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  • 医学生「圧倒的な実力をつける”理想的な”研修病院の選び方って何ですか?」理想病院を見つけるためのガイドライン

    医学生「圧倒的な実力をつける”理想的な”研修病院の選び方って何ですか?」理想病院を見つけるためのガイドライン

    読者さんから質問が来ました。

    医学生の方で、うれしいことに産婦人科希望。

    熱心に腹腔鏡の練習と勉強をされているみたいで、わざわざネットで調べてメールをくれました。

    質問はこちら(本人に同意を得たうえで掲載。一部省略しています)

    初期研修はどのような病院で行う事が理想でしょうか
    先生はどこの病院で、またどんな初期研修を行っていましたか?

    個人的にお答えするにつれ、多くの人にとってメリットの大きい内容になりましたので、思い切って記事にしました。

    質問は初期研修病院についてですが、少し大きな枠でとらえて研修病院の選び方について解説していきたいと思います。

    研修病院をどのように選べばいいのか、根本からきっちり言語化しました。

    その分ボリュームが多くなりましたが

    研修病院選びをどのように行えばいいのか迷っている医学生や研修医、修練医には道しるべとなる最適なガイドラインとなった自信があります。

    今後、後悔したくない人生にしたい人はどうぞお見逃しなく。

    ”理想的な”研修病院とは

    そもそも理想的な研修病院とは何かについて考えていきます。

    そもそも物事を考えるには、軸となる基準が必要です。

    食事で言うなら

    誰と(友人、家族、上司、後輩、初対面など)
    どのような形で食べるのか(立ち飲み、コース、アラカルトなど)
    他には、金額は?おすすめ料理は?立地は?

    もちろん研修病院選びにもいろんな軸があります。

    研修体制という軸はもちろん、場所、給与、人数、上級医の学年、強い科(その中でも強い分野)、立地などの軸が挙げられます。

    といったところでしょうか。

    そのため、一般的に理想的な研修病院といえば、

    友人や家族の近くで立地がよく、給料がべらぼうに高く、やる気のある謙虚で優しい同期がいて、やる気があり優秀な上級医がおおく、すべての分野で強い病院。

    ・・・あります?

    ・・・ありませんよね?

    こんな病院はないですよね。

    ちなみに”理想”に関しても、人によって違います。

    新しい環境に身を置くことが好きな開放性が高く外向性が高い人は地元より東京など遠く離れた場所が理想的となるかもしれません。

    家がかなりのお金持ちで給料は理想の軸に入らないかもしれません。

    ひとりでやることが好きな人には、やる気がある人がいると逆にしんどくなることがあります。

    近しい上級医が多いとそれだけできる手技が減るとも考えられます。

    ある分野が強いところに行くと、発展していく過程を見ることが出来ないこと自体が機会損失になっているのかもしれないです。

    ”理想的な”研修病院とはの答えは・・・

    存在しない

    が結論になります。

    終了。

    ・・・

    ではだめですね(笑)

    これでは意味のない返答になるのでもう少し深堀しましょう

    ”個人の理想”の病院とは

    ”一般的な理想”などありえないうえで、考える必要があるのは、”個人の理想”とはなにかではないでしょうか。

    食事でも、お肉が好きなのか、魚が好きなのか、野菜が好きなのかで変わりますよね。

    一般的な理想病院などないことがわかったところで、”個人の理想的な研修病院”の探し方について具体的解説します。

    個人の理想の研修病院を見つけるには以下の3つのポイントがあります。

    ①データ集め
    ②自分の価値観の明確化
    ③捨てる覚悟になります。

    それぞれ軽く説明すると

    ①データ集め:
     判断材料。ネットの情報だけでなく人から聞くことが最も大切になります。
    ②自己の価値観の明確化:
     判断基準。自分とは今まで何が好きで、どうゆう状況で成長したのか、逆に何が許せず、ストレスになるのかを明確化する必要があります。
    ③捨てる覚悟:
     エッセンシャル思考。何を選ぶのかというのは”何を捨てるのか”と同じ。何を選ぶのかではなく、何を捨てるのがとても大切になります。

    そして決断時の最後の最後は”縁と直感と勇気”になります。

    これだけでは正直何が何かイメージしにくいと思いますので。具体的なアクションプランに落とし込んでいきましょう。

    個人の理想を達成する、具体的なアクションプラン

    では具体的なアクションプランの例として、

    私個人がどのように初期研修病院を選んだのかという話を一つの例としてお伝えします。

    ①見学に行く病院の設定

    まず、自分に病院がわからなかったので、病院の属性で分けて見学に行く病院を決めました

    市中病院なのか大学病院なのか、市中病院でも大きい病院と小さい病院(100床行かない程度)

    救急が忙しいのかどうか いわゆるハイポとハイパー

    田舎なのか都市部なのか

    住んでいるところからの遠さ

    給与が高いのか低いのか

    といった、属性で探しました。

    で気になるところ(先輩が行っているところなど)を何となくピックアップして見に行ってみました。

    初めの病院選びは何となくでよいですよ。

    実際行ったのは、今の淡〇医療センター以外に、丸〇町音〇病院(市中の小さい病院)、滋〇済〇会病院(市中の大きい病院)、湘〇鎌〇総合病院(救急日本一の病院)、亀〇総合病院(ド田舎のドハイパー病院)、京〇府〇医科大学(出身大学)となります。

    これらすべての見学に行きました。確かあと二個ぐらい行ったと思います。

    ②データ集め

    それぞれ、行く前に評価項目を作っていきました。

    あとから設定しては聞き逃したり、比較するときに困ることを避けるためです。

    立地、給与、研修医の数、学年の近い上級医の数、学年の遠い上級医の数実際の忙しさ、人間関係などなど聞いておきたいことを決めていきました。

    これらをそれぞれの病院に行ったときに研修医の先生と直接お話をし(できれば1対1)データを集めてメモをしていきました。

    必ず、実施に働いている医師に確認できるようにお願いしました。

    ここでは研修医の先生からの情報が最も大切になります。

    行く予定の年から待遇が変わったりしないか。

    手技を上級医がさせてくれるのか。

    実は無駄な作業ばかりに時間を取られていないのかなどなど。

    あんがい車で移動すれは都市部に近かったり、駅まで院内バスが出ていたりします。

    ここでのデータが今後の判断でかなり大切になってくるので必ず、事務さんだけでなく近い年代の医師と直接話せる時間を作ってもらいましょう

    ③自己の価値観の明確化

    次は価値観の明確化になります。

    と言われても、自分の価値観はわからないし、価値観ってそもそも何なのかもわからない。

    という人が多いのではないでしょうか(私もまだまだ探求中)

    ここでの価値観は”何が好きで、何が嫌いで、何を選び、何で後悔したのか”という定義?にしておきます。

    価値観がわからないって人は、今まで自分が最も成長したタイミングや、最も楽しかったタイミングを思い出してください

    逆に、最も堕落したタイミグや、もっともつらかったタイミングも考えてみてください。

    自分は、部活が体育会系だったので救急が強いハイパーなところがあっていると思っていました。

    実際、何か手を動かし、自分で考えて練習したり、成長していくのが好きです。

    人と接するのも好きですが、一人で黙々と作業や勉強をするのも好きです。

    つまり”私が”最も成長したり楽しかったのは自分でやりかたを考えコツコツ努力したとき。

    でも、”やるべきだからやる”とか、”脳死でこうしたほうがいいらしい”とか、”みんながしているからする”とかは嫌いでした。

    やらされた宿題とかをやるのは嫌いで、軽く請け負った作業で後悔することがしばしばありました。

    とくに、最も堕落しつらかったタイミングは中学の時の部活教師の体罰が最もパフォーマンスを落としたと思っています。

    自由が制限されハラスメントが横行している組織には絶対いてはいけないと思っています。

    なので方針としては、自己成長が出来、がちがちに縛られているところは避けよう、自分で考えて決める方針としました。

    繰り返しになりますが、

    価値観がわからないって人は、今まで自分が最も成長したタイミングや、最も楽しかったタイミングを思い出してください

    逆に、最も堕落したタイミグや、もっともつらかったタイミングも考えてみてください。

    自分の価値観が明確化するのに大きなヒントが隠れています。

    ④捨てる覚悟

    次は捨てる覚悟になります。

    これは集めたデータを自分の価値観に照らし合わせることで行います。

    湘〇鎌〇総合病院に行ったとき、知り合いのキラキラしていた先輩の眼が死んでいました(西医体優勝していたような体力ばりばりの人)。

    忙しすぎたのです。

    確かに力はつくかもしれませんが、自由な時間が必要な自分の価値観に照らし合わせ、

    自分で考える時間がなく自分なりの研鑽が出来ない病院はやめることにしました。

    ここで、”忙しすぎて自分で考えて研鑽できない病院”が捨てる対象となりました。

    上で言うと、亀〇総合病院、湘〇鎌〇総合病院となります。(時間がないかどうかは個人の感想です。現在どうなっているかはわかりません。無常なり)

    このように、今あるデータを解釈し、自分の価値観に照らし合わせていきます。

    みんながよいと言っている事に疑問を持ち、悪いと言っているところの良いところ、良いと言っているところの悪いところを考えていきました。

    例えば、大学のタスキが最もよい(市中と大学が両方経験できる、最新の治療が学べるから)と言われていましたが、あえて悪いところ(同年代が多いので手技が取り合いになる、給与が悪い、学生とかわらない可能性があるなど)を考えていきました。

    逆に、不人気な病院のいいところ(自由な時間が多い、自分次第で手技が転がっているなど)も考えていきました。

    これを突き詰めて、”一般的に良いとされている病院”を捨てました。それは立地がよかったり、知り合いが多かったりするところです。

    理由としては、人気なところというのは病院側が人を選び、条件が悪くなることが多いと考えたからです。滋〇済〇会病院などが消えました(条件が悪いかどうかは当時の私個人の感想です。現在どうなっているかはわかりません。無常なり)

    そして自分は好奇心が強く、新しいところや物が好き(趣味は旅行)という価値観を優先しました。

    新しいものと出会うには今までの環境や知り合いを捨てる(完全に捨ててはない)こととしました。

    ここで、京〇府〇医科大学は消えました。

    最新の医療は大学でなくてもネットや動画でいくらでも学べるいまの情報供給の変化も大きいです。

    ”学年の近い医者が多いところ”も捨てました。学年が近い医者が多いと手技が回ってこないからです。

    逆に、学年の離れた先生が多いと、やらせてもらえるチャンスも多いと考えました。

    ⑤最後は縁と直感と勇気

    ここまでで、したことは

    病院をいろんな属性で選び、データを直接集め、自分の価値観を明確化し、捨てるものを選ぶ。

    これらによって見つけた”私の理想の研修病院”の条件とは

    人気病院を避け、知り合いが多いところは避け、近い学年の医師がいるところは避ける

    といったかなり一般的ではない理想となりました。

    決断の時です。”個人の理想”の病院選びのの最後の決断になります。

    最後の決断で大切なことは”縁と直感と勇気”になります。

    初期研修病院として実は今いる淡〇医療センターを選んでいます。

    理由としては

    縁:腹腔鏡のプロであり尊敬できる先生がいたこと、事務の方の雰囲気がよかったこと

    直感:この病院は盛り上がると思った。これから研修医を増やそうという意気込みがあり、いわゆる殿様病院とは違った。

    勇気:実は自分の1つ上の研修医は2人しかいなかったし、先輩で行っている人も知り合いもいなかった。一番の親友にはやめておけと言われた。が、自分の直感と縁を信じた。

    こんな感じで決めました。

    当時の病院の状態としては、一般的な人から見たら激悪です。

    まず研修病院として定員割れしている不人気病院。滋〇という田舎で立地は最寄りの駅より徒歩20分、学年の近い医者がほとんどいないといったところでしょうか。

    激悪ですね。

    でも結局、行ってみると自分に合っていて”自分にとって理想的な研修”を受けれたと思います。

    確立した研修システムがなかった → 自分がしたいようにできた。そのため毎日腹腔鏡の練習をすることが出来た。今の時代ネットや本でいくらでも学べた。

    若い医師が少ない → 手技はやり放題であった。CV挿入はもちろん、外科ローテの時に腹腔鏡下虫垂切除を完全執刀させてもらえた。

    研修医を集めている時期 → 給料はいいし、待遇もよかった。

    研修医が少ない → 個人の先生として覚えてもらえた(研修医の先生たちというくくりではなく)

    立地がわるい → 今の時代タクシーもすぐ呼べるし、京〇の友達と飲みに行くのに1時間とかからず(本やスマホで時間つぶせばいい)、つながりは消えなかった。

    田舎 → 人混みを避けられるし、自然でストレス解消が出来た。都会に行くとすごく新鮮で楽しめた。

    一般的に理想とは程遠い病院でも、個人的には理想となるわけです。

    まとめると、

    ファクトフルネスなデータを集め、自己省察で価値観を具体化し、エッセンシャル思考で自分が捨てるべきものを理解できれば、最も優先すべきものがわかり、納得感と勇気をもって”理想的な”研修を受けることが出来る。

    結局、理想を達成することは難しいのですが、これは本当に自分で考えて決断するしかないと思います。

    見学生にここまでやっている人は見たことがないと言われたことがあります。

    しかし、ここまですると後悔することはないと思いませんか?

    ここまで読んでいただきありがとうございます。

    皆様の人生が後悔をするとしても、納得した後悔のできる人生になれば幸いです。

    もし研修先を悩んでいる人がいましたら、このURLでも送り付けてやってください。皆さんがハッピーで理想的な研修を受けられるますように願っています。

    ではでは。

    まとめ問題と解答解説

    問題:
    文章に基づき、理想的な研修病院を見つけるために考慮すべき要素はどれか?次の選択肢から最も適切なものを選びなさい。

    A) 立地の良さ、給与の高さ、知名度のある病院
    B) 個人の価値観の明確化、データの収集、捨てる覚悟
    C) 他人の推薦、医療設備の充実、病院の規模
    D) 上級医の学年、研修医の数、病院の名声

    答え:
    B) 個人の価値観の明確化、データの収集、捨てる覚悟

    解説:
    この文章は、医学生や研修医が理想的な研修病院を選ぶためのアプローチに焦点を当てています。理想的な研修病院を見つける上で重要なのは、個人の価値観を明確にし、必要なデータを集め、そして何を優先し何を捨てるかの覚悟を決めることです。立地の良さや給与の高さ、病院の名声などは重要な要素かもしれませんが、文章は個人のニーズと価値観に基づく病院選びの重要性を強調しています。そのため、選択肢Bが最も適切です。

  • ”Googleの猫”と”手術”の共通点

    ”Googleの猫”と”手術”の共通点

    ディープラーニングの元祖”Googleの猫”と”手術”って同じですよね。

    え、違います?

    今回は、研修医の先生とともに手術に入ったときに必ず伝えている重要な手術習得の要素について説明していきます。

    読み終われば、すっきり間違いなし!

    手術への認識ががらっと変わります。

    ぜひ楽しんでいってください。

    Googleの猫

    皆さん”Googleの猫”って知っていますか?

    医療業界では全く聞いたことない人も多いのではないでしょうか。

    実は、はやりのAIやディープラーニングにかかわる人なら必ず知っている衝撃的な研究結果になります。

    それは

    「Googleの猫」とは、2012年に発表されたAIの研究結果です。
    Google社の研究チームは、ディープラーニングという手法を用いて、YouTubeに投稿されたビデオの中から無作為に一千万枚の画像を取り出してAIに学習をさせました。
    その結果、AIが「猫が写っている画像を見分けられるようになった」と発表したのです。
    この研究で特に注目されたのは、人がAIに「猫」という概念を教えたわけではない
    参照;2012年にAIの歴史が動いた!ついに猫認識に成功した「Googleの猫」 | マルチナ、永遠のAI。 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

    つまりか~なり雑に1行にまとめると

    教えてないのにAIに画像を見せまくったら猫って勝手に認識した。

    ということになります。

    これってものすごくないですか?

    コンピュータに対して指示がないのって考えられないですよね。

    普通は必ず指示は行いますよね。

    例えば、猫の耳の形を指定して、この形の耳を持つものは猫という風に、どこがどうなっているかを説明することでしかコンピュータはわからなかったはずです。

    これをぶち破ったのが”Googleの猫”というわけです。

    ”Googleの猫”と手術の共通点

    ここで本題に移りましょう。

    ”Googleの猫”と手術の共通点です。

    それは

    ”ある閾値を超えると急にわかる”

    ということです。

    よくわかりませんか?

    具体的に見ていきましょう。

    例えば、初めて子宮全摘の術野を見たときを考えてみると、始めはよくわからないですよね。

    子宮はわかるけど、膀胱や尿管なんて言われてもよくわからなった記憶はありませんか?

    しかし、ある時ふと”尿管だ!!!”と認識できたことありませんか?

    これが卵巣で子宮の後ろについているのか!と分かった経験ありませんか?

    今まで見えてこなかった、血管が急に見えて、認識できるようになったことはありませんか?

    これこそ”Googleの猫”との共通点になります。

    ここまでくれば何となくわかったと思います。

    つまりまとめると

    Googleの猫は、大量に猫の画像をAIに見せまくったらいつの間にか猫を認識していた。

    手術は、大量に手術を経験していたらいつの間にか尿管を認識していた。

    となるわけです。

    つまり、大量に経験を積むこと(画像を見る)ことで”モノ”を認識できるというわけです。

    数多く見ることで、ある段階を超えると急に臓器が認識できるわけですね。

    共通点からの学び

    この共通点からの学びは何でしょう?

    陳腐な結論を言ってしまうと、

    経験を積むとよいになってしまいます。

    しかし、もっともっと大きな希望に満ちた結論があります。

    実は、ディープラーニングは人間の学び方と同じと部分があるといわれています。

    そして、人間の学び方、手術の上達とディープラーニングが同じであるならば、焦ることは必要ないわけです。

    よってこのように言うことが出来るのではないでしょうか。

    今わからなくても大丈夫。いつかわかるときがくる。

    そんな希望のある話になるのではないでしょうか。

    なので、もし今何か認識できない臓器や血管走行や手技があったとしても大丈夫です。

    いつかわかるようになる。それでよいのです。

    焦らなくても大丈夫。ではまた。

  • 縫合の原則② 創部の減張

    縫合の原則② 創部の減張

    前回の続きです。前回は層を意識して、同じ層を合わせようという話を具体的なアクションプランと共に紹介しました。

    今回は原則②、創部を減張するに移っていきましょう。

    原則②:創部を減張させる

    二つ目の原則は・・・”創部を減張させる”になります。まずは原則①の創部があっていることが前提になっています。

    ”減張”ってイメージしにくいですよね。イメージは、傷口がぎゅっとくっついている状態にするでよいと思います。

    基本的に縫合した創部が開くようなテンションはダメです。

    傷がずっと開くような状態だとなかなかくっつきませんし、くっついたとしても破綻しやすい状態になってしまいます。


    縦切りの腹部の切開で、下端(足側)が一番分厚くなっている患者さんを見たことがあると思います。

    あれは、重力でたわんだ創部が開く力がかかり下端が分厚く治っているわけです。

    減張はかなり大切な要素になってきます。では次に、どうすれば減張できるのか、具体的なアクションプランに移りましょう。

    例えば、皮膚であれば、表面にテープを貼ることで動きによる開きを和らげる、ことが出来ますよね。


    他の組織でテープが張れないところや、薄くてどうしようもない場合はどうすればいいのでしょうか。一般化してみましょう

    創部を減張する具体的なやり方

    ①層をたくさん縫合する

    一点に力が加わると、当然かかる力も強くなりますよね。

    何層にも縫合すると力が分散され減張することが出来ます。

    わかりやすい例を挙げるならば、家の柱を思い浮かべてください。

    家の柱を増やせばより強固になりますよね。これと同じです。

    先ほどの表面にテープを張ることも同じ原理ですね。

    例えば皮下脂肪は2cm以下であれば浅筋膜の縫合は必要ないという報告がありますが、縫合したほうがより減張にはなります。

    減張を狙うなら、層を多くとるようにしてください。

    ②縫合する層を選別する

    層をたくさん合わせるにも、合わせてよい層と合わせるとよくない層があります。

    例えば、皮膚であれば真皮は固い組織なので(前後の脂肪と表皮と比べて)真皮を縫合するときに強く合わせることで表皮や脂肪層の減張になります。

    逆に、脂肪層をかけると圧迫で脂肪が溶けてしまい炎症が生じて逆に創部の直りが悪くなります。

    一方で、硬いところは強く引っ張っても避けることがないので強く合わせることが出来ます

    腹膜を取るときも、腹膜裏の筋膜を取ることで強く縛ることが出来ます。

    つまり、脂肪や、穿刺してはいけない臓器を避け、なるべく丈夫な組織を多く縫合することが大切なになります。

    ③より多くの組織を取る

    取ってはいけない層をさけて、より多くの層を取るよい縫合層の選択が出来れば、最後はその層自体の取り方になります。

    層の組織を取るときは、より多くの組織を一塊になるように運針するとよいです。

    当然ですがちょっと取るよりも幅広くとったほうが、

    より幅広い範囲で力が分散されるため創部の減張になります。

    二つの原則

    以上となります。二つの原則、

    ①同じ層を合わせる
    まず層を知る、層が見やすいように展開する、層同士を縫う
    ②創部の減張する
    層をたくさん縫合する、運針で硬いところを強く合わせる、より多くの組織を取る

    をイメージして縫合に挑んでみてください。次は腟断端の具体的な縫合について第二原則に基づいて説明していきます。お楽しみに。更新はXで告知していますのでよければフォローをお願いします。

    まとめ問題と答え

    問題:
    テキスト「創部を減張させる」に関する次の記述のうち、最も正しいものを選びなさい。

    A. 減張は、創部のテンションを最小限に抑え、早期の治癒を促進する技術である。
    B. 縫合する際には、創部の全ての層を均等に縫合するのが最適である。
    C. 縫合においては、特に脂肪層の縫合が重要であり、これが減張の鍵である。
    D. 層を多く縫合することで力が分散され、創部の減張を達成できる。

    答え:
    D. 層を多く縫合することで力が分散され、創部の減張を達成できる。

    解説:
    提供されたテキストによると、創部の減張は創部が開かないようにすることが目的であり、これには複数の層を縫合することが効果的です。これにより、縫合された部分にかかる力が分散され、創部の開きを防ぐことができます。選択肢Aは正しいが、減張の技術の一般的な説明に過ぎず、選択肢BとCはテキストに基づいていないため、不正確です。したがって、最も正確な答えは選択肢Dです。

  • 縫合の原則① 「まず、縫合するときに気を付けることってなんですか。」

    縫合の原則① 「まず、縫合するときに気を付けることってなんですか。」

    今回は、縫合の原則についてです。医師になったら誰しもがやりますよね。縫合。

    持針器で針もって、セッシで皮膚もって、張りを通して結紮。

    たったこれだけ。

    院内研修が終われば救急で結構早めに到達する手技ですよね。

    ただ、奥が深い!バイカル湖ぐらい深い。こだわりだすと本一冊かけます。

    今回、その深い深い縫合をたった2つ原則にギュッとまとめました。


    どの様に縫うのか気になるよって方以外にも、縫合をする可能性のあるすべての医師に読む価値のある内容になっていますのでお見逃しなく。

    原則①:同じ組織(層)を合わせる

    早速、原則の一つ目に行きましょう。一つ目は・・・

    ”同じ組織を合わせること”

    例えば、腕の切り傷を縫うときに、腕の皮膚と指を縫い付けることはしませんよね。

    そんなのあたりまえじゃないか!!!

    と思いますよね。

    例えば、切り傷ではなく、裂けたような傷の場合、ギザギザな創部となりもともとの形がわかりにくい時があります。

    これにより、もともとの位置とは違う組織同士を合わせてしまうミスが起こることがあるんですね。

    さらに、解像度を高めると、この”違うもの同士を縫い合わせる”を知らずにしている場面があります

    ”組織を合わせる”の解像度を上げると”同じ層を合わせること”といえます。

    出来ていない状況を考えると、例えば、皮膚を縫うときに真皮同士を合わせずに、真皮と表皮を合わせてしまうようなものです。

    表皮同士が付かないと、傷はくっつきませんよね。

    そのため、組織はもちろん、もっと解像度を高めて、同じ層を合わせることが大切になります。

    同じ組織(層)の具体的な合わせ方

    では同じ層の具体的な合わせ方についてみていきましょう。

    ①まず層を知る

    層に何があるか知ることがファーストステップになります。

    何が存在するかどうか知らないと何もできないです。

    知る方法としては、

    ”調べること”と”実際見ること”

    の二つがあります。実際、見てみて同じそうな色や質感のものを探してください。そうすると認識しやすくなります。

    ②層が見やすいように展開する

    層を見えるようにすることが二つ目のステップになります。

    もっと具体的に言うと、薄くしっかりとセッシで持ち上げること組織を離します

    本を開くと、ページが見えてきますよね。しかし、握りしめて開くと内容が見えませんよね。

    また、少ししか開かなくても内容は読めませんよね。

    なのでしっかりと本を読むときは開く必要があるわけです。

    本で言うと当たり前ですが、創部を分厚く、少ししか持ち上げず層が見えていない場面に遭遇することが時々あります。

    しっかりと左手で近くを把持して、展開して層を見えるようにしましょう

    層同士を縫う

    ②の手順でしっかりと展開が出来れば、

    あとは層同士を取るように運針できれば層のあった縫合は完了となります

    この時に大切なのは、左手で組織を動かすことです。

    組織を動かすことで運針が思った通りに行うことが出来ます。

    逆に言うと左手が使えないと、自由に運針をすることはできません。


    ちなみに脂肪は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので基本かけないほうがいいですね。

    皮膚での模式図で言うと以下のようになります。

    長くなってきたので、原則②は次回紹介になります。お楽しみに。更新はXで告知しています。

    まとめ問題と解説

    問題: 縫合における「同じ組織(層)を合わせる」という原則に基づいて、以下のうち正しいのはどれか?

    1. 縫合時には皮膚の表皮層だけを合わせることが重要である。
    2. 脂肪層は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので、縫合しない方が良い。
    3. 創部を展開する際には、創部を分厚く持ち上げて層を見ることが重要である。
    4. 縫合時には層を認識しやすくするために、左手を使用せずに進めるべきである。

    答え: 2. 脂肪層は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので、縫合しない方が良い。

    解説:

    • 選択肢1は誤りです。縫合では、皮膚の表皮だけでなく、真皮層も含めて同じ層を合わせることが重要です。
    • 選択肢2は正しいです。脂肪層を縫合すると溶けて炎症を引き起こす可能性があり、通常は縫合されません。
    • 選択肢3は間違っています。創部を展開する際には、層が見やすいように薄くしっかりと持ち上げることが重要です。
    • 選択肢4も誤りです。縫合時には、左手を使って組織を動かし、適切に層を合わせることが重要です。左手の使用が縫合技術において非常に重要です。
  • 鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

    鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

    前回のコラムで剥離について解説を行いました。

    そもそも剥離とはから始め、鈍的剝離と鋭的剥離の違い、どちらが良いかという話をしました。

    結論としては、

    リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

    このような結論となりました。今回は理由を実際の剥離を含めて深堀していきたいと思います。

    鋭的剥離より引きちぎる鈍的剥離が優れている点

    切っていく鋭的剝離は正確に行えれば確かに安全です。なぜなら過剰なテンションがかからない為避けて出血や他臓器損傷がおこらないからです。

    しかし、前回説明した通り、切るという手順が増えるため時間がかかりますし、切開部位を間違えれば出血や他臓器損傷を引き起こしてしまいます。

    そのため、よほど困難症例ばかりの施設でない限り、集中力の限界と時間の制約がある現実世界では引きちぎる鈍的剝離を行うほうがトータルよい場面が多いと考えます。

    例えば、超緊急帝王切開で用いられる Joel-Cohen 法が最たるもので、赤ちゃんを素早く出すという最大のメリットを得るため、組織を引きちぎることで展開と剥離を同時に進め、血管や他臓器損傷のリスクを冒しながら、素早く手術をすすめるわけです。

    そのため、”鋭的剥離こそ最強、鈍的剝離は下手のすることだ”という考えには否定的で場合によりますし、むしろ、力加減や出血しそうな場所を把握できた人の上手な鈍的剥離こそ技術が必要であると考えています。

    ここでより深堀するため、現在、鋭的剥離が勧められるようになっている理由と流れを考えていきましょう。

    鋭的剥離が重宝されるようになったストーリー

    切る鋭的剝離が隆盛を極めている理由としては、出血リスクの低下によるドライな術野と合併症の低さが挙げられます。

    ここに至るまでのストーリーとしてこのように考えています。

    ①もともと、電気メスもなかった時代は、引きちぎる鈍的剝離がメインであった。なぜなら止血は圧迫しかなくどれだけ早く手術を終わらせることこそが出血量を減らす手段であった。つまり手術の剥離の源流は引きちぎる鈍的剝離であった。

    ②徐々に科学が発展し、電気メスやエネルギーデバイスが現れ、鏡視下手術も始まった。

    ③開腹に比べ、視野確保が難しい鏡視下手術では細かい出血が大敵となった。

    ④細かい出血の原因を見てみると、組織間の細かい静脈が原因であった。(カメラにより、正確にわかるようになった)

    ⑤そのため、細かい出血を減らし視野を確保するには、凝固や切開を細かくできる鋭的剥離が推奨されるようになった。そして鈍的剝離は悪となった。

    このようなストーリーがあったと考えられます。

    ではこのストーリー通り古い引きちぎる鈍的剝離は完全悪なのでしょうか?

    そんなことはもちろんなく、安全に引きちぎることが出来るならば鈍的剥離は悪にはなりません

    引きちぎる鈍的剝離が悪になるときを考えその対策をしていきましょう。

    鈍的剝離が悪となる場面は3つ考えられます。

    ①出血を引き起こすとき

    ②層がわからなくなるとき

    ③他臓器損傷を引き起こすとき

    この”3悪”さえクリアできればより早く、時間や集中力といったリソースを削減できる引きちぎる鈍的剝離のほうが優れていると言えますよね。

    次の段落ではどのようにすれば”安全に”引きちぎることが出来る考えていきましょう。

    安全に引きちぎる鈍的剝離のやり方

    一つ一つ見ていきましょう。

    ①の出血がおこる理由は何でしょうか。

    それは接着剤となる組織が剥がれる以上に張力をかけることで細い血管が破綻するためです。

    これを避けるためには、組織は剥がれるが、細い血管が破綻しないぐらいのテンションのベクトルをかけることが出来ればこの問題は解決できます。

    細い血管があるところを避けながら、組織間の剥離面が剥がれる必要十分なテンションをかけるわけです。

    ②と③の層がわからなくなる、他臓器損傷がおこる理由は共通しています。

    力の入れる方向や場所を間違えると層の破綻や他臓器損傷が起こります。

    これに関しては、力の入れる場所と方向でカバーすることが出来ます。

    先ほどの、ガムテープをはがすスキーマで考えていきましょう。

    ②の層を追っていく場面において、段ボール側に沿って行きたいときどうしますか?

    段ボール側に接着剤が残らないように、指で段ボール側をこする様に剥離していきますよね。

    たとえば広間膜後葉に沿って広間膜腔を広げていくなら、広間膜後葉に近いところでやや後葉をこする様に力を入れていくようにするほうがよいと思います。

    つまり追いたい層に近いところでこする様にテンションのベクトルをかけることが出来ればよいわけです。

    では③の他臓器損傷に関してどうでしょうか?

    答えは②とは逆の考え方になります。

    損傷したくない臓器に力がかからないベクトル方向を向けて力を入れることが必要になります。

    子宮と腸の癒着を考えると、腸管損傷を起こさないように、子宮に力がより加わるように力のベクトル方向を子宮に向けて力入れていきます。

    尿管を腹膜からはがして岡林腔に入るときは、尿管損傷を起こさないように、腹膜側に力がより加わるように力のベクトル方向を腹膜に向けて力を入れていきます。

    つまり、剥離したい層に沿って、細い血管を認識して、その血管を破綻させないような力と方向にテンションをかけることが出来れば、安全に鈍的剥離を行うことが可能になります。

    むしろ切る鋭的剥離ではないほうがよい場面

    切る鋭的剥離のほうが、リスクが高くなる状況があります。

    それは、癒着症例です。

    え?リスクの高い時は鋭的剥離のほうがよいと言ってたよね?

    もちろんそうですが、ある条件の時は鈍的剥離のほうがよいです。

    それは、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

    この時はむやみに切らないほうが安全に進めることが出来ます。

    なぜなら、鋭的剥離の場合は切開を行うので、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があります。子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来ます。

    また同様のに切り込む可能性があるため、腹腔鏡やり始めは切開する鋭的剥離は勧められません

    特にやり始めの時は、見誤ったり手がぶれたりするため、保たないといけない層に切り込んだりしたりして危険ですね。

    その為、初心者は鈍的剥離、慣れてきたら鋭的剥離と言われるわけです。

    ただし、癒着症例では鋭的剥離を行わないといけない場面が出てくるためどこかで鋭的剥離を習得する必要があります。

    著者が行っている実際の剥離

    長々と剥離について話をすすめていきましたが、最後に私がメインに行っている剥離について説明していきます。

    細かく言うと、鈍的~鋭的を様々な場面で細かく使い分けてはいます。

    それは、食事と同じで、魚を食べるとき、平べったいお肉を食べるとき、トマトをつまむとき、ひじきを食べるとき、豆腐を食べるときでお箸の使い方が異なるように多くの経験の上に徐々に身に着けたものですよね。

    結局は経験かい!となりそうですが、ここで鈍的と鋭的のおいしいところを取り入れた剥離法を、メインで使っているので紹介します。

    鈍的剥離と鋭的剥離の合わせ技

    鈍的剥離の一番のデメリットは何ですか?

    それは、細かい血管を出血させることでしたよね。

    この弱点を鋭的剥離で処理できれば素早く展開を行うことが出来ます。

    広間膜腔展開で考えてみましょう。

    次の場面はCS3後のTLHの症例で、左の円靭帯を切断した後の場面です。膀胱が吊り上がっていたため外側で広間膜腔展開しようとしている場面です。

    ここを広げるときに大切なのは、細い血管を見つけることです。この場面で言うと出血しそうな血管が赤丸にあります。ここをガサガサ鈍的に引きちぎると出血します。

    そのため、この血管を避けるように周囲を広げます。この時に鈍的に広げて剥離をすすめます。

    そして次に、鋭的剥離に移っていきます。

    まずは凝固

    そのあとに切開

    そのあとまた鈍的に腔を出血しないように広げる。もちろんハーモニックの下の細い血管も認識しながら出血しない程度に圧排しています。

    これを繰り返して剥離を繰り返していきます。最終ドライな視野で子宮動脈を同定できました。

    このように、細かい血管を把握し、これを避けて鈍的剥離を行うことで、鈍的剥離を行っても出血をすることなく素早く安全に剥離を行うことが出来ます。

    以上となります。

    結局は伝えたいことは、鈍的剝離、鋭的剥離のどちらが優れているわけでもなく、使いどころによってメリットデメリットがあり、鋭的剝離こそが最強ってわけでもないことでした。

    次回は、傍組織の処理に移っていきます。更新は週一程度で不定期なので、良ければX(Twitter)のフォローをお願い致します。

    まとめ問題と解説

    選択肢問題:
    以下の選択肢の中から、引きちぎる鈍的剥離が安全に行える場面を選んでください。


    A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時
    B) 細い血管の破綻がリスクとなる状況
    C) 初めての腹腔鏡手術を行う場面
    D) 層がわからなくなり他臓器損傷のリスクが高い場面

    正解: A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

    解説:
    文章から、鋭的剥離では、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があるため、子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来るとされている。そのため、癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時は鈍的剥離がより安全と考えられます。

  • 結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?

    結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?

    今回はコラム的に普段、質問を受けるものに答えていきたいと思います。

    質問はこちら

    ”鋭的剥離と鈍的剥離はどっちがいいの?”

    剥離って大切ですよね。どんな手術でも必要な剥離技術。剥離こそが手術という意見もあるぐらい大切なスキルですよね。

    手術ばかりをやっている婦人科医だけでなく、帝王切開ばかり行っている産科医にとって大切な内容になります。もちろんその両方を行っている産婦人科医にも、つまり全産婦人科医にとって必見の内容になっています。

    一昔前は、手クーパ、チギレクトミー(手で組織引きちぎる様)という用語が出来るほど鈍的剥離がメインの産婦人科手術でした。

    最近は鋭的剥離が隆盛を極めていますが、本当に鋭的剥離がいいのか考察していきたいと思います。

    そもそも剥離とは?

    そもそも剥離とは、物と物の間をはがしていくことを言います。

    いうならば、段ボールに張られたガムテープをはがすようなものです。

    剥離を細かく順序で述べるとこうなります。

    ①物と物の間の接着剤となるものを伸ばす

    ②その伸びた接着剤となるものを処理する。

    段ボールで考えると、少し引っ張るとまさに接着剤が線状に見えますよね。これを処理すると剥離が完成するわけです。

    術中うまく剥離が出来ると、組織同士が離れるため他臓器損傷や出血を抑えることが出来ます

    逆に、下手に剥離を行うとかなり危険な状態になります。

    ガムテープをテキトーにはがすとびりびりにガムテープが裂けたり、逆に段ボールが一部ガムテープに付いてきますよね。

    例えば腸管が子宮に癒着している間をはがすときを考えると、下手に剥離を行うと腸が損傷したり、子宮が裂けて出血したりするわけです。

    手術は合併症なく終わらせることが何よりも大切です。そのため”剥離こそが手術だ”という言葉の重みが増すと思います。

    鈍的剥離と鋭的剥離ってなに?

    剥離の手順と重要度がわかったところで”鋭的剥離”と”鈍的剥離”について考えていきましょう。

    わかりやすく、先ほどの段ボール、ガムテープスキームを用いましょう。

    鈍的剥離とは、指でガムテープを引っ張るなどをして、間の粘着剤を”引きちぎる動作”になります。

    鈍的剝離の手順としては

    ①テンションをかけて接着剤となる部分を線状に出す

    そのままテープに力を加えて接着剤を引きちぎる

    となります。

    一方、鋭的剥離とは、ガムテープにテンションをかけて、先のとがったもの(レターオープナー)などを用いて間の粘着剤を”切る動作”になります。

    鋭的剥離の手順としては

    ①テンションをかけて接着剤となる部分を線状に出す

    テンションを追加せず、接着剤の部分を器具で処理する

    となります。

    ①のテンションをかけて展開するは同じですが、②の間の組織の処理が異なるわけですね。

    ガムテープスキーマの用語をを手術の用語に反映していくと、

    段ボールとガムテープ = 組織や筋膜や膜などテンションをかける対象となる部分

    粘着剤 =あわあわの層やFascia、フィブリンやコラーゲンなどのテンションのかかる部分

    鈍的剝離の指 = 指や鉗子や吸引管など力を加える装置

    鋭的剝離のレターオープナー = 電気メスやハサミやエネルギーデバイスなどの切開装置

    になります。

    先ほどの段ボールスキームを言い換えると

    鈍的剥離は”もの”と”もの”の間にテンションをかけ展開し、Fasciaなどの間の組織を張力を強めることで引きちぎり処理すること。

    鋭的剥離は”もの”と”もの”の間にテンションをかけ展開し、Fasciaなどの組織を切開し処理すること。

    こう言い換えることができます。

    結局間の接着剤の部分を、そのまま組織に力を入れて引きちぎるのか、器具で処理するかの違いになります。

    ”引きちぎる鈍的剝離””切開する鋭的剥離”ということが出来ますね

    結局、鈍的剥離と鋭的剥離どっちがいいの?

    長々と剥離について説明しましたが、本題に移りましょう。

    結局、鈍的剝離と鋭的剝離どっちがいいの?

    結論・・・

    リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

    と考えています。

    リスクの高い場面とは、出血や他臓器損傷があり得るような、腹部腫瘍既往、内膜症、CS後などの症例における癒着部位を指します。

    え?あらゆる場面で安全な鋭的剝離こそ最強じゃないの?

    と思いますよね。

    そんなことはありません。この世の中にはある制限があります。

    それは、時間と集中力です。

    つまり、鈍的剥離が勧められる理由としては、手順を省略できることが大きな理由になります。

    なぜ省略できるのか。

    引きちぎる鈍的剥離の場合、テンションをかける(展開)と間を処理する(引きちぎる)をテンションを強めるという同一動作で行うことが可能だからです。

    まだ、納得できてませんよね。大丈夫です。さらに深堀していきます。

    次回は産婦人科手術のこれまでの流れを含めた詳しい理由と、どうすればうまく鈍的剥離を行えるのか、つまり”安全に引きちぎる鈍的剝離方法”に関して解説していきます。お楽しみに!

    PS:X(Twitter)にて更新報告しますのでよければフォローをお願いします。(こちら

    まとめ問題と解答


    問題: 以下の選択肢の中から、文章の内容に最も適したものを選びなさい。

    A. 鋭的剥離は時間がかかるが、リスクが低いので、どのような場面でも推奨される。

    B. 鈍的剥離は、リスクが高い場面でも、時間と集中力の節約のため推奨される。

    C. 鋭的剥離は、リスクが高い場面で細かく処理ができるため推奨されるが、リスクが低い場面では鈍的剥離が推奨される。

    D. 鈍的剥離と鋭的剥離は、どのような場面でも同じ効果が得られるので、どちらを選んでも良い。

    答え: C. 鋭的剥離は、リスクが高い場面で細かく処理ができるため推奨されるが、リスクが低い場面では鈍的剥離が推奨される。

    解説:剥離は、物と物の間をはがすことで、術中うまく行うことで他臓器損傷や出血を抑えることができます。特に「鈍的剥離」と「鋭的剥離」という二つの剥離の方法に焦点を当てています。鈍的剥離は、物と物の間にテンションをかけ、間の組織を引きちぎることで処理する方法で、鋭的剥離は、物と物の間にテンションをかけ、間の組織を切開することで処理する方法です。リスクが高い場面では細かく処理できる鋭的剥離がよいが、時間や集中力の節約、リスクが低い場面では鈍的剥離が良いと考えています。 結論として、「リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。」ため、選択肢の中では、Cが最も適している。

  • 広間膜腔の展開③ 前葉はなるべく子宮に近くで切るほうがよい。なんで?前葉の切開ラインと、切り方を徹底解説。

    広間膜腔の展開③ 前葉はなるべく子宮に近くで切るほうがよい。なんで?前葉の切開ラインと、切り方を徹底解説。

    前回は腹膜は”腹膜”と”腹膜下筋膜”の2枚に分かれるという内容でした。

    手術では腹膜の切開ラインがたった1センチずれるだけで展開のしやすさ、他臓器損傷のリスクが全然違います。

    いよいよ今回は腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)の前方アプローチにおける広間膜前葉の切開ラインについて説明していきたいと思います。

    前回は定義など結構抽象的な話をしましたが、今回は、始まりと終わりと切開ラインを示すだけなので手ぶらでお楽しみください。

    広間膜前葉切開 始める切開位置

    始まりは簡単です。円靭帯の切開部位と同じです。

    あたりまえですね。でも「言語化してください!」となると少し難しくないですか?

    このブログでは簡単なことでも言語化していきます。では行きましょう。

    もし、円靭帯を切っていない状態で前葉の切開部位を決めるならばどこを切開しますか?

    ・・・

    答えはなるべく”子宮に近い”部分となります。

    前に聞いたことがありますよね。

    これは円靱帯切開部位を決めるときのポイントの一つでしたね。

    ここで伏線回収。実は円靭帯をしっかり処理できているといいところで前葉の切開が出来ているのです。

    復習ですが、円靭帯を切開する時は子宮側の血管上行枝の近くで切開しているこちら参照)ので、うまく切れているときはそのまま円靭帯切開位置を始まりの位置になっています。。

    結論!

    円靱帯をきれいに切れている場合は気にせずそのままスタート位置に決めてください。

    困難症例などの場合は円靭帯がうまく切れているか自信がない場合

    円靭帯の切開をうまく切れたかわからない場合は、

    一旦子宮の位置を確認して円靱帯を切った断端の中でスタート位置を再調整してください。

    引き連れて上行枝出血させそうだなぁとなれば、離れてください。
    巨大子宮筋腫ですごく離れすぎたと思ったら、近づいてください。

    ↓の術中写真では円靭帯を切断場所が子宮に近に取りすぎて出血をしたため、外側に調整した例を出しておきます。

    広間膜前葉切開 終わりの位置

    では次に広間膜前葉切開の終わりのパターンは2パターンあります。

    ①子宮動脈本管まで
    ②膀胱子宮窩まで

    が広間膜の前葉切開の終了位置になります。

    ①子宮動脈本管まで

    子宮動脈を基準とするならば、まず腹膜越しにから拍動をみて場所を決めましょう

    この方法は特に膀胱が癒着している症例や、膀胱の位置がわかりにくい場合に有効です。

    ②膀胱子宮窩まで

    膀胱子宮窩まで切開をつなげるときは、先に膀胱腹膜を先に下ろして場所を決めましょう

    膀胱腹膜の剥離に関しては、膀胱剥離③ 正面突破 4ステップを参考にしてください。

    以上の、どちらかの手順で切開の終わりを決めてください。

    最初のころは②の膀胱を先に下ろした方がやりやすいのでおすすめです。

    画像でみる実際の切開方法

    始まりと終わりが決まれば、あとはどのよう切開ラインを入れるかになります。

    今回は実際に行うことですので、1つ1つ丁寧に手順を説明していきますね。

    まずは切断した子宮子宮側の円靱帯断端を手前に引っ張り、子宮頸部と子宮動脈行枝や膀胱の位置を確認してください。

    そして”子宮になるべく寄って”切開してください。

    そうです、なるべく寄ってください!

    怖いですよね。わかります。でも寄って切ってください。

    裏取りをして安全を確かめながらじっくりと。安全だがなるべく子宮に近く。

    それが前方アプローチのコツになります。

    そして決めた終わりまで到達すれば前葉の切開は終了です。

    子宮に寄った切開がよい理由

    最後になぜ子宮に近い切開ラインがよいのか、その意味を考えてみましょう。

    ズバリ理由としては、そのほうがより解剖が見やすい広間膜腔になるからです。

    また抽象的な話になってきた・・・

    そう思いましたね。大丈夫です。

    その意味を図を用いてわかりやすく説明していきます!

    左広間膜で考えると、この切開ラインは広間膜箱でいうところの、右壁(子宮)と上蓋(前葉)の間を切っています。

    図を見ながらイメージしていきましょう。このような展開図でしたね。だんだんわかりやすくなりますので安心してください。

    円靭帯を切った後の切開ラインは辺で言うとこのラインですね。

    ちょっとわかりにくいですかね?

    少し立体的にしていきましょう。疑似的な広間膜腔箱は円靭帯を切った後はこんな感じになります。

    そして切開ラインはここになります。

    そして広間膜前葉を持ち上げることで蓋を開けるように展開してくと、子宮上行枝と基靭帯が丸見えの広間膜腔が出てくるのです。

    わかりましたか?

    ここで展開が終わった図と合わせてみるとこんな感じに完成像はなります。

    なるべく子宮よりに切開ラインを取ったほうが、あとあとの解剖がわかりやすくなる意味が分かりましたか?さらなる理解の助けのために、切開ラインを子宮から遠くした場合を考えてみましょうか。

    切開ラインをもしも、遠くすると

    もし切開ラインを子宮から遠くで取ってしまうと図のように、前葉を割ることになります。

    子宮から遠い分、余った組織が子宮側に残ることになりますよね。

    そうすると子宮側に前葉が付いた状態になります。

    子宮動脈に前葉が残っていると子宮動脈の上行枝が見えなくなります。

    となり右側に数字が残ってしまいます。切開ラインが子宮から離れると同様のことがおこります。

    組織が残ると、その分基靭帯や子宮動脈の把握も難しくなり、結果リスクの高い手術となってしまいます。

    近すぎるともちろん出血のリスクも高くなりますが、ここでどれだけ近く寄れるか。これに前方アプローチは尽きますので意識してみてください。

    今日できること

    勇気をもって子宮かつかつで腹膜を切開してみる

    復習問題と解説

    問題:
    広間膜前葉切開の手術において、円靭帯切開後の切開開始位置を決定する際、最も適切な位置はどこか。次の選択肢から最も正しいものを選びなさい。

    A) 子宮から遠い部分
    B) 子宮に近い部分
    C) 膀胱子宮窩まで
    D) 子宮動脈本管まで

    正解: B) 子宮に近い部分

    解説:
    広間膜前葉切開の手術において、切開開始位置は円靭帯の切開位置と同じであるべきであり、これは子宮に近い部分になります。円靭帯を切開する際には、子宮側の血管上行枝の近くで切開されるため、円靭帯が適切に切れている場合、その位置が切開のスタート位置になります。この位置選定は、術中の出血リスクを最小限に抑えつつ、必要な解剖構造を明確にするために重要です。選択肢Aは不適切で、CとDは切開の終了位置に関する選択であり、開始位置を選ぶ際の適切な選択肢ではありません。したがって、Bの「子宮に近い部分」が最も適切な選択となります。

    次回は広間膜腔とダビデ像の共通点になります。

  • 手術で大切なもの

    手術で大切なもの

    こんにちは、産婦人科医のごっそです。

    このブログは、普段手術をしている経験をもとに、癖のある産婦人科腹腔鏡手術を少しでもやりやすくするために作成しました。

    まず初めにこのブログを始める経緯について説明します。

    成長とは・・・

    手術が一瞬でうまくなる薬があればほしいですか?

    私は欲しくありません。

    その理由は・・・

    成長こそ人生だから

    これに尽きます。できなかったことが出来たときの充実感はたまらないですよね。

    初めて自転車に乗れた瞬間。できなかった問題が解けたときの瞬間。初めて手術を執刀した瞬間。

    これらを達成した瞬間の感覚は皆さん染み付いているのではないでしょうか。

    人生の自己実現のために成長は欠かせない要素ですよね。

    なので、個人的には成長にこそ人生があると思っています。

    世間には、これをするとすぐに上手になるとか、これをすれば成功するとうたう本やセミナーがあふれています。

    これはたくさんの人がうまくなり成功したいと熱望している証拠になります。

    成長はどのように進んでいくのでしょう。

    うまい人ほど調子に乗らない理由

    上手な先生の話を聞くと

    謙虚に「手術は今でも怖がりながらしている。」と言い、

    逆に成長し始めの先生に話を聞くと

    嬉しそうに「最近すべてがひとりで出来るような気がします。」と言う。

    実はこれ、ダニングクルーガー効果というバイアスにかかっている状態です。

    ダニングクルーガー効果とはやり始め程すぐに自信がつき、一度の失敗をおこすことで自信がなくなり、その後徐々に取り戻していくという人間の特性をしめしたものです

    つまり手痛い失敗を経験していない若手ほど自信満々で、酸いも甘いも知るベテランほど謙虚な自信を持っているということです。

    つまり成長とは謙虚に知識と経験を貯めていくということではないでしょうか。

    これからのサイト運営について

    今まで、私は戦略的に手術、特に腹腔鏡に関する練習や、環境整備を行い、苦しみもがきながら多くの失敗を経て、数100件以上の腹腔鏡手術を経験してきました。

    今になってから思ったのです。

    成長が鈍化してきたぞ・・・

    その停滞を打破するために、知人、先輩、本、ブログ、Youtube、メルマガといった、ありとあらゆる情報源を探りました。

    その中でいくつか答えのようなものを見つけました。

    徐々に人間は、他人を成長させることに尽力を尽くし始める。そしてそれが生きがいになることがある。

    確かに、後輩指導をしているときに生きがいを感じることが多々ありました。

    このブログでは私が見つけた手術の処方箋となるメソッドを発信していきます。

    発信内容

    周りの先生からは、言語化をすることが上手といわれることが多いです。それもそのはず。

    「ちゃんとやれ!!!」

    そうと言われながら、”ちゃんとする”を自分なりに言語化をずっとしてきました。

    手術メモも数百以上あります。

    そのメモを参考にしながら、なるべく具体的に言語化して発信していきます。

    個人的な経験が多いため、場所が変わればすべて変わるものと思います。

    もちろん手ぶらでよいです。ぜひ楽しんでいってください。

    まとめ

    成長とは、過去の自分よりもうまくなることをさす。成長を繰り返すことで人生は華やかなものとなる。しかし、成長に当たって失敗や壁は必ず出てくるもの。ダニングクルーガー効果にみられるように失敗を経て謙虚で強固な自信を持つことが出来る。これまでの手術経験をもとに、壁を乗り越えられる”はしご”のような記事の発信を行っていく。