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  • 内視鏡認定医取得のための尿管と子宮動脈同定アプローチの選択ガイド

    内視鏡認定医取得のための尿管と子宮動脈同定アプローチの選択ガイド

    「尿管と子宮動脈、どのアプローチが一番スマート?」


    そんな疑問、内視鏡認定医ビデオ撮影前に一度は頭をよぎりますよね。

    内視鏡認定医試験は、知識だけでなく、手技の選択眼も問われる試練。前方、側方、後方と3つのアプローチから選ぶ必要があり、どれを選ぶかで評価が大きく変わることも。

    今回は、この選択の迷宮から抜け出すための3つのポイントを届けします。

    1. 自身の経験を第一の羅針盤に

    「慣れた道を選べ」――迷ったらまずは足跡を辿る

    まず最初に言いたいのは、「試験本番で実験しないで!」ということ。10回以上こなしたアプローチがあれば、それがあなたのゴールデンルールです。

    「いや、他のやり方も試してみたいんだよな…」なんて冒険心は一旦棚に上げてください。本番での「未知のアプローチデビュー」はリスクが高すぎます。


    どんな迷路でも、何度も通った道ならば自然と足が進みますよね。同じように、試験でも自分が10回以上手掛けたことのあるアプローチを選ぶのが最も確実です。慣れた動作は緊張した場面でも手が覚えており、余計なミスを防ぎます。

    仮に複数の道が「慣れた道」ならば、次に考慮するのは採点者の視点です。それは、観光ガイドが観光客に一番の見どころを選ぶようなもの。採点者にとってなじみ深いアプローチを選ぶことで、評価も好印象となるでしょう。

    2. 採点者が見慣れた風景を意識せよ

    採点者が馴染みのある「風景」を再現する
    内視鏡認定医試験の採点者は多くの場合、50代前後のベテラン医師たち。彼らの経験に基づく偏りを逆手に取ることが試験攻略の鍵です。


    採点者は長年の経験から、特定のアプローチに馴染んでいます。腹腔鏡手術でよく選ばれる側方アプローチは、彼らにとって「定番の観光スポット」のようなもの。

    一方、開腹手術での経験もなじみがあります。開腹では上部靱帯の処理から入りますよね。それは前方アプローチ。開腹経験があるため前方アプローチも親しみのある選択肢です。


    後方アプローチは「知る人ぞ知る名所」――興味を引く一方で、理解が追いつかないことも。採点者の年齢層や背景を考慮すれば、側方か前方を選ぶのが無難です。

    3. 剥離しすぎない――「触りすぎると爆発する地雷」と考える

    「剥きすぎ注意」――過剰な展開はリスクを招く

    尿管の同定に関して、「見つけなくてOK」と言われると拍子抜けするかもしれませんが、実はこれ、真実。学会の指針にも書いてあります。腹膜越しに尿管の位置を確認し、適切な距離を保てれば合格ラインです。


    尿管の位置は「地図に書かれた地雷ポイント」のようなものです。それを大げさに探し回る必要はありません。

    腹膜越しに確認でき、広間膜を適切に展開できていれば問題なし。剥きすぎると尿管という繊細な地雷を爆発させるリスクが高まります。

    また、剥離が広範囲に及ぶと、脂肪組織を傷つけ静脈出血が多きやすく見にくくなったり、結果として大量出血や他臓器損傷のリスクが増大します。「適度な距離感を保つ」ことが安全への鍵です.

    結論:どのアプローチを選ぶべきなの?

    結局どれを選ぶべき?

    最優先すべきは、やり慣れているアプローチです。練習で培った自信が何よりも力になります。ただし、迷った場合は、採点者が見慣れている側方アプローチや、開腹でオーソドックスな前方アプローチを選ぶと無難です。

    注意点として、側方や後方アプローチは剥離範囲が広がりやすいため、必要以上の剥離をしないように心がけましょう。試験では、「確実性」と「適度な範囲」が評価されることを忘れずに!

    1. やり慣れた道を進む
       試験という迷路で迷わないためには、自分の経験という羅針盤を信じましょう。
    2. 採点者に馴染みのある風景を意識
       側方アプローチは最も採点者が慣れている道筋。前方も開腹に近い形で馴染みがあります。
    3. 剥離のリスクを抑える
       「触れすぎると爆発する地雷」を避けるように適切な距離を保ち、尿管の位置を確認しましょう。

    さらなる実践のヒント

    試験の練習では、側方アプローチを中心に、前方アプローチの手順も確認しておくと安心です。剥離作業は、適度な力加減とテンションを意識することが大切です。視野展開をスムーズに進めるためには、出血しない範囲での剥離を徹底しましょう。迷わない準備が、合格への第一歩です。

    剥離に関してはこちらでガッツリ解説していますのでぜひ参考にしてみてください!

    https://sogogyne.online/hakurinogokui/

    この記事が試験準備の道しるべとなれば幸いです。次回は、各工程で大切にすることについて詳しく掘り下げます。X(旧Twitter)で更新情報をお知らせしますので、ぜひフォローを!

  • 前方アプローチの尿管同定④ 尿管って子宮動脈と交差する?

    前方アプローチの尿管同定④ 尿管って子宮動脈と交差する?

    前方アプローチあるある

    子宮動脈は見つかったが尿管がどこにあるかわからない

    この問題を丸っと解決。ある点を知っているだけで大概解決します。

    今回は子宮動脈と尿管との位置関係がわからなかったときの対策について解説していきますね。

    今回のことを知っているか知らないかで手術の安全性が全く違いますよ。

    立体的な構造の理解の難しさ

    そもそも立体的な構造ってかなり把握が難しいです。見る場所によって全く見え方が違ってくるからです。

    例えば”円柱”は上から見ると〇ですが、横から見ると🔲になりますよね。

    何事もそうですが、視点が変われば見え方が変わる。見え方が変われば認識が変わるわけですね。

    尿管と子宮動脈の交差部においても同様のことが言えます。

    特に腹腔鏡は二次元の画面で見ているため見ている視野によって見え方が全然違ってきます。

    子宮動脈の下に尿管があり直角に交わるはずなのに、なぜかうまいこと行かない?

    それは開けた腔によって見え方が変わるからです。

    見え方が変わっているという認識をまず行い、その見え方を理解できればスッキリ解決できますよ。

    子宮動脈って尿管と直角に交わる?

    尿管を見つけるときに”子宮動脈の下に存在し直角に交わる”と考える大体うまくいきます。

    その一方で、子宮動脈の下で直角に交わると考えて失敗するときもあります。特に困難症例でよく起こります。これについて説明していきます。

    この2つの場合を尿管を見失いがちなパターンを題材に、考えていきましょう。

    子宮動脈の下に尿管が直角に交わると考えうまくいったパターン

    まずは尿管を見失いがちな場面から、子宮動脈の下に尿管があると考えうまくいったパターンを見ていきましょう。

    尿管を見失いがちな状況は、やや癒着が強く子宮動脈を頸管から外側に追っていったときにおこりやすいです。(子宮動脈アプローチ型

    気が付くポイントとしては、後葉側に組織が残っているときや、前葉側がきれいに剝けているときは要注意です。”膀胱側に入っている”と言われます。

    前葉側を開けてしまい、いわゆる”膀胱側腔の入り口”を開けているような状態になるわけですね。

    以下の画像ではある程度、頚部側から子宮動脈を単離していった像になります。

    これぐらい子宮動脈の走行がわかりやすい時は、子宮動脈のどこかの下を直角に通ると考えて、尿管の位置を推定します。この時も脂肪を意識するとわかりやすいです(詳しくは脂肪は敵?それとも

    この時は子宮動脈をかなり剥離できているので、構造把握が楽に行えています。管状に見える脂肪がありましたので、ここに尿管が存在すると推測し、中を探ります。

    そうするとこのように尿管が見えてきました。

    今回は子宮動脈がきれいに剥けていたので子宮動脈の下にあると認識してうまく尿管を見つけることが出来ました。ではここから思考実験に行きましょう。

    尿管が子宮動脈の下を直角に交わると考えてうまくいかないパターン

    思考実験として以下の状況を考えてみましょう。画像の赤丸の部分が先に剥離できて、尿管の上に脂肪がまだかかっている状態を考えてみましょう。

    この時に”尿管は子宮動脈に直角に走行している”と考えるとどのようになりますか?

    このように考えてしまいませんか?

    そうすると脂肪に包まれた尿管の走行が見えなくなってきます。なぜならそんな走行をする管及び脂肪は存在しないからです。

    後から見ると

    あたりまえやん!!

    となりますが、術中は案外この”尿管は子宮動脈の下を直角に交わる”という罠にはまってしまうため要注意です。

    人間には見えるように物事を見てしまうというバイアスがあります。

    錯視などは良い例ですね。3つ点があるだけで人の顔に見えたり、ないはずの図形が見えたり・・・

    ではどのような認識をしていればこの罠から逃れられるのでしょうか。

    交差部から見る尿管と子宮動脈

    結論から言うと、子宮動脈と尿管の走行をイメージするときなのは1点。

    交差部から離れているかどうか。

    これに尽きます。交差部の近くの位置なのか、交差部の遠くの位置なのかで子宮動脈と尿管の走行関係は大きく変化します。結論から言うと、

    • 交差部遠くでは平行に走る
    • 交差部近くではTの字に交差する。

    これだけです。詳しく見てみましょう。

    交差部の遠くでの走行

    交差部の外側、つまり交差前の子宮動脈は尿管と平行に走ります。

    交差前は緩やかなカーブを描きながら子宮に向かっていくので、カーブを曲がりきる前は尿管を並行に走ります。

    子宮動脈は内腸骨動脈から分岐しますが、内腸骨動脈も尿管と背側で平行に走行します。

    交差部の近くでの走行

    交差部の近くでは 尿管と子宮動脈は直角目に走行します。

    交叉するというイメージが強いとこちらの走行パターンのみを考えがちです。たちが悪いのは、容易な症例ではこのパターンがうまくいくことが多いため、困難症例の時に罠にはまることが多いわけですね。

    模式図でイメージを定着させよう

    最後に模式図でこのイメージを定着させてみましょう。子宮動脈と尿管の模式図は以下のようになります。子宮動脈は内腸骨動脈から分岐後緩やかなカーブをもって子宮に向かいます。尿管はその下をやや急なカーブを描きながら通り、子宮上の膀胱に向かいます。

    1.2.3の点で考えてみましょう。

    1. は内腸骨動脈からの分枝直後の交差部から離れたところ。縦に平行
    2. は交差部で直角に交わる
    3. はいわゆる尿管トンネルの場所でやや横向きに平行

    このようになっています。

    なので、子宮動脈を見つけたときは、図の①にいるのか、②にいるのか、③にいるのか、いったん遠景にして、全体像を把握してみましょう。

    今日からできること

    交差部の位置を予想して尿管や子宮動脈の同定を行う

    まとめ と練習問題

    腹腔鏡手術における子宮動脈と尿管の位置関係について、子宮動脈が尿管と直角に交わると考えていると誤認することがあるが、実際には交差部の近くで直角に交わり、遠くでは平行に走行することが多い。このような立体的な構造を把握するのは難しいが、交差部から離れているかどうかを意識することで対処できる。

    問題1: 子宮動脈と尿管の走行関係は、どの部分で大きく変化しますか?

    • a) 交差部の近く
    • b) 交差部の遠く
    • c) 子宮動脈の分岐部
    • d) 内腸骨動脈の分岐部

    答え: a) 交差部の近く

    解説: 子宮動脈と尿管の走行関係は、交差部の近くで大きく変化します。交差部の遠くでは、子宮動脈と尿管は平行に走りますが、交差部の近くでは、子宮動脈と尿管は直角目に走行します。この違いを理解することが、手術の安全性に大きく影響します。

    問題2: 交差部の遠くでの子宮動脈と尿管の走行パターンはどのようになっていますか?

    • a) 直角に交差して走る
    • b) 平行に走る
    • c) 子宮動脈が尿管の上を通る
    • d) 尿管が子宮動脈の上を通る

    答え: b) 平行に走る

    解説: 交差部の遠くでは、子宮動脈と尿管は平行に走ります。子宮動脈は内腸骨動脈から分岐し、尿管と背側で平行に走行します。このことを把握することが、尿管の位置を正確に推定するために重要です。

    次回からは膀胱剥離になります。お楽しみに。

  • 尿管同定③ ”魔法のような”尿管同定を行うコツ

    尿管同定③ ”魔法のような”尿管同定を行うコツ

    初めてこの前方アプローチ型の交差部同定を見た先生に

    ”魔法みたいにいつの間にか出ていた”

    と言われたことがあります。前方アプローチを極めれば、”魔法みたいに”局所的”に交差部を同定することが可能となります。

    今回はその”コツ”についてわかりやすく言語化して説明していきたいと思います。

    ここが山場となります。一つ一つ言語化していくので手ぶらで楽しんでいってください。

    前回の軽い復習

    前回は、前方アプローチでの尿管同定には三つの方法があるという話をしました

    ①交差部を同定する方法(前方アプローチ型)と、②子宮動脈から追っていく方法(子宮動脈アプローチ型)と、③尿管を側方から追っていく方法(側方アプローチ型)の三つがありましたね。

    では①前方アプローチ型の尿管同定について、深堀していきましょう!

    発生学からの説明とコツ

    直接、交差部が同定できるとい言われても不思議な感じがしますよね。

    これは以下をわかっていると腑に落ちるかもしれません。

    子宮はミュラー菅由来、泌尿器系は中胚葉由来。
    違う由来のもの同士は基本的に隙間が存在する。

    発生が違うものは、基本的にすき間が存在します。

    川と道路と考えてもいいかもしれません。つまり、違うタイミングでできたものは基本的に交わることはなく、間にすき間が存在し簡単に剥離することが出来ます。(本当に近いものは癒合筋膜など、つながるものもありますが基本は分かれると考えてください)

    一塊に考えよう

    子宮系の組織、尿管系の組織などと考えるときに、一つのパッキングされた組織と考えると把握しやすいです。

    突然ですが、東京都と大阪府の場所を外国人に説明するときはどうしますか?

    こう言うとわかりやすいと思いませんか?

    ”西日本”と”東日本”に分かれて、東の大きな都市が東京で、西の大きな都市が大阪。

    人間、まずは大きな解像度の粗い枠組みでとらえたほうが物事を把握しすいです。同様に附属器の組織、子宮の組織、尿管系の組織、外腸骨系の組織と荒い解像度で考えていくと解剖を理解しやすいわけです。

    尿管と子宮動脈で考えると、

    子宮系のパッキングされたブロックの一番頭側、腹側(上縁ともいう)に存在するのが子宮動脈

    尿管系のパッキングされたブロックのど真ん中に存在するのが尿管

    大きなブロックで考えるとメリットとしては、それぞれの間にはすき間や疎な結合織が存在するため、そのすき間を開けていくと出血なく組織を同定することが可能となり安全に素早く手術を行うことが出来る点です。

    実際の手順としては

    ①以下のような展開を目指し、脂肪を骨盤側、そして奥につけるように広間膜後葉に沿って剥離する

    子宮組織と骨盤の組織と、尿管の組織が大まかに把握する。

    子宮の組織尿管組織の間に入ればよいわけです。

    ブロックの具体的な把握方法 脂肪は・・・?

    ブロックという概念のの大切さは理解できたと思いますが、そのブロックはをどのように把握するのでしょうか?

    ここでも脂肪の話が出てきます。脂肪は脈管についているという話を以前しました(こちら参照)。

    そのため、子宮動静脈や尿管にも、組織に沿って脂肪がついています。よくよく脂肪を見ると、膨らみ方や血管走行を基準に、基靭帯の脂肪、尿管の脂肪、内腸骨の脂肪、外腸骨の脂肪と判別することが出来ます。

    その脂肪を基準にパッキングを見分けることですき間を把握することができ、その結果、出血もなく尿管子宮動脈の交差部を同定することが出来るというわけです。

    結局、どの方法がよいの?

    いま実際の手術で行っている順番はこのようになります。

    1. 前方アプローチ型で直接交差部を同定しに行く。
    2. 癒着等で難しければ子宮動脈アプローチ型で子宮頚部より血管をたどっていく。
    3. 癒着が強固で難しければ側方アプローチ型で外側を広げる。
    4. さらに難しければ、骨盤漏斗靭帯の横まで腹膜切開する。

    基本的にTLHは良性疾患に対する術式のため、広範囲の組織を取る必要はないという考えのもとこのような順番で考えています。

    そのため、腹膜の展開がより少なく尿管が同定できる方法から試していき尿管の同定を行っています。

    そのため直接見つける方法を優先とし、その次は子宮動脈を追っていき、最後は結局外側に広げていく形となります。

    側方アプローチは円靭帯下の腹膜を大きく開けて、骨盤漏斗靭帯近くで尿管を見つけますが、これはかなり大きな腹膜の切開とになり悪性腫瘍の手術であればよいかもしれませんが、良性腫瘍の手術で大きく展開することはデメリットしかないように感じています。

    側方アプローチの大きなメリット

    これだけは言っておきたいのですが、前方アプローチに対して、側方アプローチが悪いわけではないです。

    腹膜を大きく展開することでどれほど悪影響があるというエビデンスはありませんし、ここで前方アプローチの情報は前方アプローチTLHをやっている人のポジショントークと考えてもらったほうがバランスが取れると思います。

    個人的に現在、側方アプローチの施設のほうが多い理由として以下のメリットが大きのではないかと考察しています。

    ①ダイヤモンド型は執刀医の右手の位置の関係で前方よりも側方アプローチを行いやすい。
    ②若手の指導の時に、尿管を先に同定する手順はわかりやすく安全なためやらせやすい。

    またそれぞれのアプローチのメリットデメリットはまとめようとは思っているのでその時に説明していきますね。

    今日からできること

    剥離範囲をなるべく少なく手術を行う。

    まとめ と 練習問題

    前方アプローチの前方アプローチ型の尿管同定手術について解説しました。尿管と子宮の発生学的な位置関係や、組織のパッキングの概念を理解することが役立ちます。手術においては、脂肪を基準にパッキングを見分け、すき間を把握して尿管同定を行います。手順としては、前方アプローチ型で直接交差部を同定し、癒着等で難しい場合は子宮動脈アプローチ型や側方アプローチ型を行います。発生学や組織のパッキングの概念を理解し、脂肪を見分ける技術を身につけることが重要です。

    次回は前方アプローチの視野における尿管と子宮動脈の位置関係についてわかりやすく説明していきます。お楽しみに。

    練習問題

    前方アプローチ型の尿管同定手術において、以下のうち誤っているものはどれか。

    • a) 尿管と子宮動脈の交差部を同定することで、手術中に尿管を損傷するリスクを軽減することができる。
    • b) 尿管と子宮の発生学的な位置関係や組織のパッキングの概念を理解することは、手術をスムーズに進めるために重要である。
    • c) 脂肪を見分ける技術は、側方アプローチ型では行われない。
    • d) TLHは子宮全摘術の中でも広範囲の組織を取る必要があるため、腹膜の展開が重要である。

    回答:c.d

    解説:前方アプローチ型の尿管同定手術において、脂肪を見分ける技術は非常に重要であり、側方アプローチ型でも利用できます。脂肪を見分けることで、尿管の脂肪を同定できるため、尿管自体の同定も容易となり、手術中に出血を最小限に抑えることができます。

    尿管と子宮動脈の交差部を同定することで、手術中に尿管を損傷するリスクを軽減することができるというのは正しいです。また、尿管と子宮の発生学的な位置関係や組織のパッキングの概念を理解することは、手術をスムーズに進めるために重要です。

    TLHにおいては、基本的に広範囲の組織を取る必要がないため最小限の腹膜の展開を心がけることが大切です。

  • 尿管同定② すべてを網羅する3つの方法。

    尿管同定② すべてを網羅する3つの方法。

    前回は尿管同定が難しく感じる理由を説明しました。

    コツを理解できれば”魔法みたい”に尿管を素早く同定することが出来ます。

    今回は最もつまづきやすい、前方アプローチでの尿管の同定の仕方についてわかりやすく言語化していきます。

    すべてを網羅する3つの方法

    前方アプローチにおける尿管の見つけ方は大きく三つあります。他のアプローチを普段行っている方にとって理解しやすい順番に並べるとこうなります。

    側方アプローチ型

    子宮動脈アプローチ型

    前方アプローチ型

    この三つになります。(名前は勝手につけています)

    側方アプローチ型

    まず側方アプローチ型ですがこれは、広間膜腔の”外側”を開けて、頭側側で見つける方法です。側方アプローチに近しい考え方ですね。

    側方アプローチと同じく、外腸骨を目安に外側を展開し尿管を動脈の交差部より頭側で見つけます。尿管を追っていき、子宮動脈を同定します。

    ”側方アプローチ”とは違うのは骨盤漏斗靭帯まで腹膜を開けなくて済むという点です。(”側方アプローチ”と前方アプローチでの尿管同定の方法としての”側方アプローチ型”で区別しています)

    子宮動脈アプローチ型

    次に子宮動脈アプローチ型ですが、その名の通り、子宮動脈を追っていく方法になります。

    広間膜腔の”奥の基靭帯”に注目します。そして子宮頸管や基靭帯から子宮動脈を見つけて外側に追っていき、交差部あたりで尿管を見つけるわけです。

    側方アプローチ型と比べて展開する範囲を増やさずに尿管を見つけるメリットがありますが、血管を剥いていく必要があるため出血のリスクがありやや慣れが必要です。

    前方アプローチ型

    これこそ前方アプローチの真骨頂ですね。なんと直接交差部を同定する方法となります。尿管と子宮動脈をほぼ同時に同定できる方法となります。

    そんなこと可能なの?

    ってなりますよね。少し慣れないと難しいのですが、わかりやすくかみ砕いていくので安心してください。身に着けるとかなり強力です。

    手順としては、広間膜腔をこれまでの記事通りに後葉に沿って脂肪を外側につけるように、展開していきます。そして、基靭帯を一塊と考え外側に追っていくと、骨盤や尿管系の組織とぶつかるところで、後葉側に疎な結合式ありここを開けると交差部つまり尿管が見えてきます。

    先ほどこの図で説明すると。青丸のすき間の部分です。

    近景にしてメリーランドで持ち上げるとこのような視野になります。青の部分を広げると交差部となります。

    広げた後はこのような視野になります。交差部が直接交差部を同定することが出来ました。

    当院に来られ、この方法を始めてみた先生に

    ”魔法みたいに知らない間に交差部が出ていた”

    と言われたことがあります。それぐらい慣れると魔法みたいにさっと交差部を同定し、TLHで最も大切といわれる、尿管と子宮動脈を同定を終わらせることが出来ます。

    長くなってきたので、さらに詳しい説明はまた次回。

    今日からできること

    尿管を同定するためにどこから見つけるかを意識する腹側の尿管?子宮側の子宮動脈?交差部?

    まとめ問題

    前方アプローチでの尿管の同定方法について、以下の選択肢のうち、正しいものを選んでください。

    1. 側方アプローチ型では、広間膜腔の内側を開けて尿管を見つける。
    2. 子宮動脈アプローチ型では、基靭帯を一塊と考えて内側に追っていく。
    3. 前方アプローチ型では、直接交差部を同定する方法で、尿管と子宮動脈をほぼ同時に同定できる。
    4. 子宮動脈アプローチ型では、尿管を見つけるために剥離範囲を増やす必要がある。

    正解:3. 前方アプローチ型では、直接交差部を同定する方法で、尿管と子宮動脈をほぼ同時に同定できる。

    解説: 前方アプローチでの尿管同定には、側方アプローチ型、子宮動脈アプローチ型、前方アプローチ型の3つの方法があります。

    1. 側方アプローチ型は、広間膜腔の外側を開けて、頭側側で尿管を見つける方法です。
    2. 子宮動脈アプローチ型は、子宮動脈を追っていく方法で、広間膜腔の奥の基靭帯に注目し、子宮動脈を外側に追っていき、交差部あたりで尿管を見つけます。
    3. 前方アプローチ型は、直接交差部を同定する方法で、尿管と子宮動脈をほぼ同時に同定できる。広間膜腔を後葉に沿って展開し、基靭帯を一塊と考えて外側に追っていくと、後葉側に疎な結合式があり、ここを開けると交差部が見えてくる。
    4. 子宮動脈アプローチ型では、尿管を見つけるための剥離範囲を増やさずに尿管を見つけることができるが、血管を剥がしていく必要があるため、出血のリスクがあり、慣れが必要です。

    次回は前方アプローチ型での尿管を見つけるコツについて説明します。お楽しみに。

  • 尿管同定① ”困難”と”安全”が共存する理由

    尿管同定① ”困難”と”安全”が共存する理由

    前方アプローチはどんなに大きな筋腫でも、どんな激しい癒着でも安全に対応できるアプローチ方法です。

    しかし、前方アプローチは”難しい””わかりにくい”と一般的に言われます。

    その最も大きな原因の一つとして挙げられるのが、”尿管同定の難しさ”です。

    今回はなぜ尿管を見つけにくいのか、そして、見つけにくいはずなのになぜ安全なのか

    これらについてわかりやすく説明していきます。

    そもそもアプローチって何に対するアプローチ?

    そもそも前方、側方、後方アプローチとありますが、何に対するアプローチなのでしょう?

    正解は、”尿管及び子宮動脈本管に対するアプローチ”になります。

    わざわざ手技の流れに”アプローチ”と名前を付けるぐらいですから、これら、尿管及び子宮動脈本管を同定することはとても大切な作業といえます。

    それもそのはず、尿管を同定し剥離することで尿管損傷のリスクがかなり軽減し、子宮動脈本管を同定し止めることで子宮本体からの出血がかなり減るからです。

    そのため安全に手術を行うために、尿管と子宮動脈本管を同定するようになり、おそらくアプローチというカテゴライズが行われているのです。(腹膜をあけての同定が必要かどうかの議論は今回は割愛します)

    尿管と動脈を同定して、子宮動脈を結紮している場面

    前方アプローチだけの特徴

    では前方アプローチと尿管との関係を深く理解するための以下の三つの質問に答えてください。

    ①尿管ってどこについていますか?

    広間膜後葉です。

    ②子宮体部の近くを走っていますか?

    いえ、どちらかと言うと子宮体部より骨盤側を走っています。

    つまり尿管は、広間膜の後葉の子宮体部からはなれた位置をそうこうしているというわけですね。最後の質問です。

    ③前方アプローチの切開ラインはどこですか?

    広間膜前葉の子宮体部よりです。

    これまでこのブログを熱心に読んでくださっている勘のいい読者であれば、これで前方アプローチの大きな特徴が分かりますよね。

    そうなんです。

    前方アプローチの切開位置は尿管と真反対の位置”なんです

    子宮より離れ、後葉にある尿管は、子宮近くの前葉切開から始める遠くからのアプローチであれば、そりゃ尿管に当たるのは遅れる。当たり前ですね。

    他のアプローチはどうなっているのでしょうか。このブログで提言している広間膜箱(広間膜腔を箱に見立てたもの)で考えてみましょう。(左広間膜腔)

    前方アプローチ

    右上の辺が切開ラインで左下の辺が尿管になり、位置関係的には真反対

    側方アプローチ

    尿管のすぐ真上の外腸骨のすぐ横の広間膜前葉を切って尿管を同定します。

    そのため切開ラインと尿管の距離が近いです。

    後方アプローチ

    腹膜越しに尿管を視認したのち、尿管のすぐ横の腹膜(広間膜後葉)を切開して尿管を同定します。後方アプローチが最も尿管と近い部位を切開しているので尿管の剥離が最も早くなります。

    各アプローチと尿管の走行

    このように、側方後方アプローチはそれぞれ尿管近くの広間膜前葉及び後葉を切開しているのに対して、前方アプローチでは切開ラインが尿管から離れています。そのため、尿管を見つけるタイミングが他のアプローチよりも遅くなり、難しく感じるわけです。

    前方アプローチがより安全な理由

    では前方アプローチが難しいと感じる理由が距離が離れていることがわかったところで、最後に前方アプローチが安全な理由を述べていきます。

    突然ですが皆さん、地雷処理を行ったことはありますか?

    え?私?私は・・・

    もちろんありません。

    皆さんもおそらくないと思いますので、一緒に想像してみてください。

    追手に追われており、地雷が落ちている地域を地雷処理した後に急いで進まないといけないという状況があるとします。

    どんな状況だよ!という突込みは置いといて、次の条件の場合進み方はどのようになりますか?

    • 地雷が見えている場合
    • 地雷が見えていない場合

    地雷が見えている場合は、安全な距離をある程度取りながらも近くを通り地雷処理していくが可能ですよね。確認しながら近くを通ればいいのです。

    地雷が見えていない場合はどうでしょう。なるべくなさそうなところを探りながら、周りの状況を把握しながら少しでも手がかりをつかみながら進むのではないでしょうか。

    前方アプローチが巨大子宮やダグラス窩閉鎖症例でも安全に手術ができる理由がここにあります。

    そうです。この地雷がTLHにおける尿管となります。

    地雷を尿管として考えてみると、こう言い変えることが出来ます。

    尿管が見えている場合は、尿管近くの腹膜を切開する後方アプローチや側方アプローチでも近くを通りながら処理していくことが可能です。

    尿管が見えていない場合は、尿管からなるべく離れた、構造のわかりやすい円靭帯と前葉を切開する前方アプローチであれば尿管を傷つけることなく周りを処理した後に尿管を処理できる。

    正直、ダグラス窩の癒着がなく、子宮を前屈させることで尿管がわかるような比較的簡単な症例では後方アプローチや側方アプローチのほうがわかりやすいと思います。

    しかし、すでに説明した通り、尿管や子宮動脈の走行がわからないほど大きな子宮やダグラス窩閉鎖症例の困難症例では、危なくないところから手をつけることのできる前方アプローチが最も安全に手術を行うことが出来ます。

    そのため常日頃から比較的容易な症例でも、困難症例を意識して前方アプローチで丁寧に広間膜前葉腔を展開し、尿管を同定する作業と経験をつむことで、ステップバイステップで困難症例に臨むことが可能になるのです。

    どれだけ強力な武器でも、使い慣れていない武器ほど使えないものはないですよね。

    今日からできること

    選択したアプローチによる尿管の見つけやすさを意識する

    まとめ問題

    前方アプローチが困難な症例でも安全に手術を行うことができる理由はどれでしょう?

    • A. 尿管が見えている場合、尿管近くの腹膜を切開する後方アプローチや側方アプローチでも近くを通りながら処理していくことが可能である。
    • B. 前方アプローチでは尿管から離れた位置で切開を行い、構造のわかりやすい円靭帯と前葉を切開することで、尿管を傷つけることなく周りを処理した後に尿管を処理できる。
    • C. 前方アプローチでは尿管の位置を正確に把握できるため、尿管損傷のリスクが低い。
    • D. 前方アプローチでは子宮動脈本管を早期に同定し止めることができるため、子宮本体からの出血がかなり減る。

    正解: B

    解説: 前方アプローチが困難な症例でも安全に手術を行うことができる理由は、尿管から離れた位置で切開を行い、構造のわかりやすい円靭帯と前葉を切開することで、尿管を傷つけることなく周りを処理した後に尿管を処理できるからです。選択肢Aは後方アプローチや側方アプローチの説明であり、選択肢Cは前方アプローチの特徴ではありますが、安全性の理由としては不十分です。選択肢Dは前方アプローチの利点の一つですが、安全性に直接関係するわけではありません。

    次回はいよいよ、尿管の同定の具体的な方法になります。お楽しみに。