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  • 膀胱剥離① そもそも膀胱剥離って必要?

    膀胱剥離① そもそも膀胱剥離って必要?

    今回からは膀胱編になります。

    実は前方アプローチをきれいにできるからこそ安全にできる膀胱剥離があります。

    それはサイドからの膀胱剥離。

    正面およびサイドからの剥離まで丸っと解説していきます。

    理解が難しいとされる、膀胱周りの解剖についても徐々に説明していきます。

    そもそも膀胱って剥離する必要ない!?

    まずはこの問いから深堀していきましょう。

    膀胱剥離って必要なんですか?

    もう少しちゃんとした問いにするなら、

    そもそも子宮を取るだけの手術で膀胱剝離は必要ですか?

    え?そりゃ必要でしょう。

    って普通なりますよね。実は、私も長らく”膀胱剥離の必要性”について考えたこともありませんでした。

    しかし、とある内視鏡学会でこの問いに出会ってから、再度膀胱剥離について考えさせられました。そして、深堀していくことで、膀胱の解剖を含めての理解がかなり深まりました。

    皆様の膀胱剥離の技術向上にかなり役立ちますので、一緒にこの問いについて考えていきましょう。

    膀胱を剥離しなくても子宮が取れるワケ

    結論から言うと、膀胱を剥離しなくても子宮を取るだけであれば取れます。これは、膀胱と腟と子宮の発生がわかれば答えが出てきます。

    あまり詳しすぎると逆に理解が出来ないので、あえて、ざっくりとした話にするとこうなります。

    膀胱は尿生殖洞
    腟は尿生殖洞+ミュラー菅
    子宮はミュラー菅

    そして、発生が異なるものは基本的に触ることなく分離することが可能。そのため膣のミュラー菅由来腟のラインで切れば、膀胱を触れることなく切れるというわけです。

    つまり

    膀胱と腟では、発生由来が異なる部分がある→膀胱がないラインがありそこであれば膣切開が出来る→子宮が取れる

    本当に?ってなりますよね。実際私もなりました。実際に画像を見ていきましょう。

    次の画像はカップ付きのマニュピレーターで正中に押し込んだ時の膀胱子宮窩になります。わかりやすいように腹膜を釣り上げています。

    どこがカップの淵で、どこからが膀胱ラインになるでしょう。

    答えとしてはこのラインとなります。

    カップの上の淵のラインよりも奥に膀胱がありますよね。

    つまり、赤い枠のところで切開をすれば膀胱の剥離はせずに膣切開することが可能となるわけです。

    これで答えが出ました。

    A:子宮を取るときに膀胱を剥離する必要はあるか。

    Q:腟の最も手前のラインが膀胱よりも遠く存在するため、強いテンションをかけている場合は腟切開するために膀胱剥離は必要ない。

    じゃあ膀胱剥離はいらないの??

    膀胱剥離をするワケ

    かといって膀胱剝離をせずに子宮全摘を行っているところを見たことはありません。

    なぜ膀胱剥離をするのか、その理由はたった一つに集約されます。

    腟を安全に縫うため。

    これに尽きます。

    この安全にというのは膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐという意味です。

    膀胱を剥離しなければ、腟の前壁側が膀胱にくっついている状態ですし、尿管周囲の組織も近い状態となっています。

    膀胱を剥離すれば、膀胱の組織を巻き込んで運針する確率は下がります。また、膀胱脚(後日解説)を切開することで尿管の組織を巻き込んで運針する確率は下がります。

    そのため、膀胱剥離をするということはこう言い換えることが出来ます。

    1. 縫い代を確保している
    2. 尿管を離している

    今日からできること

    膀胱を剥離する理由を考えながら剥離を行う

    まとめと問題

    膀胱剥離は子宮を取るだけであれば、必ず必要なわけではなく、腟の最も手前のラインが膀胱よりも遠く存在するため子宮を取るだけであれば膀胱剥離は不要です。しかし、実際は膣の縫合をする必要があるため、膀胱剥離は腟を安全に縫うために必要となります。

    問題

    以下の選択肢の中から、子宮摘出手術の際に膀胱剥離を行う理由で最も正しいのはどれでしょうか?

    • A:膀胱の形状が不規則であるため
    • B:膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐため
    • C:腟と膀胱の境界が明確に分かれていないため
    • D:尿管に近い場所を縫うため

    正解はB:膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐためです。

    子宮摘出手術の際に膀胱剥離を行う理由は、腟を安全に縫うために膀胱損傷と尿管狭窄を防ぐためです。腟壁を縫うときに、腟の前壁側が膀胱にくっついている状態であり、尿管周囲の組織も近い状態となっています。膀胱を剥離することで、膀胱の組織を巻き込んで運針する確率が下がり、尿管周囲の組織を巻き込んで運針する確率も下がります。そのため、膀胱剥離を行うことは、縫い代を確保し、尿管を離すために必要です。

    Aの「膀胱の形状が不規則であるため」については、膀胱剥離の理由にはなりません。

    Cの「腟と膀胱の境界が明確に分かれていないため」については、上記のように膣のミュラー菅由来のラインで切れば、膀胱を触れることなく切開できるため、膀胱剥離の必要性はなくなります。

    Dの「尿管に近い場所を縫うため」については、尿管の組織を巻き込んでしまうことを防ぐために、膀胱剥離が必要であると考えることもできますが、それを主な理由としているわけではありません。したがって、Dは誤りです。

  • 前方アプローチの尿管同定④ 尿管って子宮動脈と交差する?

    前方アプローチの尿管同定④ 尿管って子宮動脈と交差する?

    前方アプローチあるある

    子宮動脈は見つかったが尿管がどこにあるかわからない

    この問題を丸っと解決。ある点を知っているだけで大概解決します。

    今回は子宮動脈と尿管との位置関係がわからなかったときの対策について解説していきますね。

    今回のことを知っているか知らないかで手術の安全性が全く違いますよ。

    立体的な構造の理解の難しさ

    そもそも立体的な構造ってかなり把握が難しいです。見る場所によって全く見え方が違ってくるからです。

    例えば”円柱”は上から見ると〇ですが、横から見ると🔲になりますよね。

    何事もそうですが、視点が変われば見え方が変わる。見え方が変われば認識が変わるわけですね。

    尿管と子宮動脈の交差部においても同様のことが言えます。

    特に腹腔鏡は二次元の画面で見ているため見ている視野によって見え方が全然違ってきます。

    子宮動脈の下に尿管があり直角に交わるはずなのに、なぜかうまいこと行かない?

    それは開けた腔によって見え方が変わるからです。

    見え方が変わっているという認識をまず行い、その見え方を理解できればスッキリ解決できますよ。

    子宮動脈って尿管と直角に交わる?

    尿管を見つけるときに”子宮動脈の下に存在し直角に交わる”と考える大体うまくいきます。

    その一方で、子宮動脈の下で直角に交わると考えて失敗するときもあります。特に困難症例でよく起こります。これについて説明していきます。

    この2つの場合を尿管を見失いがちなパターンを題材に、考えていきましょう。

    子宮動脈の下に尿管が直角に交わると考えうまくいったパターン

    まずは尿管を見失いがちな場面から、子宮動脈の下に尿管があると考えうまくいったパターンを見ていきましょう。

    尿管を見失いがちな状況は、やや癒着が強く子宮動脈を頸管から外側に追っていったときにおこりやすいです。(子宮動脈アプローチ型

    気が付くポイントとしては、後葉側に組織が残っているときや、前葉側がきれいに剝けているときは要注意です。”膀胱側に入っている”と言われます。

    前葉側を開けてしまい、いわゆる”膀胱側腔の入り口”を開けているような状態になるわけですね。

    以下の画像ではある程度、頚部側から子宮動脈を単離していった像になります。

    これぐらい子宮動脈の走行がわかりやすい時は、子宮動脈のどこかの下を直角に通ると考えて、尿管の位置を推定します。この時も脂肪を意識するとわかりやすいです(詳しくは脂肪は敵?それとも

    この時は子宮動脈をかなり剥離できているので、構造把握が楽に行えています。管状に見える脂肪がありましたので、ここに尿管が存在すると推測し、中を探ります。

    そうするとこのように尿管が見えてきました。

    今回は子宮動脈がきれいに剥けていたので子宮動脈の下にあると認識してうまく尿管を見つけることが出来ました。ではここから思考実験に行きましょう。

    尿管が子宮動脈の下を直角に交わると考えてうまくいかないパターン

    思考実験として以下の状況を考えてみましょう。画像の赤丸の部分が先に剥離できて、尿管の上に脂肪がまだかかっている状態を考えてみましょう。

    この時に”尿管は子宮動脈に直角に走行している”と考えるとどのようになりますか?

    このように考えてしまいませんか?

    そうすると脂肪に包まれた尿管の走行が見えなくなってきます。なぜならそんな走行をする管及び脂肪は存在しないからです。

    後から見ると

    あたりまえやん!!

    となりますが、術中は案外この”尿管は子宮動脈の下を直角に交わる”という罠にはまってしまうため要注意です。

    人間には見えるように物事を見てしまうというバイアスがあります。

    錯視などは良い例ですね。3つ点があるだけで人の顔に見えたり、ないはずの図形が見えたり・・・

    ではどのような認識をしていればこの罠から逃れられるのでしょうか。

    交差部から見る尿管と子宮動脈

    結論から言うと、子宮動脈と尿管の走行をイメージするときなのは1点。

    交差部から離れているかどうか。

    これに尽きます。交差部の近くの位置なのか、交差部の遠くの位置なのかで子宮動脈と尿管の走行関係は大きく変化します。結論から言うと、

    • 交差部遠くでは平行に走る
    • 交差部近くではTの字に交差する。

    これだけです。詳しく見てみましょう。

    交差部の遠くでの走行

    交差部の外側、つまり交差前の子宮動脈は尿管と平行に走ります。

    交差前は緩やかなカーブを描きながら子宮に向かっていくので、カーブを曲がりきる前は尿管を並行に走ります。

    子宮動脈は内腸骨動脈から分岐しますが、内腸骨動脈も尿管と背側で平行に走行します。

    交差部の近くでの走行

    交差部の近くでは 尿管と子宮動脈は直角目に走行します。

    交叉するというイメージが強いとこちらの走行パターンのみを考えがちです。たちが悪いのは、容易な症例ではこのパターンがうまくいくことが多いため、困難症例の時に罠にはまることが多いわけですね。

    模式図でイメージを定着させよう

    最後に模式図でこのイメージを定着させてみましょう。子宮動脈と尿管の模式図は以下のようになります。子宮動脈は内腸骨動脈から分岐後緩やかなカーブをもって子宮に向かいます。尿管はその下をやや急なカーブを描きながら通り、子宮上の膀胱に向かいます。

    1.2.3の点で考えてみましょう。

    1. は内腸骨動脈からの分枝直後の交差部から離れたところ。縦に平行
    2. は交差部で直角に交わる
    3. はいわゆる尿管トンネルの場所でやや横向きに平行

    このようになっています。

    なので、子宮動脈を見つけたときは、図の①にいるのか、②にいるのか、③にいるのか、いったん遠景にして、全体像を把握してみましょう。

    今日からできること

    交差部の位置を予想して尿管や子宮動脈の同定を行う

    まとめ と練習問題

    腹腔鏡手術における子宮動脈と尿管の位置関係について、子宮動脈が尿管と直角に交わると考えていると誤認することがあるが、実際には交差部の近くで直角に交わり、遠くでは平行に走行することが多い。このような立体的な構造を把握するのは難しいが、交差部から離れているかどうかを意識することで対処できる。

    問題1: 子宮動脈と尿管の走行関係は、どの部分で大きく変化しますか?

    • a) 交差部の近く
    • b) 交差部の遠く
    • c) 子宮動脈の分岐部
    • d) 内腸骨動脈の分岐部

    答え: a) 交差部の近く

    解説: 子宮動脈と尿管の走行関係は、交差部の近くで大きく変化します。交差部の遠くでは、子宮動脈と尿管は平行に走りますが、交差部の近くでは、子宮動脈と尿管は直角目に走行します。この違いを理解することが、手術の安全性に大きく影響します。

    問題2: 交差部の遠くでの子宮動脈と尿管の走行パターンはどのようになっていますか?

    • a) 直角に交差して走る
    • b) 平行に走る
    • c) 子宮動脈が尿管の上を通る
    • d) 尿管が子宮動脈の上を通る

    答え: b) 平行に走る

    解説: 交差部の遠くでは、子宮動脈と尿管は平行に走ります。子宮動脈は内腸骨動脈から分岐し、尿管と背側で平行に走行します。このことを把握することが、尿管の位置を正確に推定するために重要です。

    次回からは膀胱剥離になります。お楽しみに。