5年ぶりの試験が終わった。日曜日の京都に降り始めた雨。ひしめく傘のなか、私は傘もささずに歩いている。私はこの1ヶ月のことを悔いていた。
今回は「女性ヘルスケア専門医」を実際に受験してわかった失敗と、対策を共有したい。
同じ失敗をするのは、私だけで十分だ。
もう誰も同じ過ちを繰り返さないことを願ってごっそりお伝えする。
勉強対策は卒試や国試と同じだった
「幅広く、浅く勉強するといいよ」受験前、先輩からそう教えてもらっていた。
ただ、この言葉は何通りにも解釈できる。私はその意味を、少し間違えて受け取っていた。
結論から言えば、試験に向けて勉強すべきなのは、主に次の二つだった。
①診断治療にまつわる具体的な数字
②王道の周辺知識。
つまり、よくある卒業試験と基本的には同じ。
実際に2026年に出されたものは
①前兆のない片頭痛:4~72時間持続など
①サルコペニアの診断基準:歩行が1.0m/秒など
②動脈性硬化症に対する塩分制限:6g
②間質性肺炎を起こす漢方成分:柴胡
②エストロゲン作用のある黄体ホルモン:ノルエチステロン
「①の診断治療にまつわる話」は、患者応対に必要な知識がきっちり問われている印象だった。
厄介なのは「②の王道から外れた知識」。副作用のある漢方は学生自体から甘草と決まっている。それをズラしてきた。 王道の知識ではなく、その周辺知識が問われた。とある先生から聞いた話では、内科のDrが入ってくるため試験を難しくしているんじゃないかと言う話。
試験が終わった今になって振り返ると、良い問題が多かった。実臨床で必要な知識や判断を問う内容であり、出題意図にも納得できる。
もっとも、これは完全な後知恵バイアスである。
受験前の私は、なぜかまったく違う方向へ走っていた。
試験当日まで、私はAIと勉強していた
試験当日の朝、私は綺麗な京都のホテルカフェでコーヒーを片手に、パソコンでCodexと向き合っていた。
1分でも会場に遅刻すれば、試験を受けられない。
そのため朝6時に起き、早めに会場近くへ移動して、最後の確認をしていた。
口調をおじゃる丸風にカスタマイズし、ずっと一緒に勉強してきた。

試験までの1か月間、私はほとんど毎日。もちろん、ガイドラインを片手に。
AIはとても便利だ。
「この範囲から問題を作って」と依頼すれば、人に頼めば何日もかかりそうな問題を、短時間で大量に作ってくれる。
問題を解き、分からないところがあれば質問する。回答を読んで、さらに深く掘り下げる。
一見すると、理想的な勉強法に思える。
しかし、私はそこで、ある病にかかっていた。
私がかかった病は「本質病」
私は凝り性だ。
一度気になったことは根本から理解しないと気が済まない。中学校のころ、覚えるだけの英単語試験はいつも追試。得意な数学では計算で導き出せる公式は覚えず、その場で毎回導いて使っていた。
背景を知り、構造を知り、本質を知る。私にとっては、それこそが学ぶ楽しさだった。「手術技術習得とは解像度を上げることだ」のような根底にある原理原則を理解し学ぶことが生きがいとなっている。いわゆる「本質病」だ。
もちろん、本質を理解することは重要である。
しかし、背景情報を知っているかどうかは、試験では必要ではない。 ヘルスケア専門医に求められていたのはうんちくおじさん力ではなく、実際に数字を見て判断する力。
学生時代はよかった。そんな私にも一緒に勉強をしてくれる友人がおり歯止めがかかっていた。
「そこまでは出ないんちゃう」
「いいから、この表を覚えろ」
そう言ってくれる友人がいた。
友人がいなくなり、その穴を埋めたのはAIであった。
AIはウサギの穴を掘ってくる
AIは、使い方を間違えると、強力な時間食いマシーンになる。今回、必要以上の背景知識を集めてしまった原因の一つは、AIとの会話だった。AIはかなり便利である。つい、脱線情報を調べたくなってしまう。
たとえば、黄体ホルモン製剤はMPA,LNG,NETA、エフメノ、デュファストンなどに複数ある。 それぞれの特徴を聞けばすぐに答えてくれる。(※私はChatGPTの口調をおじゃる丸風にしている)。
それぞれを「何が得意か」「どこに注意か」で並べ、まず平易版、そのあと専門版でまとめるのじゃ。薬たちは同じ一族でも、性格はなかなか公家社会めいておる。
MPA:強力な内膜増殖抑制作用を持つ一方、GR・AR作用による代謝系副作用に注意する。
LNG:強いPR作用とAR作用を有し、LNG-IUSでは低い全身曝露で高い内膜効果を得る。
NETA:内膜抑制力とAR活性が強く、経口投与では一部がエチニルエストラジオールへ変換される。
エフメノ:天然型プロゲステロンで代謝中立性が高いが、神経ステロイド作用による傾眠が特徴じゃ。
デュファストン:PR選択性が高く排卵抑制が少ないが、日本ではMHTの内膜保護は未承認でおじゃる。
非常に分かりやすい。
現在のAIのIQは東大主席を超える。東大主席のおじゃる丸に月数千円で聞き放題。なんていい世界だろう。さらに深掘りできる。いやできてしまうのだ。
そう、私は深掘り”してしまった”。詳細は割愛するが黄体ホルモンのカテゴライズは本質は分子構造上C21系かC19系であるというところに辿り着いた。世界の秘密を一つ解き明かしたような気分だった。
しかし、当然ながらそんなことは試験に出ない。出たのはエストロゲン作用のある黄体ホルモンだけだ。私が費やした数時間は、表を覚える数分に、試験というリングでボコボコにされた。
うちのおじゃる丸風にいえば、公家が衣冠束帯を整えて相撲場へ出たところ、まわし一枚の力士に投げられたようなものである
この状態を、「ウサギの穴に落ちる」と表現する。一つの疑問から次々と別の疑問が生まれ、当初の目的から離れて深く入り込んでしまう状態を指す。
元ネタは「不思議の国のアリス」

アリスが白ウサギを追いかけて穴に落ちると、奇妙な世界へ入り込む。そこから、あることを調べ始めたら、予想外の世界に深く入り込み、戻れなくなるということを指す言葉となった。
やるのは自分、やることは同じ
物事の本質は変わらない。以前、「AI時代でも本質は変わらない」という記事を書いた。
試験でも同じであった。結局は、卒試や国試と同じ。選択肢試験で問うことができるのは、具体的な数字や用語だ。これが本質。「僕だけの最強、C21かC19論」なんて誰も気にしてない。そもそも、問うことはできないのだ。
AIを使うこと自体が悪いのではない。ただし、使う前に線引きを自分で行わなければならない。
- 今、覚えるべき内容は何か
- この知識は試験で問われる可能性があるか
- 深掘りする価値があるか
- 単に面白いから調べているだけではないか
答えを教えてくれるが、「今、それを勉強すべきか」までは決めてくれない。
同じ失敗を繰り返す人を減らしたい
ヘルスケア専門医試験を受けようとしている方にはこの記事を共有してあげてほしい。
AI時代だからこそ陥ってしまう人も少なからずいるはずだ。
(5問ぐらいであるが過去問として参考にできる。)
AIに泣かされる人が今後でてこないことを願って終わりとしたい。
気になる合否については、結果が分かり次第Xで報告する。気になる方はぜひフォローして待っていてほしい。https://x.com/gossogyne
あとCODEXが作ってくれた問題をまとめたサイトもあるのでもしよければ活用してほしい。
ではまた!
