カテゴリー: トラブルシュート

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  • 「ここ、どこ切る?」と迷ったら三角形を探せ!切開ラインの大原則

    「ここ、どこ切る?」と迷ったら三角形を探せ!切開ラインの大原則

    キレるラインがわからない、どこから剥がすべきか…

    術中と手が止まったこと、ありませんか?ありますよね???

    解剖書を読んでも、教科書的な層の名前はあれど、実際の視野はもっと複雑。どこが膜で、どこがただの癒着なのか。そう、現場では教科書は黙っています。

    上司はこう言います。

    「適切な、テンションをかけると自然と見えてくるラインだよ」

    それがどこかわからないんだよ!!

    でも、もしも目の前に“ヒントの形”が現れていたとしたら?

    何も迷いなくズバズバ切れる。そんな秘密知りたくないですか?

    そう考えると、ちょっと面白くなってきませんか。

    この記事では、術中に見える秘密の扉「三角形」が剥離層のガイドになる理由と、その活用法について解説します。

    三角形は自然がくれた層のサイン

    まず一言でまとめましょう

    ズバズバ剥離したいなら、三角形を探せ!になります。

    「三角形は、膜と膜に囲まれた“ゆるいゾーン”の地図」です。もう少し具体的に説明しましょう。

    これには、剥離ゾーンに関する知識が必要になります。

    剥離するラインは接着剤のライン

    基本的に体は、膜や層構造になっています。

    まるで玉ねぎみたい

    さまざまな層が重なって人体が構成されています。

    子宮:筋層、漿膜・・・
    腹壁:腹膜、脂肪層、筋膜、筋肉、筋膜、脂肪、浅筋膜、脂肪、真皮、表皮

    そしてその間には、接着剤となる疎な結合組織が存在します。

    疎な結合組織が切れるライン=剥離ライン

    となります!

    そしてこの、「膜間層(膜と膜の間のゆるい結合組織)」を象徴しているのが三角形なのです。

    参照リンク↓

    https://sogogyne.online/結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?%E3%80%80/

    三角形を構成するものは?

    三角形の三辺はそれぞれ独立した“膜”でできていています。

    そして三角形の中はふわっとした結合組織。

    つまり、

    三角形の中は“剥がしても安全な空間”

    言い換えれば“自然が用意してくれた安全な道”なんです。

    ハサミやバイポーラーで軽く触れればスーッと剥がれてくれる、あの「気持ちいい」層。

    しかもこの“あわあわ”ゾーンは、構造的に血管や神経が走っていないことが多く、

    いわば“ローリスク剥離ゾーン”

    無理に牽引して破くのではなく、三角形の中にそっと入り込んで拡げていくと、自然に展開が進んでいくのです。

    実際やってみよう!!

    次の円靭帯の切開時の画像をみてどこに剥離のできる三角形があるかわかりますか?

    大きな三角形を作ってみてください

    ヒントは切開された円靱帯が一辺になります・

    そうです!これはわかりますよね!!

    三辺は以下のようになります

    ①切開された円靭帯(広間膜前葉)
    ②骨盤側の腹膜
    ③骨盤漏斗靭帯側の腹膜

    では、もう少し解像度を上げた三角形を作りましょう

    そうするとこうなります。

    もはや無限にできそうですね。今回は円靭帯間膜が一辺になっていますね。

    では次の画像をで大きな三角形を作ってみてください

    ヒントは腹膜ですね。

    これも簡単ですね。

    3辺は

    ①広間膜前葉
    ②広間膜後葉
    ③骨盤壁

    と言う大きな三角形になります。

    次はできるだけ小さな三角形をみてみましょう

    これだけたくさんの剥離の腔(層)が出てきます。

    どのルートを取るかはまた別の話になりますが、三角形を意識すると術や認識が大きく変わるのがわかりますよね。

    解像度に関しては↓参照

    https://sogogyne.online/kaizoudo/

    三角形は「見つける」より「浮かび上がらせる」

    注意点もあります。三角形は、いきなりは見えません。繊細な牽引、丁寧な圧排、そして「膜を膜として尊重する」姿勢が必要です。

    強引な操作では、膜が破れて三角形は跡形もなく消えてしまいます。

    術野の中にじっと目を凝らして、細かいラインを読む。

    すると、ほんのわずかな光の反射や牽引の方向で、膜と膜の「接し方」が変わり、三角形が“浮き上がって”くるのです。まるで3D映像のように。

    これを感知するには、経験も必要ですが、何より「形に注目する」という視点が大事。

    解剖学的名称ではなく、「形」で理解する。これが、迷子になりがちな術野の中で、あなたを導く新しいナビになります。

    「適切な、テンションをかけると自然と見えてくるラインだよ」

    この言葉の意味が分かりましたでしょうか??

    まとめ

    「どこを剥がせばいいか迷ったら、三角形を探せ」

    この言葉は、もはや私の座右の銘です。膜と膜が自然につくる三角形は、剥離の層そのものであり、中の“あわあわ”こそが進むべき安全地帯です。見つけ方のコツは、強く引かず、よく観察し、少しずつ広げていくこと。形が教えてくれるルートを、信じて進んでみてください。

    もし次の手術で迷ったら、「三角形、ないかな…」と心の中でつぶやいてみてください。きっと術野が変わって見えるはずです。

    問題

    問題
    手術中に膜と膜に囲まれた三角形が見えた場合、その中の構造として最も適切なのはどれか?

    A. 密な結合組織(dense connective tissue)
    B. 骨膜
    C. 疎性結合組織(loose connective tissue)
    D. 平滑筋層

    解答
    C. 疎性結合組織(loose connective tissue)

    解説
    三角形に囲まれた領域は、通常膜と膜の間に存在する疎な結合組織であり、水分を多く含む柔らかい構造。これは“剥離しやすい層”として、血管や神経のリスクが低く、手術的に展開しやすいゾーンである。Aは靱帯などの構造、BやDは膜層の外に存在するため不適切。

  • 背側から攻略!仙骨子宮靭帯を“先手必勝”で下から切る理由

    背側から攻略!仙骨子宮靭帯を“先手必勝”で下から切る理由

    手術室で「もう少しで終わるはずなのに、ザクロが切りきれない・・・」と汗をかいた経験はありませんか?

    子宮全摘のクライマックスで立ちはだかるのが 仙骨子宮靭帯(せんこつしきゅうじんたい:子宮を仙骨に繋ぎ骨盤奥で支える太い靭帯)です。

    ザクロをしっかり切りきれていないと腟管切開が本当に難しくなりますよね。

    実は、切りはじめの場所を変えるだけで、その“ラスボス感”はあっけなく消えます。

    この記事でわかること

    ・なぜ上から切ってはいけないのか
    ・背側アプローチが楽になるメカニズム
    ・具体的な切り方と注意点

    仙骨子宮靭帯、まずは位置をイメージ

    子宮頸部の両サイドから斜め後方へ伸び、仙骨側に固定される腹膜下の繊維組織のたわみ――それが仙骨子宮靭帯です。

    前面はマニュピレーターやロボットアームで持ち上げるとたわみますが、背面は骨盤壁にピタッと貼り付きほとんど動きません。この「背側で固定、腹側で可動」という二面性が切離方向のカギになります。

    https://sogogyne.online/sacro/

    背側から切ると何が起こる?

    核心は一文でいうとこうです。

    靭帯を支点側(背側)から先に断つと、残りがずり落ちず処理が綺麗にできる。

    わかりにくいので、何個かに言い換えてみます。

    上(腹側)から切るとずり落ちるので、下(背側)がさらに切りにくくなる

    組織を切ると、子宮の可動性が上がり子宮が上に上がるが、ザクロは背側に固定されているので相対的に背側に落ちる。

    基本的に人間上から処理したくなります。開腹の時代から上から上から処理していますし、ダイヤモンド配置(術者の右手が下腹部正中)の場合も上からになります。

    しかし、仙骨子宮靭帯は幅広い組織になるため、上から切るとどんどんずれ落ちていきます。

    画像で見る

    少しわかりにくいので画像で見ていきましょう

    こちらは仙骨子宮靭帯の処理の場面です。バイポーラーで掴んでいる部分をザクロとします。

    わかりやすくするため、

    左上から

    赤いボックス①

    黄色いボックス②

    青いボックスとします。①が一番高く、③が一番低い位置に存在しています。

    上から切ると

    例えば、上からつまり、①を切ると子宮が上のテンションかかっていると、②③が想定的にずり落ちます。①は外れて縮みます。

    さらに上から②切ると残った③がさらに下に下がります。
    そうすると、元々下にあった③がさらに下に行くことで処理が難しくなり、結果残ってしまいます。

    下から切ると

    次にしたから切ってみましょう。つまりから切ると、同じように①②が下がりますが、元々高い位置に存在するので多少ずり落ちても大丈夫です。

    上記のように、元々下にあるものは先に処理してしまった方が良いのです。

    腹側を先に切る: 支点が残ったままテンションが逃げ、靭帯が下へ滑落 → 毎回持ち直し&深追いで時間と出血が増える。

    背側を切る: 固い固定点を解除 → 靭帯全体がふわりと前方へ緩む → 下端が視野中央に留まり処理しやすい。

    いろんな言い換えをするなら、いわゆるアルドリッチになるので、やりにくい下の部分を先に処理してしまおうということです。

    追加考察:周辺組織の影響

    もう一つ、したから行くとずれにくい理由があります。

    それは、内側より外側の方が硬いから

    尿管下腹神経筋膜などの組織の存在。外側(①側)には尿管下腹神経筋膜や上行枝につながる組織がたくさんあります。

    一方で内側(③側)には何もありません、直腸腟間隙ですので可動性がとてもいいです。

    可動性がいい方が残ってしまうと、より下にずり落ちやすくなります。

    しっかりと固定されている①側はズレにくいので残してあとから処理してもいいのです。

    イメージはカーテン。カーテンレールに引っかかっているカーテンです。

    上を外してしまうとばさっと全て落ちてしまいますが、例えばカーテンをしたから切っても(どんな状況・・・?w)上は固定されままですよね。そんなイメージです。

    たった2つのポイントとつまずきポイント

    1. まずしたからたわみを確認します。できれば処理する手でたわませるとわかりやすいです。
    2. 子宮を軽く前屈マニュピレーターや膣パイプで頸部を前へ押すと靭帯がストレッチされ背側が白く浮き上がります。

    よくあるつまずきポイント

    • 「最後まで靭帯が残ってしまう」→ すでに腹側から攻めているサイン。背側を確認して切り直すと一刀両断。
    • テンション不足で靭帯が太く見える→ 子宮をもう前屈。助手に「カウンターのテンションお願い!しっかり子宮あげて!」と声をかけましょう。
    • 尿管との距離が不安→ 背側を切る位置は子宮頸部外側の骨盤壁寄り。尿管はさらに外側を走るので、白い筋が視野に入る程度なら安全圏です。

    まとめと次のアクション

    仙骨子宮靭帯は“支点外し”が肝。背側から先手を打てば、靭帯はおとなしく処理を待ち、手術全体のリズムが格段にスムーズになります。

    次の症例でぜひ試してみてください。きっと「最後に靭帯が残る地獄」とサヨナラできます。

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    復習問題

    問題
    仙骨子宮靭帯を背側(下方)から最初に切離すると処理が楽になると本文で述べられています。その直接的なメカニズムとして最も適切なのはどれでしょうか。A〜D から 1 つ選んでください。

    A. 背側を先に切ると子宮が前方に垂れ下がり、靭帯が自然に外側へ開くため
    B. 背側を先に切ると支点が解除され、残りの靭帯がずり落ちず視野中央にとどまるため
    C. 背側を先に切ると尿管が内側へ引き寄せられ、損傷リスクが減るため
    D. 背側を先に切ると腹側の可動域が固定され、子宮が過度に前屈しなくなるため

    解答
    B


    解説
    背側(支点側)を最初に切ることで靭帯全体の固定点が解除されます。これにより残存部分が下方へ滑落せず、処理したい端が視野中央にとどまるため、持ち直しや深追いをせずに一気に切離できます。本文では「靭帯を支点側(背側)から先に断つと、残りがずり落ちず処理が綺麗にできる」と述べられており、これが背側アプローチの核心です。選択肢 B が最も正確にこの機序を説明しています。

  • 内視鏡認定医ビデオを攻略するための3つのポイント ~主体性と安全性を見せるコツ~

    内視鏡認定医ビデオを攻略するための3つのポイント ~主体性と安全性を見せるコツ~

    「内視鏡認定医ビデオって、どうやって評価されるの?」
    「いい感じのビデオ撮れたけど、なんだか点数が伸びない・・・」

    こんな疑問を抱える方、意外と多いのではないでしょうか。

    今回は、内視鏡認定医のビデオ作成を攻略するための根本の根本のポイントを解説します。

    「なんとなく操作を撮影するだけ」で終わらせるのはもったいない!正しい見せ方とアピール方法を押さえれば、採点基準に沿った高評価が狙えます。

    この記事を読めば、安全性と主体性を最大限アピールし、採点者の心を掴む動画作りの基本が身に付くはずです。

    これから提出する人はもちろん、指導予定の方も大きく関係してきます。見逃しなく!

    1. 内視鏡認定医ビデオの考え方 ~OSCEと同じ「見せる試験」~

    内視鏡認定医ビデオは、医学生が受けるOSCE(客観的臨床能力試験)やBLS(一次救命処置)と似た形式です。ただ技術を披露するのではなく、安全性と主体性をいかに「見せる」かが重要なポイント

    例えば、OSCEの救命では「周囲の安全を確認し、心肺蘇生を開始します!」と声を出しますよね。

    私は、ど緊張していて噛んでしまい、演者に笑われるという恥ずかしい思い出となっています笑

    実際の現場で言いますか?コードブルーで走って到着したのちに宣言している人いますか?

    これはただ、安全確保をゆうせんしてますよ〜というアピールにすぎません。

    これと同じことが、内視鏡手術認定医ではビデオ内で求められます。

    • 安全性を示す: 例えば、「尿管の位置を確認して進めています」と鉗子で尿管をさし示す。
    • 主体性を示す 「助手に展開を指示」して、自分が手術の主導権を握っていることを示す。

    それではもうアピールの仕方を少し詳しく見ていきましょう。

    2. 安全性をアピールするための具体策

    安全性は、採点基準で最も重視される要素の一つ。

    尿管の位置も確認せず、出血は放置し、カメラは汚れている状態での手術なんて怖くて見れないですよね。具体的には、以下の点に気をつけましょう。

    視野の確保

      • カメラは常に綺麗に。曇りや汚れがないか頻繁に確認。
      • 手術中、視野が狭くなったらすぐに修正。
      • 処理したい組織が展開により見えているか確認。

      他臓器損傷を防ぐ工夫

        • 優しい鉗子(例: 腸鉗子)を選び、組織を傷つけない操作を心がける。
        • 剥離範囲を必要最低限に抑える。広げすぎるとリスクが増えるので注意。

        出血の管理

          • 小さな子宮の擦過傷であれば焼いて血が垂れないようにする。
          • 血管出血が起きたら焦らず対応。「止血のため尿管位置を確認して進めます」と助手に声を出し、冷静さと慎重さをアピール。
          • 吸引やガーゼで血を除去しなながらまずは尿管走行をカメラで映す。安全なマージンがあれば止血する
          • 止血作業が終われば数秒は確認のためにカメラを動かさない。

          3. 主体性を強調するための工夫

          主体性もかなり言われています。前立ちが展開をほとんど行い、”ここ掘れわんわん状態”ではダメだよねというものです。

          認定医というだけあって、例えば新しい赴任先でも腹腔鏡を安全にできるように自分で考え、自分で展開し、自分で処理できる力が必要だということですね。

          主体性を示すには、器具で「自分が操作を指示している」ことを見せるのがポイントです。

          • 助手の待機時間をあえて作る
            助手から動くことを禁止します。自分が展開した組織を助手に保持させ、「次はこの方向に引っ張ってください」と具体的な指示を出す。ここは手術前に話し合っておきましょう。
          • 積極的な計画立案
            操作を始める前に「この範囲を剥離します」と声を出し、助手に対して計画を明確に示す。
            こうすることで自分が主導権を握ることができる。

          助手の先生が上級医の場合はなかなかコントロールが難しいこともあると思います。この時は、話し合いでこう言ってください。

          「認定医って主体性が結構の配点に入ったって聞きましたけどどうでしたっけ?」
          「主体性をビデオで見せるにはどうすればいいんでしょうか?」

          基本はアドバイスシーキング、つまりアドバイスを求める体でいいように誘導してみてください。

          ビデオ外の手術室でも主体性を見せることで、ビデオにそれが移り、採点者に「この医師は手術全体をしっかり把握している」という印象を与えられますよ。

          まとめ

          内視鏡認定医ビデオで高評価を得るには、安全性と主体性をいかに見せるかが鍵です。そのためには、以下の3つのポイントを押さえましょう。

          1. 安全性を強調する操作を意識
          2. 主体性を示す計画と指示を実践
          3. 細かな行動まで声に出して助手と意思疎通を行っておく

          ぜひ、今回の記事を参考にビデオをブラッシュアップしてみてください!次からは「選択すべきアプローチ」「各工程の注意点」をテーマに解説しますのでお楽しみに。

          この記事を通じて、皆さんが内視鏡認定医への道をさらにスムーズに進めることを願っています。更新情報はX(Twitter)でお知らせしますので、フォローをよろしくお願いします!

        1. 子宮傍組織② もう出血しない、子宮傍組織入門。「結局どの”高さ”で切ればいいの?」

          子宮傍組織② もう出血しない、子宮傍組織入門。「結局どの”高さ”で切ればいいの?」

          子宮動静脈をどの高さで切る?

          子宮動脈上行枝の処理を行うときに聞かれ、誰しもを返答に困ったことがあるはずです。

          この記事を見れば明確な返答を行うことが出来るようになります。具体的にどこで子宮動静脈の上行枝を処理すればいいのか説明していきたいと思います。

          知っているだけで、危ない状況から逃げれる場面が増えてきます。全産婦人科医が知っておくべき内容となっていますのでお見逃しなく!

          子宮動静脈切開の危険性

          手術中にピリつく瞬間はいつですか?というアンケートがあった時皆さんなら何と答えますか?

          私は、”子宮動静脈の処理の時”と答えます。

          なぜならここの処理を失敗すると大量出血につながり、一気に視野がなくなり、そして他臓器損傷という意思にとっても患者さんにとっても最悪の状況につながります。

          皆さんも経験ありますよね。

          子宮近くで出血、止めるには外を触るしかない、でも尿管見えてない・・・どうしよう・・・

          よくある話で、出血で焦る状態で対処しないといけないのでかなり焦ります。

          初歩の解剖知識となりますが、子宮は左右2束に血管が収束しています。子宮本体から木の根のように広がっていきますよね。

          出血をすると、より外側で処理をしないといけない(上流は外側の内腸骨系)ため。

          骨盤より、つまり危ない組織が広がっている場所を触る必要があり危険です。

          子宮動静脈での出血は絶対に避けるべきイベントになります。

          結局どの”高さ”で切ればいいの?

          では本題の単純子宮全摘で”子宮動静脈上行枝は結局どこで切ればいいの?”に移っていきます。

          子宮頸部のどこで切るかという話になります。

          大きく2パターンに分かれます。

          高め:子宮体部より(内子宮口当たり)
          低め:膣より(外子宮口あたり)

          つまり、①高めの体部に寄ったところでの切開と、②低めの膣に寄ったところでの切開になりますね。

          それぞれの処理位置とその後の展開について具体的にみていきましょう。

          子宮体部より(内子宮口当たり)での処理

          いわゆる”高い位置での処理”、”筋膜内での処理”、”アルドリッチ”などと言われる処理になります。

          具体的な場所としては、子宮体部が広がってくるこの部分になります。

          かなり体部よりですよね。頸管に子宮動静脈上行枝をつけながらの処理になります。

          この”高い”ラインでの処理の最大のメリットは出血時のリカバリーがしやすいことになります。
          なぜなら、骨盤からより離れる、つまり尿管や膀胱、大腸から離れることが出来るため他臓器損傷のリスクが低いため安心して凝固止血できるわけです。
          そのため、仮にに子宮から離れた部分の剥離が甘くても処理が出来ます。

          具体的な手順を見ていきましょう。

          ①まず子宮をしっかりと頭側に牽引します。子宮体部と頸部の間を確認します。

          ②内子宮口付近でバイポーラで凝固止血します。左右十分凝固止血したのち、子宮側で切開します。

          血管は分けて一本一本処理していってください。欲張ると出血します。

          「欲張って切開しない」これを意識して処理していきます。

          ③そして徐々に腟側に降りていきます。この時も凝固止血しながら進めるようにしてください。

          コツとしては

          まず、子宮頸管に沿って切開していくこと
          つぎに、子宮動静脈を切った後は上下の組織を別々に処理していくこと
          になります。

          降りていくにつれて骨盤底に近づくため、組織は広がっていきます。
          そのため、子宮動静脈を切った後は上下の組織を別々に処理していく必要があります。

          これを繰り返すことで子宮頸管から安全に血管を離すことが出来ました。

          デメリットとしては、

          ①処理の工数が多いこと
          ②子宮を一部削ってしまう可能性があること

          が挙げられます。

          膣切開より(外子宮口当たり)での処理

          次はより膣切開部位に近いところでの処理について説明していきます。

          いわゆる”低い位置”とか”外側”とか”筋膜内”と言われるような位置です。具体的な位置は子宮円蓋部あたりになります。

          これの大きなメリットは、腟の切開ラインに近いので処理する組織が少ないこと、膣切開の時に組織が薄くなること、子宮を削ってしまうリスクがひくことになります。

          具体的な手順を見ていきましょう。

          ①まず膣と子宮の境目を確認します。そして、十分に尿管および膀胱、大腸が剥離できていることを確認します。

          ②そして、膣切開ラインよりやや体部より(高め)から凝固止血します。

          ③そして切開を行い、これを数回繰り返して処理は終了となります。

          先ほどと比べて外側のみに切開創が広がっているのがわかるでしょうか。デメリットとしては

          ①子宮から離れた組織を触る必要がある。特に尿管をしっかりと剥離する必要がある。
          ②出血させたときのリカバリー時のリスクが高い

          が挙げられます。

          結局どちらがおすすめなの?

          ラインがわかったところで、高めと低めどのように使い分けたらいいのかという疑問がありますよね。場合に寄るのですが、はっきりと言えることは。これですね。

          高めが無難

          これには明確な理由があります。①の高めの切開が安全だからです。

          ここで1つ問題です。

          子宮周囲に関して、動静脈の中枢側ってどちらになりますか?

          中枢と聞くと子宮側!と答えたくなりますが、内腸骨が外側にあるので骨盤底側になります。

          そのため、より子宮に近い側が末梢側となるため、より末梢側の①の体部よりの切開のほうが安全と言えます。

          では外側の処理の存在価値は何でしょう。それは組織をかじるリスクが低いことになります。

          なので、解像度を高く答えると、

          ①他臓器損傷がおこりえる場合は、逃げるために高めで処理
          ②CIN3などで子宮の組織をかじりたくない時は、剥離をしっかりと行い低めで処理

          という形になります。

          基本はやはり、高め。出血させたときにリカバリーがしやすいので”高め”から始めるほうが良いと思います。

          以上になります。次回は膣切開になります。長々とやってきましたが、いよいよ子宮が取れます。お楽しみに。

          X(旧Twitter)にて更新のお知らせをしていますのでよければフォローのほどよろしくお願いいたします。(こちら

          まとめ問題

          問題:

          子宮動静脈上行枝の処理に関する次の記述のうち、正しいものを選択してください。

          1. 子宮動静脈上行枝の切開は、外子宮口付近で行うのが最も安全である。
          2. 子宮動静脈上行枝の切開は、内子宮口付近で行うのが出血時のリカバリーがしやすく、他臓器損傷のリスクが低い。
          3. 子宮周囲に関して、動静脈の中枢側は子宮側である。
          4. 高めの切開位置は子宮の組織を削ってしまうリスクが低い。
          5. 膣切開に近い位置での動静脈上行枝の処理は、他臓器損傷のリスクが低い。

          正解:

          1. 子宮動静脈上行枝の切開は、内子宮口付近で行うのが出血時のリカバリーがしやすく、他臓器損傷のリスクが低い。

          解説:

          内子宮口付近での切開は、骨盤から離れることができるため、尿管や膀胱、大腸から離れることができるため、他臓器損傷のリスクが低くなります。また、出血時のリカバリーがしやすいというメリットがあります。逆に、膣切開に近い位置での切開は、子宮から離れた組織を触る必要があり、特に尿管のリスクが高まります。

        2. 子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

          子宮傍組織① もう出血しない、子宮傍組織入門。シャンパンタワーメタファーと癒着や剥離がグラスに与える影響

          子宮傍組織ってどんなイメージですか?

          何となく、走行がよくわからなくなったり、何の血管を処理しているのかわからなくなることってありませんか?

          他にも、いつもなら出血しなかったのに、なぜか今回だけるだけで出血することはありませんか?

          これらはすべて”あなたのイメージ”が悪いのかもしれません。

          出血と戦う産婦人科。そんな産婦人科にとって、子宮の血流を止めることはどの産婦人科にとっても必要な技術です。あとから怖い思いをしないようにぜひイメージをつかんでいきましょう。

          子宮傍組織は”シャンパンタワーとグラス”

          今回は、子宮傍組織を”シャンパンタワーとグラス”をメタファーにして考えてみましょう。

          え?っと思いますか?ちゃんと理由があります。

          皆さんは、最近記憶力落ちたなぁと思いませんか。私は絶賛実感中です。

          基本的に人間の記憶力は低下していきます。嫌ですよね。

          しかし、年を重ねるにつれ記憶力が低下していっても理解力が深まっていく人がいます。

          それは、

          これまでの知識やイメージに当てはめることが出来る人です。

          いろんな知識や考えをコネクティングしていく。そうすることで新たな視点や深みが出てくるわけです。

          なので、子宮傍組織をシャンパンタワーとグラス”で考えると、理解が深まり、今処理しているものを考えやすくなり全体感も把握することが可能になります。では本題に行きましょう。

          シャンパンタワーのメタファー

          シャンパンタワーのイメージはどのようなものですか?

          グラスが積み重なり、上から下に広がっていくイメージですよね。結婚式などでみられるものですね。

          これを子宮傍組織とつなげてみてください。

          どうすればいいですか?

          答えは、まず横にします。
          そして子宮から骨盤に向けて行っていってください。

          百聞は一見に如かず。今回イメージすべきシャンパンタワーはこちらになります。

          はい、わけわからんですよね。雑コラですね。

          これにわかるように名前を付けていくとこうなります。

          見えてきましたか?つまり

          子宮傍組織は子宮側の子宮動静脈から始まり、骨盤に向かってどんどん広がっていきます。

          シャンパンメタファーのとらえ方

          この画像を見て質問です。どこが危険ですか?

          そうですね。

          骨盤側(シャンパンタワーの下のほう)のほうが危険なものが多くないですか?

          尿管、子宮動脈本管など傷つけてはいけない臓器がたくさんあります。

          尿管にしろ、膀胱にしろ、動静脈にしろ骨盤側に行くにつれ危険なものが広がっていきます。

          つまり、子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっているというイメージが出来ますね。

          なるほど、子宮の近くで処理をしろ!と子宮全摘の初心者ほど言われるのはこういうわけがあるわけです。

          シャンパンタワーでいうと、なるべく上のほう、つまり子宮側を触ると安全ということが丸わかりですね。

          癒着の怖さとシャンパンタワー

          癒着って怖いですよね。癒着により血管や尿管や膀胱、腸などの位置が変わり思いがけない出血や他臓器損傷のリスクが高くなり、手が震え、動悸がしてきます。

          その怖い癒着をシャンパンタワーというふざけたメタファーでとらえてみましょう。

          癒着によりシャンパンタワーには何が起こりますか?

          たとえば、内膜症や腺筋症で後葉が引き連れている場合は、尿管が子宮によって来たりしますよね。
          帝王切開後の場合は膀胱が吊り上がっていたり血管が引き連れていることがあります。

          これを先ほどのシャンパンタワーで考えるとどうなりますか?

          実は、癒着によりグラスの位置が変わるんです。

          より具体的に言うと、グラス(尿管や血管)が上(子宮側)に変化します。

          上で示した傍組織の画像は,じつはCS3回のTLHの画像になります。膀胱剥離後です。

          そして、膀胱を処理する前の膀胱が吊り上がっている状態の画像はこちらになります。

          膀胱の位置がかなり吊り上がっています。そのため、膀胱及び尿管が子宮に寄ってきていますよね。

          つまり、シャンパンタワーで言うところの一つ子宮側に移動しているわけです。
          これはかなり危ないですよね。せっかく安全と思っていた、シャンパンタワーの頂点近くで切除したのに、そこには尿管がいて損傷した。こんな悲劇的なことが起きてしまうわけです。

          内膜症症例でも、仙骨子宮靭帯と思ったら尿管だったなんてこともよくある話ですね。

          癒着があると組織の場所がかかわる。これをシャンパンタワーで考えるとグラスの位置が変わる!という風にとらえることが出来ますね。

          グラスの位置を変えたい。

          グラスの位置変えたくないですか?グラスの位置を変えれたらすごいですよね。

          危ないグラス(臓器)はすべてシャンパンタワーの下のほう(骨盤側)に移動させれるわけです。

          ここでグラスを安全な位置に変えれるのが”剥離”となるわけです。

          ↑膀胱をずらした後の図。

          剥離をすることで組織(グラス)同士が離れ、シャンパンタワーのグラスの位置を変えることが出来ます。つまり子宮や切開ラインから離すことが可能になります。

          具体的には
          腹膜切除を行えば、前葉の場合は膀胱が離れ、後葉の場合は尿管が離れます。
          広間膜腔を広げる、つまり腹膜や血管周囲の組織を剥離すると尿管や大血管が離れます。

          このように、剥離を行うと、損傷してはいけない臓器や血管が離れる、シャンパンタワーでいうとグラスの下の段に行くわけです。

          どうでしょうか、子宮傍組織と”シャンパンタワーとグラス”というイメージはつかめましたでしょうか。

          わかりにくい場合は、扇のように広がっていくイメージを持ってもらえれば良いと思います。川が平地に向かうにつれて広がっていくイメージなどもよいと思います。

          ぜひ、ものが広がっていき、そして癒着があると傷つけてはいけないものの位置がより子宮に近づくというイメージを持ってみてください。

          皆様がより安全な手術が行えるますように。

          次回は、傍組織の切開方法を2パターンで説明していきます。お楽しみに。

          (X(Twitter)で更新のアナウンスをするのでぜひフォローしてみてください。)

          まとめ問題と解説


          問題1:

          「シャンパンタワー」というイメージを使って説明された「子宮傍組織」はどのような特性を持つとされていますか?

          1. 上部ほど危険な部分が多い
          2. 下部ほど危険な部分が多い
          3. 全体的に危険な部分が広がっている
          4. 危険な部分は特定できない

          答え: 2. 下部ほど危険な部分が多い

          解説: 「シャンパンタワー」のイメージを用いて、「子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっている」と説明されています。


          問題2:

          癒着が発生した場合、どのような変化が「シャンパンタワー」に影響を与えるとされていますか?

          1. 危険な部分が子宮側に移動する
          2. 危険な部分が更に広がる
          3. 危険な部分が縮小する
          4. 危険な部分が固定される

          答え: 1. 危険な部分が子宮側に移動する

          解説: 癒着が発生すると、通常は安全とされる子宮側の部分にも危険な部分(尿管や膀胱など)が移動してくるため、予期せぬ損傷のリスクが増えると説明されています。


          問題3:

          剥離を行うと、どのような効果が得られると説明されていますか?

          1. 危険な部分が子宮側に移動する
          2. 危険な部分を「シャンパンタワー」の下に向かわせることができる
          3. 危険な部分が縮小する
          4. 危険な部分が固定される

          答え: 2. 危険な部分をシャンパンタワーの下に向かわせることができる

          解説: 剥離を行うことで、損傷してはいけない臓器や血管を安全な位置、すなわちシャンパンタワーの下へ移動させることができると説明されています。これにより、危険な部分を避けながら処理を行うことが可能になります。

        3. 鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

          鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

          前回のコラムで剥離について解説を行いました。

          そもそも剥離とはから始め、鈍的剝離と鋭的剥離の違い、どちらが良いかという話をしました。

          結論としては、

          リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

          このような結論となりました。今回は理由を実際の剥離を含めて深堀していきたいと思います。

          鋭的剥離より引きちぎる鈍的剥離が優れている点

          切っていく鋭的剝離は正確に行えれば確かに安全です。なぜなら過剰なテンションがかからない為避けて出血や他臓器損傷がおこらないからです。

          しかし、前回説明した通り、切るという手順が増えるため時間がかかりますし、切開部位を間違えれば出血や他臓器損傷を引き起こしてしまいます。

          そのため、よほど困難症例ばかりの施設でない限り、集中力の限界と時間の制約がある現実世界では引きちぎる鈍的剝離を行うほうがトータルよい場面が多いと考えます。

          例えば、超緊急帝王切開で用いられる Joel-Cohen 法が最たるもので、赤ちゃんを素早く出すという最大のメリットを得るため、組織を引きちぎることで展開と剥離を同時に進め、血管や他臓器損傷のリスクを冒しながら、素早く手術をすすめるわけです。

          そのため、”鋭的剥離こそ最強、鈍的剝離は下手のすることだ”という考えには否定的で場合によりますし、むしろ、力加減や出血しそうな場所を把握できた人の上手な鈍的剥離こそ技術が必要であると考えています。

          ここでより深堀するため、現在、鋭的剥離が勧められるようになっている理由と流れを考えていきましょう。

          鋭的剥離が重宝されるようになったストーリー

          切る鋭的剝離が隆盛を極めている理由としては、出血リスクの低下によるドライな術野と合併症の低さが挙げられます。

          ここに至るまでのストーリーとしてこのように考えています。

          ①もともと、電気メスもなかった時代は、引きちぎる鈍的剝離がメインであった。なぜなら止血は圧迫しかなくどれだけ早く手術を終わらせることこそが出血量を減らす手段であった。つまり手術の剥離の源流は引きちぎる鈍的剝離であった。

          ②徐々に科学が発展し、電気メスやエネルギーデバイスが現れ、鏡視下手術も始まった。

          ③開腹に比べ、視野確保が難しい鏡視下手術では細かい出血が大敵となった。

          ④細かい出血の原因を見てみると、組織間の細かい静脈が原因であった。(カメラにより、正確にわかるようになった)

          ⑤そのため、細かい出血を減らし視野を確保するには、凝固や切開を細かくできる鋭的剥離が推奨されるようになった。そして鈍的剝離は悪となった。

          このようなストーリーがあったと考えられます。

          ではこのストーリー通り古い引きちぎる鈍的剝離は完全悪なのでしょうか?

          そんなことはもちろんなく、安全に引きちぎることが出来るならば鈍的剥離は悪にはなりません

          引きちぎる鈍的剝離が悪になるときを考えその対策をしていきましょう。

          鈍的剝離が悪となる場面は3つ考えられます。

          ①出血を引き起こすとき

          ②層がわからなくなるとき

          ③他臓器損傷を引き起こすとき

          この”3悪”さえクリアできればより早く、時間や集中力といったリソースを削減できる引きちぎる鈍的剝離のほうが優れていると言えますよね。

          次の段落ではどのようにすれば”安全に”引きちぎることが出来る考えていきましょう。

          安全に引きちぎる鈍的剝離のやり方

          一つ一つ見ていきましょう。

          ①の出血がおこる理由は何でしょうか。

          それは接着剤となる組織が剥がれる以上に張力をかけることで細い血管が破綻するためです。

          これを避けるためには、組織は剥がれるが、細い血管が破綻しないぐらいのテンションのベクトルをかけることが出来ればこの問題は解決できます。

          細い血管があるところを避けながら、組織間の剥離面が剥がれる必要十分なテンションをかけるわけです。

          ②と③の層がわからなくなる、他臓器損傷がおこる理由は共通しています。

          力の入れる方向や場所を間違えると層の破綻や他臓器損傷が起こります。

          これに関しては、力の入れる場所と方向でカバーすることが出来ます。

          先ほどの、ガムテープをはがすスキーマで考えていきましょう。

          ②の層を追っていく場面において、段ボール側に沿って行きたいときどうしますか?

          段ボール側に接着剤が残らないように、指で段ボール側をこする様に剥離していきますよね。

          たとえば広間膜後葉に沿って広間膜腔を広げていくなら、広間膜後葉に近いところでやや後葉をこする様に力を入れていくようにするほうがよいと思います。

          つまり追いたい層に近いところでこする様にテンションのベクトルをかけることが出来ればよいわけです。

          では③の他臓器損傷に関してどうでしょうか?

          答えは②とは逆の考え方になります。

          損傷したくない臓器に力がかからないベクトル方向を向けて力を入れることが必要になります。

          子宮と腸の癒着を考えると、腸管損傷を起こさないように、子宮に力がより加わるように力のベクトル方向を子宮に向けて力入れていきます。

          尿管を腹膜からはがして岡林腔に入るときは、尿管損傷を起こさないように、腹膜側に力がより加わるように力のベクトル方向を腹膜に向けて力を入れていきます。

          つまり、剥離したい層に沿って、細い血管を認識して、その血管を破綻させないような力と方向にテンションをかけることが出来れば、安全に鈍的剥離を行うことが可能になります。

          むしろ切る鋭的剥離ではないほうがよい場面

          切る鋭的剥離のほうが、リスクが高くなる状況があります。

          それは、癒着症例です。

          え?リスクの高い時は鋭的剥離のほうがよいと言ってたよね?

          もちろんそうですが、ある条件の時は鈍的剥離のほうがよいです。

          それは、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

          この時はむやみに切らないほうが安全に進めることが出来ます。

          なぜなら、鋭的剥離の場合は切開を行うので、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があります。子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来ます。

          また同様のに切り込む可能性があるため、腹腔鏡やり始めは切開する鋭的剥離は勧められません

          特にやり始めの時は、見誤ったり手がぶれたりするため、保たないといけない層に切り込んだりしたりして危険ですね。

          その為、初心者は鈍的剥離、慣れてきたら鋭的剥離と言われるわけです。

          ただし、癒着症例では鋭的剥離を行わないといけない場面が出てくるためどこかで鋭的剥離を習得する必要があります。

          著者が行っている実際の剥離

          長々と剥離について話をすすめていきましたが、最後に私がメインに行っている剥離について説明していきます。

          細かく言うと、鈍的~鋭的を様々な場面で細かく使い分けてはいます。

          それは、食事と同じで、魚を食べるとき、平べったいお肉を食べるとき、トマトをつまむとき、ひじきを食べるとき、豆腐を食べるときでお箸の使い方が異なるように多くの経験の上に徐々に身に着けたものですよね。

          結局は経験かい!となりそうですが、ここで鈍的と鋭的のおいしいところを取り入れた剥離法を、メインで使っているので紹介します。

          鈍的剥離と鋭的剥離の合わせ技

          鈍的剥離の一番のデメリットは何ですか?

          それは、細かい血管を出血させることでしたよね。

          この弱点を鋭的剥離で処理できれば素早く展開を行うことが出来ます。

          広間膜腔展開で考えてみましょう。

          次の場面はCS3後のTLHの症例で、左の円靭帯を切断した後の場面です。膀胱が吊り上がっていたため外側で広間膜腔展開しようとしている場面です。

          ここを広げるときに大切なのは、細い血管を見つけることです。この場面で言うと出血しそうな血管が赤丸にあります。ここをガサガサ鈍的に引きちぎると出血します。

          そのため、この血管を避けるように周囲を広げます。この時に鈍的に広げて剥離をすすめます。

          そして次に、鋭的剥離に移っていきます。

          まずは凝固

          そのあとに切開

          そのあとまた鈍的に腔を出血しないように広げる。もちろんハーモニックの下の細い血管も認識しながら出血しない程度に圧排しています。

          これを繰り返して剥離を繰り返していきます。最終ドライな視野で子宮動脈を同定できました。

          このように、細かい血管を把握し、これを避けて鈍的剥離を行うことで、鈍的剥離を行っても出血をすることなく素早く安全に剥離を行うことが出来ます。

          以上となります。

          結局は伝えたいことは、鈍的剝離、鋭的剥離のどちらが優れているわけでもなく、使いどころによってメリットデメリットがあり、鋭的剝離こそが最強ってわけでもないことでした。

          次回は、傍組織の処理に移っていきます。更新は週一程度で不定期なので、良ければX(Twitter)のフォローをお願い致します。

          まとめ問題と解説

          選択肢問題:
          以下の選択肢の中から、引きちぎる鈍的剥離が安全に行える場面を選んでください。


          A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時
          B) 細い血管の破綻がリスクとなる状況
          C) 初めての腹腔鏡手術を行う場面
          D) 層がわからなくなり他臓器損傷のリスクが高い場面

          正解: A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

          解説:
          文章から、鋭的剥離では、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があるため、子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来るとされている。そのため、癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時は鈍的剥離がより安全と考えられます。

        4. 膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

          膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

          膀胱剥離をしようにもなぜかうまいこと剥がれない。

          無理に力を加えてしまい出血をしてしまった・・・

          こんな経験ありませんか。

          それってあるポイントを見落としているだけかもしれません。

          今回は、膀胱剥離がうまくいかない理由3選とその理由と改善テクニックについて解説します。

          その1:テンションがかかっていない

          剥離部位にテンションがかかっていないと剥離は全くうまいこと行きません。

          お菓子の袋を開けるには、必ず2か所で引っ張る必要がありますよね。

          同様に、手術においても、反対向きのテンションつまり”カウンタートラクション”が取れていないと鈍的な剥離も切開もすることはできません。暖簾に腕押し状態です。

          こんなことはわかっていても、手術、特に腹腔鏡の限られた視野の中の場合見逃していることが多々あります。

          子宮の押し込みが甘いことでテンションが緩んでしまっていることがあります。

          特に、いつもと異なる状況やチームで手術を行っている場合は注意してください。

          前立が経験豊富な医師の場合は勝手にテンションをかけてくれるので意識せずとも良いテンションがかかっていることが多いですが、研修医や習練中の意思の場合は知らぬ間に力が緩んでいたりすることも多々あります。

          マニュピレーターは下の先生や看護師さんが持っていることが多いですし、女性医師が増えている現代では肉体的にも力が緩むことが多い印象です。

          そのため、改善方法としては、

          膀胱剥離の時は、自分でマニュピレーターや腟パイプの位置を確認し力を込めて押し込んでもらう、必要なら位置調整する。

          その2.子宮体部がねじれている

          次に、膀胱剥離時の”子宮体部がねじれ”について考えていきましょう。

          子宮のねじれはかなり危ないのにもかかわらず。わかりにくく、気づかずに進めていくと、大量出血、尿管膀胱損傷につながるかなり危ないピットフォールになります。

          なぜなら

          1. 頚部の子宮動静脈の位置がずれる
          2. ねじれがあることで、組織が巻き込まれていく

          この二つが生じるためです。

          この危険な”子宮のねじれ”の原因として多いのは、子宮筋腫で、重さや圧迫により大きくねじることによるものが多いです。

          特に子宮体部側方の筋腫の時に見落としがちになります。

          頚部筋腫ではなく、体部筋腫です。

          なぜなら、子宮の頚部筋腫の場合は、意識することが可能なので気づくことが多いですが、拡大視の視野の狭い状況で子宮体部がねじれていることには気が付きにくいためです。

          改善方法としては、

          子宮が直線化されているかどうか毎回確認する。特に円靭帯や子宮上行枝に着目し子宮がねじれていないかを確認する。

          その3.膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている

          最後は頸部で膀胱自体がはがれにくい場合をお伝えします。

          これはこれまでと違い、患者因子になります。特に炎症を起こしていたり、閉経後で組織が固い人に良く見られるもので、正しい層に入ってもはがれにくい時があります。

          この時に有効な方法としては、”層を乗り換える”という手法があります。

          以前、膀胱剥離をするなら安全性を取るならば腟膀胱筋膜の子宮側で剥離を行うべきだという話を行いました。

          実は、剥離しやすいのは腟膀胱筋膜の膀胱側になります。えいやと1膜破ることで膀胱剥離が容易になることがあります。

          そのため、改善方法としては

          頸管が萎縮や炎症を起こすような要因があるか確認し、層を意識して手術を行う。

          膀胱剥離が出来ない時に確認すること

          1. 子宮の押し込みが出来ているか確認する
          2. 子宮がねじれていないか確認する
          3. どの層に入っているか意識し、やりにくければ層を乗り換える

          まとめ問題と解説

          問題: 膀胱剥離がうまくいかない理由として最も適切でないものを次の選択肢から選びなさい。

          選択肢:

          • A. テンションがかかっていない
          • B. 子宮体部がねじれている
          • C. 膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている
          • D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

          正解:D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

          解説: 膀胱剥離がうまくいかない三つの主な理由として、「テンションがかかっていない」、「子宮体部がねじれている」、「膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている」。これらは、それぞれ剥離部位に必要なテンションがない場合、子宮がねじれている場合、そして膀胱と子宮間の剥がれる層が密接している場合に問題が生じます。それに対して選択肢Dの「腹腔鏡の視野が広すぎる」はむしろ、視野が限られていることが手術を難しくしています。

        5. 尿管同定① ”困難”と”安全”が共存する理由

          尿管同定① ”困難”と”安全”が共存する理由

          前方アプローチはどんなに大きな筋腫でも、どんな激しい癒着でも安全に対応できるアプローチ方法です。

          しかし、前方アプローチは”難しい””わかりにくい”と一般的に言われます。

          その最も大きな原因の一つとして挙げられるのが、”尿管同定の難しさ”です。

          今回はなぜ尿管を見つけにくいのか、そして、見つけにくいはずなのになぜ安全なのか

          これらについてわかりやすく説明していきます。

          そもそもアプローチって何に対するアプローチ?

          そもそも前方、側方、後方アプローチとありますが、何に対するアプローチなのでしょう?

          正解は、”尿管及び子宮動脈本管に対するアプローチ”になります。

          わざわざ手技の流れに”アプローチ”と名前を付けるぐらいですから、これら、尿管及び子宮動脈本管を同定することはとても大切な作業といえます。

          それもそのはず、尿管を同定し剥離することで尿管損傷のリスクがかなり軽減し、子宮動脈本管を同定し止めることで子宮本体からの出血がかなり減るからです。

          そのため安全に手術を行うために、尿管と子宮動脈本管を同定するようになり、おそらくアプローチというカテゴライズが行われているのです。(腹膜をあけての同定が必要かどうかの議論は今回は割愛します)

          尿管と動脈を同定して、子宮動脈を結紮している場面

          前方アプローチだけの特徴

          では前方アプローチと尿管との関係を深く理解するための以下の三つの質問に答えてください。

          ①尿管ってどこについていますか?

          広間膜後葉です。

          ②子宮体部の近くを走っていますか?

          いえ、どちらかと言うと子宮体部より骨盤側を走っています。

          つまり尿管は、広間膜の後葉の子宮体部からはなれた位置をそうこうしているというわけですね。最後の質問です。

          ③前方アプローチの切開ラインはどこですか?

          広間膜前葉の子宮体部よりです。

          これまでこのブログを熱心に読んでくださっている勘のいい読者であれば、これで前方アプローチの大きな特徴が分かりますよね。

          そうなんです。

          前方アプローチの切開位置は尿管と真反対の位置”なんです

          子宮より離れ、後葉にある尿管は、子宮近くの前葉切開から始める遠くからのアプローチであれば、そりゃ尿管に当たるのは遅れる。当たり前ですね。

          他のアプローチはどうなっているのでしょうか。このブログで提言している広間膜箱(広間膜腔を箱に見立てたもの)で考えてみましょう。(左広間膜腔)

          前方アプローチ

          右上の辺が切開ラインで左下の辺が尿管になり、位置関係的には真反対

          側方アプローチ

          尿管のすぐ真上の外腸骨のすぐ横の広間膜前葉を切って尿管を同定します。

          そのため切開ラインと尿管の距離が近いです。

          後方アプローチ

          腹膜越しに尿管を視認したのち、尿管のすぐ横の腹膜(広間膜後葉)を切開して尿管を同定します。後方アプローチが最も尿管と近い部位を切開しているので尿管の剥離が最も早くなります。

          各アプローチと尿管の走行

          このように、側方後方アプローチはそれぞれ尿管近くの広間膜前葉及び後葉を切開しているのに対して、前方アプローチでは切開ラインが尿管から離れています。そのため、尿管を見つけるタイミングが他のアプローチよりも遅くなり、難しく感じるわけです。

          前方アプローチがより安全な理由

          では前方アプローチが難しいと感じる理由が距離が離れていることがわかったところで、最後に前方アプローチが安全な理由を述べていきます。

          突然ですが皆さん、地雷処理を行ったことはありますか?

          え?私?私は・・・

          もちろんありません。

          皆さんもおそらくないと思いますので、一緒に想像してみてください。

          追手に追われており、地雷が落ちている地域を地雷処理した後に急いで進まないといけないという状況があるとします。

          どんな状況だよ!という突込みは置いといて、次の条件の場合進み方はどのようになりますか?

          • 地雷が見えている場合
          • 地雷が見えていない場合

          地雷が見えている場合は、安全な距離をある程度取りながらも近くを通り地雷処理していくが可能ですよね。確認しながら近くを通ればいいのです。

          地雷が見えていない場合はどうでしょう。なるべくなさそうなところを探りながら、周りの状況を把握しながら少しでも手がかりをつかみながら進むのではないでしょうか。

          前方アプローチが巨大子宮やダグラス窩閉鎖症例でも安全に手術ができる理由がここにあります。

          そうです。この地雷がTLHにおける尿管となります。

          地雷を尿管として考えてみると、こう言い変えることが出来ます。

          尿管が見えている場合は、尿管近くの腹膜を切開する後方アプローチや側方アプローチでも近くを通りながら処理していくことが可能です。

          尿管が見えていない場合は、尿管からなるべく離れた、構造のわかりやすい円靭帯と前葉を切開する前方アプローチであれば尿管を傷つけることなく周りを処理した後に尿管を処理できる。

          正直、ダグラス窩の癒着がなく、子宮を前屈させることで尿管がわかるような比較的簡単な症例では後方アプローチや側方アプローチのほうがわかりやすいと思います。

          しかし、すでに説明した通り、尿管や子宮動脈の走行がわからないほど大きな子宮やダグラス窩閉鎖症例の困難症例では、危なくないところから手をつけることのできる前方アプローチが最も安全に手術を行うことが出来ます。

          そのため常日頃から比較的容易な症例でも、困難症例を意識して前方アプローチで丁寧に広間膜前葉腔を展開し、尿管を同定する作業と経験をつむことで、ステップバイステップで困難症例に臨むことが可能になるのです。

          どれだけ強力な武器でも、使い慣れていない武器ほど使えないものはないですよね。

          今日からできること

          選択したアプローチによる尿管の見つけやすさを意識する

          まとめ問題

          前方アプローチが困難な症例でも安全に手術を行うことができる理由はどれでしょう?

          • A. 尿管が見えている場合、尿管近くの腹膜を切開する後方アプローチや側方アプローチでも近くを通りながら処理していくことが可能である。
          • B. 前方アプローチでは尿管から離れた位置で切開を行い、構造のわかりやすい円靭帯と前葉を切開することで、尿管を傷つけることなく周りを処理した後に尿管を処理できる。
          • C. 前方アプローチでは尿管の位置を正確に把握できるため、尿管損傷のリスクが低い。
          • D. 前方アプローチでは子宮動脈本管を早期に同定し止めることができるため、子宮本体からの出血がかなり減る。

          正解: B

          解説: 前方アプローチが困難な症例でも安全に手術を行うことができる理由は、尿管から離れた位置で切開を行い、構造のわかりやすい円靭帯と前葉を切開することで、尿管を傷つけることなく周りを処理した後に尿管を処理できるからです。選択肢Aは後方アプローチや側方アプローチの説明であり、選択肢Cは前方アプローチの特徴ではありますが、安全性の理由としては不十分です。選択肢Dは前方アプローチの利点の一つですが、安全性に直接関係するわけではありません。

          次回はいよいよ、尿管の同定の具体的な方法になります。お楽しみに。