじ」を切開していきます。展開の具体的な方法としては、広間膜後葉に沿って展開していくことになりますがそれはまた次回。

  • 広間膜腔の展開④ ダビデ像との共通点

    広間膜腔の展開④ ダビデ像との共通点

    勉強会ではこのように言われたことがありませんか?

    適切なテンションをかけると、切るべきところが出てきます。

    ・・・

    正直、”やめてくれ”っておもいませんか?

    ずっとこう思って聞いてました。

    適切なテンションと切るべきところを知りたいから聴いてるんです・・・

    情報量0の話はやめてほしい・・・と。

    適切なルートを通れば、いきたいところに行けます。」

    「結局人それぞれですよね。」

    と同じぐらい情報量が0ですよね。そりゃそうだろ!という全く意味のない情報になります。

    適切ってなに?切るべきところって何?

    大丈夫です。このブログではもっと具体的に、わかりやすく広間膜腔展開について説明していきます。

    広間膜腔を”作る”

    広間膜は存在しないという話はもういいですか。

    もう一度だけ言わせてください。

    広間膜腔とは人体に存在せず、広間膜の前葉と後葉を離した時にできる人工的な腔のことを言います。

    このブログを1から読んでくださっている方には耳タコかもしれませんが、広間膜腔は人為的に作っていくものです。(詳しくはこちら

    このこと知っていると知らないでは操作とやりやすさが全く違います。

    絵を描くときに、描きたいものを知らないと絵を描くことはできませんよね。

    これと同じです。

    そこに何が存在する?

    ダビデ像を掘り起こした。彫刻家のミケランジェロはこう言いました。

    「どんな石の塊も内部に彫像を秘めている。それを発見するのが彫刻家の仕事だ。」

    つまり、そこにはすでに石の中には完成像があり、そうなるように掘っていくだけということです。

    じつは、広間膜腔も同じです。

    どんな広間膜も内部に広間膜腔を秘めている。それを発見するのが執刀医の仕事だ。

    まずは中の像を知っていきましょう。

    作りたい腔の形

    中の像を知るには、”正解”となる形を知っておく必要があります。

    とりあえず前方アプローチで目指すべき広間膜腔の形を一つ紹介します。

    それは、箱の4面が見える形となります。

    左の広間膜腔であれば、奥に基靭帯、右に子宮(上行枝)、左に骨盤壁、下に後葉が存在します。

    そこに無駄な脂肪など存在しません。次のような腔です。

    尿管は左奥の角に存在し、子宮動脈は基靭帯の中にあります。この形です。目に焼き付けてください

    今回は広間膜の腔の作り方の導入として、”広間膜腔を展開した後の像”を紹介しました。

    目的地がわからないルートほど怖いものはありません。ゴールの像をしっかりと目に焼き付けてそれに近づくように広間膜腔を掘り起こせるようにしていきましょう

    今日からできること

    広間膜腔を展開する前に、展開後の像を思い描いておく

    まとめ問題

    広間膜腔展開に関する以下の記述のうち、正しいものを選択してください。

    • A. 広間膜腔は人体に存在する自然な空間であり、手術中に特別な操作をせずとも広間膜腔を確認できる。
    • B. 広間膜腔は人工的な空間であり、広間膜の前葉と後葉を離すことで作られる。
    • C. 広間膜腔の形成には、無駄な脂肪や組織を取り除くことは関係がない。
    • D. 広間膜腔展開の際には、ダビデ像やミケランジェロの作品との共通点は全くない。

    回答:B. 広間膜腔は人工的な空間であり、広間膜の前葉と後葉を離すことで作られる。

    解説: 広間膜腔は人体に自然に存在しない空間で、手術中に広間膜の前葉と後葉を離すことで作られる人工的な空間です。そのため、選択肢AとCは誤りです。

    また、選択肢Dに関しては、ダビデ像やミケランジェロの作品との共通点がないとしていますが、実際には広間膜腔とダビデ像の制作には共通点があります。どちらも完成像をイメージしながら、それに向かって作業を進めることが重要です。したがって、選択肢Dも誤りです。

    正しい選択肢はBであり、広間膜腔は人工的な空間で、広間膜の前葉と後葉を離すことで作られると述べられています。

    次回は”広間膜腔の超具体的な展開方法”について説明してきます。お楽しみに。

  • 広間膜腔の展開③ 前葉はなるべく子宮に近くで切るほうがよい。なんで?前葉の切開ラインと、切り方を徹底解説。

    広間膜腔の展開③ 前葉はなるべく子宮に近くで切るほうがよい。なんで?前葉の切開ラインと、切り方を徹底解説。

    前回は腹膜は”腹膜”と”腹膜下筋膜”の2枚に分かれるという内容でした。

    手術では腹膜の切開ラインがたった1センチずれるだけで展開のしやすさ、他臓器損傷のリスクが全然違います。

    いよいよ今回は腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)の前方アプローチにおける広間膜前葉の切開ラインについて説明していきたいと思います。

    前回は定義など結構抽象的な話をしましたが、今回は、始まりと終わりと切開ラインを示すだけなので手ぶらでお楽しみください。

    広間膜前葉切開 始める切開位置

    始まりは簡単です。円靭帯の切開部位と同じです。

    あたりまえですね。でも「言語化してください!」となると少し難しくないですか?

    このブログでは簡単なことでも言語化していきます。では行きましょう。

    もし、円靭帯を切っていない状態で前葉の切開部位を決めるならばどこを切開しますか?

    ・・・

    答えはなるべく”子宮に近い”部分となります。

    前に聞いたことがありますよね。

    これは円靱帯切開部位を決めるときのポイントの一つでしたね。

    ここで伏線回収。実は円靭帯をしっかり処理できているといいところで前葉の切開が出来ているのです。

    復習ですが、円靭帯を切開する時は子宮側の血管上行枝の近くで切開しているこちら参照)ので、うまく切れているときはそのまま円靭帯切開位置を始まりの位置になっています。。

    結論!

    円靱帯をきれいに切れている場合は気にせずそのままスタート位置に決めてください。

    困難症例などの場合は円靭帯がうまく切れているか自信がない場合

    円靭帯の切開をうまく切れたかわからない場合は、

    一旦子宮の位置を確認して円靱帯を切った断端の中でスタート位置を再調整してください。

    引き連れて上行枝出血させそうだなぁとなれば、離れてください。
    巨大子宮筋腫ですごく離れすぎたと思ったら、近づいてください。

    ↓の術中写真では円靭帯を切断場所が子宮に近に取りすぎて出血をしたため、外側に調整した例を出しておきます。

    広間膜前葉切開 終わりの位置

    では次に広間膜前葉切開の終わりのパターンは2パターンあります。

    ①子宮動脈本管まで
    ②膀胱子宮窩まで

    が広間膜の前葉切開の終了位置になります。

    ①子宮動脈本管まで

    子宮動脈を基準とするならば、まず腹膜越しにから拍動をみて場所を決めましょう

    この方法は特に膀胱が癒着している症例や、膀胱の位置がわかりにくい場合に有効です。

    ②膀胱子宮窩まで

    膀胱子宮窩まで切開をつなげるときは、先に膀胱腹膜を先に下ろして場所を決めましょう

    膀胱腹膜の剥離に関しては、膀胱剥離③ 正面突破 4ステップを参考にしてください。

    以上の、どちらかの手順で切開の終わりを決めてください。

    最初のころは②の膀胱を先に下ろした方がやりやすいのでおすすめです。

    画像でみる実際の切開方法

    始まりと終わりが決まれば、あとはどのよう切開ラインを入れるかになります。

    今回は実際に行うことですので、1つ1つ丁寧に手順を説明していきますね。

    まずは切断した子宮子宮側の円靱帯断端を手前に引っ張り、子宮頸部と子宮動脈行枝や膀胱の位置を確認してください。

    そして”子宮になるべく寄って”切開してください。

    そうです、なるべく寄ってください!

    怖いですよね。わかります。でも寄って切ってください。

    裏取りをして安全を確かめながらじっくりと。安全だがなるべく子宮に近く。

    それが前方アプローチのコツになります。

    そして決めた終わりまで到達すれば前葉の切開は終了です。

    子宮に寄った切開がよい理由

    最後になぜ子宮に近い切開ラインがよいのか、その意味を考えてみましょう。

    ズバリ理由としては、そのほうがより解剖が見やすい広間膜腔になるからです。

    また抽象的な話になってきた・・・

    そう思いましたね。大丈夫です。

    その意味を図を用いてわかりやすく説明していきます!

    左広間膜で考えると、この切開ラインは広間膜箱でいうところの、右壁(子宮)と上蓋(前葉)の間を切っています。

    図を見ながらイメージしていきましょう。このような展開図でしたね。だんだんわかりやすくなりますので安心してください。

    円靭帯を切った後の切開ラインは辺で言うとこのラインですね。

    ちょっとわかりにくいですかね?

    少し立体的にしていきましょう。疑似的な広間膜腔箱は円靭帯を切った後はこんな感じになります。

    そして切開ラインはここになります。

    そして広間膜前葉を持ち上げることで蓋を開けるように展開してくと、子宮上行枝と基靭帯が丸見えの広間膜腔が出てくるのです。

    わかりましたか?

    ここで展開が終わった図と合わせてみるとこんな感じに完成像はなります。

    なるべく子宮よりに切開ラインを取ったほうが、あとあとの解剖がわかりやすくなる意味が分かりましたか?さらなる理解の助けのために、切開ラインを子宮から遠くした場合を考えてみましょうか。

    切開ラインをもしも、遠くすると

    もし切開ラインを子宮から遠くで取ってしまうと図のように、前葉を割ることになります。

    子宮から遠い分、余った組織が子宮側に残ることになりますよね。

    そうすると子宮側に前葉が付いた状態になります。

    子宮動脈に前葉が残っていると子宮動脈の上行枝が見えなくなります。

    となり右側に数字が残ってしまいます。切開ラインが子宮から離れると同様のことがおこります。

    組織が残ると、その分基靭帯や子宮動脈の把握も難しくなり、結果リスクの高い手術となってしまいます。

    近すぎるともちろん出血のリスクも高くなりますが、ここでどれだけ近く寄れるか。これに前方アプローチは尽きますので意識してみてください。

    今日できること

    勇気をもって子宮かつかつで腹膜を切開してみる

    復習問題と解説

    問題:
    広間膜前葉切開の手術において、円靭帯切開後の切開開始位置を決定する際、最も適切な位置はどこか。次の選択肢から最も正しいものを選びなさい。

    A) 子宮から遠い部分
    B) 子宮に近い部分
    C) 膀胱子宮窩まで
    D) 子宮動脈本管まで

    正解: B) 子宮に近い部分

    解説:
    広間膜前葉切開の手術において、切開開始位置は円靭帯の切開位置と同じであるべきであり、これは子宮に近い部分になります。円靭帯を切開する際には、子宮側の血管上行枝の近くで切開されるため、円靭帯が適切に切れている場合、その位置が切開のスタート位置になります。この位置選定は、術中の出血リスクを最小限に抑えつつ、必要な解剖構造を明確にするために重要です。選択肢Aは不適切で、CとDは切開の終了位置に関する選択であり、開始位置を選ぶ際の適切な選択肢ではありません。したがって、Bの「子宮に近い部分」が最も適切な選択となります。

    次回は広間膜腔とダビデ像の共通点になります。

  • 広間膜腔の展開② 腹膜の本当の姿しってる?

    広間膜腔の展開② 腹膜の本当の姿しってる?

    広間膜、つまり腹膜を正確に切ることは、手術を安全にうまく行うためには重要な要素ですよね。

    でも、腹膜を切ったはずなのになぜかうまいこと腔が開かない。そんな経験ありませんか?

    実はそれ腹膜の本当の姿を知らないからかもしれません。

    今回は”腹膜の本当の姿”について解説していきたいと思います。手ぶらでどうぞ楽しんでいってください。

    腹膜=”カワ”と”ウロコ”

    実は、腹膜は2枚にわかれています。魚の表面のカワとウロコみたいなものです。

    実は、腹膜には筋膜があります。ここでいう筋膜とは、「筋膜」といっても筋肉を包む膜ではありません。では、さっそく詳しく見ていきましょう。

    カワ=筋膜

    医師として働くまで解剖書で近くに筋肉が存在しない”筋膜”という単語をみて「なんの筋肉の膜なんだろう~?」とずっと疑問に思っていました。

    みなさんもきっと一度はそう感じたことはありますよね。その疑問にすっきりお答えします。

    実は、解剖学にとって筋膜とは

    ”何かを包む膜”のことを言います。

    字面通りの筋膜(腹直筋膜など)は筋肉を包んでいますよね。

    実は、人体の”何かを包む膜”をFasciaと言っていて、なんとなく筋肉を包むもの以外の包む膜の組織(Fascia)も、同様に筋膜と言っているのです。

    例としては

    開腹した時の脂肪と脂肪の間の膜は体を包む、浅筋膜
    筋肉を包む膜(字面通りの筋膜)は深筋膜
    血管を包む膜は血管筋膜(血管鞘の別の言い方)

    という訳です。他に言い方なかったんですかね。

    何はともあれ、これでカワの部分の意味が分かりましたね。

    これから食事で魚が出てきた時は皮を剥ぎながら笑顔でこう言ってみましょう

    「Fascia剥けたよ~」または「筋膜が剥がれたね」

    素敵!!!となること間違いないです。保証はしません。

    ウロコ=狭い意味の”腹膜”

    ウロコは本当の解剖学的な解像度の高い”腹膜”のことを指します。

    腹膜の説明に腹膜を使うんじゃねーよ!!

    もっともです。もう少し解像度を高くすると、中皮細胞となります。これは細胞レベルの細かい見方をしています。

    ウロコとは狭い意味の腹膜を示し、細胞レベルで言うと中皮細胞が構成している層。となるわけです。

    腹膜の本当の姿

    では2つをつなげて、腹膜の本当の姿を見ていきましょう。

    腹膜とは以下の2つからできています。

    カワ=筋膜、つまり”腹膜下筋膜”のことを指します。コラーゲンでできている組織を強固にする層。
    ウロコ=腹膜、つまり”狭い意味の腹膜”のことを指します。中皮細胞でできている機能的な層。

    腹膜=”腹膜”+”腹膜下筋膜”  という訳です。(中皮細胞からなる解像度の高い腹膜の層は”腹膜”と表記します)

    ウロコは水の流れをよくし、滑らかな動きに関わっていますが、同様に中皮細胞を含む”腹膜”も表面を滑らかにします。そうしないと腸が引っかかっておそらく死にます。

    腹膜下筋膜は硬い指示組織です。こちらは硬い膜を作り物理的に強くします。そうしないと内臓を隔てることが出来ず、すぐに内臓損傷が起きておそらく死にます。

    どちらも大切な構成要素です。覚えておきましょう。細かい名前は最悪いいので、

    硬い層と柔らかい層に分かれるんだなぁ

    と覚えておいてください。腹膜を処理するときはこのことを知っているか知っていないかだけでかなり変わってきます。

    手術における腹膜が二枚の意味

    ここまで長々と腹膜が二枚である意味を説明してきましたが、二枚あるという理解が何より腹膜の切開において大切です。知らずに表面の”腹膜(ウロコ)”だけを切った場合はどうなりますか?

    当然ですが、硬い層の腹膜下筋膜が残ることになります。

    つまり腹膜は、魚の鱗と皮のように2枚に分かれており、切り方を間違えると1枚膜が残ってしまい、正確な組織の把握の邪魔になってしまうということです。

    もっと解像度を高めた言い方をすると、腹膜下筋膜が残ることで、視野的に前回の説明した前葉展開後に見たい4面(子宮、基靭帯、骨盤壁、後葉)が見えなくなるのです。

    例えばこれは”腹膜下筋膜(カワ)”を途中から切れていない右広間膜腔の様子です。

    右広間膜前葉を途中までしっかりと2枚切れているが、血管に近づくにつてビビって1枚しか切れておらず、腹膜下筋膜(赤丸部分)が残っています。

    途中までは二枚しっかり切れているので外側の青丸の部分はしっかりと展開できており、骨盤壁と後葉が見えています。しかし、内側の赤丸の部分では腹膜下筋膜が切れていないので基靭帯と上行枝が埋もれてしまっています。

    ラップをかけたような状態になるわけですね。後ほどの処理が困難になってきます。

    ではしっかりと切れた例を見てみましょう。先ほどは右でしたが、これは左の広間膜腔となります。

    とてもきれいに構造が把握できますね。

    腹膜つまり広間膜前葉を切開する時は2枚ごと切っているのか、2枚に分けて切っているのか意識しながら切っていきましょう。

    しっかりと腹膜を切れたかどうかの基準は、脂肪が見えているかどうかでもわかります。

    腹膜の奥には脈管があって、それを栄養する脂肪があるため、しっかり切れた場合は脂肪が見えてきます。そこまでしっかりと腹膜下筋膜を意識して切開していきましょう。脂肪の大切さについては後ほど解説していきますのでお楽しみ。

    今回はかなり複雑な話をしました。わかりにくいかもしれませんが結局言いたいのは

    「腹膜は柔らかい層と硬い層がありますよ。硬い層もしっかり切りましょうね」だけです。

    腹膜を切るときは2枚あることを意識して切開していきましょう。

    今日からできること

    腹膜を何枚切っているか考えながら切開する

    まとめ問題

    問題: 広間膜展開時における腹膜に関する次の記述のうち、正しいものはどれでしょうか?

    • A. 腹膜は一枚の膜であり、切開時には一度に切る必要がある。
    • B. 腹膜は筋膜と狭い意味の腹膜から構成されており、切開時には両方を切る必要がある。
    • C. 腹膜下筋膜は、腹膜とは別の構造物であり、切開時には切る必要がない。
    • D. 腹膜は、表面の硬い層と内側の柔らかい層から構成されており、切開時には硬い層だけを切る必要がある。

    回答: B. 腹膜は筋膜と狭い意味の腹膜から構成されており、切開時には両方を切る必要がある。

    解説: 腹膜は筋膜(カワ)と狭い意味の腹膜(ウロコ)から構成されています。筋膜は腹膜下筋膜と呼ばれ、強固な層を形成し、物理的に内臓を保護しています。狭い意味の腹膜は、中皮細胞からなる層で、表面を滑らかにし、内臓の動きを円滑にしています。手術時には、腹膜と腹膜下筋膜の両方を切ることで、正確な組織の把握が可能になり、手術が円滑に進むことが期待できます。

    次回は広間膜前葉切開ラインについてになります。お楽しみに。

  • 広間膜腔の展開① 広間膜腔の箱イメージと円靭帯切開との秘密の関係

    広間膜腔の展開① 広間膜腔の箱イメージと円靭帯切開との秘密の関係

    ”初めに円靱帯を完全に切断する”

    ここに疑問を持った方はいるのではないでしょうか。初めに円靭帯を切る理由は何でしょうか?

    その理由はズバリ

    広間膜腔の展開が圧倒的にやりやすいためです。

    その理由を具体的にかなりかみ砕いてお伝えしていきます。

    広間膜腔を作るもの

    広間膜腔を展開するには広間膜腔を知らないといけません。

    魚を捌くには魚に骨と皮と肉と臓器があると知っておかないと、捌くときにぐちゃぐちゃになりますよね。

    それぐらい手術に関して構成している要素を把握するということは大切になってきます。

    ではいきましょう!広間膜腔とはっ!!!

    広間膜を広げた時にできる腔”です。

    ・・・・

    当たり前ですね。今言っているのは、魚は鱗のついた皮に包まれています。ぐらいのものです。もう少し解像度を高めて話をしていきましょうか。

    広間膜腔とは 

    ”広間膜前葉と後葉の間の組織を広げた腔”

    やっと、”魚とは鱗と皮とヒレがついたもの”ぐらいの解像度ですね。

    ではぐっっと解像度を高めてみましょう。

    広間膜腔とは

    ”広間膜前葉と後葉を広げ、子宮と基靭帯と骨盤壁と円靭帯(附属器)の間に作った腔”

    ・・・

    ゲボ吐きそうですよね。イメージ沸きにくっ!!

    大丈夫です。一つづつみていけば必ず理解できます。

    ここが理解できているかどうかでこの前方アプローチができるかどうか大きく変わってきます。

    ここまでくれば、魚の内臓がどこにあり、骨がどのようにあり、どうして三枚おろしができるのかというぐらいの解像度となります!変わってしまえば簡単なので一緒にがんばりましょう。

    ちなみに広間膜腔は広げた腔や作った腔とずっといっているのは、

    本来広間膜腔は人体には存在しないためです。広間膜を抜けて、前葉と後葉を上下に広げて初めて出てくるのです。

    気になった方は先にこちらをどうぞ

    https://sogogyne.online/広間膜腔とダビデ像/

    広間膜腔は自分で作っていくという心持が大切です。

    では広間膜腔の具体的なイメージに移っていきましょう。

    広間膜と箱の関係

    広間膜腔はそもそも存在しませんと言いましたが、ここではあえて広間膜を切らずに広間膜腔を作ってみましょう。

    前葉と後葉の間にカテラン針を刺して、ぷくっと空気で膨らませるイメージです。

    そうするとどのような形になりますか?

    いろいろ考えられますが、ここでは広間膜腔は”箱”と考えてください。

    左壁が骨盤壁、奥壁が基靭帯、右壁が子宮、手前が円靭帯と附属器。これらの壁の上下を前葉と後葉で蓋をしている。

    展開図でイメージするとこんな感じ

    これが前方アプローチにおける広間膜腔となります。もう少し立体的にするとこうなります。

    広間膜前葉と後葉を広げ、子宮と基靭帯と骨盤壁と円靭帯(附属器)の間にできた腔

    の意味を何となく理解できたでしょうか。では本題にいきましょう。

    なぜ円靱帯から切断するのか

    昔なぜ円靭帯から切るのかをBOSSに聞いたことがあります。

    答えは

    「その方が広がるから。」

    でした。今考えると確かにそうなんです。

    が、それはこの円靱帯を先に切ることの真意というにはかなり荒い説明でした。

    ここではもう少し解像度を高めた言い方をします。

    「円靱帯を切り広間膜前葉を広げることで、残りの子宮および基靭帯と尿管が綺麗に把握できるから。」

    はい、わけわからんですよね。怒らないでください。

    ちゃんとわかりやすく説明します。

    円靭帯および前葉切開後

    円靱帯を切開して、前葉を切開した場合を先程の広間膜腔の箱で考えてみましょう。

    それの手前の壁(円靭帯)をなくし、上蓋(前葉)を開けるととどうなりますか?

    残り4面になりますよね。

    左壁が骨盤壁、奥壁が基靭帯、右壁が子宮、そして底が広間膜後葉。

    少し箱の形にするとこうなります。

    ここまで行くと勘のいいひとであればわかるかもしれません。

    実は、先に円靱帯と広間膜前葉を開けることで、知りたかったものが見えてきます。

    もう少し詳しく言うと、

    尿管(骨盤壁)子宮動脈(基靭帯の上縁)上行枝(子宮)が丸見えになる訳です。

    逆行性に考えると

    子宮動脈と尿管の位置知りたい→円靭帯と前葉をあけたい→まずは手前の円靱帯を切らないといけない

    という論理展開になる訳です。これが円靭帯から切る理由になります。

    実際の手術でどのように見えるか

    これは左の円靭帯を切除し広間膜前葉を展開した後の図になります。

    いったん、立体的に奥行きをもって見てください。

    左壁が骨盤壁、奥壁が基靭帯、右壁が子宮、そして底が広間膜後葉。

    ・・・

    見えてきましたか?

    このように見えればイメージは完璧です。

    しっかりとイメージできましたか?

    今日からできること

    箱のイメージをもって広間膜腔をとらえてみる。

    まとめ問題

    以下の選択肢の中から、円靭帯を先に切断する最も重要な理由を選んでください。

    • A) 広間膜腔の展開がやりやすくなる。
    • B) 子宮動脈の血流が確保される。
    • C) 広間膜後葉の展開が容易になる。
    • D) 尿管の損傷リスクが低くなる。

    正解: A) 広間膜腔の展開がやりやすくなる。

    解説: 円靭帯を先に切断する理由は、広間膜腔の展開が圧倒的にやりやすくなるためです。円靭帯と広間膜前葉を開けることで、残りの子宮、基靭帯、尿管が綺麗に把握できます。これにより、尿管(骨盤壁)、子宮動脈(基靭帯の上縁)、上行枝(子宮)が丸見えになり、手術が容易になります。

    最も重要という意味でAが意味を包括しているため正解となります。

    今回説明した”箱のイメージ”はめちゃめちゃ大切なイメージなのでぜひ自分のものにしてください。

    次回は”広間膜の切り方と腹膜の本当の姿”となります。お楽しみに。

  • 円靭帯処理③ 円靭帯と”あるもの”の距離を見れば広間膜の癒着がわかる。

    円靭帯処理③ 円靭帯と”あるもの”の距離を見れば広間膜の癒着がわかる。

    実は意識して円靭帯を見れるようになってくると、円靭帯を見るだけでそのあとの広間膜の展開のがわかるようになります。

    ポイントはただ一つ

    骨盤漏斗靭帯との距離

    円靭帯と骨盤漏斗靭帯が近い場合は広間膜腔の展開が難しいことが予想できます。

    今回は、その理由をわかりやすく言語化してお伝えします。

    そもそも広間膜腔とは

    広間膜腔は人間には存在しない腔です。

    え?って感じますか?

    では、次の写真はお腹に入った時の写真です。広間膜腔を示してください。

    ここですか?

    正解と言いたいところですが、厳密には違います。

    それはまだ広間膜です。

    屁理屈を言っているようですがかなり重要なことなので正確にお願いします。

    正解は、まだ広間膜腔は見えていない。です。

    実は、広間膜腔とは広間膜(腹膜)の前葉と後葉を広げたときにできる腔です。

    広間膜のいずれかに切開を入れ適切なテンションをかけると、陰圧をかけた旅行用バックが広がるように腔が出来るのです。

    なので広間膜腔は

    人工的に作った広間膜前葉と後葉の間の空間

    となります。

    円靭帯を見れば広間膜の癒着がわかる理由。

    結論から言うと円靭帯を見れば広間膜の癒着がわかる理由は

    円靭帯から骨盤に向かっていく腹膜は広間膜前葉、骨盤漏斗靭帯から骨盤に向かっていく腹膜が広間膜後葉だからです。

    ・・・

    意味わかりませんよね。

    大丈夫です。1つずつわかりやすく説明していきます。

    前葉と後葉の境は卵管です。

    卵管より前側、円靭帯、膀胱側を前葉と言い、

    卵管より後ろ側骨盤漏斗靭帯、仙骨子宮靭帯を後葉と言います。

    ここで簡単に論理の展開を行っていくと

    卵管より前側、円靭帯、膀胱側を前葉

    卵管より後ろ側骨盤漏斗靭帯、仙骨子宮靭帯を後葉

    円靭帯は前葉

    骨盤漏斗靭帯は後葉

    勘のいい人ならわかりますよね。

    円靭帯が骨盤漏斗靭帯に近い場合はこのように言い換えられます。

    前葉がついている円靭帯後葉がついている骨盤漏斗靭帯、に近い。

    つまり、円靭帯と骨盤漏斗靭帯距離 ≒ 前葉と後葉の距離

    と予想できるのです。

    円靭帯による広間膜の癒着の予想が大切な理由。

    ここまではわかったと。”それで・・?”ってなりましたか

    この円靭帯による癒着予想はめちゃくちゃ大切です。その理由は

    内膜症

    でました内膜症。内膜症の手術での怖さから説明します。

    内膜症が怖い理由

    手術で怖いのは事前に把握できなかった落とし穴のほうです。

    巨大子宮筋腫であれば自己血なり、血管内バルーンなり対策を打てますし、チョコ症例であれば時間を多くしたり、直腸プローべなどを用いて対策を打てます。

    何より時間を多めに設定しているので焦ってやらずに済みます。

    ところで内膜症って術前わかりますか?

    チョコがあるとか子宮後屈などの所見があればもちろんわかります。

    しかし、全体の1割の方にみられる内膜症には腹膜の病巣のみの症例も含みます。

    つまり・・・

    術前評価しきれなかった広間膜同士の癒着が1割程度にみられるのです。

    簡単な症例と術前認識していたのに急に内膜症により難しくなったのに、手術時間は簡単な症例として設定してる。そうすると限られた手術時間で手術を終わらせる必要が出てくるのです。これは焦りますよね。

    円靭帯による癒着予想の大切さ

    ここまでくればもうわかりますよね。術前に評価できなかったリスクを瞬時に把握できるということが最大のメリットになります。

    内膜症によらず、脂肪の炎症による癒着、子宮の圧迫による癒着様々な癒着が予想できます。

    腹腔内を見た瞬間に把握できる円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離が安全に手術を行うため大切なのです。

    特に、前方アプローチにおいて大切になってきます。

    前方アプローチの広間膜腔の展開の記事で詳しく説明していきたいと思います。

    今日からできること

    円靭帯と骨盤漏斗靭帯が近い時は子宮の観察を念入り行う。

    まとめ問題

    1.以下の選択肢から、広間膜腔に関する正しい記述を選んでください。

    • A. 広間膜腔は、人間の体内に自然に存在する腔である。
    • B. 広間膜腔は、広間膜(腹膜)の前葉と後葉を広げたときにできる腔である。
    • C. 広間膜腔の境界は、卵管によって区切られている。
    • D. 内膜症の手術では、広間膜腔の評価は不要である。

    正解: B. 広間膜腔は、広間膜(腹膜)の前葉と後葉を広げたときにできる腔である。

    解説:

    広間膜腔は、人間の体内には自然に存在しない腔であり、広間膜(腹膜)の前葉と後葉を広げたときにできる腔です。広間膜の前葉と後葉の境界は卵管です。広間膜腔の評価は、内膜症の手術で重要な役割を果たし、事前に評価できなかったリスクを瞬時に把握できることが最大のメリットです。円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離を見ることで、広間膜の癒着を予測することができ、手術の安全性を向上させることができます。

    次の選択肢のうち、広間膜の癒着を評価する際に円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離が重要である理由はどれでしょう。

    • A. 円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離は、術前の内膜症の診断に役立つ。
    • B. 円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離が近いほど、広間膜腔の展開が容易である。
    • C. 円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離は、術前に評価できなかった癒着のリスクを瞬時に把握するために重要である。
    • D. 円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離は、手術時間の短縮に直接的に関係している。

    解答と解説: 正解は C です。

    円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離が、広間膜の癒着を評価する際に重要である理由は、術前に評価できなかった癒着のリスクを瞬時に把握できるためです。手術中に予期せぬ癒着が発見された場合、手術の難易度が上がり、手術時間が限られている状況では焦りが生じることがあります。円靭帯と骨盤漏斗靭帯の距離を把握することで、手術中に安全に対処することができるのです。

    次回は”とりあえず真ん中”ではいけない時に移ります。お楽しみに。