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  • 縫合の原則② 創部の減張

    縫合の原則② 創部の減張

    前回の続きです。前回は層を意識して、同じ層を合わせようという話を具体的なアクションプランと共に紹介しました。

    今回は原則②、創部を減張するに移っていきましょう。

    原則②:創部を減張させる

    二つ目の原則は・・・”創部を減張させる”になります。まずは原則①の創部があっていることが前提になっています。

    ”減張”ってイメージしにくいですよね。イメージは、傷口がぎゅっとくっついている状態にするでよいと思います。

    基本的に縫合した創部が開くようなテンションはダメです。

    傷がずっと開くような状態だとなかなかくっつきませんし、くっついたとしても破綻しやすい状態になってしまいます。


    縦切りの腹部の切開で、下端(足側)が一番分厚くなっている患者さんを見たことがあると思います。

    あれは、重力でたわんだ創部が開く力がかかり下端が分厚く治っているわけです。

    減張はかなり大切な要素になってきます。では次に、どうすれば減張できるのか、具体的なアクションプランに移りましょう。

    例えば、皮膚であれば、表面にテープを貼ることで動きによる開きを和らげる、ことが出来ますよね。


    他の組織でテープが張れないところや、薄くてどうしようもない場合はどうすればいいのでしょうか。一般化してみましょう

    創部を減張する具体的なやり方

    ①層をたくさん縫合する

    一点に力が加わると、当然かかる力も強くなりますよね。

    何層にも縫合すると力が分散され減張することが出来ます。

    わかりやすい例を挙げるならば、家の柱を思い浮かべてください。

    家の柱を増やせばより強固になりますよね。これと同じです。

    先ほどの表面にテープを張ることも同じ原理ですね。

    例えば皮下脂肪は2cm以下であれば浅筋膜の縫合は必要ないという報告がありますが、縫合したほうがより減張にはなります。

    減張を狙うなら、層を多くとるようにしてください。

    ②縫合する層を選別する

    層をたくさん合わせるにも、合わせてよい層と合わせるとよくない層があります。

    例えば、皮膚であれば真皮は固い組織なので(前後の脂肪と表皮と比べて)真皮を縫合するときに強く合わせることで表皮や脂肪層の減張になります。

    逆に、脂肪層をかけると圧迫で脂肪が溶けてしまい炎症が生じて逆に創部の直りが悪くなります。

    一方で、硬いところは強く引っ張っても避けることがないので強く合わせることが出来ます

    腹膜を取るときも、腹膜裏の筋膜を取ることで強く縛ることが出来ます。

    つまり、脂肪や、穿刺してはいけない臓器を避け、なるべく丈夫な組織を多く縫合することが大切なになります。

    ③より多くの組織を取る

    取ってはいけない層をさけて、より多くの層を取るよい縫合層の選択が出来れば、最後はその層自体の取り方になります。

    層の組織を取るときは、より多くの組織を一塊になるように運針するとよいです。

    当然ですがちょっと取るよりも幅広くとったほうが、

    より幅広い範囲で力が分散されるため創部の減張になります。

    二つの原則

    以上となります。二つの原則、

    ①同じ層を合わせる
    まず層を知る、層が見やすいように展開する、層同士を縫う
    ②創部の減張する
    層をたくさん縫合する、運針で硬いところを強く合わせる、より多くの組織を取る

    をイメージして縫合に挑んでみてください。次は腟断端の具体的な縫合について第二原則に基づいて説明していきます。お楽しみに。更新はXで告知していますのでよければフォローをお願いします。

    まとめ問題と答え

    問題:
    テキスト「創部を減張させる」に関する次の記述のうち、最も正しいものを選びなさい。

    A. 減張は、創部のテンションを最小限に抑え、早期の治癒を促進する技術である。
    B. 縫合する際には、創部の全ての層を均等に縫合するのが最適である。
    C. 縫合においては、特に脂肪層の縫合が重要であり、これが減張の鍵である。
    D. 層を多く縫合することで力が分散され、創部の減張を達成できる。

    答え:
    D. 層を多く縫合することで力が分散され、創部の減張を達成できる。

    解説:
    提供されたテキストによると、創部の減張は創部が開かないようにすることが目的であり、これには複数の層を縫合することが効果的です。これにより、縫合された部分にかかる力が分散され、創部の開きを防ぐことができます。選択肢Aは正しいが、減張の技術の一般的な説明に過ぎず、選択肢BとCはテキストに基づいていないため、不正確です。したがって、最も正確な答えは選択肢Dです。

  • 縫合の原則① 「まず、縫合するときに気を付けることってなんですか。」

    縫合の原則① 「まず、縫合するときに気を付けることってなんですか。」

    今回は、縫合の原則についてです。医師になったら誰しもがやりますよね。縫合。

    持針器で針もって、セッシで皮膚もって、張りを通して結紮。

    たったこれだけ。

    院内研修が終われば救急で結構早めに到達する手技ですよね。

    ただ、奥が深い!バイカル湖ぐらい深い。こだわりだすと本一冊かけます。

    今回、その深い深い縫合をたった2つ原則にギュッとまとめました。


    どの様に縫うのか気になるよって方以外にも、縫合をする可能性のあるすべての医師に読む価値のある内容になっていますのでお見逃しなく。

    原則①:同じ組織(層)を合わせる

    早速、原則の一つ目に行きましょう。一つ目は・・・

    ”同じ組織を合わせること”

    例えば、腕の切り傷を縫うときに、腕の皮膚と指を縫い付けることはしませんよね。

    そんなのあたりまえじゃないか!!!

    と思いますよね。

    例えば、切り傷ではなく、裂けたような傷の場合、ギザギザな創部となりもともとの形がわかりにくい時があります。

    これにより、もともとの位置とは違う組織同士を合わせてしまうミスが起こることがあるんですね。

    さらに、解像度を高めると、この”違うもの同士を縫い合わせる”を知らずにしている場面があります

    ”組織を合わせる”の解像度を上げると”同じ層を合わせること”といえます。

    出来ていない状況を考えると、例えば、皮膚を縫うときに真皮同士を合わせずに、真皮と表皮を合わせてしまうようなものです。

    表皮同士が付かないと、傷はくっつきませんよね。

    そのため、組織はもちろん、もっと解像度を高めて、同じ層を合わせることが大切になります。

    同じ組織(層)の具体的な合わせ方

    では同じ層の具体的な合わせ方についてみていきましょう。

    ①まず層を知る

    層に何があるか知ることがファーストステップになります。

    何が存在するかどうか知らないと何もできないです。

    知る方法としては、

    ”調べること”と”実際見ること”

    の二つがあります。実際、見てみて同じそうな色や質感のものを探してください。そうすると認識しやすくなります。

    ②層が見やすいように展開する

    層を見えるようにすることが二つ目のステップになります。

    もっと具体的に言うと、薄くしっかりとセッシで持ち上げること組織を離します

    本を開くと、ページが見えてきますよね。しかし、握りしめて開くと内容が見えませんよね。

    また、少ししか開かなくても内容は読めませんよね。

    なのでしっかりと本を読むときは開く必要があるわけです。

    本で言うと当たり前ですが、創部を分厚く、少ししか持ち上げず層が見えていない場面に遭遇することが時々あります。

    しっかりと左手で近くを把持して、展開して層を見えるようにしましょう

    層同士を縫う

    ②の手順でしっかりと展開が出来れば、

    あとは層同士を取るように運針できれば層のあった縫合は完了となります

    この時に大切なのは、左手で組織を動かすことです。

    組織を動かすことで運針が思った通りに行うことが出来ます。

    逆に言うと左手が使えないと、自由に運針をすることはできません。


    ちなみに脂肪は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので基本かけないほうがいいですね。

    皮膚での模式図で言うと以下のようになります。

    長くなってきたので、原則②は次回紹介になります。お楽しみに。更新はXで告知しています。

    まとめ問題と解説

    問題: 縫合における「同じ組織(層)を合わせる」という原則に基づいて、以下のうち正しいのはどれか?

    1. 縫合時には皮膚の表皮層だけを合わせることが重要である。
    2. 脂肪層は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので、縫合しない方が良い。
    3. 創部を展開する際には、創部を分厚く持ち上げて層を見ることが重要である。
    4. 縫合時には層を認識しやすくするために、左手を使用せずに進めるべきである。

    答え: 2. 脂肪層は縫合すると溶けて炎症を引き起こすので、縫合しない方が良い。

    解説:

    • 選択肢1は誤りです。縫合では、皮膚の表皮だけでなく、真皮層も含めて同じ層を合わせることが重要です。
    • 選択肢2は正しいです。脂肪層を縫合すると溶けて炎症を引き起こす可能性があり、通常は縫合されません。
    • 選択肢3は間違っています。創部を展開する際には、層が見やすいように薄くしっかりと持ち上げることが重要です。
    • 選択肢4も誤りです。縫合時には、左手を使って組織を動かし、適切に層を合わせることが重要です。左手の使用が縫合技術において非常に重要です。
  • 鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

    鈍的も鋭的も思いのまま!失敗しない剥離テクニック完全ガイド

    前回のコラムで剥離について解説を行いました。

    そもそも剥離とはから始め、鈍的剝離と鋭的剥離の違い、どちらが良いかという話をしました。

    結論としては、

    リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

    このような結論となりました。今回は理由を実際の剥離を含めて深堀していきたいと思います。

    鋭的剥離より引きちぎる鈍的剥離が優れている点

    切っていく鋭的剝離は正確に行えれば確かに安全です。なぜなら過剰なテンションがかからない為避けて出血や他臓器損傷がおこらないからです。

    しかし、前回説明した通り、切るという手順が増えるため時間がかかりますし、切開部位を間違えれば出血や他臓器損傷を引き起こしてしまいます。

    そのため、よほど困難症例ばかりの施設でない限り、集中力の限界と時間の制約がある現実世界では引きちぎる鈍的剝離を行うほうがトータルよい場面が多いと考えます。

    例えば、超緊急帝王切開で用いられる Joel-Cohen 法が最たるもので、赤ちゃんを素早く出すという最大のメリットを得るため、組織を引きちぎることで展開と剥離を同時に進め、血管や他臓器損傷のリスクを冒しながら、素早く手術をすすめるわけです。

    そのため、”鋭的剥離こそ最強、鈍的剝離は下手のすることだ”という考えには否定的で場合によりますし、むしろ、力加減や出血しそうな場所を把握できた人の上手な鈍的剥離こそ技術が必要であると考えています。

    ここでより深堀するため、現在、鋭的剥離が勧められるようになっている理由と流れを考えていきましょう。

    鋭的剥離が重宝されるようになったストーリー

    切る鋭的剝離が隆盛を極めている理由としては、出血リスクの低下によるドライな術野と合併症の低さが挙げられます。

    ここに至るまでのストーリーとしてこのように考えています。

    ①もともと、電気メスもなかった時代は、引きちぎる鈍的剝離がメインであった。なぜなら止血は圧迫しかなくどれだけ早く手術を終わらせることこそが出血量を減らす手段であった。つまり手術の剥離の源流は引きちぎる鈍的剝離であった。

    ②徐々に科学が発展し、電気メスやエネルギーデバイスが現れ、鏡視下手術も始まった。

    ③開腹に比べ、視野確保が難しい鏡視下手術では細かい出血が大敵となった。

    ④細かい出血の原因を見てみると、組織間の細かい静脈が原因であった。(カメラにより、正確にわかるようになった)

    ⑤そのため、細かい出血を減らし視野を確保するには、凝固や切開を細かくできる鋭的剥離が推奨されるようになった。そして鈍的剝離は悪となった。

    このようなストーリーがあったと考えられます。

    ではこのストーリー通り古い引きちぎる鈍的剝離は完全悪なのでしょうか?

    そんなことはもちろんなく、安全に引きちぎることが出来るならば鈍的剥離は悪にはなりません

    引きちぎる鈍的剝離が悪になるときを考えその対策をしていきましょう。

    鈍的剝離が悪となる場面は3つ考えられます。

    ①出血を引き起こすとき

    ②層がわからなくなるとき

    ③他臓器損傷を引き起こすとき

    この”3悪”さえクリアできればより早く、時間や集中力といったリソースを削減できる引きちぎる鈍的剝離のほうが優れていると言えますよね。

    次の段落ではどのようにすれば”安全に”引きちぎることが出来る考えていきましょう。

    安全に引きちぎる鈍的剝離のやり方

    一つ一つ見ていきましょう。

    ①の出血がおこる理由は何でしょうか。

    それは接着剤となる組織が剥がれる以上に張力をかけることで細い血管が破綻するためです。

    これを避けるためには、組織は剥がれるが、細い血管が破綻しないぐらいのテンションのベクトルをかけることが出来ればこの問題は解決できます。

    細い血管があるところを避けながら、組織間の剥離面が剥がれる必要十分なテンションをかけるわけです。

    ②と③の層がわからなくなる、他臓器損傷がおこる理由は共通しています。

    力の入れる方向や場所を間違えると層の破綻や他臓器損傷が起こります。

    これに関しては、力の入れる場所と方向でカバーすることが出来ます。

    先ほどの、ガムテープをはがすスキーマで考えていきましょう。

    ②の層を追っていく場面において、段ボール側に沿って行きたいときどうしますか?

    段ボール側に接着剤が残らないように、指で段ボール側をこする様に剥離していきますよね。

    たとえば広間膜後葉に沿って広間膜腔を広げていくなら、広間膜後葉に近いところでやや後葉をこする様に力を入れていくようにするほうがよいと思います。

    つまり追いたい層に近いところでこする様にテンションのベクトルをかけることが出来ればよいわけです。

    では③の他臓器損傷に関してどうでしょうか?

    答えは②とは逆の考え方になります。

    損傷したくない臓器に力がかからないベクトル方向を向けて力を入れることが必要になります。

    子宮と腸の癒着を考えると、腸管損傷を起こさないように、子宮に力がより加わるように力のベクトル方向を子宮に向けて力入れていきます。

    尿管を腹膜からはがして岡林腔に入るときは、尿管損傷を起こさないように、腹膜側に力がより加わるように力のベクトル方向を腹膜に向けて力を入れていきます。

    つまり、剥離したい層に沿って、細い血管を認識して、その血管を破綻させないような力と方向にテンションをかけることが出来れば、安全に鈍的剥離を行うことが可能になります。

    むしろ切る鋭的剥離ではないほうがよい場面

    切る鋭的剥離のほうが、リスクが高くなる状況があります。

    それは、癒着症例です。

    え?リスクの高い時は鋭的剥離のほうがよいと言ってたよね?

    もちろんそうですが、ある条件の時は鈍的剥離のほうがよいです。

    それは、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

    この時はむやみに切らないほうが安全に進めることが出来ます。

    なぜなら、鋭的剥離の場合は切開を行うので、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があります。子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来ます。

    また同様のに切り込む可能性があるため、腹腔鏡やり始めは切開する鋭的剥離は勧められません

    特にやり始めの時は、見誤ったり手がぶれたりするため、保たないといけない層に切り込んだりしたりして危険ですね。

    その為、初心者は鈍的剥離、慣れてきたら鋭的剥離と言われるわけです。

    ただし、癒着症例では鋭的剥離を行わないといけない場面が出てくるためどこかで鋭的剥離を習得する必要があります。

    著者が行っている実際の剥離

    長々と剥離について話をすすめていきましたが、最後に私がメインに行っている剥離について説明していきます。

    細かく言うと、鈍的~鋭的を様々な場面で細かく使い分けてはいます。

    それは、食事と同じで、魚を食べるとき、平べったいお肉を食べるとき、トマトをつまむとき、ひじきを食べるとき、豆腐を食べるときでお箸の使い方が異なるように多くの経験の上に徐々に身に着けたものですよね。

    結局は経験かい!となりそうですが、ここで鈍的と鋭的のおいしいところを取り入れた剥離法を、メインで使っているので紹介します。

    鈍的剥離と鋭的剥離の合わせ技

    鈍的剥離の一番のデメリットは何ですか?

    それは、細かい血管を出血させることでしたよね。

    この弱点を鋭的剥離で処理できれば素早く展開を行うことが出来ます。

    広間膜腔展開で考えてみましょう。

    次の場面はCS3後のTLHの症例で、左の円靭帯を切断した後の場面です。膀胱が吊り上がっていたため外側で広間膜腔展開しようとしている場面です。

    ここを広げるときに大切なのは、細い血管を見つけることです。この場面で言うと出血しそうな血管が赤丸にあります。ここをガサガサ鈍的に引きちぎると出血します。

    そのため、この血管を避けるように周囲を広げます。この時に鈍的に広げて剥離をすすめます。

    そして次に、鋭的剥離に移っていきます。

    まずは凝固

    そのあとに切開

    そのあとまた鈍的に腔を出血しないように広げる。もちろんハーモニックの下の細い血管も認識しながら出血しない程度に圧排しています。

    これを繰り返して剥離を繰り返していきます。最終ドライな視野で子宮動脈を同定できました。

    このように、細かい血管を把握し、これを避けて鈍的剥離を行うことで、鈍的剥離を行っても出血をすることなく素早く安全に剥離を行うことが出来ます。

    以上となります。

    結局は伝えたいことは、鈍的剝離、鋭的剥離のどちらが優れているわけでもなく、使いどころによってメリットデメリットがあり、鋭的剝離こそが最強ってわけでもないことでした。

    次回は、傍組織の処理に移っていきます。更新は週一程度で不定期なので、良ければX(Twitter)のフォローをお願い致します。

    まとめ問題と解説

    選択肢問題:
    以下の選択肢の中から、引きちぎる鈍的剥離が安全に行える場面を選んでください。


    A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時
    B) 細い血管の破綻がリスクとなる状況
    C) 初めての腹腔鏡手術を行う場面
    D) 層がわからなくなり他臓器損傷のリスクが高い場面

    正解: A) 癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時

    解説:
    文章から、鋭的剥離では、残したい臓器自体を切開してしまう可能性があるため、子宮と腸がついているときは、子宮を鈍的にこする様に剥離することで腸の損傷を防ぎながら剥離を進めることが出来るとされている。そのため、癒着症例で、片方は損傷してもよいもの(摘出臓器など)でもう片方は損傷してはいけないものの時は鈍的剥離がより安全と考えられます。

  • 結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?

    結局、鈍的剥離と鋭的剥離はどっちがいいの?

    今回はコラム的に普段、質問を受けるものに答えていきたいと思います。

    質問はこちら

    ”鋭的剥離と鈍的剥離はどっちがいいの?”

    剥離って大切ですよね。どんな手術でも必要な剥離技術。剥離こそが手術という意見もあるぐらい大切なスキルですよね。

    手術ばかりをやっている婦人科医だけでなく、帝王切開ばかり行っている産科医にとって大切な内容になります。もちろんその両方を行っている産婦人科医にも、つまり全産婦人科医にとって必見の内容になっています。

    一昔前は、手クーパ、チギレクトミー(手で組織引きちぎる様)という用語が出来るほど鈍的剥離がメインの産婦人科手術でした。

    最近は鋭的剥離が隆盛を極めていますが、本当に鋭的剥離がいいのか考察していきたいと思います。

    そもそも剥離とは?

    そもそも剥離とは、物と物の間をはがしていくことを言います。

    いうならば、段ボールに張られたガムテープをはがすようなものです。

    剥離を細かく順序で述べるとこうなります。

    ①物と物の間の接着剤となるものを伸ばす

    ②その伸びた接着剤となるものを処理する。

    段ボールで考えると、少し引っ張るとまさに接着剤が線状に見えますよね。これを処理すると剥離が完成するわけです。

    術中うまく剥離が出来ると、組織同士が離れるため他臓器損傷や出血を抑えることが出来ます

    逆に、下手に剥離を行うとかなり危険な状態になります。

    ガムテープをテキトーにはがすとびりびりにガムテープが裂けたり、逆に段ボールが一部ガムテープに付いてきますよね。

    例えば腸管が子宮に癒着している間をはがすときを考えると、下手に剥離を行うと腸が損傷したり、子宮が裂けて出血したりするわけです。

    手術は合併症なく終わらせることが何よりも大切です。そのため”剥離こそが手術だ”という言葉の重みが増すと思います。

    鈍的剥離と鋭的剥離ってなに?

    剥離の手順と重要度がわかったところで”鋭的剥離”と”鈍的剥離”について考えていきましょう。

    わかりやすく、先ほどの段ボール、ガムテープスキームを用いましょう。

    鈍的剥離とは、指でガムテープを引っ張るなどをして、間の粘着剤を”引きちぎる動作”になります。

    鈍的剝離の手順としては

    ①テンションをかけて接着剤となる部分を線状に出す

    そのままテープに力を加えて接着剤を引きちぎる

    となります。

    一方、鋭的剥離とは、ガムテープにテンションをかけて、先のとがったもの(レターオープナー)などを用いて間の粘着剤を”切る動作”になります。

    鋭的剥離の手順としては

    ①テンションをかけて接着剤となる部分を線状に出す

    テンションを追加せず、接着剤の部分を器具で処理する

    となります。

    ①のテンションをかけて展開するは同じですが、②の間の組織の処理が異なるわけですね。

    ガムテープスキーマの用語をを手術の用語に反映していくと、

    段ボールとガムテープ = 組織や筋膜や膜などテンションをかける対象となる部分

    粘着剤 =あわあわの層やFascia、フィブリンやコラーゲンなどのテンションのかかる部分

    鈍的剝離の指 = 指や鉗子や吸引管など力を加える装置

    鋭的剝離のレターオープナー = 電気メスやハサミやエネルギーデバイスなどの切開装置

    になります。

    先ほどの段ボールスキームを言い換えると

    鈍的剥離は”もの”と”もの”の間にテンションをかけ展開し、Fasciaなどの間の組織を張力を強めることで引きちぎり処理すること。

    鋭的剥離は”もの”と”もの”の間にテンションをかけ展開し、Fasciaなどの組織を切開し処理すること。

    こう言い換えることができます。

    結局間の接着剤の部分を、そのまま組織に力を入れて引きちぎるのか、器具で処理するかの違いになります。

    ”引きちぎる鈍的剝離””切開する鋭的剥離”ということが出来ますね

    結局、鈍的剥離と鋭的剥離どっちがいいの?

    長々と剥離について説明しましたが、本題に移りましょう。

    結局、鈍的剝離と鋭的剝離どっちがいいの?

    結論・・・

    リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。

    と考えています。

    リスクの高い場面とは、出血や他臓器損傷があり得るような、腹部腫瘍既往、内膜症、CS後などの症例における癒着部位を指します。

    え?あらゆる場面で安全な鋭的剝離こそ最強じゃないの?

    と思いますよね。

    そんなことはありません。この世の中にはある制限があります。

    それは、時間と集中力です。

    つまり、鈍的剥離が勧められる理由としては、手順を省略できることが大きな理由になります。

    なぜ省略できるのか。

    引きちぎる鈍的剥離の場合、テンションをかける(展開)と間を処理する(引きちぎる)をテンションを強めるという同一動作で行うことが可能だからです。

    まだ、納得できてませんよね。大丈夫です。さらに深堀していきます。

    次回は産婦人科手術のこれまでの流れを含めた詳しい理由と、どうすればうまく鈍的剥離を行えるのか、つまり”安全に引きちぎる鈍的剝離方法”に関して解説していきます。お楽しみに!

    PS:X(Twitter)にて更新報告しますのでよければフォローをお願いします。(こちら

    まとめ問題と解答


    問題: 以下の選択肢の中から、文章の内容に最も適したものを選びなさい。

    A. 鋭的剥離は時間がかかるが、リスクが低いので、どのような場面でも推奨される。

    B. 鈍的剥離は、リスクが高い場面でも、時間と集中力の節約のため推奨される。

    C. 鋭的剥離は、リスクが高い場面で細かく処理ができるため推奨されるが、リスクが低い場面では鈍的剥離が推奨される。

    D. 鈍的剥離と鋭的剥離は、どのような場面でも同じ効果が得られるので、どちらを選んでも良い。

    答え: C. 鋭的剥離は、リスクが高い場面で細かく処理ができるため推奨されるが、リスクが低い場面では鈍的剥離が推奨される。

    解説:剥離は、物と物の間をはがすことで、術中うまく行うことで他臓器損傷や出血を抑えることができます。特に「鈍的剥離」と「鋭的剥離」という二つの剥離の方法に焦点を当てています。鈍的剥離は、物と物の間にテンションをかけ、間の組織を引きちぎることで処理する方法で、鋭的剥離は、物と物の間にテンションをかけ、間の組織を切開することで処理する方法です。リスクが高い場面では細かく処理できる鋭的剥離がよいが、時間や集中力の節約、リスクが低い場面では鈍的剥離が良いと考えています。 結論として、「リスクが高い場面では細かく処理のできる鋭的がよいが、時間、集中力の節約のためやリスクが低い場面なら引きちぎる鈍的がよい。」ため、選択肢の中では、Cが最も適している。

  • 手術で大切なもの

    手術で大切なもの

    こんにちは、産婦人科医のごっそです。

    このブログは、普段手術をしている経験をもとに、癖のある産婦人科腹腔鏡手術を少しでもやりやすくするために作成しました。

    まず初めにこのブログを始める経緯について説明します。

    成長とは・・・

    手術が一瞬でうまくなる薬があればほしいですか?

    私は欲しくありません。

    その理由は・・・

    成長こそ人生だから

    これに尽きます。できなかったことが出来たときの充実感はたまらないですよね。

    初めて自転車に乗れた瞬間。できなかった問題が解けたときの瞬間。初めて手術を執刀した瞬間。

    これらを達成した瞬間の感覚は皆さん染み付いているのではないでしょうか。

    人生の自己実現のために成長は欠かせない要素ですよね。

    なので、個人的には成長にこそ人生があると思っています。

    世間には、これをするとすぐに上手になるとか、これをすれば成功するとうたう本やセミナーがあふれています。

    これはたくさんの人がうまくなり成功したいと熱望している証拠になります。

    成長はどのように進んでいくのでしょう。

    うまい人ほど調子に乗らない理由

    上手な先生の話を聞くと

    謙虚に「手術は今でも怖がりながらしている。」と言い、

    逆に成長し始めの先生に話を聞くと

    嬉しそうに「最近すべてがひとりで出来るような気がします。」と言う。

    実はこれ、ダニングクルーガー効果というバイアスにかかっている状態です。

    ダニングクルーガー効果とはやり始め程すぐに自信がつき、一度の失敗をおこすことで自信がなくなり、その後徐々に取り戻していくという人間の特性をしめしたものです

    つまり手痛い失敗を経験していない若手ほど自信満々で、酸いも甘いも知るベテランほど謙虚な自信を持っているということです。

    つまり成長とは謙虚に知識と経験を貯めていくということではないでしょうか。

    これからのサイト運営について

    今まで、私は戦略的に手術、特に腹腔鏡に関する練習や、環境整備を行い、苦しみもがきながら多くの失敗を経て、数100件以上の腹腔鏡手術を経験してきました。

    今になってから思ったのです。

    成長が鈍化してきたぞ・・・

    その停滞を打破するために、知人、先輩、本、ブログ、Youtube、メルマガといった、ありとあらゆる情報源を探りました。

    その中でいくつか答えのようなものを見つけました。

    徐々に人間は、他人を成長させることに尽力を尽くし始める。そしてそれが生きがいになることがある。

    確かに、後輩指導をしているときに生きがいを感じることが多々ありました。

    このブログでは私が見つけた手術の処方箋となるメソッドを発信していきます。

    発信内容

    周りの先生からは、言語化をすることが上手といわれることが多いです。それもそのはず。

    「ちゃんとやれ!!!」

    そうと言われながら、”ちゃんとする”を自分なりに言語化をずっとしてきました。

    手術メモも数百以上あります。

    そのメモを参考にしながら、なるべく具体的に言語化して発信していきます。

    個人的な経験が多いため、場所が変わればすべて変わるものと思います。

    もちろん手ぶらでよいです。ぜひ楽しんでいってください。

    まとめ

    成長とは、過去の自分よりもうまくなることをさす。成長を繰り返すことで人生は華やかなものとなる。しかし、成長に当たって失敗や壁は必ず出てくるもの。ダニングクルーガー効果にみられるように失敗を経て謙虚で強固な自信を持つことが出来る。これまでの手術経験をもとに、壁を乗り越えられる”はしご”のような記事の発信を行っていく。